居酒屋で出会ったおっさんと軽いノリで作った組織 作:エドモンド橋本
更新遅くなって大変申し訳ございません。
少々動くのが辛い程の怪我で寝込んでました。
コロナの後に怪我とは。ついてませんね。
ゆっくりですが回復しつつあります。少しずつにはなりますが、投稿していきますので今後もよろしくお願いします。
鉄格子を挟んだ先に座っているのは、この場に似つかわしく無い程品のある中年男性。ガラルを代表する偉人であるが、今はもう罪人となってしまった。
「4年前、俺のゲンガーは突然キョダイマックスして暴走した。この件について、何か知っているか?」
俺が全てを投げ出したくなる程絶望した4年前の事件。みんなでキャンプをしていたあの時、ふとゲンガーがいなくなったと思ったら、突然のキョダイマックスによって暴走を始めた。そして40分後、俺の元から2匹のポケモンが居なくなった。
「あの日、アンタはワイルドエリアに居たよな」
キャンプを始める前、俺はワイルドエリアでローズに出会った。軽く会話をしたが、その時、やけにゲンガーを見つめていた。それがどういう意味なのか、今なら何となくわかる。ゆっくりと口を開くローズ。発せられる言葉に、耳を塞ぎたくなった。
「ええ、私がそこにいるゲンガーに願い星を与えました。願い星の持つ力を試す為に。愚かな事だったと思います。今更ですが、申し訳ない事をしました」
額を床につけるローズ。俺はその姿から目を逸らす。分かっていた。でも心のどこかで、全く知らない奴が犯人なら良いと思っていた。俺をジムチャレンジに推薦してくれたこの人が、犯人じゃない事を願っていた。
「そっか、分かった。ならしっかり罪を償ってくれ。じゃあな」
俺は踵を返して出口に向かう。離れていく足音に慌てて頭を上げるローズ。
「君は!私を恨んでいないのですか!?私は重罪を犯した!!それを4年も隠して生きてきた!!その私に罵声の1つも浴びせないのですか!!」
そんなもん自己満足だろ。罵声を浴びせても得する奴なんていない。居るとしたら外野の人間位だ。何も失ってない奴が、被害者に同情して加害者をディスる環境は、見てて不愉快だ。それに何より。
「俺には、あんたを恨む権利がない」
「一体、何を」
困惑するローズ委員長の顔には、恐怖も混じって見えた。
「確かに、あんたのせいでゲンガーは暴走した。それを許すつもりはない。でも俺は暴走したゲンガーを止められなかった。トレーナーであるにも関わらず。ゲンガーに、辛い思いをさせてしまった」
「ゲ〜ン」
下を向いて声を出すゲンガー。俺の服をギュッと握っている。この子の癖だ。俺の感情を読み取ると、袖や指先を掴んでくる。俺が吐き出そうとしていた言葉が、懐かしさで言い淀んでしまう。
「俺は、トレーナーとして弱かった。ポケモン達の強さと、トレーナーの腕は必ずも比例しない。それなのに俺は自分を過信していた。今思えば恥ずかしいよ。ゲンガーの強さを、自分のおかげだと思ってたんかな?マジでダセエ」
今も立派なトレーナーではない。俺より凄いトレーナーは居るはずだ。例えば、姉ちゃんみたいに。強え弱えじゃなくて、好きなポケモン達で勝てる様なトレーナーになりたい。その為には、振り掛かった災いを、誰かのせいにして目を背ける様な奴のままで居たくない。
「全部アンタのせいにはしない。俺の弱さが招いた現実だ。受け入れて、背負って生きていく。ダセエ俺に、ついて来てくれるポケモンや部下、仲間がいるからな」
俺は決して善人じゃない。でも、筋の通った生き方がしたい。忘れていた夢を思い出させてくれたおっさんの為にも、取り繕った生き方はしたくない。
「カイト君は、強すぎますね」
「アンタも同じだろ?」
「え?」
「アンタが這い上がって、作り上げたガラルがある。アンタの作ったガラルを愛する住民がいる。ポケモンがいる。アンタについて来た、部下や仲間がいる。ジムリーダーやチャンピオンも、アンタを信じていたから、誇りを持って戦っていたんだろ」
ローズはきっと、英雄になれた男だ。もしくは、チャンピオン達の様に、英雄を導く存在の筈だ。本当なら、今直ぐ手を伸ばしたい。ガラルのポケモンリーグを一代で世界のエンターテイメントに変えた男の力を、俺に貸して欲しい。でもきっとコイツは、罪を償うまでテコでも動かない。そういう奴だ。だから、せめて自分が積み上げて来たものを、信じてほしい。
「3日後、アンタは一時的にここを出られる」
「え?」
「ダンデから、罪を償う前に、ガラルの未来を見ていけとの事だ」
「ガラルの、未来」
ダンデから預かった言葉。善人過ぎるガラルのチャンピオンは、ローズを犯罪者として言い切ることが出来ずにいた。どこか不器用なローズに、今までの全てが間違いではなかった事を、証明したい。その為に、ガラルの未来が変わる瞬間を見に来て欲しい。それがダンデの意思だ。
「ファイナルトーナメント決勝。ユウリちゃんとダンデの試合だな」
「彼は私に、私が身勝手に否定した決勝戦を見に来いと?一体、何故」
「3日後に全て分かる」
新たに誕生した英雄が、新時代のチャンピオンになるのか。それとも、ガラル最強の男が、英雄を跳ね除けるのか。どちらにせよ、未来は変わる。
「……」
何も言わなくなったローズに背を向ける。思えば、ローズもまた、俺にとっては恩人だった。
『君はいい目をしていますね!どうですか、ジムチャレンジ、参加してみませんか?私が推薦しますよ!』
ガラルでの思い出作りの為だった。絶対勝ちたいとか、チャンピオンになりたいとか、そんな事は考えていなかった。
『はい!これでカイト君の8勝だね。2人とも連敗記録伸びて来たねえ〜』
『ああ〜、疲れた!でもまあ、俺様負け続けても様になるし』
『無様ですね』
『なんだと!?』
『やめなよみっともない』
『カイト!もう一度やろう!!』
『いやダンデ君何言ってんの!?もう夜だよ!!』
この地で、個性的なみんなと出会った。正直、この時が俺の人生で1番輝いていたかもしれない。
『カイトさん!この野菜、カレーに使ってくれ!』
『カイト!あんたちゃんと食べてんのかい!?ほら!これ弁当作ったから!』
『あんた暗いね。格好だけでも派手にしな』
『立ち止まる事を否定しないよ。でも、自己嫌悪に陥るのなら今直ぐやめるべきだ』
『見てください。妹です。可愛いですよね?あ、イエスしか求めてません』
『おい地味顔!今日も俺様が態々勝負しに来てやったぞ。さっさと準備しろ』
『ねえカイト!カジリガメってブラッシングしても意味ないのかな〜?』
『あ!カイト君!見て見て、お婆様の研究所から借りて来たんだ!ちょっと意見聞かせてよ!』
『カイト、俺は君のライバルになりたい』
初めて来た土地で、挫折した俺に手を差し伸べてくれたのは、出会ったばかりの人達。俺が彼等の為に何かしたわけでもないのに、何故か必死に声をかけてくれた。何でかなんて、今更聞けない。でも、彼等と俺を巡り合わせてくれたのは、この人しかいない。
「ローズ委員長、最後に1つだけ言わせてくれ」
「……」
背を向けたまま歩き続ける俺は、ローズとの距離がどれだけ広かったか分かっていない。それでも、なるべく大きな声で、あの日のローズに向けて言葉を絞り出す。
「俺を、ジムチャレンジに推薦してくれてありがとう」
俺の言葉が彼に届いたかどうかは分からない。それでも確かに伝えた。あの日の、ガラルの為に汗を流し続けたローズ委員長に。俺にガラルの良さを教えてくれた時のローズ委員長に。
「本当に、ありがとう」
彼の罪は消えない。でも、彼の作り上げたガラルが俺は好きだ。
「行こっか、イーブイ、ゲンガー」
「ブイッ!」
「ゲゲッ!」
だから今は、愛するポケモンとガラルでの思い出を作ろう。失われた4年分の思い出を、少しずつ埋めるために。
「ごめん、その前に少し調べたい事あるからちょっと待ってて」
「ブイ?」
「ゲン?」
ガラル地方 ラウンジ おすすめ
ゲンガーがカイトさんの袖や指を掴む癖。これは顔が強張ったり、感情が乱れた時にゲンガーが起こす行動。イーブイがニンフィアに進化したら、ゲンガーみたいにリボンをカイトさんの腕や指先に絡ませて欲しいな〜。
小話《涙の無い別れ》
「ブラッキーもすっかりお姉さんだね」
「まあね。これでも1番の古株だから」
「うん、そうだよね。君がいるなら安心だ。これからも、カイトとみんなを、よろしくね」
「ええ、また会いましょう。カビゴン」
「パチ姉さん。また、会えなくなっちゃうの?」
「もう〜!そんな情け無い声出さないの!アタイが居なくても今までカイトを守ってたんでしょ?なら、アタイが居なくても平気よ!」
「でも、いや、うん。そうだよね。私、ダーリンの為にも頑張る!」
「そうそう!カイトの隣に立つアタイ達は、常に笑顔が大事よ!」
「しばらく見ぬ内に、一段と美しくなったな」
「うふふ、嬉しいけど、私カイト以外の男に興味はないの」
「それは残念だな」
「探しもの、見つかって良かったわね」
「ああ、これからは、またカイトの為に戦える」
「よろしくね」
「任せろ」
「1億年前のポケモン。初めて見たが随分カッケェなあ!」
「そうか?お前さんも中々強そうだな。まあ、カイトと共に旅をしていたならそれも当然か!」
「おう!でもよお、お前古代の王だったんだろう?人間のポケモンになる事に抵抗は無かったのか?」
「最初はあったが、今はもう気にしておらん!過去など捨てた!ワシはカイトと共に
「だははは!!爽快だぜアンタ!また会えるのが楽しみだ!!」