居酒屋で出会ったおっさんと軽いノリで作った組織 作:エドモンド橋本
「グシャ!」
「グソクムシャあ!!」
地面に叩き潰されたグソクムシャ。ピクリとも動かない。正直ここまでのポケモンとトレーナーが居たとは。
「おつかれ、グソクムシャ」
グソクムシャをボールへと戻し、俺はアズマさんの方へと向き直る。この辺一体、更地にならないと良いけど。
「最後、君の出番だ」
「サーザー」
サザンドラ。ゲンガーと共に数日前の事件から、俺の元へ戻って来たポケモン。
「サザンドラ、悪の波動」
「スァ〜、ザァ!!」
サザンドラの三つの口から同時に放たれる強烈なエネルギー。暗黒の波動が一直線にケッキングに向かって突き進む。
「ケッ!?ヌー!!」
真正面から悪の波動を受け止めるケッキング。その場に踏み止まったが、明らかに表情が変わった。今までで1番ダメージを受けている。
「普通吹っ飛ぶんだけどな〜」
「ザ〜」
サザンドラも少し驚いた様子。こんな怪物と対峙したのは始めてだ。レッドのカビゴンの耐久を有に上回っている。
「ケ〜」
「サ〜ザ〜」
睨み合うケッキングとサザンドラ。険しい表情で腕を組むアズマさんと、どうしたものかと顎に手を当てる俺。
「厄介だなぁ……」
「ケ〜ケ〜」
余裕綽々といった表情でこちらを見るケッキング。だがその眼は先程までの気怠げなものではなく、明確に闘志を宿していた。そんな視線を受けながらもサザンドラは怯まず睨み返す。互いに睨み合いが続く中、先に指示を飛ばしたのはアズマさんだった。
「ケッキング、ドレインパンチ!」
「ケッ!」
ケッキングはサザンドラとの距離を詰め、拳を放った。先程のスピードと威力ではない。力任せではなく、的確で無駄のない動き。
「サザンドラ避けるんだ!」
「ケッ!」
「ザー!」
しかし、避けきれずサザンドラの翼に拳が直撃する。地面に落ちたサザンドラ。流石に効果抜群の打撃を受けて苦しそうだ。対してケッキングは回復したのか表情に余裕がある。
「大丈夫か!?サザンドラ!」
「サッ〜!」
大丈夫だと言いたげに咆哮を上げるサザンドラ。ケッキングの強烈な一撃にも屈せず体勢を立て直す。そして再び攻撃態勢に入る。その表情からは怒りや憎しみ等負の感情は一切無く純粋な闘争心だけが窺えた。
「ケッ!ケッ!」
「おいおい、どんだけ機敏なケッキングだよ」
まるでエビワラーのようなファイティングポーズでステップを踏むケッキング。多分地上に2体といないなあれは。
「うちのケッキングも普段は気怠げですよ。この状態は本物の強者にしか見せません」
「それは光栄です」
でもこのままだと不味い。なんとか動きを止めないと。
「サザンドラ、竜の波動!!」
「サーザー!!」
「ケッ!?」
サザンドラの竜の波動はケッキングの腹部に直撃した。初めてケッキングの顔に苦痛の色が浮かぶ。
「まだだ!連続で撃ち続けて!!」
「ザーザザ!!」
俺の指示通り連続で竜の波動を放つサザンドラ。これで多少はダメージを与えられてるはず。高火力の一撃を何度も受けたケッキングは後退し、アズマさんの真正面まで退がった。
「……」
アズマさんがケッキングに向かって何か呟いた。恐らく小声で指示を飛ばしているのだろう。
「サザンドラ、すぐに動けるようにしておこう」
「サー」
アズマさんの指示を聞き終えたのか、ケッキングは明らかに顔つきが変わった。先程までの余裕などとうに無くなっている。完全に戦闘体勢に入ったようだ。
「……ケッ」
一瞬だった。一瞬でケッキングはサザンドラとの距離を詰めて翼を掴んだ。
「サザッ!?」
「サザンドラ!!」
「ケ〜、ケッッ!!」
翼を掴んだままケッキングはもう片方の腕を振り下ろした。響き渡る轟音と立ち込める砂煙の中から、何とか脱出する事が出来たサザンドラ。俺はすかさずサザンドラに指示を飛ばす。
「サザンドラ!竜の波動!」
「サ〜、ザッ!!」
「ケッ!」
砂煙が晴れてケッキングの姿が視認出来た瞬間、サザンドラは竜の波動を放つ。青白い光は認識が遅れたケッキングの左胸に突き刺さる。
「グケッ!?」
「ケッキング!」
明らかに顔色が変わるケッキング。しかしそれも束の間だった。すぐに体勢を整え再びサザンドラに向かって行く。
「サザンドラ!もう一度!」
「ザ〜!」
エネルギを溜めて直ぐに放出しようとするサザンドラ。しかしそれよりも早くケッキングは接近しサザンドラを右手で殴り飛ばし地面に叩きつける。
「サッ〜〜!」
苦痛に満ちた叫びを上げながら地面を転がるサザンドラ。何とか体勢を立て直して身構える。
「……」
「……」
睨み合う両者、お互い既に身体はボロボロになっていた。
「ここまで傷だらけのケッキングを見るのは初めてです。流石はカイト様」
「俺もこんなに追い詰められたサザンドラは見た事ない。凄いね、アズマさん」
「お褒めに預かり光栄です。最後に私のケッキング最大の一撃をお見せしましょう」
「ケッキング!ギガインパクト!!」
「ケッキアアアア!!!」
アズマさんの声に合わせてケッキングは大きく吠えると、強く地面を蹴って突進を始める。ケッキングの姿が見えなくなるほどのエネルギーを纏った突進に逃げ場などなかった。
「サザンドラ!流星群!!」
「ザッーーー!!」
サザンドラの雄叫びと共に夜空の星々が流れ始めた。一つ一つが鋭利に尖った隕石となってケッキングに襲いかかる。
「ケッ!!」
ケッキングは全身に力を込め腕をクロスさせて防御しながら突撃を続ける。しかしそれでも隕石による衝撃で体が揺れる。次々と降り注ぐ隕石の雨の中ケッキングは力強く前進していった。やがて最後の一つを打ち破ると勢い良くサザンドラに向かって走り出す。
「ケェエエ!!」
サザンドラはその巨体を活かしてケッキングを迎え撃つため6枚の翼を広げた。二匹の巨影が交差する。
「サ〜!ザ!!」
「ケ〜〜〜!!」
激しい衝撃音が響き渡り土煙が舞い上がる。視界が不良になり二匹の姿を確認できなくなった。
「……」
「……」
やがて視界が晴れてくるとそこには横たわる二匹の姿があった。
「ッケケ」
「ッケッキング!」
ケッキングは意識を保っているが、ギガインパクトの反動により立てずにいた。改めて思う。こんなポケモンが居たとは、と。今までサザンドラの流星群を受けて耐えれたポケモンはいない。その上攻撃を受けながら突撃を続けるタフネスとメンタル。そんなケッキングを育て上げたアズマさん。今回、トレーナーとしては俺の負けだ。それでも、俺のポケモンは、負けてない。
「サ、ザッ」
「ッ!そんな、まさか」
アズマさんの驚いた顔。俺の視界から彼女の表情を遮る、黒い6枚の翼。傷だらけでボロボロの姿に思わず息を呑む。それでも。
「サザンドラ」
昔、姉さんが言っていた。勝負において、どんな瞬間、どんな状況でも、手を抜かず全力を出し切る事が、相手への最大の敬意だと。動かなくても力強い目をしているケッキングを見て、再認識した。
「破壊光線」
サザンドラが放つ今日一番の光に包まれる中、清々しい表情のアズマさんとどこか嬉しそうなケッキング。本当に手強かった。
次回予告?
「弱い、弱い、弱すぎる。これでは、守れない。強者達が戻って来た今、これでは。大切な貴方を」
《別れ》
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