居酒屋で出会ったおっさんと軽いノリで作った組織 作:エドモンド橋本
「サザンドラ!竜の波動!」
「サーザッー!!」
サザンドラから放たれた衝撃波はアズマさんの最後の1匹途中交代のペリッパーに直撃した。
「ぺ、ぺら」
「……戻りなさいペリッパー。お疲れ様」
ペリッパーをボールに戻したアズマさんはボロボロのフィールドを歩いて俺の方に向かって来た。紳士な俺はアズマさんの元へと素早く近付く。
「やはり素晴らしいお力でしたカイト様。この度はありがとうございました」
「あ〜、こちらこそ」
勝負を終えた俺とアズマさんは握手を交わす。こんな美人な女性から笑顔で握手されるのは嬉しいが、これ、俺の力必要か?彼女1人で何とかなりそうだけど。
「カイト様のポケモン達を回復させてください。やはりみなさんとても強くて素晴らしいポケモンでしたね」
そう言って俺のポケモン達を回復してくれるアズマさん。そんな彼女を見つめながら考える。彼女の本当の目的、バトルキングダムに貸し出す人材の厳選、監視役、彼女のケッキング、彼女とデートするならどこが良いか。ダメだ、まとめる必要がある情報があまりにも多すぎる。
「痛っ、何よ相棒ちゃん」
「ラッ」
足を噛まれたかと思ったら相棒がまた不機嫌そうに見つめて来た。そんな彼女の頭を撫でながら少しずつ回復されているポケモン達を見る。みんなのことを心配そうに近寄るイーブイとゲンガー。そんな2匹を優しそうな顔で見つめるアズマさん。最後に倒れたグソクムシャの回復を終えると俺の方に歩いて来た。
「これでみなさんの治療が完了しました」
「ありがとうアズマさん」
「いえいえ、どういたしましてです♪」
治療のお礼を伝え終わった時、彼女の端末に連絡が入った。俺に軽く一礼し少し離れた場所で通話を始めた。男かな?相手男かな?痛っ、だから噛むんじゃ無いよ相棒。
「はい、わかりました。失礼します。……ふぅ、カイト様申し訳ございません。まだ今後の話もしたかったのですが、エリア拡張工事の件で呼び戻されまして。後日改めて連絡させてください」
「ええ、大丈夫です!今度はゆっくり食事でも」
「是非!それではお忙しい中時間を取らせてしまってすみません。この度はありがとうございました」
アズマさんは軽く会釈をして去って行った。アズマさんのいなくなったバトルフィールドを見回して俺は大きなため息を吐いた。
「それにしても凄い人だったなぁ」
「ルー」
「ゲゲ〜ン」
「イッブ」
アズマさんの圧倒的な強さを思い出して思わず身震いする。もし俺がポケモン達の力を過信していたらと思うとゾッとする。
「相棒、どう思った?」
「ブラッキ」
軽く首を振る相棒。顔を見るに、余裕はなさそうだ。流石にあのケッキングを相手にするのは厳しそうだ。俺は地面に腰を下ろしてアズマさんと自分の戦闘を思い出す。正直反省点しかない。ポケモン達は精一杯戦ってくれたが、俺がもっと的確に指示を出せてたらきっともっと容易く勝てたのではないか。でも今回改めて知れた事もある。それは俺の力量不足が原因であること。これは改善すべきことだ。まずはアズマさんに感謝しよう。それから反省点を洗い出そう。俺はメモ帳を取り出してペンを持ち紙に書き出す。
・ポケモン達への指示が不十分
・ポケモン達の個性を活かせていない
・相手の力量を読むのが甘い
・アズマさんが好みすぎる
とりあえずこんな感じだろうか。これを見ると色々やらなければいけない事が山積みだ。まあ、急ぐ必要はない。一つ一つ片付けていこう。
「さて、みんな頑張ってくれたし、今日はキャンプ飯にするか」
俺はワイルドエリアに移動して食事の準備を始めた。ガチゴラスは薪を集めてくれて、ファイアローは火を起こしてくれる。ポリゴンZはテントを立ててくれて、ハニーは料理を手伝ってくれ、サザンドラは周囲の警戒を、バトルの後だと言うのに、みんなは働き者だ。イーブイはみんなの手伝いをしようとしているが、可愛らしく足元を走り回っているだけになっている。相棒は寝ている。
「ロップ!」
「サ、サシャ」
ハニーの強く怒った声に目を向ける。そこには、下を向いたまま立ち尽くすグソクムシャがいた。彼は普段なら率先して動いて、薪割りなどこなしてくれる。そんな彼が何故か棒立ちしている。その理由は何となく理解している。アズマさんとの戦闘で、ヌケニンに効果抜群の攻撃を出せず交代、あのイレギュラーなケッキングのパワーになす術なく戦闘不能。正直仕方のない事だと思う。グソクムシャは悪くない。俺の判断が悪かった。それでも責任感の強い彼には思うところがあるのだろう。ハニーもそれを理解して、切り替えろと言ってるのだろう。彼女は周囲の変化に敏感だから。とは言えこれは俺の仕事。ゆっくりと俺はグソクムシャに歩み寄った。
「グソクムシャ」
俯いたまま何も答えようとしない彼に、俺は手を伸ばした。
「サシャッ!!」
拒絶。この手が彼に届かなかったのはそれが答えだろう。強く弾かれた手は勢いのまま後ずさる程の反動。
「ロップッ!!」
「ブラッ!!」
「やめろハニー!!ブラッキー!!」
俺の手が弾かれたのを見たハニーと相棒はグソクムシャに飛びかかろうとした。慌てて声を上げると、2人はピタリと止まってこちらを向く。
「いいんだ。ごめんなグソクムシャ。気にしなくていいから。今日はゆっくり休んでくれ」
俺はそれ以上何も言わず皆と一緒に料理を作り始めた。その日の食事は全員がいつもより口数少なく、重たい雰囲気が漂っていた。悲しそうなイーブイを楽しませる為に、途中からガチゴラスとファイアローが必死にはしゃいでいた。俺もそれに乗っかって見たが、ハニーと相棒の顔色は変わらなかった。食事を終えて就寝時間になるとそれぞれテントに入っていく。相棒は珍しくハニーのテントに潜り込んでいった。グソクムシャは一人夜の闇を見つめていた。
翌朝
「行ってしまうのか?グソクムシャ」
「……サシャ」
静かにテントを出ると、どこかへ歩き始めようとしていたグソクムシャを見つけた。恐らく俺から離れて修行に出るつもりなんだろう。その背中に向かって声をかけると彼はこちらを振り返る。
「サシャ……」
申し訳なさそうに頭を下げる彼。俺はゆっくりと近づいて行きそっと抱き締めた。きっとたくさん悩んだんだろう。誰よりも向上心があって、負けず嫌いで、俺の事を思ってくれているから。
「行ってらっしゃい。帰ってきたくなったら、いつでも帰ってきていいからな」
「……サシャ……」
涙を流す彼を優しく撫でてやる。泣いている姿は、コソクムシの頃のままだ。しばらくすると彼は静かに歩き出した。その後ろ姿を見送りながら思う。いつまで経っても別れは寂しいものだ。グソクムシャは強い。それでも、心配だ。彼は1人で大丈夫なのか。そう思った時、グソクムシャの隣を歩く白い何かが見えた気がした。
「ああ、そうか。大丈夫だよな。ここには、君がいるから」
俺は見えなくなるまでグソクムシャの背中を見送った。それから俺はダンデを始め、ガラルの知り合いに、俺のポケモンがワイルドエリアにいる事を伝えておいた。テントに戻ると、みんな何かを察した様に悲しげだった。特にハニーはかなり落ち込んでいて、俺が抱きしめて頭を撫でても、中々機嫌は治らなかった。ゲンガーもそうだけど、この地での別れがトラウマになっているんだろう。それでも少しずつ調子を戻しつつあるハニーに相棒は珍しく寄り添っていた。
「ん?」
「ブイ?ブーイ?」
視線を下に向けると、まるで誰かを探す様にイーブイが周りをトコトコ走り回っている。
「大丈夫だよ。あいつは強い奴だから」
俺はイーブイを抱き上げてみんなに言った。
「きっと、大丈夫だ」
小話《カイトさんとグソクムシャ》
カイト「グソクムシャ、俺は女性が好きだ」
グソクムシャ「サ、シャア(は、はあ)」
カイト「特にこう、豊満な、女性が」
グソクムシャ「サ、シャア(は、はあ)」
カイト「グソクムシャ、お前も男だろう?どんなメスが好きだ?」
グソクムシャ「…………サシャ、サシャア(気の強いメスを、押し倒し)」
イーブイ「ブイ?(なんのはなししてるの?)」
カイト「何でもないよ〜」
グソクムシャ「サシャ(その通りだ)」
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