居酒屋で出会ったおっさんと軽いノリで作った組織   作:エドモンド橋本

73 / 133
神話になった男

 

 

 「君は、何者だ?」

 

 「そんなに面白いもんでも無いよ。ただ、ちょっと運が良いだけの犯罪者だ」

 

 本当は一般人って言いたい。でも言えない。最近悪行が酷いから。

 

 「そうか」

 

 「え?それだけ?聞いてきたんだからおっさんも何か言えよ。アンタ何者だ?こんなとこに捕えられているとか普通の人間じゃねえだろ」

 

 何かヤケに身体がデケエけど、本当に普通のおっさんな訳ねえよな。あのフラダリとかいうカエンジシのおっさんに捕まるとか、何したんだよ。

 

 「私は3000年前、この地の王だった」

 

 「……えっ!?マジで!?てかおっさんがこのカロスを滅ぼした訳!?てことはおっさん神話の人間じゃん!!」

 

 え、俺より先に神話になった男おるやん。目の前に。マジかこれ。

 

 「君は、信じるのか?」

 

 「え?ああそうか」

 

 まあ、ぶっ飛んだ話だし、普通なら疑うわな。でもまあ。

 

 「じゃあ、おっさんさ、俺が神様に会った事があるって言ったら信じる?」

 

 「……」

 

 「悪いけど、俺も大層ぶっ飛んだ経験してるんだわ。アンタのその発言、疑わねえよ。それに、その方が面白い」

 

 まあ、大体理解出来た。多分このおっさんが、フラダリの言ってた最終兵器に関する何かを持ってんだろ。だからフラダリはここに閉じ込めた。あの現実主義みてえな男がこんな厳重に捕らえてんだ。嘘では無いだろ。

 

 「なあ、おっさん。あの神話、おっさんが怒り狂ってカロスを滅ぼしたって話だけどさ、アンタ一体、何にキレたんだ?」

 

 聞けることは聞いておこう。ここには生きた神話がある。なら、話をしなきゃ損だよな。

 

 「……私は、大切な、大切な、愛しきポケモンを、戦争に利用された」

 

 「……」

 

 目の前の男から語られたのは、愚かで、醜い、人間の身勝手な事情に利用されたポケモンの末路だった。当時愛していたフラエッテを戦争で亡くした彼は、ポケモンを蘇生させる「キカイ」を作り、生き返らせた。それでも、世界に対する怒りと悲しみは収まらなかった。 AZは、キカイを最終兵器に変え、破壊の神となる。そして、最終兵器により、カロス地方を一掃し戦争は終わった。

 

 「だが、フラエッテは、私の元から去っていった」

 

 最終兵器に利用されていたのはポケモン達の生命力だった。何故、フラエッテがAZの元から去ったのか、簡単な話だ。誰だって分かる。

 

 「なあ、AZ」

 

 「……何だ?」

 

 「もう一度、フラエッテに会いたいか?」

 

 俺は真っ直ぐAZの目を見る。この男は、3000年もの間、どんな苦しみを抱えて生きてきたのか。後悔か、懺悔か、それは俺には分からない。恐らく、絶え難い苦痛だったのだろう。そんな彼にとって希望となるのは、愛したフラエッテの存在だ。

 

 「勿論だ。だが、それは叶わない」

 

 「いや、俺が叶えてやる」

 

 「何?」

 

 この男は遠回りしすぎた。簡単なんだよ。フラエッテに会う方法は。

 

 「お前が愛したフラエッテは、お前の事を愛してる。お前が本来の思いを取り戻せば、きっと戻って来る」

 

 「思い、それは」

 

 「お前と同じ過ちを犯そうとしているバカを止めるんだよ。そして、俺に協力しろ」

 

 「協力、君は一体何をしようとしてる?」

 

 AZからの問いかけに、俺はニヤリと笑みを浮かべて返す。

 

 「俺はこの世界の王になる。そして、ゆくゆくは神話になる。その神話に、お前の存在があればより面白い。3000年前の王と世界の王。その2人の出会いはまさかの牢獄。2人はここからどうやって世界を変えるのか。ああ、良いシナリオだ」

 

 俺の話を聞き終えたAZはこの位置からでも分かる程、目を見開いていた。

 

 「君は、変わった男だな」

 

 「変わってなきゃ生きていらんねえよ、こんな面白い世界」

 

 「本当に、フラエッテに会えるのか?」

 

 「約束する」

 

 「君は、この世界を、変えてくれるのか?」

 

 「お前とフラエッテが、また笑える世界に変えてやる」

 

 AZは一度俯くと、ゆっくりと顔を上げた。俺を見つめるその目には、覚悟の火が灯っていた。

 

 「なら、私を連れて行ってくれ」

 

 「引き受けた」

 

 俺の返事と同時に激しい轟音が鳴り響く。ぎゃー、というしたっぱ連中の悲鳴と共に姿を現した俺の愛するポケモン達。ああ、やっぱアイツらやっちゃったか。多分洗脳行為でもしようとしたのかな?モンスターボールへの外部からの強制的なハッキング行為は出来ない様にアクロマに改造してもらったからな。にしてもアイツ有能だな。流石サカキが連れてきただけあるわ。

 

 「ハニー。助けてえ〜、捕まっちった」

 

 「ルーー!!ロップ!!」

 

 綺麗な回し蹴りで破壊された鉄格子。そのままハニーに抱きしめられるが、前よりも優しいハグに思わず笑みが溢れる。ああ、愛されてんなぁ。しかし、相棒の鳴き声によってハニーは直ぐ離れた。何か最近、相棒がウチのメンバーのリーダーになりつつある。前までは特に興味なさそうだったのに。何でだ。

 

 「グソクムシャ、ちょっとこの縄切ってくれる?」

 

 「シャ」

 

 「うし、サンキュー」

 

 グソクムシャに縄を切ってもらい、完全にフリーになった。さて。

 

 「ハニー、その鉄格子も破壊してくれ」

 

 「ロップ♡♡♡」

 

 AZのいる牢屋の鉄格子もハニーに壊してもらい、俺はそのまま中に入る。

 

 「さて、行こうかAZ」

 

 「ああ、よろしく頼む」

 

 俺はAZと握手を交わす。てか、やっぱコイツデカくね?

 

 

 

 

 




つぎは一旦閑話を挟む予定です。少々お時間下さい。本当に頭のおかしい作者で申し訳ございません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。