居酒屋で出会ったおっさんと軽いノリで作った組織 作:エドモンド橋本
Mr.K。何度見てもその文字がWPC追加参加者リストから消えてくれない。え?何でよ?
「ヒカリとNが登録したみてえだな」
「Nはともかく、ヒカリ嬢には我々も強く出れない部分がありまして。申し訳ございません」
腕を組んで楽しそうな顔をするアオギリと、深く頭を下げるマツブサ。相変わらず真逆な性格の2人。有能さが増したが、2人の性格や関係性に変化はない。
「まあお前らが悪いとは言わないけど、ヒカリちゃんねえ〜」
あの子最近サカキ以上に発言力増して来てんな。恐ろしいよ。
「てかよおダンナ。アローラ、ちとマズくねえか?」
「そうだよねえ〜」
アオギリの言う通り、アローラでの俺達の活動は正直難しい。アローラの伝承について調べる事自体は難しくないが、集まる面子がマズイ。
「各地方のチャンピオンに、フロンティアブレーン、四天王に腕利きのジムリーダー、名の通ったトレーナーもいる。国際規模だから警備も厳重。指名手配犯もチェックしてるだろうな」
つまりマツブサやアオギリはアローラで行動する事が難しい。いくらシロナさんの協力や、カロスでのパキラさんの情報操作があっても、流石に厳しい。ならば、一切顔の割れていない安全なメンバーで行動するしかない。
「サファイアとルビー、それから念の為プラチナも今回は待機にしよう」
「それが良い」
「承知しました」
「……」
納得した様子の2人。しかし、部屋の隅にいるサカキは追加参加者リストを見たまま動かない。どうした?生き別れの兄弟でもいたか?
「む、すまない。よく知る名前があってな。今回は私も待機した方が良いようだ」
「そうか、ならゆっくり休んでな」
ロケット団よりも昔の過去に触れるつもりはない。アイツが俺の過去を詮索しない様に、俺も下手に関わろうとは思わない。俺とサカキは今のままで充分だ。無駄な干渉は亀裂を生む。アイツが俺を信頼しているならそれで良い。俺もサカキに背中を任せるだけだ。
「それじゃあ、俺はウシオとイズミに伝えておくぜ」
「私もホムラとカガリに今回の件について説明しておきます」
「ああ、よろしく」
アオギリとマツブサが部屋から出ていく。その後を追う様に、いつも以上に顔付きが険しいサカキが出口に向かう。
「無理すんなよ」
「……ああ、すまないが少し休ませてもらう」
「ごゆっくりどーぞ」
何とも言えないサカキの背中を見送り、俺は椅子の背もたれに寄り掛かる。アイツ大丈夫かね?まあ、それよりも。
「アローラか」
今回のWPCよりも俺が気になるのはとある男についてだ。俺がバトルで敗北したのは10人もいない。姉ちゃん、シジマさん、ヤナギさん。この3人には既にもう勝利している。まだ再戦していないが勝てる自信があるのは父親とオーキド博士。今考えれば、勝てたけど次勝てるか分からないのはレッドにダンデ。俺の目的の邪魔になるのはレッドだけだと思っている。ただ、一切手も足も出ず、完膚なきまでに敗北したのは1人だけ。アローラで出会ったフードの男。どこか俺に似た雰囲気を持ったその男のデスバーンに、ポリゴンZ、ハニー、相棒が蹂躙された。今なら勝てるのだろうか?分からない。ただ、あの男は俺の邪魔をする様には思えなかった。なら放っておいて良いのではないか。
「でもなあ〜」
気になる。あの男が何者で、何の為に俺にバトルを仕掛けて来たのか、何で勝利したのに、あんなに悲しげな雰囲気だったのか。
「マジで」
誰なんだよお前。
「俺の方が強い。なのに、何で俺は1人なんだよ」
フードを被ったその男の声は、震えていた。
「同じ、俺なのに」
アローラ編は長くなりそうです。