河合荘のラブコメ狂い 作:2期
「恋愛って…いいな…」
ある日、彼は運命の衝撃に出会った
✿ ✿ ✿
桜も咲いていない春、進級の季節がやってきた
今日から俺も立派な中学2年生だ
にしても…
ーガヤガヤー ーワイワイー ーチュドンチュドンー
…1部、教室には不適切な音が混じってるけど多分気のせいだろう
「変わんないなぁ」
読んでいた本を閉じながらそう呟く
同じようなメンバーだから仕方ないのかもしれないが、1年生の頃と対して変わらない
そりゃ完璧に同じって訳でもないが、クラスの半数以上は知った顔だ
友達が出来るかどうかなどの不安に囲まれていた1年前と比べると決して悪くはない環境なのだが……
ードウシヨウ…ー
「つまんないな…」
やっぱり人間は刺激を求める生き物だからだろうか、いざ安定した環境に居ると少し物足りなく感じてしまう
まぁそんな事を思っていても仕方ない
1年生の頃のクラスじゃなかった奴らにでも話しかけてみようかな
ーハナシカケテミタリトカー
にしても後ろの方の声…気になるな
何言ってるかは聞き取れんが何やらボソボソと聞こえてくる
体調でも悪いのか? 便秘とか?
ちょうどいい 新クラスでの俺の初スピークの相手になってもらおうか
そんな事を考えながら振り返ると……
空気中に花を咲かしている男子が机に頭をグリグリと押し付けていた
「は?」
念の為目を擦り、もう一度見てみる
うん 花だ。 俺のこれまでの人生経験によると間違いなく花だ
その男子の周りに様々な花が浮かんでいる
だが、意味が分からん。なんでこんな所に、無駄に種類豊富だし。
コスモスに百合、鈴蘭にラフレシア……ラフレシア?!
「ラフレシアは場違いじゃないか…これ…」
思わずそう呟いてしまう。 すると
「ガバッ!!」
まずい 花咲かじいさん(仮) が起きた
そこまで大きい声じゃなかったが気づかれたみたいだ
「ギロッ」
………なんか凄い目で見てくる
もしかしてラフレシアで地雷踏んだ? だとしたら広範囲爆撃すぎないかこいつの地雷
焦って言葉が出てこない
「あの…えっと…
「頼む!一生のお願いだ!おれとあの子が話せるように手伝ってくれ!」
「え?」
✿ ✿ ✿
「つまりあそこの可愛い子に一目惚れしたと」
クラスの女子の集まりにちらっと目を向けた後に俺は目の前の席の奴に目を向けて話す……厳密には後ろの席の奴だが俺が後ろを向いているから目の前ってことで良いだろう。
「はぁ、その、恥ずかしながら…」
と恥ずかしそうに俯く花咲かじいさん(仮)
さっきまで周りも漂っていたラフレシア軍団は無くなっている
なんならこいつの身体に物理的に吸い込まれていった…怖い…
今度先生に人間に花は収納出来るのか聞いてみようかな
変人扱いで終わる気しかしないが…
にしても新クラス初日から恋愛事とは、正直面倒くさい…適当でいいか
「よし!なら告ってこい!レッツゴー!」
「さすがに急すぎないか?! 」
あれ、流石に適当すぎたか
なら…
「大丈夫だよ。小紫さんお前みたいなやつタイプって言ってたし」
「誰だよ小柴!あの子は木下さんだ!」
これも通じないか…
てか、あの子木下さんなのか。なんか小柴ってオーラがあったんだけど…
俺の目も悪くなったもんだぜ…
「さてはお前俺の事適当にあしらってるだろ」
そんなコントを1人心の中でしていると
ジトっとした目つきで俺を見てくる花咲かじいさん(仮)
「いやー全然?ただほんの少し!ほんの少し!だけ面倒くさいなって」
「強調するなよそこを!全く隠せてないぞ!」
「隠す気ないし」
「あれよ!」
「注文多いなー山猫かよw」
「おれはお前を食う気なんてねぇよ!」
お、通じた
体育会系のオーラしか感じなかったけども、案外読書家のなのか?
「はははw 分かるんだ。 話は戻るけどなんでお前あの子の名前知ってるんだ? 一目惚れなら1年生の頃同じクラスってわけでもないだろ」
あそこの女子達もクラスの隅まで聞こえるほど大きい声で名前を呼んでなんてなかったはずなんだが…
「何食わぬ顔して盗み聞きしてきた!」
得意げにサムズアップして答えてくるなそんな事。
世が世なら全然事案だぞ。
「えっ キモ」
「おい!」
「すまん つい本音が」
「」
お、固まった。
まぁ初対面でいきなり睨まれたわけだしお互い様だろ。
「まぁ急にこんな事頼むのも悪いとは思ってるけども…」
「分かってくれて何よりだ さぁ告ってこい!レッツゴーー」
「ごめんってー」
「ごめんですむなら警察と裁判官とお母さんの説教はないんだよ!」
「ごめんですむとしてもお母さんの説教はあるべきだと思うぞ」
うわぁ!急にまともになるな!
にしてもこいつ…なかなか面白いタイプかもしれん
初めはちょっと顔が良いだけのヤバいやつだと思ったけど
「悪かったなヤバいやつで」
心も読める…だと?
やはり超能力者の類だったかこいつ
「全然顔に出てるぞ」
「あら、恥ずかしい///」
「うわっ…」
え、そんなにキツかった?
梅干し10個ぐらいに口に詰め込まれたみたいな顔してるけど
「そんな事より、手伝ってくれるのか?」
俺の今年一番のショックがそんなこと扱いされた…解せぬ
正直面倒くさいけども、なかなか面白くなりそうな予感がする
案外すぐカップル成立しそうな感じだし
だから…
「仕方ないな………良いぞ、手伝う。」
「ほんとか?! ありがとう!」
「乗りかかった船だしなー」
どちらかというが強制乗船だが、そんな事いうのも野暮だろう
なんかまた花出てるし
「俺は山岸 雫 よろしく!」
あ、名前聞いてなかった
あっちから名乗られなかったら完全に花咲かじいさん(仮)が仮じゃなくなる所だった。…………………それも面白そうだな
「俺は木槌 海 よろしく 雫」
「おう!よろしく!」
俺が名前を言ったタイミングでちょうど担任が教室に入ってきた
ベストタイミング!さすが俺だな(自画自賛)
こうして俺の新クラスでの初日は終わった。
明日からは恋愛相談役かー。
そこそこに頑張ろ…
✿ ✿ ✿
そこから1年……………………………特に何も無かった
「お前…あの時のコミュ力はどこに行った?」
「仕方ねーだろ!緊張すんだから…」
この田中 雫という男は…ヘタレだった
それも重度の
最初の1ヶ月ぐらいは自分から話しかけにいったりとかするのかな〜とかいつ頃告るんだろ〜などと気楽に考えていたけど3ヶ月になる頃には流石の俺も気づいた
こいつ…自分から全く話に行かない…
俺がそれとなく話を振ったりするとガチガチに固まりながら話に行くのだが、それだけである
挙句にはあっちから目を合わせられたのに首を瞬速で振って回避するような奴である
その割には周りに花を咲かせながら木下さんの良さを俺にずっと語ってくる
ぶっちゃけ死ぬほどめんどくさい
軽く考えていた自分を殴りたいぐらいだ
具体的にはこの1年で雫相手に鍛えた音速のストレートをみぞおちにポムっと。
とりあえずこの目の前でスライムさんもびっくりなほど机に溶け込んで沈んでるやつの復活儀式を行わないと
「はぁ…お前ってちゃんとめんどくさいな!」
「返す言葉もございません……」
「自覚あるなら頑張れよ」
「いや、今年こそはちゃんとするから!」
「今年こそじゃなくて今年しかないの間違いじゃないか?誰かさんが1年間無駄にしちゃったしな。また運よく同じクラスになれたんだぞ。あの人の進学先なんて分からないし、恐らく、いーや間違いなくラストチャンスだ」
「うぐっ」
「てことで頑張れよ〜」
発破もかけたわけだし今日の仕事は終わり!ややこしくなる前に退散するか。
ひらひらと右手を振って自分の席に戻ろうとすると雫にガシッと腕を掴まれた
なんか決意こもった目で見てくるんだけど
「なんだよ」
「駅前の店の限定プリン2個」
「よし!作戦会議だ!」
「俺がいうのもなんだけどお前ってたいがいチョロいよな。」
呆れたような顔で言う雫。 現役一目惚れ拗らせてる男には言われたくないセリフランキング上位入賞だなこれ
「栄養補給だ。他意はない。」
まったく失礼な…
「どーだか。そんな事より俺の作戦を聞いてくれ」
「えっ。ヘタレにヘタレ続けてシナシナな1年間を送ったお前の作戦を聞けと?」
「うぐっ…いや!今回は完璧のはずだ!今日からはガツガツ行くNew雫としてやっていくぞ!」
「それもう6回は聞いた」
最後に聞いたのは…春休み前だから……1ヶ月前か
ソシャゲのアップデートの頻度でNewバージョンになってるなこいつ
3回目ぐらいから全く期待しなくなったけど
…むしろ3回までは期待してた俺って仏か何かじゃないのか?
「で?そのシナシナさんの作戦は?」
「シナシナさんじゃねぇよ!作戦としては俺が木下さんの目の前でハンカチを落として
「お前が中世に産まれてたら今頃は教科書の1面を飾ってただろうな。主に愚行と愚考と愚政で」
「まじで?そんなダメ?」
全くの論外だ。
たいして関わったことのない男が目の前でわざとらしくハンカチを落とした所で持つ感情なんてキモイ一択だろう(偏見)
「ダメって言葉に謝った方がいいぐらいダメ。」
「まじか。わりと良い線だと思ったんだけどなー」
「お前の良い線は途中から有り得ない方向に曲がる最悪のあみだくじだからもう信用しない」
「辛辣!」
悲しそうなふりをしながら雫がそう返してくる
公然の事実だろうが
何『僕、ショックです!』みたいな顔してるんだ
「じゃあどうすればいいんだよ」
「そろそろ先生くるだろ。放課後にカラオケでも行って考える。」
そう言って自分の机に戻った後、俺は天井を見上げてため息をついた
はぁ…この調子じゃ今年も無理そうだな…
何か奇跡でも起きないかぎりあの2人が上手くいくことなんてなさそうだ
そんな事を思いつつも一応言った手前、無下にも出来ずに作戦を考える事にした。
✿ ✿ ✿
お、先生来てた。
しばらく考えていると気づいていないうちに先生が前に立って話を始めていた。
3年目ともなるとある程度内容も分かっているのでスルーが安定安定
恒例(3回目)の周りの席の確認タイムだ。
さっきまで雫のせいであまり周りを見れていなかったからな。
前、異常なし
後ろ、異常なし
右横、異常なし
左横、、、、、木下あり
なんと雫の想い人である木下さんが俺の左横の席だった。
名簿番号的に絶対ないはずだと思ってたんだが、このクラスのきから始まる苗字の多さ異常すぎないか?
…まぁよく考えればこれはチャンスだ。
今、木下さんからすれば雫の認識は良くてクラスの中で喋れる方の男子。悪かった場合は認知すらされてない可能性がある。
よし、俺がここで雫の存在を匂わせまくればイける!
だからね雫くん…そんな恨めしそうな目で見ないでくれ。
限定プリン2個じゃなくて1個でいいから。
✿ ✿ ✿
先生の話が終わり、自己紹介の時間が始まった。
1番の正念場だ。
よし、ここで俺がしz 「あの〜木槌くん?ちょっと出来ればお願いしたい事があるんだけど、放課後って時間あったりする?」
…………は?
なんかターゲットからこっちに来たんですけど
しかもなんて?放課後??雫の1年の集大成俺が越えちゃってないか?
とりあえず返事をしないと
「放課後…ちょっとだけなら大丈夫」
「そうなの?ならすぐすむから放課後図書室前にお願いしてもいいかな?」
「おっけー、学校終わったらすぐ行くよ。」
「ありがと!」
木下さんとの会話がちょうど終わったところで、自己紹介の時間もちょうど終わった。
今からはしばらく自由時間だ。
さて……まずいまずいまずいまずいどうしよどうしよどうしよどうしよ
。
何なんだお願いって、 怖すぎる。
告白??ないよな。俺木下さんとはほぼ初対面だし
ならなんだ?
ダメだ…全くわからん。
とりあえず雫にカラオケは遅れる事を伝えないと。
俺は席を立って雫の方に向かう。
「すまん。カラオケ多分遅れる。先行っといてくれ」
すると雫は意外そうな顔をしながら
「どした?歌うの恥ずかしくでもなったか?お前性格は悪いけど歌はめちゃくちゃ上手いから心配しなくてもいいぞ?」
などと言ってきたのでとりあえず肩を殴っておいた
そんな事、俺が1番分かってる(自分大好き)
「普通に用事だよ。 …… そんなに痛かった?」
なんか雫が肩をおさえて芋虫みたいに転がっている。
ヤダーキモチワルーイ
「お前…自分の身体能力考慮しろよ…」
「そんな事はどうでもいい。てことで遅れるから適当に歌っててくれ」
「分かったよ……早めに来てくれよ」
よし!雫にも伝えた。
後は俺にとってプラスのお願いであることを神に祈りつつ、残りの学校を消費するだけだな!
…やっぱ怖い
✿ ✿ ✿
学校が終わってしまった……
俺はいま図書室まえで木下さんを待っている。
雫はもうカラオケに向かったし、もうほとんどの奴らは帰り道だろう。
「はぁ…」
思わずため息がもれる。
正直、めちゃくちゃ怖い。
「頼むからマイナス方向でもカツアゲとかの部類であってくれ…」
そんな独り言を呟いているとパタパタという音が聞こえる
「お待たせ!急にごめんね!」
oh......頼む、神よ!オラに力をわけてくれ!
「単刀直入にいうけど…」
たのむたのむたのむたのむたのむ…
「私と」
おねがいおねがいおねがいおねがいおねがい告白とか好きな人がいるとかだけは……
「雫くんが話せるように手伝ってください!」
そう言って木下さんはうつむいてしまった
どうやらラブコメの神様とやらは実在するらしい。
勝ち確キタコレェェェェェ!!!!!!!!!!!!!!!
人間は花を収納出来るかを聞かれた理科の先生
「うん?もっかい言って?………保健室は1階の奥だよ。」