FEデインから始まる転生物語   作:乾燥海藻類

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第01話 プロローグ①

この方に師事して5年が経った。

ようやく、ようやく一撃入れられるかもしれない。

5年もかかって一撃すら入れられないの? と思うかもしれないが、普通に5年程度じゃ、多分そんなモンだぞ。なにせ俺の師は王国一の騎士だからな。

 

体格、膂力、技量、速度。劣っている条件を数え上げればきりがない。

それでも、一太刀くらいは。

額から汗が流れる。大陸北部に位置するこの国でも夏は暑いが、この汗は暑さだけのせいではない。訓練だというのに、凄まじいプレッシャーだ。

ふたつのフェイント織り交ぜて、木剣を薙ぐ。

 

「――悪くない」

 

だがそれは師の皮膚を削ることすらできなかった。

師の極意、一寸の見切りによって斬撃は空を切った。

その直後に訪れたのは、激痛だ。

 

腹部を叩かれ、俺の身体は吹き飛ばされた。

これが真剣なら、臓物がまろび出ているところだろう。

 

「参ります」

 

後ろで控えていたゼルが前に出る。

持ったのは10分ほどか。いや、10分の指導だったというべきか。

ゼルも俺と同じように壁際まで吹き飛ばされた。

 

それはすなわち、俺の番がまた回って来たということだ。

痛みはまだ残っているが、呼吸は落ち着いた。

痛くなければ覚えませぬ、ってのは誰の言葉だったかな。

 

「いきます」

 

木剣を構えて踏み込む。

何合か打ち合い、俺はまた吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、今日もきっちり3回死んだな」

「師の剣は、ますます冴え渡っているようです」

 

ゼルが端正な顔をにこりともさせずに答えた。

こいつは俺の弟弟子だ。本当の名前は長ったらしいのでゼルと呼んでいる。

不愛想だが良いヤツだ。

 

最初はかなり距離を取るヤツだなと思った。まあ俺も初めての弟弟子ということで距離感を測りかねていたが、ゼルも同じだったのだろう。俺の立場もあって、接し方を考えていたのだと思う。

最初は食事も一人でとっていたが、最近は気を許してくれたのか、結構付き合ってくれるようになった。

 

ゼルは非の打ち所がない青年だし、最近は腕もメキメキ上げて、いずれは王国を代表する騎士になるのは間違いない。

強いて欠点を上げるなら、ユーモアが足りないところか。

 

「じゃあ完敗に乾杯!」

「……祝杯を上げる理由にはなりませんが」

 

ゼルは苦笑しながらも、木杯を掲げた。

ちなみに、こいつの木杯に入っているのは酒ではなく茶だ。酒は飲まないらしい。

まあ俺もこの世界の酒はあまり好きじゃないがな。どうしても前世に飲んだ酒の味と比べてしまう。上等な酒はまだマシなんだが、あんなものをカパカパ飲んでいてはすぐに金が尽きる。まあ俺の場合は、金うんぬんより評判が下がることの方が面倒だがな。

 

「そういえば、王子は半獣狩りから逃げているという噂を耳にしましたが、本当でしょうか。王子ならば半獣程度に遅れは取らないはずですが……」

「まあ、そうかもしれんな。感情的な問題だよ。一方的に虐げるのは趣味じゃない。相手がラグ、んん半獣といえどもな」

「……そうですか」

 

納得したのか、ゼルは食事に手をつけ始めた。

しばらく沈黙が続き、ふと、ゼルが口を開いた。

 

「王子は……【印付き】についてどう思われますか」

「印付き? 確かベオクと、半獣の混血だったな。女神の定めし理を犯した不浄の存在、だったか」

「…………」

「くだらんな」

「……今なんと?」

「くだらんと言った。女神が何故そんな掟を作ったのかは知らんが、印があろうとなかろうと、そいつはそいつだろう。何が変わるわけでもない。それに、惚れたんならベオクだろうがラグズだろうが関係ないと思うがな。愛の前には些細なことだ。というのはちょっとクサかったかな」

 

興奮してラグズと言ってしまった。まあ誰にも聞かれてはいないだろう。というか子供ができることにちょっとビックリだよ。遺伝子とかどうなってんだ。遺伝子が1%違えば子供はできないって聞いたことあったけど、聞き間違いだったのだろうか。

そういえばウマとロバを掛け合わせたラバとかいたな。どっちが正しいんだ? 分からん。とりあえずベオクとラグズの間に子供が生まれるのは確かなようだ。

 

「……やはり王子は変わっておられる」

「そうかな。そうかもしれん」

 

まあ元々の価値観が違うからな。

正直に言えばもっとラグズと触れ合いたい。モフモフしたい。とはいえ捕まえてモフモフするのはなんか違う。

そもそもこの国でそんなことをすれば奇異の目で見られるだろう。国全体で反ラグズ感情が強いのだ。半獣ではなくラグズと言っただけで逆賊扱いされる。

子供の頃から学問所で教えられるのだ。

 

半獣は悪だ。

半獣は敵だ。

半獣は抹殺すべし。

 

そりゃ子供はそう育つよ。教育ってのは大なり小なり洗脳だとは思うが、やっぱこの国は好きになれんな。

やりきれない気持ちを抱いて、俺はシチューの残りを腹に収めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界に生まれ落ちて、概ねのところ、俺は不満を持っていなかった。王になれないくらい継承順位の低い王子ではあるが、その分自由が与えられた。

現国王(おやじ)とはほとんど会わないし、母も俺を産んですぐに亡くなったらしい。世話役の文官は、あまり俺に興味がないようだ。

まあその世話役が実際に世話をするわけではないので特に問題はない。恩らしい恩は師を紹介してくれたくらいか。最近では俺を【四駿】にして自分の後ろ盾にしようと画策しているようだが。

 

最初は剣と魔法のファンタジー世界に転生したと思った。だが数年経って、正確には「アシュナード」という王子がいるという情報が入ってきて、ピキーンときた。

ここは「蒼炎の軌跡」の世界じゃないかって。

だとすれば問題がある。俺は、蒼炎の軌跡は未プレイなのだ。だってゲームキューブ持ってなかったし。

知っていることは主人公がアイクで、ラスボスがアシュナードだってことくらい。

だからアシュナードの名前でピンときたのだ。

 

アシュナードの二つ名は、確か【狂王】だったはず。つまり王になるってことだ。アシュナードの王位継承順位は俺よりも低い。現実的に考えてアシュナードが王になることはない。

つまりアシュナードが王になるには、上位の王位継承者がいなくなり、アシュナードしか継ぐ者がいなくなるという状況になるしかない。

 

戦場でのアシュナードの活躍は王宮にまで伝わっている。その噂を信じるなら、かなり好戦的な性格のようだ。ならば、上位の王位継承者全員を手にかけたとしても不思議じゃない。

……つまり俺も殺されるってことか。

 

実際に相対してみないと確かなことは言えないが、タイマンならそう簡単に負ける気はしない。俺だって相当鍛えたからな。

だが部下を率いて攻めてこられたら、かなり厳しい。俺に部下はいないし。

やっぱ出奔するしかないか。よし、修行の旅に出よう。

 

正直この国にもう未練はないんだよね。

ゼルはいなくなったし、師もいなくなったし。

とくに師は挨拶もなくいきなり失踪したからな。わけが分からないよ。

 

さてどこに行くか。

南は、アシュナードと鉢合わせたら嫌だな。向こうが俺の顔を知っているとも思えないが。

まあ西だな。とりあえず、クリミアに行ってみるか。

 

 

 




というわけで、今作の主人公は原作知識がほぼありません。
大丈夫かこれ……。
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