FEデインから始まる転生物語   作:乾燥海藻類

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第11話 神使の依頼

シグルーン殿が持ってきた神使からの依頼。その2つ目の仕事を終えて、アイクたちが帰ってきた。報告にやってきたアイクはかなり厳しい表情をしていた。

 

「最初の依頼は、商人に扮した一団の撃退及び積荷の押収」

 

ちなみに、その一団にマーシャの兄、マカロフがいた。そこでも借金をしていたらしい。ギャンブル依存症って治るのかな。この世界には支援や治療をしてくれる施設なんてないしなぁ。

 

「次は砂漠まで行って盗賊団の討伐。しかしそいつらはただの盗賊団ではなかった」

「ああ。あいつらは……ラグズ奴隷解放軍だと言った」

 

アイクの拳に力が籠められる。爪が食い込んで血が流れんばかりに。

そういえば、その時の戦いでレテが隠者じみた妙な男を拾ってきたらしい。そいつは獣牙族に興味を示していた、と。もしかしたら俺と同じくモフモフ好きなのかもしれない。

 

「両方とも神使からの依頼だ。そろそろ狙いが見えてきたんじゃないのか?」

「あんたは最初から気づいていたのか?」

「いいや。だが神使と元老院が見た目通りの関係でないことには気づいていた。アイク、己の心に従え。自分が正しいと思ったことをやればいい」

「……言われなくてもそうするつもりだ」

 

アイクは静かな怒りを湛えて出て行った。敷地から出るアイクの隣には、小さな少年の姿があった。

それからしばらく経って、アイクは新たな依頼を受けて帰ってきた。

 

「タナス公オリヴァー、そいつが不審な動きをしているらしい。セリノスの森の近くにある別邸に行ってくる」

「ああ、準備は整えてある。気をつけてな」

 

この仕事を無事に終えれば、神使はエリンシア王女を全面的に支持すると確約してくれたらしい。

 

「……ひとつ訊きたい」

「なんだ?」

「エリンシア姫の供をしている親父はともかく、なんであんたは依頼に参加しないんだ?」

「団長がおまえを鍛えようとしているからだよ」

「……どういうことだ?」

 

困惑したように、アイクは眉根を寄せた。

 

「団長の歳、覚えてるか?」

「どうした急に。たしか……47だったはずだ」

「正解だ。で、いつまで団長に無理させるつもりだ?」

「……親父はそんなにヤワじゃない」

「最近、腰をさすることが多くなってきた」

「……本当か?」

「ああ」

 

嘘だけど。

 

「アイク。人は死ぬぞ。それがいきなり(・・・・)じゃない保証はない。エルナさんだって、あんなにあっさり逝くとは思わなかっただろう?」

「……そう……だな」

 

回復の杖でも病気の治療はできないため、大陸でも病気で亡くなる人は後を絶たない。昔、デインでも流行り病で1000人近くの人が亡くなり、その被害は王族にも及んだと聞いている。

その一件でアシュナードが王に即位したのだ。どうも俺の穿ち過ぎだったようだったな。さすがに身内を手にかけたりはしないか。

 

「団長や俺が一緒だと、おまえは無意識のうちに俺たちを頼ってしまう。セネリオやティアマトとは違って、おまえは団長や俺を、どこか別格の存在だと思ってるんだ」

「……そうかもしれん」

「だから団長は、あえておまえを突き離そうとしている。それも愛情さ。応えてみせろよ、次期団長」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その男は、他の人間とは隔絶した空気を纏っていた。

例えるなら居合の構え。一見もの静かに見えるが、いつでも刀を抜ける体勢。そしてその刀は、必殺の威力を秘めている。

その男が、新緑のような髪を揺らし、じっとこちらを見つめている。

一兵士の風貌ではないな。

 

「新人か? 俺はミスラ。この団の参謀を務めている」

 

俺が名乗ると、その男は少しだけ表情を崩した。

 

「私の名はソーンバルケ。砂漠の戦より参加している」

 

砂漠の戦……そうか、レテが拾ってきたという妙な男とはこいつか。確かに異彩を放っている。気配は脆弱なのに、妙な存在感がある。

 

「……ふむ。あの青年もなかなかのものだったが、おまえはさらに……」

 

瞬間、ソーンバルケの剣気が膨れ上がった。俺は無意識に剣へと手を伸ばしていた。

 

「このわずかな剣気にも反応するか」

 

この男……かなり、やる。間違いなく達人級(マスタークラス)

 

「その強さ、興味がある。とはいえ、私たちが戦えば、訓練剣といえども間違いが起こる可能性はある」

「確かにな。この状況でそれは避けたいところだ」

 

刃を潰した剣とはいえ、言ってみれば鉄の棒だ。そんなもので殴られればただでは済まない。また一流の剣士であれば小枝を刃に変えることもできる。一定のレベルを超えた者同士であれば、木剣であろうが訓練剣であろうが、大怪我をする可能性は高い。

 

「この戦いが終わった後、手合わせを願おう」

「お互いに生き残っていれば、な」

「……ふっ、そうだな」

 

苦笑し、男は去って行った。

それからしばらくして、アイクたちはタナス公の別邸に向けて出立した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミスラさん、いる?」

 

ノックと共に聞こえてきたのは、ミストの声だった。セリノスの森から帰ってきたのだろうが、ミストが来るのは珍しいと思いながら、入室を促した。

 

「アイクはどうしたんだ?」

「プンプンしながら大神殿に行っちゃった」

「こっちへの報告を飛び越して行くとは、何かあったのか?」

「……うん。ミスラさんはさ、20年前にセリノスで何があったか知ってる?」

 

ミストの瞳は、心の動揺を映しているように小さく揺れていた。

 

「ベグニオンの国民が知っているような、表の理由はな」

「表ってことは、裏の理由もあるの?」

「ああ。20年前、先代神使がセリノスのサギの民によって暗殺された。それを知った民衆が暴徒と化し、セリノスの森に火を放ち、サギの民を皆殺しにした」

 

ミストは驚愕して目を見開いた。

 

「それが表の理由。まあおそらくは冤罪だろう。サギの民は戦う術を進化させなかった唯一の種族だ。そんな彼らが暗殺という手段を取るのがおかしい。さらに民衆が火をつけたくらいで全滅するというのもおかしい。飛んで逃げればいいんだからな。もっと大きな力が動いているはずだ」

 

おそらくは元老院。

 

「……全滅じゃないよ。タナス公爵のお屋敷に、囚われてる人がいたの。凄く怖い目をしてた。近寄るな、ニンゲン、って」

 

目に涙を浮かべたミストの髪を優しく撫でる。

それからしばらくして、新たな依頼を持ってアイクが帰ってきた。次はミストが見たというサギの民、セリノスの王子を探すために、セリノスの森を探索するようだ。

 

「あそこはかなり厄介だぞ。色を失くした森は見通しが悪く、地面もぬかるんでいるらしい。また同じような景色が続くため迷いやすい。装備と食料は過剰なくらいに持って行くといい」

「ああ。で、あんたは……どうする?」

 

ついてくるか、ということだろう。ここまできたら、最後までアイクに任せてもいい気がする。

まあ今回は神使とエリンシア王女も同行するようだから、団長も一緒に行くことになる。だがエリンシア王女の護衛のため、前線にはでないだろう。それでも、アイクは精神的に楽になるはずだ。

それに、こっちもそろそろまとまりそうなんだ。

 

「いや、おまえに任せるよ。どうしても無理となったら、セネリオの魔法を上空に打ち上げてくれ。救援に行く」

「分かった」

 

アイクは十分に準備を整えて、セリノスの森へ向かった。

そして数日後、奇跡が起こった。

色を失った森が、再び色を取り戻したのだ。

 

 

 




アイクは主人公に報告した後で神使に報告に行っています。
ソーンバルケは、いわゆるカレル枠だと思うんですが、カレルほど圧倒的感がないんですよね。でもよくよく考えてみたら、カレルも設定はともかくステータスはそれほど圧倒的ではなかったような気がする。
むしろガルザスの方がヤバかったような……まあそれぞれ作品が違うので比べること自体が間違ってるのですが。
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