FEデインから始まる転生物語   作:乾燥海藻類

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第03話 プロローグ③

「すまんな。埋葬を手伝ってもらって」

「いえ、大した手間でもありませんので」

 

ゼルは慇懃に答えた。師に続いてゼルとも出会えるとは、偶然なのか運命なのか。一緒にいた賢者殿には師とその家族の面倒を見てもらっている。

別にこいつらを埋めてやる義理もないのだが、まあ一時は仲間だったし、疫病対策でもある。

 

「よし、これで終わりだな。安らかに眠ってくれ。さて、何年振りだっけか?」

「……おおよそ7年振りです」

 

ゼルの表情は暗い。その理由は、さすがの俺でも分かる。師の剣が死んでしまうのかもしれないのだからな。

だが俺たちにできることは何もない。賢者殿の手腕にかかっている。

 

「もうそんなに経ったか。鍛錬は怠ってないだろうな」

「もちろんです。王子……いえミスラ殿こそ」

「ふっ、なら試してみるか」

「望むところです」

 

お互い剣に生きる者同士、剣を交わすことで大体分かる。少しは気もまぎれるだろう。

剣を抜き、歩みを進め、剣先をカチンと触れ合わせる。

戦いの合図が鳴った。

その直後、銀の斬撃が宙を薙いだ。

場所は、俺の首があったところだ。

 

「いきなり、やってくれるな」

「このくらいは躱してもらわねば困ります」

 

ゼルは瞳を炯々と輝かせた。

強者と戦えることが嬉しいのだろう。

やはりこいつは、根っからの武人だ。

 

距離を詰めたゼルは低い姿勢から突き上げを放った。狙いは心臓。こいつ殺意高すぎだろ。それだけ俺の強さを信頼してくれているのかもしれんが。

身体を捻ってそれを躱す。返す一閃は鎧の肩部によって弾かれた。

 

ゼルは攻め手を緩めず、次々と斬撃を繰り出してくる。

常人ならば全ての攻撃が致命傷になるような一撃だ。並みの剣士なら最初の突き上げで心臓を貫かれていただろう。

攻められっぱなしは癪だが、相変わらず隙がない。

しばらくは打ち合いが続いた。それに飽いたわけではないだろうが、ゼルが動いた。

 

「――月光」

 

ゼルの握る剣が淡く光る。それを、待っていた!

 

「――天獄」

 

燐光を剣身ごと受け流し、そのまま攻撃へと転化する。

 

「――ッ!? ぐっ……」

 

その一撃を受けて、ゼルが膝をついた。

 

「大技には隙が伴う。切り札の切り時には注意しないとな」

「……隙は消したつもりでしたが、消し切れてはいなかったようですね」

「確かにほぼ完璧な技の入りだった。師か俺でなければ、勝負は決まっていただろう」

 

ゼルが小さく笑う。俺もつられて笑った。

 

「……まだ、やれます」

「いや、ここまでのようだ」

 

ゆっくりとした足取りで、賢者殿が戻ってきた。

 

「賢者殿、師の容体は?」

 

俺の問いに、賢者殿はフルフルと首を横に振った。

 

「申し訳ありません。切断された腕を繋げることはできませんでした。もっと高位の杖を持っていれば、良かったのですが……」

「そうですか。いえ、治療していただき、ありがとうございました」

 

抗生物質なんてものがないこの世界では、応急処置を間違うとその傷が元で亡くなるなんてこともよくある。

そして、俺以上に辛そうな表情をしているゼルを見ていると、賢者殿に詰め寄る気にもならん。

ゼルは歯噛みしながらもなんとか気持ちを整理したのか、小さな嘆息を落として賢者殿に向き直った。

 

「……あれは、どうされますか?」

「今は、このままで。行きましょう」

「……はっ」

 

最初はただの連れかと思っていたが、どうやらこの2人は主従の関係のようだな。仕えるべき人間を見つけたのか。

立ち去る2人の背を見送っていた時、不意にゼルが振り返った。

 

「師やあなたのおかげで、私は慢心せず修練を続けることができます」

「俺もさ。出来の良い弟弟子がいるからな。追いつかれまいと必死だ」

 

ゼルのまなじりがわずかに下がったような気がした。

 

「では失礼します。いずれ、また……」

「ああ、またな」

 

再会の挨拶を交わして、俺たちは別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜が明けて、俺は師の家へと向かった。

ノックをしても応答はない。少し早く来すぎたかな。

 

「……どうぞ」

 

と思っていたら、奥から小さく声が聞こえた。

 

「おはようございます。師よ」

「おはようございます。妻からおおよそのことは聞きました。王子にもご迷惑をかけてしまったようで……」

 

その妻、エルナさんは師の傍でまだ舟を漕いでいた。

 

「そのような物言いはやめてください。今の私はただの傭兵、ミスラです」

「……分かった。では、そうしよう」

 

師の利き腕には痛々しく包帯が巻かれていた。その腕の、手首から先は存在しない。

 

「申し訳ありません。私が未熟なばかりに、あの状況では師の腕を斬り飛ばすしかありませんでした」

「いや、あの時のことは、おぼろげながら覚えている。安いものだ、腕の1本くらい」

 

そう言って、師はエルナさんの髪を愛おしそうに撫でた。彼女も必死に治療を手伝っていたのだろう。

 

「師が豹変した原因はやはり……それですか?」

 

俺の視線は、エルナさんが首から提げている青銅の円盤に向けられていた。あの時に、師が握っていたものだ。

 

「うむ。このメダリオンに触れた者は【負の気】に支配され、我を見失ってしまうのだ。今のところ、(じか)に触れても問題がないのはエルナしかおらん」

「……そのような危険なもの、破棄するわけにはいかないのですか? 粉々に砕くとか、海に沈めるとか」

「できん。詳しいことは話せないが……」

 

それきり師は口を噤んでしまった。

 

「分かりました。そのメダリオンについては師にお任せします。これからどうなさるおつもりで?」

「住まいが割れた以上、ここには居られん。……クリミアに行くか」

「いっそのこともっとガリアの深くに行った方が良いのでは?」

 

俺はそう提案したが、師はやんわりと却下した。

 

「いや、これ以上カイネギス王に迷惑はかけられん。クリミアで傭兵をやろうと思っている」

「……ふむ。では、これからは商売敵になりますな」

 

片腕を無くしたとはいえ、クリミアで師に敵う傭兵など思いつかない。これは手強い競合相手ができたものだ。

 

「そこで提案なのだが、一緒にやらないか?」

「……なるほど。その発想はなかった。師とコンビですか。胸が躍りますな。断る理由などありませんとも」

「助かる。そしてもうひとつ、頼みがある。万が一、また暴走してしまった時、その時は…………俺を、殺してくれ」

 

師は神妙な顔で、そう言った。

 

 

 




フォルカ(の出番)は犠牲になったのだ……。
まあ実際は、片腕を無くしたグレイルなら暴走しても主人公は殺さずに止めることができます。
殺してくれと言ったのは、彼なりの覚悟です。

次回から本編開始。
あと主人公の影響でアイクの出番が少なくなっています。
先んじてアイクファンの方々には謝罪しておきます。
以下、システム的なスキル解説。

天獄
自分の(技)が相手より高い場合にのみ発動する。
相手が"奥義"を発動した時、その攻撃を無効にして、自分の攻撃力分のダメージを相手に与える。
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