FEデインから始まる転生物語   作:乾燥海藻類

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第07話 ベオクとラグズと

プラハ将軍を退けた俺たちは、本隊と合流すべく南下を始めた。その途中で、ガリア王が派遣したラグズの一団から、アイクたちがゲバル城にいるという報告を受けて、俺たちはそちらに向かった。

 

「親父ッ! 無事だったか!」

「アイク、エリンシア姫はどうした?」

「王城へ行ったよ。他国者が一斉に押し寄せるわけにはいかないと言われて、俺たちはここで待機している」

「……そうか」

 

ベオクとラグズの軋轢はまだまだ拭えそうにないか。

 

「ミスラ、あんたに教わったこと、役に立った」

「ん? ああ、ラグズの呼び方のことか?」

「そうだ。俺は何も知らなかった。彼らのことを……」

「だが今は知りたいと思っているのだろう? それは大事なことだ。彼らともっと話してみるといい」

「ああ、そうしようと思う」

「……ケッ! オレはあんな毛むくじゃらどもと仲良くしたいとは思わないがね」

 

と、シノンが悪態をつく。まあ半獣と呼ばなくなっただけマシか。

それからしばらく、俺たちはこの砦で待機することになった。

その間にクリミアから逃げてきた商人が訪れ、その一団と行動を共にする契約を結んだ。

そうして待たされる日々を送っている時、事件は起きた。

 

「ガリア領内だからと油断していたな」

「ええ、完全に囲まれてますね」

 

雨の日を狙ってくるとは、敵も本気のようだな。

 

「げ、幻影でなければ、デイン王国軍の一個小隊かな。か、囲まれてます」

 

キルロイが震える声で現状を報告する。

 

「ここまで来るってことは決死隊だろうね」

 

オスカーの言うように、敵の士気は高いだろう。指揮官を狙って撤退させるのは難しそうだ。

 

「セネリオ、策はあるか?」

「入り口を固め、僕とシノンで遠距離から敵を削ります。そして団長とミスラも遊撃で敵を削って下さい」

「団長を遊撃に使うのか。おまえも偉くなったモンだな」

「使えるものは使う。それが軍師です」

 

シノンが噛みつくが、策としては悪くない。というか、俺についての追求はなしか? 相変わらずシノンは俺に厳しいな。

 

「よし。では正面をアイクとガトリー……ガトリーはどこに行った?」

 

団長に問われてみんなが辺りを見渡すが、ガトリーの姿はない。だが、当の本人は何食わぬ顔でひょっこりと現れた。

 

「団長! 女の子を拾いました!」

「ガトリー! おまえまた……はぁ」

 

シノンが頭を抱えてため息を落とした。ガトリーが抱きかかえているのは空色の髪の少女だった。

団長が呆れたようにガトリーに問いかける。

 

「どこで拾ったんだ?」

「砦の隅っこで震えてたんす。たぶん雨に打たれて寒かったんじゃないかと」

「そうか。ミスト、介抱してやれ」

「わかった!」

「じゃあベッドまで運ぶっすよ」

 

詰まっていた空気が若干和らいだ気がした。

団長が改めて指示を出す。

戦いが、始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなよく戦っている。正面をアイク、ガトリー、オスカーの3人が抑え、裏口をティアマト、ボーレ、ワユが抑えている。

セネリオの魔法が兵の固まった場所を吹き飛ばし、シノンの精密射撃が指揮を執っているらしき兵を射抜いていく。

 

「ミスラ」

「団長。どうしたんですか」

「森の方から気配を感じる。伏兵かもしれん」

「ふむ。俺が見てきましょうか?」

「いや、俺が行く。ここを頼む」

「了解。あまり遅くならないでくださいよ」

「ああ、深追いはせんよ」

 

小さく微苦笑して、団長は森の中へ消えて行った。

みんなが奮戦している。状況は悪くないように思えた。

そして、決定的な瞬間が訪れた。

突然、天に轟くような咆哮が響き渡ったのだ。

 

「は、半獣だ!」

「ガリアの獣兵だ!」

「うわぁぁ、来るな! ば、化け物!」

 

デイン兵は混乱に陥った。戦いは、終わった。

みんなが安堵を抱く中、ラグズたちの中から2人がこちらに向かってきた。

 

「救援感謝する。親父……団長はいま席を外しているが、すぐに戻ってくると思う。団長に代わって礼を言う」

「ああ。礼をウけとろう。ガリアの戦士モゥディだ。コっちはレテ。オまえがアイク、か?」

 

巨漢のラグズが、顔に似合わず優しい目でアイクを見つめる。

 

「ああ。俺がアイクだ」

「ライは言った。アイクは悪くナいヨそ者だと。モゥディたちは、キっと仲良くナれるだろう」

「そうなれると嬉しい。よろしく頼――」

 

アイクが握手を交わそうと手を前に出そうとするが、もうひとりのラグズ、レテと紹介された少女がそれを遮った。

 

「モゥディ、軽々しく気を許すな。こいつらベオクは表と裏の顔、ふたつの顔を使い分けるようだからな」

「レテ!」

「……そう言われても仕方ないかもしれない。ベオクとラグズの歴史は、多少なりとも学んだ。最初から仲良くなれるとは思っていない。少しずつ歩み寄っていけたらと、思う」

 

アイクにしては良くできた返答だと思う。だがレテという少女には、アイクの気持ちは通じなかった。

 

「多少だと? ふん、それで知ったようなつもりになっているわけか。我らに隷属を強いたことを、我らは決して忘れない。王がなんとおっしゃろうとも、私はおまえたちを信用しない」

「レテ……」

 

モゥディが悲しい目でレテを見つめる。どうも対照的な2人だな。さながら穏健派と過激派といったところか。さて、この重くなった空気をどうするか……。

 

「で? そういう恨み言を聞かせるために来たんですか? ハハッ、半獣の考えそうなことだ」

 

そういえば空気の読めない……いや、読まないやつが1人いたか。

 

「貴様ッ! その呼び名を使う者は、我々ガリアの敵だ!」

「ハ、は、半獣!? テき……コいつ……敵!」

「自尊心だけは人間並み。そうでしょう? 毛だらけの醜い半じゅぶっ!」

 

室内に激突音が響いた。ラグズの2人だけでなく、アイクとミストも呆気にとられている。

 

「団員の非礼を詫びよう。この通り、謝罪する」

 

そう言って頭を下げる。セネリオも頭を下げている。具体的に言うと、俺に後頭部を掴まれて床とキスしているところだ。しかし抵抗がないな、気絶したか。

 

「ウ、む。モゥディ、許す。レテも、イいな?」

「……ああ」

「ミスラ、やりすぎだ。血が……」

 

床はセネリオの鼻血で紅く染まっていた。加減はしたから鼻は折れていないはずだ。派手に鼻血は出たが、見た目ほど重傷じゃない。血はインパクトがあるからな。興奮した2人を納得させるには必要なことだ。ラグズは血の気が多いと聞いたから通じるか不安ではあったが。

 

「ミスト、セネリオを頼む」

「う、うん。わかった」

 

ミストにセネリオを任せ、俺は再びラグズの二人に頭を下げる。

 

「申し訳ない。言い訳になるかもしれんが、あの子はまだ16でね」

「16!? ベオクは子供を戦場に狩りだすのか!?」

 

レテが驚いたように声を上げた。寿命の違うラグズは、ベオクとは時間の感覚が異なる。この場はそれを利用させてもらおう。レテも見た目は10代の少女に見えるが、実際は俺よりも年上だろう。

 

「レテ、ベオクにはベオクの事情がある。シかし、コどもならシかたない、な。あ、レテ、使命をワすれるな」

「ああ、分かっている。王が王宮に傭兵団を招かれた。我らは、おまえたちをガリア王宮に案内するために来たんだ」

 

ふむ。ようやく事態が進展したか。

団長も戻ってきたようだ。

さて、ガリア王が協力してくれるといいのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セネリオ、具合はどうだ?」

「……もう大丈夫ですよ」

 

セネリオは不貞腐れたように顔を逸らした。鼻には包帯もなく、傷もない。我ながら絶妙な力加減だったな。

 

「ミスト、傭兵団が王宮に呼ばれた。キルロイの手伝いに行ってくれるか?」

「うん、わかった」

 

ミストがパタパタと駆けて行く。視線をセネリオに戻した。

 

「おまえにしちゃあ、随分と感情的だったな。そんなにラグズが嫌いか?」

「……見苦しいところを見せました」

 

上手くかわしたな。もう少し突っ込んでみるか。

 

「印付きの迫害はラグズの方が激しいらしいからな」

「――ッ!? いつから気づいて……」

「今さ」

「……カマかけですか。趣味の悪い」

 

いつもなら大抵のことは上手く受け流すセネリオだが、今回ばかりは虚を突かれたようだ。正確に言うなら迫害ではなく存在の否定らしいが、伝聞や書物の知識だから真実は分からん。ただ印付きはベオクとラグズ、どちらからも嫌悪されているのは間違いない。

 

「他のやつはどうか知らないが、アイクはそんなことでおまえを嫌いにはならないと思うぞ」

「……そんなの、分からないじゃないですか」

「アイクは子供の頃から知っている。そんなやつじゃあない」

「そんなの分からないじゃないですか! あなたに僕の何が分かるというんですか!」

「分からないよ。おまえが俺のことを分からないようにな。他人のことなんて分かりゃあしないさ。俺が言えることは、もっとアイクを信じてやれってことくらいだな」

 

悔しいが、セネリオにとっては俺もその他大勢の1人にすぎないだろうからな。

 

「…………」

「傭兵団が王宮に呼ばれた、ってのは聞いてたよな。出発までは寝てろ。どうせ私物なんて数冊の魔導書と多少の着替えくらいだろ」

 

そう言い残して、俺は救護室を後にした。

これで少しは態度が軟化してくれればいいんだが。ま、アイク次第かな。

 

 

 




漆黒の騎士は来てません。まあ利き腕を失ったことを知ってますからね。
原作の様子から見るに、主目的はグレイルとの一騎打ちで、メダリオンはついでのような気がするんですよね。
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