日本VS日本   作:もちうさ

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連続投稿です。
今回は神聖日本王国の「触れてはいけないタブー」に迫ります。


第10話「混沌とする王国…王国のタブー」

 

 

 漆黒の艦隊が同じ2020年代、並行世界の少数の機動艦隊ーー水上打撃群と言うらしいーーに負けたという事実は「国家機密」として、トモチカの厳命で口外が禁じられた。

 

 それは、それらしき噂を王宮内外に広めた者は、例え補佐であってもトモチカ家の親族であっても、極めて厳罰に処するという、厳しいものだ。

 

 その間にトモチカは軍務補佐のコレチカ・ハラダと王国軍長官を含む幹部に「漆黒の艦隊」の再編成を含む王国軍の再構築を命じ、引き締めを図った。

 

 更に王様は「最高機密」で進めていた「時空を捻じ曲げ、議会制民主主義による議院内閣制の日本を並行世界から消す。」という計画や、東京湾沖にある指定した時空や時代へと瞬時に送れるタイムワープゾーンにも言及。

 

トモチカ「なんとしてでも漆黒の艦隊を再編成せよ。これは我が父上、そして歴代国王が誇りに思ってきた我が王国の象徴であり、トモチカ家の象徴でもあるからだ。」

 

軍務補佐「はっ。この軍務補佐、王様のお言葉を胸に刻み、必ずや、艦隊の復活を果たしてみせます。」

 

海軍長官「我が王国軍も、艦隊復活の為に、王様のご期待に添えられるよう、最大限尽力します。」

 

王国軍参謀長「全て王国軍にお任せください。再び我が漆黒の艦隊を蘇らせてみせます。」

 

トモチカ「よし、我が案に反対する者はいないな? ナカサワ、それでいいか?」

 

ナカサワ「はっ、反対意見は皆無です。」

 

トモチカ「では、皆に期待してるぞ。漆黒の艦隊無き神聖日本王国は、有って無いようなものだからな。」

 

ナカサワ「王様のお言葉通り、正しく同感でございます。」

 

トモチカ「任せたぞ。また漆黒の艦隊が今日のような陽の目を浴びるのが楽しみだ。」

 

 トモチカはそれを言うと、マントを翻し、王国軍総司令部を後にした。

 

 しかし、そこに、今までのムネタカによる長きに渡る王政に反対を上げていた市民たちが反政府デモを起こし、トモチカの意向を汲んだ王国軍の方針に反対した一部の兵士たちが軍を抜け出し、中には武装蜂起する者も現れた。

 

 ムネタカはムネオの思想をかなり色濃く受け継ぐ超強硬派閥のムネオ派でもあり、その圧政とも言える政にも市民たちには限界が近づいていた。

 

 市民たちは混乱を抑えるために配備された王国警察の車両のバリケードを挟み、王様の失脚とごく微小ながらも議会制民主主義による議院内閣制、つまるところ共和制への転換を訴える。

 

 それとは裏腹に、鳥のさえずりが聞こえる王宮の大広間では、いつものように平和な時間が流れていた。

 

ナカサワ「王様。ワインでもいかがですか?激昂する市民や我々を裏切った兵士の声ばかりを聞いていては、王様の身に障ります。」

 

トモチカ「そうだな。それにしても毎日騒がしい。勝手に騒ぐのはいいが、民たちの営みを妨害する形で騒ぐことは無いではないか。今は穏便に済ませているが、しつこいようなら特殊警察、出来ないならば、王国憲兵隊を出して鎮めるぞ。」

 

ナカサワ「あと噂では、共和制を叫んでいる者たちが集結して大規模なデモを計画しているとのことでございますが…それについては、どう対処しましょうか?」

 

トモチカ「ならばそこへも特殊警察を配備しよう。どれだけ騒ごうが、この我が聖なる王国は揺るぎないものであり、我が王国の安寧を脅かす者たちにはそれ相応の代償を払わなくてはならない。今はこの王国を転覆させようと企んでいる者どもを抑えれば安泰なのだ。」

 

 しかし、市民は共和制を求めるデモ隊と合流し、大規模なデモに発展したところ、特殊警察と衝突する事案が発生。

 ナカサワは慌てふためいた様子で大広間にいたムネタカへと報告する。

 

ナカサワ「王様、大変でございます! 激昂した市民が共和制を訴える集団と合流したことで、これまでに見られなかった大規模なデモが発生し、それらが特殊警察と衝突しました!」

 

トモチカ「なに!?」

 

 市民たちは鎮圧を図る特殊警察に押し返されことでデモ隊は無理矢理解散させられたが、それに王国軍の退役軍人らが関わっているとの噂も出たほどだ。

 

トモチカ「ならばその者たちを捕らえろ。」

 

ナカサワ「ははっ。ですが…」

 

トモチカ「どうした?」

 

ナカサワ「噂では、それには退役軍人らが関わったとの噂もございますが…その者たちへの処分は…」

 

トモチカ「ならばその者たちにも罰を与えろ。この我が王国を裏切ると、どんな結末が待っているのか見せてやるのだ。」

 

ナカサワ「ははっ!」

 

 その中でトモチカは、

 「我がトモチカ王家が有する神聖日本王国が唯一の合法政府である。」という声明を発表。

 初代から続く王国の実権をそう簡単には手放すまいという決意を露わにした。

 

 

…………………………

 

 

 それから数日後…

 

ナカサワ「な、な、な… 何なんですかこれは…!!」

 

 とある物を受け取ったナカサワは余りに驚愕していた。

 その理由は…

 

 かつて、ムネタカの先代であるムネオの代に起きた市民たちによる大規模な暴動について、それに親族が参加していた一大資産家「今井家」から送られてきた一通の手紙である。

 

 その今井家から送られてきたという手紙には、こう書かれてあった。

 

 

「拝啓、ムネタカ・トモチカ様。今日この日々、如何お過ごしでしょうか。貴方は先代から聞いているでしょうか。…かつて市民たちによる大規模な暴動が起き、時の国王が武力で鎮圧したことを。そして、その暴動鎮圧事件から今年で30年の月日が経過したことを。当時の国王による圧政に限界を超えた市民たちは王様の退位や失脚を求めて大規模なデモを起こした。しかし、国王ムネオはあろうことか、その市民たちへ銃口を向けた。「平和な営みを望む市民たちを守り、この我が神聖なる神聖日本王国へ叛く叛逆者どもを黙らせるため」との言い分で王国陸軍を出動させ、火炎瓶で抵抗する市民たちへ銃弾と戦車の砲弾を浴びせ、軍事力で声を上げる市民たちを押し潰すという、本来ならばあってはいけない手段で鎮圧。犠牲になった市民や陸軍に捕まった市民は夥しい数に上り、その遺族や市民たちはその傷を未だ癒えずに日々を暮らしている。

しかし、国王は一切の謝罪もなく王位を貴殿に譲り他界し、現国王も謝罪の言葉を発していない。

もし、今後この王国を平和かつ安寧な世と共に成長を続けたいのならば、王国の歴史上最大の汚名を返上すると共に、神聖日本王国の歴史を振り替えなければならない。」

 

 

 同時の国王、ムネオによる強硬な圧政に限界を超えた市民たちはムネオの退位と失脚、そして共和政への転換を求め、大規模なデモを起こした。

 それに対し、ムネオは王国陸軍を出動させ武力鎮圧を図った。

 

 市民たちは陸軍と衝突し、お手製の火炎瓶や兵士から奪った当時の制式アサルトライフル「5.56A-91」や「ステアーAUG」で抵抗。

 だが、陸軍は市民に対し銃撃や戦車の砲撃を行い無理やり暴動を鎮圧。

 

 武器を持っていたとはいえ、多くが無抵抗の生身の人間に対して銃弾や砲弾を浴びせたことにより多くの市民が犠牲になり、陸軍によって大半が拘束された。

 (現実世界で近いのは1956年のハンガリー事件)

 

 ムネオはそれに対する遺憾や謝罪の意を全く表さず、「この聖なる神聖日本王国に叛いた哀れな市民共が勝手に起こしたことだ。」と主張。

 また、「この王国を支え、普段の安寧な営みを望む市民たちを守るのが我が王国の使命であり、必要とあらば凡ゆる手段を選ばずに実行する。」との声明も出し、臭いものには蓋をするが如く、さっさと過去の出来事として処理しようとした。

 

 そして、その市民たちによる動乱は王国の歴史において絶対に触れてはいけないタブーとしてあり続け、今に至る。

 

 しかし、今は漆黒の艦隊を失い、影響力が低下しているムネタカへ退位や失脚を願う市民たちがデモを起こしている。

 そのタイミングで親族をデモで失った今井家が手紙を出したこと自体、トモチカにとっても王宮にとっても全くの想定外だった。

 

 もし、今井家が送ってきた手紙の存在が、この神聖日本王国のタブーを今を生きる多くの市民たちに知られることになったら…

 ナカサワはそれらを考え、冷や汗をかきながら落ち着かない素振りをしながら、トモチカの王座へと向かった。

 

ナカサワ「王様…!! 大変でございます!」

 

トモチカ「どうしたナカサワ。酷く冷や汗をかいているではないか。何かあったのか?」

 

ナカサワ「はい…王様。実はこれが…」

 

 ナカサワは今井家からの直筆の手紙をトモチカに渡す。

 

トモチカ「なっ…!!」

 

 手紙の内容を読み進める間にトモチカの表情はたちまち怒りに満ちていき…

 

トモチカ「なんだこの手紙はっ!! まだ先代がやられたことに対して文句を垂れているのか!! まるで父上が陸軍を使い市民たちを殺したように言いやがって!! 全くもってこれ以上ない言いがかりだ!! 悪いのは父上の政に叛旗を翻し、この王国を裏切った市民共ではないか。貴様らが聖なる王国を裏切ったから王国は聖罰を処したのだ。自業自得ではないか。あくまでも父上がやられたのは普段の営みを望む市民たちを守るまで。…ったく、よくこんな手紙をよこしやがって胸糞悪い!! 今井家の奴等は資産家であるから、市民たちの上でふんぞり返ってやがるときた。普段から暇であるからこんな屈辱で恥辱な手紙が書けるのだ!!

建国を祝う内容ならともかく、よくもこんな我が聖なる王国に泥を塗るような内容を書くとはな!! 貴様らは黙ってこの聖なる神聖日本王国へ忠誠を誓えばいいのだ。共和政なぞクソ喰らえ!! それに大半の市民たちは建国以来、代々王位を継承してきた王家による王政を選んでいるではないか!! このようなことも、あの叛逆者どもは分からないのか!!」

 

 これでもかと怒りをブチかまし、その怒りの余りこんな手紙を寄越してきやがった今井家(叛逆者)への殺意をも芽生えそうになっていた。

 そんな怒り狂う彼へナカサワは恐る恐る聞く。

 

ナカサワ「王様…今後、今井家については、どう扱うのでしょうか?」

 

トモチカ「またあの叛逆者どもが動き出すのかもしれん。今井家に特殊警察を配備させろ。それでも抵抗するようなら王国憲兵隊だ。少しでも下手な行動を取ると、どのような罰を受けさせるのか見せてやれ! これは我が神聖日本王国の尊厳や威厳を守るためであり、そして後世へとこの王国が受け継がれるための聖なる戦いなのだ!」

 

ナカサワ「ははっ!!かしこまりました!」

 

 ナカサワは冷や汗を拭いながら大広間を後にした。

 

 

 

 





市民を武力鎮圧…超強硬派閥「ムネオ派」って怖い…ガタガタブルブル

如何でしたか?
今回も楽しんでいただけたでしょうか?

漆黒の艦隊を失ったことで国王ムネタカの影響力が下がり、王国は混沌としていきます。
しばらくは混沌とする王国のお話が続きますので、お付き合い頂ければ幸いです。

では、次回もお楽しみに。

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