2025 4/10追記: 投稿済みのお話ですが加筆修正を加えました。
第1話 『
2020年代…
とある王国の王宮は玉座の間。
そこでは王様や側近である卿らが豪勢なランチを終え、シメのワインを嗜んでいた。
柔らかな陽光が玉座の間のステンドグラスや国王専用の玉座の背後にある縦に長いアーチ状の窓から差し込み、天井に掲げられている歴代国王の肖像画や自画像、白亜の大理石や柱に施された細かい彫刻のデザインを映し出し、中庭からは小鳥たちの囀りが聞こえてくる。
国王や側近たちはその中でヴィンテージもののワインを嗜むという、何とも贅沢極まりない時間を過ごす。
玉座に座る王様も国王専用の特注ワイングラスを揺らしながらワインを嗜む。
だが、この男がこの後発する言葉がこの王国を戦争と混乱への道へと引き摺り込むことになろうとは、まだ誰も知らない。
そして国王は自分の側に控えている1人の男へこう訊く。
「……ナカサワ、我が王国は建国されて何年目だ」
『はっ、王様。我が王国は初代が建国されて丁度2700年でございます』
ナカサワと呼ばれた側近の男はそう答えると、国王は自信に満ちた笑みを溢しながら話し出す。
「そうだ。建国以来、我が王国は他を圧倒する軍事力を保ちながらも、過去の如何なる戦争にも加わらず、歴史国王によって平和と発展を続けてきたのだ。それも全て、我等が王家、トモチカ家と歴代国王につかえてきた補佐たちの努力あってのもの。余はそのような世界の頂点に戴く名家中の名家に生まれ、先代であり父であるムネオ様より王位をお譲り頂けたことを非常に感服している」
自信満々でそう言った男の名は『ムネタカ・トモチカ』。
彼はこの王国──神聖日本王国の第150代目国王として、国のトップに君臨している。
そして、その彼の生まれはこの王国の王家たる『トモチカ家』。
紀元前675年に王国が建国されて以来、今や国の最高神と崇め奉られている初代国王より続いてきた血脈を次世代へと受け継いできた。
『はっ、正に陛下のお言葉通りでございます。歴代国王と王国軍の揺るぎない力により、王国は市民たちと共に平和と繁栄を享受してきました。その間、共和国を求める運動が微小ながらありましたが、大半の民たちは我が王家による統治を選んだことでその動きは終え、今や世界の国々が羨むほどの技術力とそれに繋がる軍事力、それにより保たれる平和と発展、そして何よりそれを力強く引っ張る歴代国王によりこの王国は2700年間もの長い刻を進んで参りました。これからも陛下を中心とする王家を支持してこの王国を保っていることを、ここにお誓いいたします』
そして、そのムネタカの隣で誓いの言葉を唱えた年配の男、『シュント・ナカサワ』。
彼は他国では大臣の上位互換とも言えるほどの権力を持つ卿たちを束ね、国王のそばでつかえる「王宮長官」という最も重要なポストにおさまっている。
そして、そのナカサワの支配下に居るのが軍務や財務、経済や教育、運輸や保健といった国の運営にかかわる卿たちだ。
因みに国家紹介編で紹介してはいるが、神聖日本王国には国会は無く、憲法である『神聖日本王国憲章』によって政治政党も結党禁止な上に国会議員も認められていないと言う、かなり珍しい国である。
一応地方には議会が置かれてあるものの、それはあくまで各地方の政治のためであり、王国政府に一枚噛むことは一切認められていないのだ。
「…ハッハッハッハッハッ。我が王国政府の同志たちからの言葉は何よりも嬉しいぞ」
『ははっ、私ナカサワ。王様よりお褒めの言葉を頂き、非常に光栄でございます!!』
「……ふむ。してナカサワよ。俺には今、一つ気になることがあるのだがいいか?」
『…それはそれは。一体何でございましょう?』
ムネタカの疑問に耳を傾けるナカサワ。
そこでムネタカが言ったのが「この世界とは別の世界があることが分かったらしいがお前はどう思う?」というものであった。
『そ、その話でございましたか…確か、この世界と瓜二つの世界…言わば並行世界とも言いましょうか、実に不思議なことが分かりましたよね』
2人が話しているのはこの神聖日本王国がある世界とは全く別、だが世界地図や存在している国々が此方と全く同じという、謂わばパラレルワールドとも言うべき摩訶不思議な世界の存在が王国の諜報局から報告されたことだ。
因みに神聖日本王国の技術力は最早映画の世界なんじゃないかと思うくらいのチート級なので、並行世界を見つけ出すことくらい朝飯前だったりする。
『諜報局よりそのような世界を見つけた旨は聞いてはおりましたが……まさか、この王国が存在する世界とは別の世界があったとは……私、非常に困惑しております…』
「そうだ。それも全て我が王国の比類無き技術力が叶えてくれたものなのだ。だが、そんな法螺話を信じる者は其れ程多くはない。だからナカサワ、お前は何も間違っててはいないぞ」
『ははっ、ありがとうございます』
「──うむ。そこで俺は諜報局に命じてその世界の国を調べさせた。なんとな、その中に国土が瓜二つな国を見つけたのだ。どうやらその国は『日本国』と言うらしくてな。政治制度がどうなってるかは不明ではあるが……俺はこの機を見て、その日本国を我が王国に編入させることにした」
ムネタカの言葉を聞いたナカサワは「?」と、一瞬首を傾げた。
この目の前にいる男は一体何を言ってるのか?
先程までのムネタカの言葉を並べると
王国の諜報局が技術力の高さにモノを言わせて、この世界とは別の世界を見つけた。
↓
その中にこの王国と同じ国土を持つ日本国という国家があることが分かった。
↓
よっしゃ、編入したろ!!(←?)←イマココ
何をどう考えたら急に異世界ともいうべき世界の国家へ手を出そうと思うのだろうか。
ひょっとして王様は日々の執務で心労がかかり、乱心してるのではと訝しんだナカサワは慎重に慎重にムネタカへ訊く。
『…陛下、その……陛下がおっしゃる世界に日本国があるのは分かりました。ですが、その王様が仰っている編入という言葉がどうも引っかかるのですが……』
「そのままの意味だ。何も疑問に思うことはなかろう?」
『…で、では王様は何故それをやろうとお思いになったのでしょうか??…私と致しましては、例え並行世界に我が王国と同じ国土を持ち、平和と発展を続けている国家があることは実に喜ばしく、王様こそさぞ嬉しくお思いになられることかと思っていたのかと…」
「違う!俺はそれが気に食わんのだ!!!!」
その刹那、ムネタカは火山の噴火よろしく怒りを顕にし大声で怒鳴りつけ、ワインの入ったグラスを思いっきり玉座の側の強化ガラス製テーブルへと叩きつけた。
その音に、ワインを嗜んでいた卿たちは一斉に2人へと視線を向ける。
『な、何故でしょうか!? 確かに国名は同じではありますが政治体制や防衛に関しましては全く違u……』
「よく考えてみろ。並行世界という我等と同じ紛い物の世界があったのだぞ!?!? そしてその中に我等と同じ日本があること自体にお前は違和感を覚えないのか!?!? …紛い物の世界なぞ存在する意義も無いのだ!!その中に我が王国と国名を揃える日本があっただと……巫山戯るのも大概にせよ!!!! ……いいかナカサワ。例え世界が二つあろうが三つあろうが構わん。だがな、この必要な日本は我が王国一つだけだ!! ならば、その日本国なぞ存在する意義も無いのは火を見るよりも明らか。それにだ!! 何故瓜二つの世界があることに疑問を抱く者が現れないのだ!」
ムネタカの意味不明、かつ理解不能な屁理屈捏ねにナカサワは困惑する。
当然、読者の皆さんも「何言ってんだコイツ」と思ったことだろう。事実、コレを書いてる筆者もその1人である。
因みにムネタカは優柔不断でかつ我儘なところもあり、時にこういう謎理論に則った屁理屈捏ねを発動することがある。そのお陰でこれまでも王国政府は勿論、国内外で物議を醸してきた過去を持っている。
『そ、それを言われましても…その並行世界があるのが分かった直後でございますし……たとえ王国軍に命令を下しても彼等は果たして動くのか……そして、向こうの世界もタダでは済まないと思います。たとえ日本を編入すべく軍を差し向けても、妨害を謀る国もあるでしょうし……』
そりゃあ急に異世界から軍隊がやってきたら世界は大パニックだ。やってくんなとばかりに妨害する国があったって不思議ではない。
「く、クソ…なにか方法は無いのか…並行世界の日本を滅する方法は…」
『そう言われましても…日本国の軍事力によっては我が王国軍も苦戦する場合も考えられます。場合によっては日本国が我が王国に編入されるのを妨げる国もあるでしょうし…』
「つまりは同盟か……クソが…小癪なことを…同盟なぞ組んだところで意味なぞ無い。全て自国でやりやがれってんだ…」
その日本国の最大の同盟国が"こちら側の世界"である神聖日本王国が
それでも尚どうしようかと無い頭を動かしていたムネタカは突如、不敵な笑みを浮かべてポツリと呟く。
「弾道ミサイルだ…」
『…ん?お、王様…い、今…弾道ミサイルと申されましたか? 弾道ミサイルがどうしたと云うのでしょう?』
「フフフ…軍務卿よ。我が王国が保有する弾道ミサイルはどのような種類が配備されておった?」
妙案が浮かびニンマリとさせるムネタカはナカサワの問いに応える代わりに、王国軍の背広組のトップである軍務卿「コレチカ・ハラダ」へと訊く。
「ははっ!! 我が王国軍が保有している弾道ミサイルは短距離のものから中距離と、大陸間と海軍が保有している対艦を併せ、最大150発保有しております。搭載している弾頭は何れも燃料気化弾頭や特殊炸裂弾頭、空中炸裂弾頭を装備しております」
訊かれたハラダはバネ仕掛けの人形のように席から立ち上がり、王国が保有している弾道ミサイルの詳細を述べる。
因みにハラダの隣でつまらなそう顔をしてるのが王国の財務を司る財務卿(本名は未公表)であり、2人は王国政府のキャリアを始めた若かりし頃に、ムネタカの先代かつ父であるムネオからヘッドハンティングされ、それ以降、王国の政治を動かして来た王国政府高官きっての2トップである。
「…分かった。ナカサワよ、我が何をしようとしてるか分かったか?」
『…い、いえ…王様が何をなさろうとしているのかはまだ皆目見当が付きませぬ…』
「フッ…仕方のないことだ。ならば、この場で発表するまで」
そう言ったムネタカは玉座から立ち上がってマントを翻し、
「皆の者! 王国諜報局が並行世界なる此方と瓜二つの紛い物の世界を発見したのは聞いているだろう。その中に我が王国と国名も国土をも持つ日本国という国家があるのが判明した。そこで余は、我が王国と同じ国名を騙る蛮族国家を葬ることとした。今から神が余へ授けてくださった妙案を話していくからよく聞くがいい!!」
両手を上げては自信満々に補佐たちへ日本国を滅す案を話していく。
果たして、その案とは──
『弾道ミサイルを日本国や世界各国の首都などの主要都市へ撃ち込む?』
「そうだ。それが並行世界なる紛い物の世界と我が王国と同じ国名を騙る蛮国を滅すのには1番ベストな方法なのだ。無論、国家最高機密である100
王国軍が保有する弾道ミサイルを日本国をはじめ、世界各国の首都を含む主要都市に撃ち込んで消し炭にし、文字通りの地獄へと変えるという。
そこで使うミサイルは主に燃料気化弾頭を搭載し日本国を殲滅する短距離弾道ミサイルと中距離弾道ミサイルと対艦炸裂弾道ミサイル、そしてポリ窒素弾頭と中性子弾頭を搭載し、世界各国の国々を滅する大陸間弾道ミサイルで決まり、発射プラットフォームも並行世界の日本国の洋上に建造予定の洋上プラットフォームに決まった。
『そ、そのような方法で…』
「弾道ミサイルで世界を……」
「我等はそんな恐ろしい国王の下にいたというのか…」
「というか、そんな世界があったって我々には何の負の感情もないのだが…」
聞いたナカサワや他の卿たちは恐ろしさの余り顔色を青白くさせる。
財務卿は軍を動員や派遣される海軍艦艇や将兵らの人件費や燃料費、洋上プラットフォームを建造費、そしてもし日本国側による攻撃で損傷した場合の修理費や撃沈された場合の費用を瞬時に脳内で計算し、溜息を吐く。
そして皆が到達した答え。
それは「ムネタカをそのまま王位につかせたままでは取り返しのつかないことになってしまう」であった。
それには理由があり、それが国王ムネタカが肝入りとして軍部と共に進めているアメリカ合衆国に対する攻撃のシミュレーションなのではないか、とすることだ。
それはムネタカやナカサワを始め、ハラダや財務卿ら政府高官と王国軍の高官や将兵ら多数が所属している王国の唯一の主流派であり超強硬派閥である「ムネオ派」の最終目標であり、彼らはこの神聖日本王国を世界の覇権を握るべく、蛮国たるアメリカを戦争という手段で消し炭にしてしまいたいと考えているのだ。
その為のテスト兼データ収集としても役立てるべく、並行世界の日本国やその世界を滅したいというのがムネタカの狙いなのだ。
だが、弾道ミサイルによる攻撃は攻撃対象国はおろか世界に対する絶縁宣言でもあり、一度でも撃ってしまうと国際社会から締め出され、経済的&軍事的圧力をかけられ孤立してしまうのだが、彼等にとってはそんなものは目くそ鼻くそのようなものらしい。
「どうだ。これは今の発達した科学技術の進歩無しには叶えてくれないんだぞ。そして此処暫く、我が王国軍は一度も派兵してはいない。この辺りで我等が誇る軍事力を蛮族らへ披露したいのだ」
言いたいだけ言ったムネタカは尚もそう言う。
だが、そう言いながらも人を殺したい欲求と魂胆は見え見え。なんだかんだ理由や屁理屈をくっ付けて戦争をしたがるのがムネタカという国王なのだ。
「…よし、では是非を問う。この中で今余が言った計画に反対する者はいるか?」
そしてムネタカはナカサワを置いてきぼりにし、今の自分の計画に異議をある者がいないか問う。
周りを見渡すと、反対意見を述べる者はいない──いや、いた。
『…王様。一つだけ…問うても宜しいでしょうか?』
「なんだナカサワ。お前は何を問いたい?」
それがナカサワである。
ムネタカから半ば置いてきぼりにされてきた彼はムネタカの言葉を聞いた瞬間から、今後の王国の行末を案じていたのだ。
『ははっ……果たしてその作戦をして、我が王国が勝てるのでしょうか?…そして、王様はその自信はお有りなのでしょうか?』
「フッ……そんなの決まってる。この世界では圧倒的な科学技術力を持つ我が王国の勝ちに決まっているだろう。それにだ。余に自信が無ければ、そのような計画は言わないし公言もせぬ。そしてだ、今回の計画は単にミサイルを撃つだけではない。我が海軍が保有する世界最強の艦隊「第07艦隊」も出す予定なのだぞ? 流石の蛮国一味もそれには敵わぬだろう?」
ナカサワの問いにムネタカはそう言った。
今の今まで言ってなかったが、今回の計画には海軍の主力艦隊たる「第07艦隊」も参加予定だと言う。
「第07艦隊」は神聖日本王国海軍が保有する4大艦隊の中でも一二を争う大艦隊で、所属しているのはウリヤノフスク級ベースの重原子力航空巡洋艦2隻と、キーロフ級ベースの重原子力巡洋艦11隻、スラヴァ級ベースの大型フリゲート15隻と、アドミラル・ゴルシコフ級フリゲート15隻、そして艦隊所属の海軍歩兵連隊を擁する各種揚陸艦5隻に補給艦10隻の総数58隻で構成されており、その全ては首都たる東京特別市にあるアジア最大の海軍基地「東京湾基地」を母港としている。
因みに所属されている艦艇は皆、塗装を漆黒の如き黒色で塗られている為、公式で「漆黒の艦隊」という愛称もつけられている。
そして何より王国海軍は海軍国家たる神聖日本王国の顔として、王国の揺るぎない強大さと尊厳を最も表していると言われており、中でも第07艦隊は国王が直接派遣や攻撃を指示でき、歴代国王の威厳と尊厳を最も良く表していると言われている。
そして、今回の計画には弾道ミサイルのデータ取りや護衛として派遣される予定らしい。
「もう一度言う。この案に異論を唱える者はいるか?」
王様が念のためにもう一度聞くも、反対の声は聞こえない。
…というか反対したところで彼を止めることは出来ず、下手をすればムネタカの怒りを買い、王宮や今居る大広間を警護している近衛兵からPP-19やPP-19-01の9×18mm マカロフ弾やPPK-20の9×19mm パラベラム弾をプレゼントされてしまう危険性があるからだ。
「我が王太子よ、異論は無いな?」
ムネタカは少し遠くの席にいた王太子「セイジ・トモチカ」へと問いかける。
「あぁ…」
訊かれた彼は力無く応えた。
もうこの人に何を言っても無駄だとばかりに。
異論が無いのを確認したムネタカは続けて言う。
「…宜しい。やはり、この王国は我の思い通りになるのだ。…では軍務卿よ。我が王国が誇る艦艇と洋上プラットフォームを建造する為の作業船と測量艦を並行世界の2020年代へと送れ」
「ははっ、畏まりました。では、海軍へ巡洋艦1隻と大型フリゲート2隻の1個分隊、そして洋上プラットフォーム建造のために海軍工兵隊を派遣するようお伝え致します!」
命じられたハラダは即座に立ち上がり、王国軍総司令部へと向かうべく大広間を後にする。
「フッ…見てろ……紛い物の世界に住まう者どもよ。
ハラダが玉座の間を離れると、ムネタカは自信に満ちた表情でそう言い、ナカサワを率いて玉座の間を離れる。
そして、軍務卿とムネタカがいなくなった玉座の間では不穏な空気が漂い、並行世界の日本国と血を流し合う戦争への足音が確実に聞こえていたのだった……
本編に登場した兵器解説
・重水素爆弾
神聖日本王国が保有する大量破壊兵器の一つ。
100Mt級の破壊力を持つと言われ、その破壊力はかつてソビエト社会主義共和国連邦が開発した、かの有名なツァーリ・ボンバを優に超える。
運用プラットフォームは主に爆撃機や戦闘爆撃機。
・ポリ窒素報復殲滅兵器
上記の重水素爆弾と並ぶ、神聖日本王国きっての大量破壊兵器。
ポリ窒素を用いた爆弾又はミサイルで、その破壊力は核兵器を優に超える。
運用プラットフォームは海軍の大型巡洋艦や戦闘爆撃機、空軍の爆撃機など。