日本VS日本   作:もちうさ

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既に投稿済みですが、加筆修正を加えています。
それでは、続きをどうぞ。




第2話 『The First contact(姿なき屠殺者)

 

 

 

 ムネタカ王が諜報局からの報告に激怒し、並行世界の日本国とその世界を屠るための計画を発動した日の夜、王宮の財務卿の執務室では──

 

 

「はぁ……明日中に軍の費用計上の書類を出せとはな…きまぐれで軍隊を動かしやがって。…ったく…」

 

 

 財務卿が眉間の眉を顰めながら、デスクの上に置かれてあるタブレットや電卓とにらめっこしていた。

 

 そこに出されていた数字は今回の派兵に関する費用、海軍艦艇の弾薬や燃料費、将兵らの人件費に、もし日本国側の攻撃で艦艇が損傷した場合の修理費や撃沈された場合の引き揚げやサルベージにかかる費用、そして第07艦隊の全体の費用である。

 

 財務卿はムネタカや王宮長官のナカサワから今回の軍の派兵にかかる費用計上額の書類を明日出すようにと命じられ、睡眠時間を削って仕事をしていたのだ。

 

 

「この国には、他にもやらねばならないことが沢山あると言うのに……どいつもこいつも胡座をかきやがって…」

 

 

 電卓を叩いていた財務卿は、小休止とばかりにデスクに置いていたコーヒーのタンブラーを持ち、窓から見える首都──東京特別市の夜景を肴になまじ働いている脳内に苦味を流し込む。

 

 

「陛下も陛下なら、ハラダもハラダだ。2人とも口先だけで軍を動かしやがって…並行世界の日本国の実力が分かってから派兵しても遅くないっていうのに…2人は一体何を急いでいるんだ?」

 

 

 自分の実力や政治手腕を見せないと天国にいるパパから怒られるからか?

 

 財務卿はムネタカの父であり先代であった、故ムネオの政策を継承する彼をそう皮肉る。

 

 そして、その矛先は同時にムネタカに同調する軍務卿ハラダに対しても向けられた。

 

 

「戦争好きの筋肉ダルマめが。戦争を起こすのは簡単だが、前線へ行くのは一体誰なのか分かってないようだな。かつて海軍歩兵師団で1個中隊を率いていたお前が」

 

 

 ムネオにヘッドハンティングされる前まで、かつて海軍の歩兵師団で海軍大尉として1個中隊の中隊長をしていたハラダ。

 

 財務卿は数々の戦場へ赴いていた経験を持つハラダが、まさかここまで戦争に対する認識力や想像力が欠落していたことにうんざりとする。

 

 気分屋のムネタカや戦争主義者のハラダに、右向け右のムネオ派の連中ども。

 

 1990年代にムネオが王位を継ぎ、自身と思想を共にする主流派『ムネオ派』が創設されてから、王国ではムネオ派による独断政治が続いてきたが、気づけばこの王国ではムネオ派のご機嫌ありきで政治が行われてきた。

 

 そして、それにもついに限界が来ていることも財務卿は勘付いていた。

 

 

「長官閣下も気づいているだろう…この国はとうの昔に腐っていることにな。よく今まで、あのアホ2人のご機嫌を取ってきたもんだ」

 

 

 財務卿は王宮長官として、ムネタカのご機嫌と急進的なハラダを諭してきたナカサワをそう褒める。

 

 

『ムネオ陛下の威光を借りるドラ息子に口だけの進言は無駄だ…ならば、ここは一つ、敢えて派兵を認めて、日本国にボコボコにしてもらった方が彼らにとって良い薬になる。見とけよ戦争屋どもめが…』

 

 

 財務卿はそう考えを変えて、1分1秒でも早く寝るために費用計上の仕事に没頭し続けた。

 

 

 

***

 

 

 

「艦橋よりCIC。レーダーに敵影はあるか」

「こちらCIC。対空及び対水上レーダーに敵影無し」

「了解。ソナー室はどうだ?」

「こちらソナー室。アクティブソナーに反応無し」

「了解した。今後も警戒を巌となせ。我が国の庭先だからと気を緩めるなよ」

「「了解」」

 

 

 神聖日本王国による並行世界の日本国を含む世界の殲滅作戦が決行されてから24時間後。

 日本国は排他的経済水域、正確に言えば小笠原群島から南50kmの海域を行く2隻のイージス艦の姿があった。

 

 日本国国防海軍の「あおば級イージス駆逐艦」の1番艦「あおば」と2番艦「よこすか」。

 ともに『まや級イージス駆逐艦』の改修型である2隻は1個水上隊を編成し、共に毎年ハワイで行われる環太平洋合同演習(RIMPAC)の帰りで母港の横須賀基地を目指し帰国の途についていた。

 

 「あおば」の艦橋では艦長の「岩窪雅紀」海軍大佐がCICと通信を交わし、艦橋にいる戦術長や航海長が各々の部署や部下へ指示を飛ばす。

 

 だが、艦内の空気は終始和やか。艦橋もCICも警戒はしているものの、隣の士官同士で話し合ったり笑い合ったりしており、艦橋でも艦長の隣にいた航海長の「田中雅紀」海軍大尉が話しかける。

 

 

「…横須賀まであと1000kmか……毎年ながら、行き来合わせて長い旅路ですね」

「…あぁ。だが、毎年行く側からすれば、もう慣れたようなもんだがな。大尉は今回で5回目だったか?」

「…えぇ。今でこそもう慣れてはいますが、最初なんて酷かったんですよ?海軍士官学校を卒業して、そのままこの艦に配属された直後にハワイへ連れて行かれましたから」

「ハッハッハッ。それはご苦労だったな。ポッと出の新米士官がいきなり国際交流しろと言われて困惑するのも無理はない」

 

 

 因みに今回、2隻が参加したのはアメリカ合衆国海軍の「ロナルド・レーガン空母打撃群」及び、第2空母航空団との合同演習。

 戦後より続く日米同盟の強固さと連携を今一度再確認すると共に、お互いが両国の強さを噛み締め、「敵国じゃなくて良かった」と安堵の溜息を漏らすのがお決まりである。

 

 そして、演習が終わった後の国際交流もまた、参加している各国の海軍兵たちのお楽しみでもある。

 それを最もエンジョイしていたのは──

 

 

「…んで、大尉は今回もサッカー対決を?」

「…あぁ。今年もサッカー対決をさせてもらったよ。で、今年もPK対決で勝たせてもらった」

 

 

 そう。CICに所属し、各オペレーターへ指示を飛ばすCIC長である「川瀬拓哉」海軍大尉だ。

 

 田中大尉と同期である川瀬はRIMPACに参加して以来、各国の海軍兵と交流。そして毎年サッカー対決をしており、これまで負けたことはない。

 そして対決した各国の海軍兵からは「カワセは海軍を辞めて、今すぐ何処かのサッカークラブにでも入れ」と毎年愚痴られている。

 

 何なら各国の海軍兵が協力して日本側のゴールを狙うも、サッカーは素人な筈の川瀬には何故か敵わないという。

 

 仮に川瀬の攻勢を躱しても、日本側のゴールを守っていたのは海軍に職を移す前はプロのサッカークラブでゴールキーパーをしていたという異色の士官だった為、ゴールを狙えなかったのは一緒なのだが。

 

 そんなこんなで平和なムードが流れている2隻のイージス艦だが、イージスシステムの根幹を成す、SPY-1D(V)レーダーは既に謎の異変を感じ取っていた。

 

 

「ん…?なんだこの熱源は…」

 

 

 きっかけはCICにいた1人のレーダー員がSPYレーダーが捉えた謎の熱源に首を傾げたことだ。

 そして彼はすぐさまその旨を艦橋へ報告し…

 

 

「…艦長。CICから報告です。SPYレーダーが謎の熱源を捉えたとのことです。自艦から距離50km。方位300」

「…熱源?ここからは何も見えないぞ。レーダーの故障では無いのか?」

「はい。CICからの報告では、同じ反応を3つ拾ったとのことです」

 

 

 副長の「町田貴教」海軍中佐の報告に岩窪は双眼鏡を覗き込み、眼前に広がる大海原を眺める。

 

 

「レーダーが拾ったとは言うが、ここからは何も見えないぞ……熱源なら蜃気楼のようなものが見えても……………ん?…副長、あれは何だ?」

「何か見えましたか?」

「…ウェーキのようなものが見えた。まるで船が走ってるような…」

 

 

 岩窪が見つけたのは、まるで船が通ったあとに出来るウェーキのようなものだった。

 そして、その洋上では、よく目を凝らしてみないと分からないレベルで蜃気楼のようなものがゆらゆらと揺れているのが見てとれた。

 

 

「なんだ、あれは………」

「艦長、ここは一つ、念の為に戦闘配置を命じては?」

「そうだな…ここは突発事態に備えて下令しよう」

 

 

 副長の進言を聞いた艦長は総員戦闘配置を命じ、乗組員はそれぞれの持ち場へと就いた。

 

 

「航海長、機関第3戦速。闇雲に近づくのは危険だ」

「了解。操舵員、機関室、機関第3戦速」

「アイサー!機関第3せんそ〜く!」

 

 

 イージス艦「あおば」と「よこすか」は戦速を緩め、突発事態に備える。

 

 2隻のイージス艦が捉えたウェーキと熱源の正体。それは──

 

 

『こちら重原子力巡洋艦「コレチカ・トモチカ」艦長フミタカだ。並行世界の日本に到着した。各艦、応答せよ』

『こちら大型フリゲート「セイヤ・トモチカ」。レーダー及び火器管制に異常無し』

『こちら大型フリゲート「ユウキ・タカセ」。此方もレーダーや火器管制に異常無し。測量艦と作業船を含む海軍工兵隊からも異常は無いとのことです』

 

 

 熱源の正体は神聖日本王国海軍の重原子力巡洋艦「コレチカ・トモチカ」と、大型フリゲート「セイヤ・トモチカ」&「ユウキ・タカセ」からなる1個分隊と洋上プラットフォーム建造のために共に派兵された測量艦と作業船からなる海軍工兵隊だ。

 

 彼等はムネタカの「並行世界の日本国をぶっ潰し、建造した洋上プラットフォームで世界を弾道ミサイルで焼き払え」という勅令を受け、東京湾基地を出港。

 

 そのまま首都から南に100km先にある国家最高機密である「タイムワープゾーン」から空間軸を移動し日本国の排他的経済水域へと辿り着き、王国海軍艦艇に標準で搭載されている光学迷彩たる『OK-80 "Spektr(スペクトル)-G1"光学的隠蔽装置 (NATOコードネーム:「ロキ」)をフル稼働させていたのだ。

 

 王立海軍兵器廠により開発された当システムは、艦体表面に貼り付けられた数万枚の「液晶・プラズマ複合型エミッター・タイル」により、背景の光を艦の反対側へ投影、若しくは再現が可能なアクティブカモフラージュ技術であり、稼働させると文字通り「姿を消す」ことが可能。数海里離れた場所から海と空の境界線に溶け込んだように見えるため、発見は不可能だ。

 

 だが、このシステムは電力を膨大に使用するため、150mmレールガンや180mm超電磁レールキャノンの充填速度やレーダー出力は50%制限され、また、原子力艦の原子炉から発する熱や波を切り裂いた時にできるウェーキまで隠すことはできない。

 

 

『…よし。計画通り事を進めるぞ。副長、工兵隊を先に差し向けろ。洋上プラットフォームの設置場所は?』

『…ここです艦長。この「オガサワラ」と呼ばれている群島群から南西に50kmの座標に設置致します』

『…よし。ならば我等護衛艦隊は待機。敵が現れたら排除執行せよ』

『了解』

 

 

 1個分隊を率いるキーロフ級ベースの重原子力巡洋艦「コレチカ・トモチカ」艦長、「フミタカ・イシイ」海軍大佐は副長へそう命令し、配下のスラヴァ級ベースのフリゲート2隻と共にSpektr-G1で隠蔽したまま待機。先に工兵隊を敵の餌代わりに差し向けた。

 

 そして、海軍工兵隊の作業船と測量艦はそのまま設置予定の座標へと向かう。

 

 因みにこの2隻の作業船と測量艦には不釣り合いなほどの重武装が施されており、AK-130 130mm連装速射砲にAK-630M、RBU-6000 対潜ロケットランチャーにKord重機関銃まで備えられている。

 

 

 その頃、国防海軍のイージス艦でも──

 

 

「CICより艦橋。レーダーに反応。2隻の小型艦らしき艦影を捉えました。方位220。距離50km」

「…小型艦?」

「えぇ、見た感じでは軍艦や巡視船ではない模様で、またIFFにも応答がありません」

「…了解。もう少し近づくぞ。航海長、機関微速」

「了解、操舵員、機関微速」

 

 

 岩窪の命令で2隻のイージス艦は少しずつ距離を縮め、一部の士官らは艦長の命令で武器庫から制式小銃のH&K HK416を取り出して実弾を装填し、臨検に備える。

 

 そして、CICにいた川瀬は……

 

 

「大尉。偵察衛星から画像が届きました。モニターに映します」

 

 

 部下と共に偵察衛星が捉えた画像と睨めっこをしていた。

 

 

「コイツら何者だ?この艦の形…なんとなくロシア船っぽくないか?」

「えぇ、それにIFFにも応答が無い…いうことはロシアか中国でしょうか?」

「…流石にそれはあり得ないな。彼等がここに用があると思うか?…それに、海軍旗はおろか所属国家の旗さえも確認できない…宇宙人かエイリアンなら話は早いがな」

 

 

 レーダーが捕捉し、偵察衛星が捉えた不審船に悶々としている川瀬。

 その間にも2隻のイージス艦は海軍工兵隊の測量艦と作業船へ近づくべく、舵を切り、第3戦速で接近していた。

 

 

「不審船まで距離、40km」

「各自、攻撃に備えろ。攻撃があった場合、即時撃退せよ」

 

 

 敵からの攻撃に備える2隻のイージス艦。

 Mk38 25mm機関砲とFN Sea deFNderの射撃準備を整え、敵へと突っ込んでいく。

 小型の不審船なら全然対処のしようもあるのだが、彼等は知らなかった。

 

 自分たちの目の前にロシア艦の皮を被った文字通りの化け物が潜んでいることを……

 

 

『こちら海軍工兵隊第1小隊。奴等が我々に気づきました。しっかり我々に近づいていますよ』

「了解。副長、敵との距離が30kmを切ったら光学迷彩を解除し、180mmを起動しろ。フリゲートにも150mmレールガンの砲撃用意を下令せよ」

「了解」

 

 

 フミタカの指示を聞いた副長はフリゲート2隻に下令しようと艦内マイクに手を取った瞬間…

 

 

「いや…待て」

「…艦長?待てとは?」

「…まだ撃つな。まだだ。奴等がご挨拶を終えてからにしよう…」

 

 

 フミタカは何かを思いついたのか、途端に腹黒い笑みを浮かべ、艦長専用の艦内マイクを手に取る。

 

 

 その頃、2隻の小型艦へと近づいた2隻のイージス艦は……

 

 

「不審船を確認。何かを投下してる模様」

「さてさて…あちらさんは一体何の用でお邪魔してきたか訊いてみるとするか」

 

 

 「あおば」の艦橋では艦長と副長、航海長の田中が不審船へのコンタクトを試み、CICではCIC長の川瀬がディスプレイに映る不審船の目的と謎の熱源の正体について更に調べ上げる。

 

 

「不審船は作業船と測量艦…レーダー員と見張り員、熱源が放つウェーキの正体は分かったか?」

「はい、ウェーキの長さから計算すると、民間船舶、たとえば貨物船や輸送船のウェーキと比較すると明らかに小さく、そして、レーダーのサーマルでも原子力空母なみの熱を確認していることから、恐らくは原子力艦……原子力空母以外ですと、ロシア海軍のキーロフ級では無いかと…」

 

 

 レーダー員や見張りから伝えられた答えに川瀬は眉を顰める。

 

 

「キーロフ級だと?あれはソ連が作り上げたミサイル巡洋艦の皮を被った戦艦だぞ。そいつがいるのか?」

 

 

 当時、建造するためにわざわざ過去の戦艦の設計図を引っ張り出してまで設計され、ステルス艦の元祖とも言われる"生きる戦艦"、キーロフ級。

 

 顔では冷静を保っているものの、信じられないという心境のまま、艦橋にいる艦長や副長、航海長の田中へと伝えることにした。

 

 その艦橋では…

 

 

「作業船に測量艦か……ならば話は早い。ここは我が国の排他的経済水域だ。他国による経済活動は国際法で禁止されている。副長、警告の用意を」

「了解」

 

 

 艦長の指示を聞いた副長が不審船への警告と臨検を伝えるべく、艦内マイクを手に取ろうとした刹那──

 

 

《ガガッ──ガガッ──ご機嫌よう。並行世界に住まう民たちよ。聖なる強国よりご挨拶に来させてもらった》

 

 

 途端に無線が入り、聞いたことのない男の声が聞こえてきた。

 

 

「こちら、日本国国防海軍イージス艦「あおば」。貴君らの所属を名乗れ」

《これはこれは。御挨拶が遅れてしまった。我等は神聖日本王国海軍、重原子力巡洋艦「コレチカ・トモチカ」艦長「フミタカ・イシイ」海軍大佐だ。大型フリゲートの「セイヤ・トモチカ」と「ユウキ・タカセ」、あとはエサ…いや、作業船と測量艦も連れてきた》

 

 

 男の声から聞こえてきた神聖日本王国という謎の国と、重原子力巡洋艦や大型フリゲートという軍艦、そして艦長を名乗る「フミタカ・イシイ」という海軍士官に岩窪らは首を傾げる。

 

 

「この世界に貴君の言う国は存在しない。目的を答えろ。貴君らは何処から来た?」

《だから何度も言ってるだろう。御挨拶に来たと。……そう。陛下の逆鱗に触れた貴様ら蛮族どもへ裁きを下しにね》

 

 

 と、通信が切れた途端、光学迷彩が解かれ、同時にバリバリバリと耳が痛くなるほどのパルス音や衝撃がイージス艦のクルーらを襲い、眼前にキーロフ級やスラヴァ級をベースに一回り大型化した、正真正銘の化け物が姿を現した。

 

 

「方位220に敵艦視認!」

「なんだあれは……」

「あれが巡洋艦とフリゲートだと?あのバケモノが?」

「キーロフ級やスラヴァ級って、あんなにデカかったか?」

「そんなわけない!真ん中のあいつに至っては大和型並みにデカいぞ!」

 

 

 眼前に現れた王国艦に「あおば」と「よこすか」の乗組員らは目をひん剥く。

 

 そして、CiCにいた川瀬らもその威容に言葉が出なかった。

 

 

「…やっと正体を現したか。ここは先手必勝だ。……ガガッ、CICより艦橋。艦長、射撃許可を願います」

 

 

 川瀬は艦橋にいる艦長へ射撃許可を願うと、艦長はすぐさま許可。

 対空戦闘並びに対水上戦闘が出され、各々のクルーらは水密扉を閉じて持ち場に就く。

 

 

「艦長よりCIC!レーダー員、レーダー出力を上げろ!」

「了解!レーダー出力、最大にします!」

「航海長、機関最大戦速!」

「了解!操舵員並びに機関室!機関、最大戦速!」

 

 

 「あおば」と「よこすか」では敵艦に対する攻撃体制が整いつつあったが、先にフミタカら王国艦が攻撃用意を済ませていた。

 

 

「艦長より中央指揮所並びに武器管制。対艦ミサイルと180mmの攻撃は?」

『こちら中央指揮所。UKSK VLS10番と11番、P-800発射用意完了!」

『こちら武器管制!180mm超電磁レールキャノン、砲撃用意完了!』

 

 

 重原子力巡洋艦「コレチカ・トモチカ」はP-800オニキスと、対艦榴弾を装填した180mm超電磁レールキャノンの充填を終え、2隻の大型フリゲートもベースとなったスラヴァ級でお馴染みの艦舷に並ぶ対艦ミサイル発射管の蓋が開き、P-1000ヴォルカーノ超音速対艦ミサイルと150mm連装レールガンの砲撃用意を済ませる。

 

 

 

『…艦長、敵艦に対する攻撃準備が整いました』

 

 

 副長が艦長へそう伝えと、フミタカは口角を上けてこう言った。

 

 

「…全艦、攻撃開始。さぁ、レクイエム(鎮魂)の始まりだ」

 

 

 その刹那、180mm超電磁レールキャノンと150mmレールガンが青白い電光を散らしながら火を吹き、遅れてP-800とP-1000がVLSやランチャーから飛び出した。

 

 

 

***

 

 

 

「目標諸元、入力完了」

「9番から17番のVLSを使用。SM-2攻撃用意」

「主砲弾装填。方位000。射撃統制システムにも異常なし」

 

 

 王国艦が攻撃用意を済ませる数分前、イージス艦のCICは各ミサイルや主砲の射撃準備を整え、あとは艦長による命令を待つのみとなっていた。

 

 

 すると……

 

 

「CICより艦橋!敵艦より飛翔体を確認!方位そのまま、弾数3!」

「対艦ミサイルの接近を確認!」

「対空戦闘!スタンダード攻撃用意!撃ち方始め!」

 

 

 先手を切ってきた王国艦に2隻のイージス艦はすぐさまSM-2を発射。

 「あおば」と「よこすか」から発射された合計5発のSM-2は母艦からの中間誘導をもって、敵ミサイルへ接近。そして近接信管を作動させて見事に仕留めた。

 

 

 だが、180mmと150mmの連装レールガンから発射された対艦榴弾や対艦フレシェット弾は熱を発さないことからSM-2の目標から逸れてしまった。

 

 

「本艦のSM-2、敵砲弾に命中せず!弾着まであと1分!」

「弾薬の出し惜しみはするな!スタンダードで撃ち落とせ!」

「アイ・サー! 目標諸元入力完了!」

「スタンダード第2陣、撃て!」

 

 

 川瀬の咄嗟の判断により艦首側のVLSの蓋が開き、SM-2が飛び出した。

 水平射撃モードで解き放たれたSM-2はブースターを捨て、目標へと飛翔する。

 

 

「目標インターセプトまであと10秒……5、4、3、2、1…マークインターセプト!!」

「…どうだ?」

「敵砲弾に命中! 敵砲弾、第2陣第3陣、第4陣と第5陣を確認!」

「続けて撃て! 間に合わなければCIWSで撃ち落とせ!」

 

 

 川瀬の判断により艦首側と艦尾側のVLSからスタンダードやESSMが飛び出していき、敵砲弾を食い破っていく。それでも対処しきれない砲弾に対しては艦首に鎮座する20mm CIWS、ファランクスBlock1B ベースライン2が敵砲弾を捉え──

 

 ブウォォォォォォォォ!!!!!!

 

 毎分4000発の連射速度を誇る性能を発揮し、砲弾を撃ち落とさんとばかりに火を吹く。

 

 

「撃ち落とせぇぇぇぇ!!!!!」

 

 

 川瀬の雄叫びが届いたのか王国艦が放った対艦フレシェット弾は見事に迎撃したと思いきや……

 

 ズドォォォォォォン!!!!!

 

 ファランクスによる迎撃には間に合ったものの、まさかの自艦の真ん前で閃光を放って誘爆。その衝撃波と爆風に「あおば」は大きく揺れ、艦内、とりわけ艦橋では何処かに身体や顔を激しくぶつけたり吹っ飛ばされたりして、多くの怪我人が出てしまった。

 

 その中には艦長と副長もいて、2人は駆けつけた衛生兵と救護班により艦橋を離れ、医務室へと担ぎ出されることになった。

 

 その直前、艦長は航海長の田中へこう伝えた。「CIC長の川瀬を臨時の艦長に任ずる。貴君らでこの艦を、クルーたちを、そして母国たる日本国を護れ」と。

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、日本国国防海軍へ攻撃を敢行した王国海軍艦艇は……

 

 

『艦長。対艦ミサイルと砲弾は迎撃されました。されど弾薬はまだたっぷりとあります故、問題ありません』

「…了解。フッ…これで連中どもの実力はわかった。中央指揮所と武器管制は攻撃を続行せよ。全てはムネタカ陛下のため、そして我が海軍を強化してくださったムネオ陛下のため。我等の宴はまだ始まったばかりだ」

 

 

 フミタカの指示を聞いた中央指揮所と武器管制をはじめ、艦橋にいた航海長と砲術/ミサイル長ら乗組員らは艦長の命令を復唱し艦を動かしていく。

 

 その中で艦長は満足げに艦橋の天井近くに飾られていた神聖日本王国の国旗と王家たる「トモチカ王家」の紋章と王国海軍の軍旗、そして今の精強たる王国海軍を作り上げた名君にして、王家きってのやり手の冷酷非情な独裁者だった「ムネオ・トモチカ」の自画像を見上げ、ニヤリと薄気味悪い不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

 

***

 

 

 

「イージス艦あおばに敵砲弾が命中しただと!?」

「ひ、被害は!?」

「…敵砲弾による直接の被害は報告されておりません。幸い命中する直前に砲弾を迎撃しましたが、その誘爆に巻き込まれて艦長以下の多くが負傷したとのことです」

 

 

 「あおば」と共闘していたイージス艦「よこすか」。

 2隻の大型フリゲートが放った砲弾を全て迎撃し、王国海軍と渡り合っていたこの艦では今、僚艦が被った被害に戦慄だっていた。

 

 あの敵砲弾が誘爆した時の衝撃波と爆風は計り知れないものであり、こちらにもその威力は感じ取れたので、それをモロに受けた「あおば」はさぞ手痛い一撃を食らったであろう……

 

 もしそれがこっちにも届いていたら自分たちはどうなっていたのか…

 そう思うだけで血が凍る。

 

 

「副長」

「はっ!」

「僚艦へ伝えよ。この艦が何が何でも御守りすると」

「…了解致しました!」

 

 

 艦長の「飯田純一」海軍中佐は何が何でも自艦が僚艦を護るという覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 その「あおば」では──

 

 

「艦長! 副長!」

 

 

 呼び出された川瀬はドタバタと艦橋へ駆け込むも、そこに2人の姿はなく、居たのはたった数人のクルーだけであった。

 

 

「…田中、お二人は?」

「2人とも先程の敵砲弾の誘爆で負傷した。今は医務室で手当てを受けているが今すぐの復帰は難しい。…んで、その2人から言葉を預かっている」

「言葉?」

「"川瀬、お前を臨時艦長に任ずる。この艦とクルーと、そして母国たる日本国を護れ"…とな」

 

 

 そう言われた川瀬は辺りを見回すと、艦橋のクルーが川瀬を見つめていた。

 

 しかし、今までCICに配属されていた一士官が急に艦長をせよと言うのも無理な話である。CICは別として、この艦に配属されているクルーの多くが自分と同期か、士官学校出たての新米か、下士官か、はたまた海軍上等軍曹から1番下っ端の海軍二等軍曹なのだから。

 

 だが、その中で訓練と実戦を1番経験しているのは20代半ばの尉官である川瀬と田中くらい。なんなら2人は今後の国防海軍きっての若手のホープであり、岩窪はそれを知ってた上で、川瀬を臨時艦長へと任じたのだ。

 

 

「…分かった。俺があおばの臨時艦長を務める。絶対に生きて帰すから、俺にしっかり着いてこい!」

「…あぁ。そうこなくちゃ」

 

 

 川瀬が臨時艦長としての任を受けると田中は砕けた笑みを見せた。

 

 

「総員、戦闘配置につけ!」

 

 

 川瀬の指示で、各自は戦闘配置に着いていく。

 

 

「ガガッ──こちらイージス艦あおば。艦長と副長が負傷し離脱したため、この川瀬海軍大尉が臨時艦長を務めることになった。長い付き合いになるかもしれない。よろしく頼む」

「こちらイージス艦よこすか。副長の安元だ。君のような若人と戦えることを嬉しく思う。艦長も大喜びだ。サァ、最後まで暴れてやろうじゃないか!」

「フッ、そんなの当然です。奴等にはお帰り頂く前に礼儀ってヤツを教えてやります」

「おうとも!!! さて、行くぞ!!!」

 

 

 副長の雄叫びに2隻のイージス艦のクルーたちの士気は上がり、敵艦目掛けて加速し出した。

 

 

「CIC指示の目標。撃ち方始め」

「撃ち方始め! 一斉発射!!」

「川瀬よりCIC。妨害電波を出せ」

「了解。ECM開始」

 

 

 川瀬の指示によってVLSからSM-6が発射。そして電子戦装置が稼働し王国艦へ対して妨害電波を発し始めた。

 

 

「主砲弾装填よし!射撃用意よし!」

「主砲、撃ち〜方始めぇぇ!!」

 

 

 そこに「あおば」と「よこすか」の5インチ単装砲が加わり、重原子力巡洋艦と大型フリゲートへ一斉に火を吹く。

 

 

『敵艦から反撃!主砲による砲撃ですっ!』

『敵ミサイル接近中!弾着まで、あと2分!』

「中央指揮所、カシュタン射撃用意」

『了解。対空捜索レーダーより目標捕捉。カシュタン射撃用意……撃て!』

 

 

 3隻の王国海軍艦艇はCIWSであるCADS-N-1カシュタンとAK-630Mによる迎撃を試みる。

 カシュタンの6K30GSh 30mmガトリング砲やAK-630MのGSh-6-30 30mmガトリング砲から凄まじい発射速度で火の壁を構成。大きな触手で絡め取っていくようにSM-6を迎撃していく。

 

 そして、狙っていた艦隊決戦を行うべく150mmレールガンと180mmレールキャノンの砲撃を行おうとするも……

 

 

『こちら射撃管制!目標ロスト!敵の妨害電波で目標を捉えられません!』

『なんと小癪な…海軍ならば、正々堂々艦隊決戦で雌雄を決するべきではないのか!! なんて不埒な敵なんだ!!』

「艦長より中央指揮所及び射撃管制。"例のアレ"を試すぞ」

 

 

 主に使用する対艦フレシェット弾と徹甲榴弾には目標を捉えるシーカーが備えられており、主に自艦からのデータリンクで使用されるのだが、今はそれが全く使い物にならないのだ。

 

 しかし、フミタカの自艦にはまた別の秘策があった。

 それがフミタカ艦長が言った"例のアレ"。既存の防空システムが対応できない秘策──そう、極超音速ミサイル『3M22ツィルコン』と180mm超電磁レールキャノン専用弾である『特殊砲弾』である。

 

 

「撃て撃て撃て撃てぇ!!!!!」

「沈め沈め沈め沈め沈めぇ!!!!!」

 

 

 そんな中、イージス艦「よこすか」は果敢にも主砲を撃ち込む。

 何が何でも僚艦を護ろうと決意した艦長の命令により、艦は加速。そのまま5インチの砲弾の雨を降らせていたのだ。

 

 

「CICより艦橋。敵旗艦左舷、機銃群の破壊を確認!」

「1基のCIWSの停止を確認!」

「敵護衛艦、主砲塔と右舷機銃群並びに2基のCIWSを破壊しました!」

「よしよし、このまま押し切るぞ!」

 

 

 川瀬が臨時艦長となって士気を取り戻したイージス艦「あおば」と「よこすか」による5インチ砲とミサイルによる一斉射撃は確実にフミタカが率いる1個分隊にダメージを食らわせていく。

 

 

『こちら中央指揮所!敵艦からの砲撃で左舷機銃群に損傷あり!カシュタン1号機並びにAK-6301号機も故障!』

『艦長、大型フリゲート「ユウキ・タカセ」より通信。150mmレールガンと右舷機銃群、AK-6302〜3号機に異常ありとのことです』

「たかが蛮族の分際で栄えある王国艦に傷を付けるなど万死に値するぞ…フッ、ならばここで鎮魂歌の終わりといこう。砲術/ミサイル長、我が隊に接近中の敵艦へ目標を固定せよ。その敵艦を生贄にする」

『了解!』

「中央指揮所並びに射撃管制。ツィルコンと特殊砲弾の発射用意は?」

『こちら中央指揮所。UKSK VLS1番、3M22発射準備完了』

『こちら射撃管制。特殊砲弾装填完了。レールキャノンへの電力充填完了です』

 

 

 フミタカは自艦へ果敢に5インチ砲弾を浴びせてくるイージス艦「よこすか」を生贄にすべく、ツィルコンの発射指示とレールキャノンの特殊砲弾の発砲を命じた。

 

 そして、2隻の大型フリゲートも主砲と対艦ミサイルを矢継ぎ早に発射。

 

 それに対してイージス艦はスタンダードやESSM、CIWSといったハードキルや、妨害電波や国防海軍艦艇に独自で装備されているチャフ/フレアディスペンサーといったソフトキルで迎撃していく。

 

 そしてお返しとばかりにミサイルを発射。

 だが、川瀬と田中が見たのは、カシュタンとAK-630Mが作り出す火の壁によって迎撃されていく姿であった。

 

 

「やはりAK-630とカシュタンが邪魔だな…」

「あれさえ突破できればいいのだが…」

 

 

 敵艦への感想を述べる2人。

 そこへCICから主砲による砲撃がなされたと通信が届いた。

 飛翔速度的に此方の主砲で全然迎撃できそうだったので、川瀬は5インチ主砲による迎撃を行うよう命じる。

 

 と、ここで川瀬に一つの疑問が浮かんできた。

 それは……

 

 

「…おかしい。敵の攻撃に一定のラグがある……なんでだ?」

 

 

 そう。今までの戦闘で王国海軍艦艇に共通していたのが、主砲やミサイルといった攻撃に何故かタイムラグがあることなのだ。

 

 現代の海軍艦艇は主砲やミサイル、魚雷といった火器は全てCICで一元管理されており、何ならレーダーや戦闘システムともリンクされており、なんなら同時に撃つこともできる筈。

 

 だが王国海軍艦艇は主砲発砲とミサイル発射に何故かラグがあるのだ。

 

 西側海軍のように一元管理されていない海軍といえば、各戦闘部の独立性が高いロシア海軍が挙げられるが、まさか、目の前にいる敵艦はロシア海軍やロシアのシステムを取り入れているというのか?

 

 そしてそこに敵艦がロシア艦に酷似、いや、それらをベースに化け物へ仕上げていることにも説明がつく。

 ひょっとすると奴等は長年、旧ソ連やロシアと長い外交関係を築いてきたのかもしれない。

 

 その川瀬の推測は大正解であり、今後の国防海軍が戦いを有利に進めていくことになるのだが──

 

 と、その刹那──

 

 

「こちらCIC! 敵艦からミサイル発射の兆候を確認!」

「敵艦、ミサイル発射!」

 

 

 CICから伝えられた敵艦のミサイル攻撃。  

 何なら此方へもミサイルが迫っており、中でも狙われていたのは──

 

 

「──っつ!? て、敵艦より対艦ミサイル接近中!!弾数32!」

「スタンダード攻撃はじめ!」

「総員、衝撃に備えろ!」

 

 

 僚艦のイージス艦「よこすか」であった。

 重原子力巡洋艦から放たれたP-800オニキスと大型フリゲートから放たれたP-1000ヴォルカーノは32発という大群で襲い掛かり、イージスシステムにより迎撃されるも、仕切れなかった残り2発のミサイルが徹底的に「よこすか」を痛めつけた。

 

 

「敵ミサイルが艦首に着弾! 艦体前部断裂!」

「機関制御室、CICに被害!」

「ダメコン班!浸水してる箇所を閉鎖しろ!」

「ダメですっ!ダメコン追いつきません!」

 

 

 1発のP-800オニキスが5インチ砲が鎮座する艦首を食い破ったことで、艦首が完全に吹き飛び、そこから海水が滝の如く流れ込んできた。

 

 そこへ更に1発のP-1000がトップアタックで上部構造物へと着弾。

 レーダーマストは艦橋の付け根から折れ曲がるように倒れ、背後の煙突はごっそりと手で抉られるような形で吹き飛び、SSM-1Bが格納されていたミサイルランチャーが誘爆したことで艦体がそこを境に前後に引き裂かれてしまった。

 

 

「総員退艦!総員退艦!」 

「生きてるやつは海へ飛び込め!躊躇するな!」

「死にたくなけりゃ早く飛び込め!」

 

 

 「あおば」の通信管制からは被弾した「よこすか」の痛々しい悲鳴が木霊する。

 火焔が吹き伸び、黒煙を上げるその様は正しく地獄のようだ。

 

 電子双眼鏡でその姿を見た川瀬は背筋が凍りそうになる。

 

 だが、艦長フミタカは「よこすか」をこのまま放ることはしなかった。

 何故なら、まだこの艦を生贄にしてはいなかったのだから……

 

 それを知らない「よこすか」ではゴムボートが投げられ、クルーが次々と脱出する。

 その様子を艦橋から見ていた艦長と副長、砲術/ミサイル長は…

 

 

『艦長、敵艦よりクルーが脱出しておりますが……撃沈させますか?』

「…予定の変更はない。そのまま敵艦を屠る。砲術/ミサイル長、ツィルコンとレールキャノンの準備は?』

『はっ、ツィルコン、レールキャノン共に発射準備完了。そして艦長、私に指示をください』

「あぁ……砲術/ミサイル長、ツィルコンとレールキャノン発射。航海日誌に記入せよ」

『了解!』

 

 

 艦長は狂気に満ちた獣のような表情を見せ、砲術/ミサイル長へツィルコンとレールキャノン発射を指示。イージス艦「よこすか」に対する死刑執行を命じた。

 

 3S14 UKSK VLSに収められていた3M22ツィルコンの蓋が開き、350口径180mm超電磁レールキャノンは正確にクルーが逃げ出した「よこすか」へと向き、

 

 

「レクイエムのエンディングだ。生贄にしろ!」

『ミサイル、主砲発砲!』

 

 

 重原子力巡洋艦は無慈悲にも、ツィルコンと超電磁レールキャノンを発射。

 

 既にミサイルで痛めつけられた艦体をマッハ9という極超音速でツィルコンが貫通。「よこすか」の艦体をバターナイフのように切り裂き、そこを180mm超電磁レールキャノン放たれた特殊砲弾が貫通。

 

 最早ハードキル(やり過ぎ)とも言える攻撃に「よこすか」は残っていたミサイルや主砲弾薬、魚雷などが誘爆する形で激しく大爆発。排他的経済水域の深海へとその身を沈めていく。

 

 

「──っつ!? い、今のは何だ!?」

「て、敵艦発砲! イージス艦よこすか、沈没しました!!」

「CICより艦橋。イージス艦よこすか沈没を確認。レーダーロスト…」

「チッ…」

 

 

 無慈悲にも僚艦を沈められ、悔しさを滲ませる川瀬は田中と主に視線の先にある王国艦を睨みつける。

 

 すると…

 

 

「ガガッ──これで分かっただろう。これが我が王国海軍と我らが王国の強さだ。これ以上犠牲を増やしたくなければ、我等へひれ伏すことだ。叛逆するようなら……次は貴様らの番だと思え。フッフッフッ…」

 

 

 「あおば」へとスピーカーを向けて、大音量で警告したフミタカは大型フリゲートらと共にSpektr-G1を作動。その巨体にベールをかけるように姿を消した。

 

 

「…アイツらは…アイツらは一体誰なんだ? 神聖日本王国だと? そんな国、この世界には存在しない筈だし、第一聞いたこともない…一体何が目的なんだ?」

「…さっき通告した全てだろうな。…にしても、随分とド派手にやってくれたもんだ。此方としても反撃のプランを練らねばな。だが、その前に「よこすか」のクルーを救出するぞ」

 

 

 悔しさと困惑が混ざり合う田中と冷静を取り戻した川瀬はついさっき味方を血祭りにあげてくれやがった敵艦がいた海域を見つめる。

 

 神聖日本王国とか言う、何処の馬の骨だが分からん国に軍事介入され、イージス艦一隻を失った日本国。

 

 その日本国の防衛を一手に担うことになった川瀬は、反撃プランを練る前に一先ず海へと飛び込んだ僚艦のクルーを全員引き揚げることとした。

 

 

 

***

 

 

 

 日本国国防海軍と神聖日本王国海軍とのファーストコンタクトから2日後──

  

 神聖日本王国は首都、東京特別市。

 そこの王家が所有する王国きっての一等地に堂々と鎮座している王宮。

 

 その大広間では王宮長官たるナカサワと軍務卿であるハラダから報告を聞く国王ムネタカの姿があった。

 

 

「…そうか。ふむ…1隻沈められたのはかなり大きい。幸先良いスタートを切れたではないか。ナカサワよ。後で海軍へ褒美を贈っておけ」

「ははっ!畏まりました!」

「……して、陛下。海軍総司令部からの報告では、会敵した敵艦は2隻であり、そのうち1隻は沈めましたが、もう1隻は生き残っているとのことですが、如何なさいましょう?」

「そうだな。…うむ、では更なる増援として東京湾基地から艦艇を派遣しろ。巡洋艦、フリゲート、潜水艦、なんでもだ。そして我等が誇る圧倒的な物量で掃滅するのだ」

「ははっ。して、いつ頃の派遣をお考えで?」

「…今だ」

「ははっ。畏まりました。では、その旨を早速海軍総司令部へお伝えしてきましょう」

 

 

 ハラダはムネタカへ一礼をした後、足早に大広間を後にする。

 2人残されたムネタカとナカサワは

 

 

「しかしながら王様。まさかここまで計画が上手くいくとは…このナカサワ、御見逸れ致しました…」

「フン、決まっているだろう。元来よりこの王国は世界でもトップクラスの精強さを持っておる。そして、その計画を練り実行に移したのはこの我なのだ。…ということはだナカサワ。この聖戦、既に我が神聖日本王国の勝ちに決まったも同然なのだ。奴等が戦艦を持っていれば我等が誇る第07艦隊を出すことも考えたが…それか無い限りは安泰である」

 

 

 ムネタカは玉座で座りながら得意げな表情でワインを一口含むと

 

 

「この聖戦、既に我が王国の勝ちも同然!!! 蛮国日本国と並行世界の蛮族どもよ、貴様らは精々、我等の強大さに平伏し、跪くがいい!!!」

 

 

 早くも"聖戦"の勝利宣言をし、高らかに笑うのだった……

 

 

 







あぁぁ…1700億円のイージス艦が…(´;Д;`)
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