日本VS日本   作:もちうさ

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今回はイージス艦「あおば」VS王国海軍特殊部隊との戦闘話です。
2026 3/8追記:サブタイトル変更とストーリー変更を加えました。






第3話 『The Invasive Tide(招かれざる客)

 

 

 僚艦である「よこすか」を沈められてから早2、3日が経ったある日。

 王国海軍による僚艦の惨殺を目撃し、たった1隻だけ生き残らされ、航行していたイージス艦「あおば」の艦橋では…

 

 

「はぁ、はぁ……そうでありますか…えぇ、はい……え?無人機で?」

 

 

 艦長席に座る川瀬が目の前に広がる大海を眺めている隣で、臨時副長に任ぜられたバディの田中は艦内電話で横須賀の基地本部と連絡を取っていた。

 

 既に僚艦が沈められたことは海軍作戦本部も把握しており、負傷したクルーは全員、急遽派遣されたUS-2やヘリコプターで近くの国防軍病院へ搬送。

 そして、生き残った「あおば」に対しては今のところ、応援を送ることはできないと言ってきた。

 

 だがそれは、何も海軍にやる気が無いとか仲間を見捨てる訳ではなく、知らぬ間に自国の経済水域に入り込んで軍艦1隻を沈めた国籍不明の軍艦に半ばパニックになっていたのだ。

 

 見たことのない国旗に海軍旗を掲げ、ロシア艦に酷似した艦体を一回り大型化させ、戦艦紛いの大口径の主砲とVLSや対艦ミサイルランチャー、CIWSにまるで林のように林立する各種レーダーが設置された、文字通りの化け物とも言える重武装艦。それが3隻も現れ、僚艦を沈めたというのだからパニックになるのも無理はない。

 

 そして、今も連中どもは人喰い鮫のように厚顔無恥にも他人の家の庭を彷徨き、獲物を狩ろうと息巻いている。

 

 そして、その3隻の他にも謎の国籍不明の船が小笠原諸島から西に50〜100kmの地点で錨を下ろして何やら作業をしている。

 

 そう。此処は最早、敵の生息域。奴等のテリトリーになってしまった以上、海軍としても下手に動けず、たとえ味方を助けたり援護に向かおうにも敵に察知されてしまい2次被害や3次被害、下手をすれば取り返しのつかない事態にも繋がりかねないのだ。

 

 だが、だからと言って海軍は手をこまねいている訳でもなく、奴等に対する対策を伝えるべく、田中へ伝えていたのだ。

 

 

「はぁ、はぁ……了解しました」

 

ガチャン…

 

 

 受話器を置いた田中へ隣の川瀬が話しかける。

 

 

「何か収穫はあったか?」

「…あぁ。海軍から良いニュースと悪いニュースが来たが、お前はどっちから聞く?」

「…お前の顔色で事情は察した。援軍は来ないんだな」

「…その通りだ。海軍としては今のところ応援を送るつもりはないとのことだ。水上戦闘艦、戦闘機、そして潜水艦もだ」

「…まあ、そりゃそうだろうな。ここは既に敵の巣窟と言っても過言ではない。俺たちを助ける為に送り込んだ味方を死なせるほど、海軍もお上も野暮じゃないからな」

「…まあせめて戦闘機は送り込んでくれよとは思うがな。でも、奴等はまだどんな兵器を隠し持っているのか分からない。せっかく応援に来てくれたのに、ステルス性を持たせた艦対空ミサイルやら極超音速兵器やら撃たれて堕とされたら笑えないからな」

 

 

 キーロフ級とスラヴァ級をベースにしつつも、まるで自分たちが小さく見える程までに大型化された艦体。 

 

 そこから向けられた常軌を逸する洋上打撃能力と防空能力。

 

 その全てが、これまでの自分たちの常識とはかけ離れていた。

 

 その分だと、隠し持っているミサイルも高度なステルス性やECM能力を持たせてあるのかもしれないし、未だ会敵していない潜水艦だって、どんな性能を持っているのかさえも分からない。

 

 だが、敵は今がチャンスとばかりに艦艇や戦闘機を差し向けてくる可能性もゼロじゃない今、味方の増援が無いのはやはり痛手である。

 

 

「奴等の艦艇は今のところ3隻…3隻なら、この艦でも戦えるが……」

「増援が来たら面倒になる、だろ?」

「…そういうこと。緒戦でバカスカ撃ちまくったから、残弾の確認も取れてないからな。それこそ艦隊規模で来られたら、弾数の少ない俺たちは仲良く二階級特進だ。…ところで良いニュースはなんだ?」

「良いニュースってのが……聞いて驚け。海軍はどうやら無人偵察機や攻撃機で俺たちのサポートに周り、空軍からも無人機を出してもらうつもりらしいぞ」

 

 

 田中の言葉を聞いた瞬間、川瀬はニヤリと口角を上げる。

 

 海軍が田中へ伝えた対策、それは無人機による援護並びにデータ共有である。

 

 高高度からの偵察や対艦攻撃、強行偵察や威力偵察といった任務には無人機は正にうってつけ。特に今のような状況では無人機のメリットを最大限に発揮できるのだ。

 

 

「高高度からの偵察や攻撃なら、どれだけ奴等に対空能力があろうが関係ないからな。レーダーの性能にもよるが、これが精一杯だと海軍は言ってた」

「…無人機となると、RQ-4C(トライトン)MQ-9(リーパー)MQ-1C(グレイイーグル)か…下手に有人機を送り込むよりかはマシだな」

「そういうこと。無人機の誘導でなら、こちらはレーダーを使うことなく敵さんを血祭りにできるし、その逆も然りだ」

「…奴等が持ち得てないであろう最高の切り札だな。更に救出した僚艦のクルーもいるから人員には余裕がある。あとは残弾を調べて効率よく敵を制圧していくのが俺たちに課せられた任務だ」

「だとすると、今後はあのような艦艇と会敵することになる。こちらとしても、気を引き締めなければな」

 

 

 2人は艦橋の前に広がる大海原を眺めつつ、海軍作戦本部から達せられた内容について話すのだった…

 

 

 

***

 

 

 その頃…

 並行世界は神聖日本王国。お昼を迎えた首都、東京特別市にある王宮では……

 

 

「それでは王様。こちらの書類にサインを」

「…うむ」

 

 

 王宮の国王の執務室では出された書類にサインをするムネタカと王宮長官のナカサワ、そして執務室のデスクの上に書類を差し出した海軍長官「ユウスケ・オオノ」海軍中将がいた。

 

 その他にも王国軍長官である「ジュンヤ・イシダ」海軍大将と王国軍総参謀長「コウスケ・ハマナガ」海軍准将、そして"死の商人"との異名を持つ、王立海軍兵器廠のCEO「ジュンイチロウ・ミヤギ」という王国軍と海軍の錚々たるトップに加え、王国と国交を持つロシア政府の軍事顧問団や高官、国外に兵器を輸出する国営の武器輸出企業であるロソボロネクスボルトの役員らまで来ていた。

 

 そんな中、ムネタカがサインをしたのは王国海軍向けの軍艦や戦闘機の納入契約だった。

 

 契約されたのは重原子力巡洋艦15隻と大型フリゲート32隻。

 そしてロシアからはリデル級原子力駆逐艦とステレグシュチィ級とグレミャーシュチィ級フリゲート、更にロシア将来航空母艦としてロシアが建造を計画しているプロジェクト23000E"シトルム"とアドミラル・ゴルシコフ級フリゲートの改良型である"超ゴルシコフ級フリゲート"、そしてそれらをベースにした王国艦である。

 

 戦闘機としては、海軍航空団向けとしてSu-27ベースのRF-27の艦載機改良型RF-27KM3と、Su-37ベースのマルチロール機RF-37の艦載機仕様RF-37KM、防空軍や空軍向けのステルス戦闘機RF-57やそのベースとなったSu-57の改良型、Su-57M1とSu-30SMEである。

 

 額に換算すると実に5兆〜6兆円にもなり、かつてムネオがロシアから旧ソ連式の装備品や設計図などを含めた超大口契約を先方からの言い値で買い叩いて以来、実に30数年ぶりのことである。

 

 何故そのような大口契約に至ったのかと言うと、ムネタカは今の王国海軍の艦艇や戦闘機の保有数には些か不安や不満があったのだ。

 

 確かに王国海軍の保有艦艇数は300隻と先進国の中では一二を争う数であり、そしてどの艦艇も満載排水量は20000トン級や35000トン級という常軌を逸するものであり、どれだけ小さくても重フリゲート7000トン級、フリゲートや警備艦ではそれ以下であるが、21世紀に於いて、かつての巡洋戦艦に匹敵する艦を持っているのは神聖日本王国のみである。

 

 だが、その保有数は主力艦艇たる重原子力航空巡洋艦や重原子力巡洋艦、大型フリゲートではそれぞれ16隻と14隻、11隻ほどしか持っておらず、警備艦やフリゲート、哨戒艦や強襲揚陸艦、各種揚陸艦に潜水母艦や潜水艦、各補給艦を合わせた総数──300隻という数は由緒ある海軍国家というプライドを酷く刺激していたのだ。

 

 因みに王国4大艦隊、第07艦隊に所属する艦艇を除くと、その保有数はもっと減ってしまい、これではもし艦隊が有事の際に行動不可になった場合や任務に送り込むことができない時に、この聖なる島国を護る手段が減ってしまう。

 

 それに加えてムネタカが自身が所属する超強硬派閥たるムネオ派と画策している王国成り上がり計画の最終目標であるアメリカとの最終戦争(タイマン)では、今のままでは確実にアメリカ(敵国)と比べると量で負けてしまう。

 

 それを未然に防ぐべく、ムネタカはナカサワや軍務卿たるハラダと相談。

 財務卿に無理矢理首を縦に振らせて、追加購入の予算を捻り出したのだ。

 

 ──この我が王国が世界の覇権を握るためには、必ずやあの不粋でクソッタレなアメリカ人どもを屈服させなければならない。

 それがこの世界を戦争の無い平和で安寧な世界へと導けるし、何より父で先代たるムネオ様の願いでもあるからだ。

 

 ムネタカはそう心情を漏らしながら、デスクに出された書類にサインを入れていく。

 

 ムネオ派の最重要殲滅目標、アメリカ合衆国。

 彼らはアメリカを中心に回っている世界秩序をぶち壊し、王国を中心とした"安寧な支配"を目指しているのだ。

 

 ちなみにムネオ派は何もアメリカだけを毛嫌いしているわけではなく、神聖日本王国と同じくアジアにある中華人民共和国も彼等にとっては目の前のたんこぶだし、アメリカと歩調を合わせる同盟国も地域関係なく、いつかぶっ殺してやると息巻いているのだ。

 

 その結果、ムネオ派が主導する神聖日本王国の友好国はフランスや大英帝国、イタリアやポーランド、モナコにチェコ、アイルランドといったアメリカからは一定の距離を取っているヨーロッパ諸国にロシアと中東各国、あとは王家と長い付き合いのあるマレーシアやシンガポールのみで、他の国や地域は大金を持っている国を除き『文明を知らぬ愚かな蛮族』として切り捨てているのだ。

 

 そうしてサインがされた契約書類をジュンイチロウが満足げにカバンに入れ、彼等はゾロゾロと執務室を後にするとムネタカは真隣にいるナカサワに訊く。

 

 

「…してナカサワ。彼の並行世界の日本国はどうなっておる?」

「ははっ、陛下がお命じになった計画でございますが、海軍総司令部と並行世界へ派遣された艦艇によると、計画は当初の予定通り進んでいるとのことです。日本国及び並行世界を焼き払うべく建設が進んでいる洋上プラットフォームも順調に建設が進んでおり、あと2〜3週間ほどで各弾道ミサイルの搬入が可能になるかと」

 

「そして、会敵した日本国の海軍艦艇ですが、生き残った1隻は今のところ確認できていないとのことでございます」

 

 

 ナカサワからの報告を聞いたムネタカは余裕のある笑いを上げる。

 

 

「ハッハッハッハッハッ!!左様であるのだな!!それを見るに奴等は我等の力に恐れ慄き、小便を漏らしながらビビっているときた。並行世界の日本国か……フン。我が王国とは格の違いがありすぎるわ」

 

 

 ムネタカは自身の計画が上手く進んでいることに喜々としつつ、日本国との軍事力の格差を嘲笑うかのようにほくそ笑む。

 

 

「左様でございます。そして、未だ生き残っている敵艦に対しては──」

「…逃げることしか能のない可哀な連中どもだ。そのうち勝手に野垂れ死ぬ。まあ、奴等が我等に叛逆するようであるならば、増援を送り込んで叩き潰すのみ。…しかし……うむ、そうだな。ここは一つ、奴等に世界に名だたる由緒ある聖なる海軍国家たる我が王国の強大さを教え込むのもいい。…ナカサワよ、ハラダを呼べ」

「…ははっ、承知致しました」

 

 

 ナカサワは執務室の電話で軍務卿のハラダを呼んだ。

 

 コンコンコンコン……

 

 

「…陛下、失礼します。お呼びでございましょうか?」

「ハラダか。今、並行世界の日本国へ送り込んでいる艦艇は3隻であったな?」

「えぇ。洋上プラットフォーム建設の作業船と測量艦の護衛に重原子力巡洋艦1隻と大型フリゲート2隻の1個分隊を送り込んでおりますが──」

「…それを増やせ。奴等は未だ生き残っているらしい。我が王国からすれば、日本国なぞ敵では無いのだが、3隻では流石に心許ない。海軍総司令部へ増援の派遣を命じよ」

「承知致しました。して、編成はどういたしましょう?私としては、重原子力巡洋艦を旗艦にした1個分隊と重航空巡洋艦を旗艦にした1個艦隊に潜水艦隊司令部からも潜水艦も派遣させた方がよろしいのでは…」

「使い物にならん潜水艦まで動員するのは余の癪に触るが、ここはハラダの進言を受け入れよう。では、すぐさま海軍総司令部へ差し向けるよう伝えろ」

「ははっ!!承知致しました!!」

 

 

 ムネタカからの拝命を受けたハラダは足早に執務室を後にし、その足で直接、海軍総司令部へと向かった。

 

 

「クックックックッ…この圧倒的な物量こそ、我が王国の強さたる所以だ……可哀な日本国よ、貴様らは耐えられるか?」

 

 

 ムネタカは執務室でナカサワに見守られる中、日本国を蔑むような笑みを見せ、まるで全能感に満ちたような雰囲気を醸し出していた。

 

 そしてそれから2〜3日後、王国海軍総司令部を擁する東京湾基地からは重原子力巡洋艦1隻と大型フリゲート3隻からなる1個分隊と、重航空巡洋艦を旗艦にした1個艦隊、そしてタイフーン型をベースにした重原子力潜水艦が増援として送り込まれていった。

 

 

 

***

 

 

 

 その頃、並行世界の日本国。

 夜を迎え、満天の星が夜空を彩る中、小笠原諸島から西に100kmの地点をゆくイージス艦「あおば」の司令部作戦室(FIC)では…

 

 

「…このように奴等の敵艦は、戦艦なみの艦砲射撃能力とロシア艦譲りのミサイル投射能力と防空能力を併せ持った極めて特異なものであると……」

 

 

 臨時艦長へ任ぜられた川瀬とその相棒たる田中に戦術長や航海長といった幹部らが集まり、今後の作戦方針を立てていた。

 

 その中には僚艦たる「よこすか」の人員もいる。

 乗っていた艦を沈められ、命からがら救い出してくれた「あおば」の為に敵に一矢報いるために合流してくれた彼等もまじって、如何にしてあのチート級のバケモノを沈めようかと話すなか、川瀬は資料をデスクの上に置きながら話す。

 

 

「…国防軍の偵察衛星が捉えた画像だ。神聖日本王国という国籍を騙る3隻の敵艦は現在、自艦からそれぞれ方位2-2-0と方位0-1-5、そして方位0-5-0の位置に陣取っている。距離はおおかた100nm(ノーティカルマイル)(185.2km)といったところだな」

 

  

 川瀬が1枚ずつ書類をデスクの上に置いていく。

 そこに添付された敵艦の写真に彼等は改めて息を呑む。

 

 

「ふむ…それにしてもまあ、まるでお手本みたいにソックリだな。コイツがキーロフ級で、コレがスラヴァ級か…それに加えて推測排水量で20000トンと35000トン…文字通りの化け物だな」

「こんな化け物を何隻も持っていたら年間でいくらかかるんだ?よほど裕福じゃないと、直ぐに国の財布はパンクするぞ」

「我が国も昔は金剛型に長門型や加賀型、大和型を持っていたが、今じゃこれほどデカい艦はただの金食い虫だな」

 

 

 写真を前にして感想を漏らす彼等。

 キーロフ級とスラヴァ級をベースに王国の執念で一回り大型化され、艦首に鎮座する主砲──大型フリゲートなら150mm、大型巡洋艦になると180mmというトチ狂った主砲や甲板に敷き詰められたり並べられているVLSや対艦ミサイルランチャー、近接防空システムや各種レーダーが彼等の興味を引く。

 

 と、参加していた1人の幹部がこう言った。

 「…ひょっとして奴等にはまだ大艦巨砲主義が生きているのか?」と。

 

 それに対し、共に参加していた「よこすか」の戦術長「大庭隆信」海軍少尉もそれに賛同する。

 

 

「…イージス艦よこすかの戦術長、大庭です。私も彼の推測には賛同します。奴等の艦艇がこれほどまでに大きく、かつ大口径の主砲を揃えているということは、彼の国には未だ大艦巨砲主義が生き残っているかもしれません。そして、あの時の戦闘ではミサイルではなく、この大口径主砲による射撃で攻撃を仕掛けてきました。そして、この艦が迎撃する前に誘爆した際の威力を自艦で計測した結果、おそらくは…大和型の46cm砲弾、小さくても長門型やアイオワ級の41cm砲弾に相当する破壊力があるのではないかとする結果が出ました」

 

 

 かつての戦艦、大和型や長門型、アイオワ級に匹敵する水上打撃能力。

 これはもう、現代を生きる戦艦に他ならない。

 

 

「どうりであれだけバカスカ撃ち込んできたわけだ。っていうことは、自艦の5インチ砲弾なんて奴等からすれば豆鉄砲ってことなのか?」

「そうとは限らないぞ田中。あの時の戦闘では、5インチ砲弾でも通用したからな。特に、甲板の近接防空火器や機関銃架、主砲塔にはダメージを食らわせることができたからな」

 

 

 敵には豆鉄砲ではないかと思っていた5インチ砲弾であるが、実は重原子力巡洋艦と大型フリゲートへは、一定のダメージを食らわせることができていたのだ。

 

 それに重原子力巡洋艦艦長フミタカ大佐は、たかが蛮国のクセにクソ生意気だと憤慨。特に砲弾をぶち込んでいた「よこすか」へ殺意の刃を突き立てて、生贄にしたのだ。

 

 

「キーロフ級と言えば、戦艦の設計図を引っ張り出して建造されたんだよな?ってことは、重要防御区画(バイタルパート)に装甲は施してたりするのか?」

「こればっかりは撃ち込んでみないと分からない。それでも艦橋に命中したら司令部連中は全員死ぬだろうな」

「もし施してたらマジもんの戦艦だぞ」

「…だとしても対処は簡単だ。幸いにも動きはノロいから、奴等の機関室辺りに魚雷をお見舞いすればいい。そうしたらドッカーンだ」

「ハハッ、簡単に言ってくれる」

 

 

 この男がいる限り、この艦は安泰だ。

 田中は軽く笑いながらも川瀬が指揮を取ってくれていることに有り難みを感じ取る。

 そして、共に作戦会議に参加していた彼等も、川瀬と田中の仲の良さから来るコンビネーションの良さに感心し、この2人がいればこの戦いには生き残れると安堵のため息を漏らす。

 

 

「…で、今敵艦がいるのはそれぞれの方位に100海里だったよな?」

「…あぁ、100海里だ」

「100海里ならSPYレーダーの索敵範囲内だな。スタンダードミサイルも届く。だが……今のところレーダーに反応はあるか?アレ、消えるんだろ?」

「あぁ、夢か幻じゃなく本当にな。戦術長、SPYレーダーに反応は?」

「はっ、今のところレーダーに反応はありません。奴等に狩られる前に念のためにレーダー出力を上げておきましょうか?」

「…頼む。あと、ミサイルと5インチ砲弾の在庫はあとどれぐらいだ?」

「ミサイルと砲弾の在庫なら、5インチ砲弾が残り10発程度な気がします。ミサイルはスタンダードがSM-2とSM-6があと35〜6発、ESSMが20発、トマホークが最新のBlockⅤが49発とBlock Ⅳが6発、あと対艦巡航ミサイルのLRASMが15発あります」

 

 

 ミサイルはもとより砲弾の数がかなり心許無い。

 あの時の緒戦で、かなりの数を消費してしまったのが主な要因だ。

 

 

「砲弾は在庫がつきそうだな……ん?確か…記憶違いならいいんだが、ハワイでの実弾射撃演習の際に用いた超音速発射体(HVP)があったと思うが…」

「…HVPですか?えぇ、いくつあったかは確認を取らないと分かりませんが…」

 

 

 戦術長は無線で主砲弾薬庫にいたクルーに確認を取らせると…

 

 

「確認が取れました。HVPは訓練で使用した数を除くと、あと50発はあるとのことです」

「それなら大丈夫だ。レールガンには劣るが芍薬のと比べると破壊力は段違いだからな。それで奴等の装甲をブチ抜ける」

 

 

 HVPの在庫の確認が取れた川瀬が話したのは、あの緒戦で敵艦に対して覚えた違和感のことだ。

 

 

「…あの戦闘の際、敵艦は主砲もミサイルも使用していたが、発射や使用のタイミングに若干のタイムラグがあった。皆も知っている通り、現代艦艇ではレーダーや火器管制は全てCICで受け持っている。だが、奴等の艦艇はどうも各部署の独立性が高過ぎて、連携が取れていないと俺は考えている」

 

 

 そして、その証拠も用意されており、CICの通信士官に傍受した通信内容を流してもらう。

 

 

《艦長より砲術/ミサイル長、敵ミサイルを迎撃せよ》

 

《了解。砲術/ミサイル長より中央指揮所、カシュタンを起動せよ》

 

《了解。こちら中央指揮所。対空ミサイル発射。防空管制室はカシュタン起動用意》

 

《こちら防空管制、了解した。カシュタン起動》

 

《敵ミサイル確認。艦長より中央指揮所、対空ミサイル発射用意》

 

《S-300F 1番から13番、発射用意》

 

《目標割り当て完了!!》

 

《防空管制より艦橋、カシュタン起動完了。ガトリング砲発砲しま…》

 

《中央指揮所より防空管制、対空ミサイル発射後にカシュタンを使え》

 

《…な、何を言ってるんですか!?我が方の対空ミサイルの数は…》

 

《敵ミサイル接近中!中央指揮所、対空ミサイル発射!》

 

《ミサイル着弾まで、5…4…3…2…1…クソッ!外しました!》

 

《…中央指揮所、邪魔するな!…レーダーが敵砲弾を確認!……クソッ、間に合わない!…こうなれば此方でカシュタンを撃つ!ガトリング砲撃て!》

 

《ドッカァァァァン!!(爆発音)》

 

《クソッ…艦長よりダメージコントロール室、被害を報告せよ!》

 

《こちらダメージコントロール室!左舷機銃群とカシュタン1号機やられました!》

 

 

 

 それを聞いた彼等は目を丸くする。

 

 

「本当に各部署の独立性が高いな…まるでロシア海軍のようだ」

「現代艦艇なんだ、よな…?」

「彼の国はロシアと仲良しなのか?」

 

 

 各々が感想を述べている中、1人の士官が手を挙げた。

 

 

「イージス艦よこすかの航海長、田辺です。今の通信傍受を聞くに、奴等の艦艇は川瀬大尉の言う通り、各部署の独立性が高いことと、かつての戦艦や超弩級戦艦、巡洋戦艦のような艦砲射撃を戦術に取り入れていると推測しますが…皆さんの見解はどうでしょうか?」

「あぁ、俺も正に田辺少尉と同じ見解だ。理由は定かではないが…彼の国の海軍はロシア由来の戦術と戦艦めいた艦砲射撃をぶちかます艦艇を主力に添えたい、という事情があると思われる」

 

 

 川瀬も自身と同じ見解を示した田辺に賛同。

 続いて田中や他の士官たちも次々と賛同した。

 

 そこから見えてきた奴等の弱点は──

 

 

「ここまで連携が甘いと、戦略や戦術にも綻びが見え隠れしている。それに加えて、あの大柄な艦体では回避の際にかなり時間がかかってしまう。恐らく大和型のように一度舵を切っても、艦がついていくまでに90秒はかかるのかもしれない」

「そう考えると、案外チョロいのかもな。こっちがミサイルを撃って回避機動を取っている間に命中できるのかも。主砲の射程圏はまだ分からないが。発射炎が見えないところを見るに、電磁投射砲を使ってるのかもな」

「それなら射程圏をだいたい500km〜1000kmと仮定すると…タクティカルトマホークなら3000km、LRASMでも500km前後なら攻撃可能だから、射程圏にさえ入らなければ案外倒しやすいのかもしれん」

 

 

 次々と上がっていく攻撃のプラン。

 ついさっきまで表情を強張らせていた彼等は、いつも通りのリラックスした表情になっていた。

 

 

「そして、会敵する前に捕捉した作業船と測量艦と思しき不明の艦であるが…それも無人機で撮影されている」

 

 

 川瀬が次に見せたのは、日本国及び並行世界を焼き払うべく建設が進んでいる洋上プラットフォームの様子を高高度から撮影した写真だ。

 

 

「これは…プラットフォームか?一体何のためにこんな海域に建てている?臨時艦長殿、貴殿は何か分かるか?」

「さあな。それに関してはサッパリ分からない。だが、奴等がいるのと、このプラットフォームには何が関係があるのではないかと俺は睨んでいる。例えば護衛とかな」

「だとしたら合点がいくな。要するに奴等はこのプラットフォームに俺たちを近づけさせたくないから、あれだけ殺意を剥き出しにしてるってことだろ」

「あぁ。その真の目的はナゾだが、少なくとも、神聖日本王国しか知り得ない野望や謀略に俺たちが巻き込まれたことは確かだ」

 

 

 またもや「う〜ん」と糞詰まりのような表情を見せる川瀬たち。

 と、同時にいとも簡単に他人を巻き込ませる神聖日本王国の身勝手さに憤りを超えて、最早呆れ果ててもいた。

 

 

「…ま、取り敢えず今できることは、敵さんを1隻でも多く蹴散らして、この国のシーレーンを護り切るってことだな」

「そういうこと。順調に敵を倒し続けたら、彼方さんも何かアクションを起こすだろうから、其れ迄の間は俺たちは俺たちのできることをやるまでだ」

 

 

 田中の言葉を継ぐように答えた川瀬は戦術長と航海長へと向き、こう告げる。

 

 

「それと戦術長と航海長。俺から一つだけ頼みがあるんだが、いいか?」

「何でございましょう?」

「どうした?何でも言ってみろ」

「…俺は艦長より臨時艦長の任を受けて、この艦と僚艦のクルーの命を預かっている。もちろん臨時副長の田中もいるから、命を落とすことはそうそう無いとは思うが…それでももし、俺や田中が任務を遂行できなくなった時には、2人に変わって艦長と副長の任を引き継いで欲しい」

 

 

 川瀬はそう言いつつ2人へ頭を下げると

 

 

「了解した。有事の際は俺が艦長の任を受けよう」

「俺もだ。今後の海軍を担う若人を、そうやすやすと失わせる訳にはいかんからな」

 

 

 2人は笑ってそれを了承した。

 

 そしてその後も、川瀬と田中を中心に神聖日本王国海軍の軍艦に対する対策会議は夜通し続けられた。

 

 

***

 

 

 翌朝。

 川瀬たちが敵艦──神聖日本王国の軍艦に対する作戦を編んでから2日後。

 

 

「CICより艦橋。応援の無人機が海域上空に到着しました。既にリンク16接続済みです」

 

 

 CICからの通信を聞いた川瀬と田中は電子双眼鏡で見ると…

 

 

「シーガーディアンか。鹿屋の連中だな」

「あっちも見てみろよ。MQ-1C(グレイイーグル)も来てるぜ」

「空軍の三沢基地から遠路はるばるやって来てくれたか」

 

 

 と、2人がいる艦橋に通信が入ってきた。

 

 

『ガガッ──こちら国防海軍鹿屋基地所属、無人偵察任務隊ホーク1。応援に来たぞ、若人殿』

「こちらイージス艦あおば、艦長の川瀬だ。今回の援軍に感謝する」

『岩国と三沢の連中も着いたみたいだから、後で挨拶しとけよ。岩国では念のために哨戒機や新型の対潜無人機も待機させてるらしい』

「任務が終わったら、全員に奢ると伝えてくれ」

『了解了解』

 

 

 鹿屋との通信を切り、岩国や三沢からの通信を行なった川瀬は再度、艦内マイクを手に作戦に参加している全員へこう伝えた。

 

 

「艦長より全乗組員並びに無人機全部隊へ。奴等を叩き出すぞ。ゲームの始まりだ」

 

 

 緒戦で負った損害を帳消しにする心意気でそう伝え、イージス艦「あおば」を加速させた。

 

 

 

 

 

 

 

 そのころ──

 

 

「並行世界の日本国、経済水域へ到着」

「了解。光学迷彩解除」

 

 

 川瀬たちが敵艦──神聖日本王国の軍艦に対する作戦を編んでから2日後。

 

 ムネタカとハラダの命令によって派遣された増援が到着した。

 そのうちの1隻、ムネタカ・トモチカ級重原子力巡洋艦、艦番号NRC030、艦名「コウゾウ・スガ」の艦橋では──

 

 

「着きましたな。艦長」

「あぁ…にしても、此処は一面海しか無いな。我が王国にも此処のような水域はあるが、大半は資源採掘プラットフォームや海軍のプラットフォームといった()()を築いている。だがここは……」

 

 

 ──何も無い。

 3隻の大型フリゲートを率いる1個分隊の長でもある艦長「ユキミチ・エンドウ」海軍大佐はそう心情を漏らし、一面に広がる日本国の排他的経済水域を眺める。

 

 まるで文明から遠く離れた、いや、置いていかれたと錯覚する程、大海原が一面に広がっている。

 

 

「…副長。彼等もしっかり連れてきたか?」

「はっ、ご心配なく。国王並びにハラダ殿の要請どおり、全艦連れてきています」

 

 

 副長の言葉を聞いた艦長はフッと余裕の笑みを見せ

 

 

「蛮国の自然に見惚れる暇はない。これより作戦を開始する。作戦専任将校、()()を出せ」

「ははっ!!」

「砲術/ミサイル長、もし彼等が被害を受けた場合に備えて、全ての主砲とミサイルランチャーの照準を定めておけ」

「…了解!!」

 

 

 艦長の命令を聞いた幹部らは復唱し、仕事をこなしていく。

 

 その頃「コウゾウ・スガ」の艦尾にある内火艇用ハッチでは──

 

 

「…各員、聞け。今回の作戦は我等が聖なる強大な王国に楯突いた愚かな蛮国、日本国の軍艦を制圧するのだ。ハラダ殿からは捕虜は要らぬから見つけた敵兵は全員殺せと申せられている。このくらいの仕事なら、我が栄えある王国海軍の特殊部隊の諸君にとっては朝飯前の筈だ。皆、作戦開始までにキッチリ装備品を確かめ、ケツの穴を閉めろ」

 

 

 ハッチにいたのは、特殊部隊を思わせる真っ黒の戦闘服にヘルメット、そして利き手に携えるSIG SG551やSG553、AK-19といったアサルトライフル。

 そう。彼等こそが王国海軍が誇る特殊部隊『特殊強襲連隊』の面々と彼等の独自装備である制圧用高速艦と強襲ヘリコプター『Mi-35M3』と攻撃ヘリコプター『Ka-52』、艦載ヘリのKa-27Mである。

 

 そしてその中には全身を包み込むパワードスーツを纏う者たちもおり、正しく「人間装甲車」や「人間戦車」と表現するに相応しい無敵のオーラを放っている。

 

 何故彼等がいるのかと言うと、ハラダは未だ生き残っている1隻の敵艦を仕留めるべく、直接敵艦に上陸して制圧しようという、なかなかにエグい作戦を考えていたのだ。

 

 その中で王国海軍きっての精鋭、精兵である彼等を増援の艦に乗せて敵を血祭りにあげてこいと命令した。

 因みにこれら全てはハラダが独断で決めたもので国王ムネタカの承認は得られていないものの、彼へは事後報告でいいと考えている節があるし、ムネタカもムネオ派の中心人物たるハラダへは絶対の信頼を寄せているからこそ出来る業なのだ。

 

 

「…よし、時間だ。これより作戦を開始する。皆、艦及びヘリコプターに乗れ」

 

 

 隊長の言葉を聞いた彼等は高速艦やヘリコプターに乗り込み……

 

 

「艦長、世話になりました」

「…うむ。諸君らも生きて帰ってきたまえ」

「…えぇ。蛮国とこの紛い物の世界を滅したら、また今度一緒に飲みに行きましょう」

 

 

 艦長へ別れの挨拶を済ませた隊長がKa-27Mに乗り込むと、内火艇用のハッチが開放。

 ヘリコプターもローター音を轟かせながら艦を離れ、他の増援艦艇からも彼等が飛び出し、一路「あおば」と向かった。

 

 

 

***

 

 

 

 その頃…

 

 「あおば」はレーダーの出力を上げ、排他的経済水域をゆっくりと移動していた。

 

 

「…なかなか現れないな。無人機からは何も報告は無いぞ」

「奴等はハイエナやサメみたく獲物を探している。そう簡単に姿は見せないだろうよ」

 

 

 2人は艦橋で双眼鏡を覗きながら索敵をする。

 艦橋の雰囲気はピリピリしながらも、何処か落ち着きのある雰囲気を保っている。

 

 その秘訣はズバリ…

 

 

「…お前が提案したアレ、3〜4交代制だっけか?他のクルーからはかなり評判みたいだな。非番のクルーなんか、自分の家みたいに寛いでるぞ」

「それくらいメリハリがあった方がいいだろ。体調や精神面、士気も高く保てる。それに何より、俺らの世代は海軍がブラックな環境から脱しつつある時に入隊した世代だ。それを年下の後輩には味あわせたくなかっただけだ」

 

 

 そう。川瀬が導入した3〜4交代制である。

 彼はは自艦と僚艦のクルーの体調や精神面、そして何より士気を保つべく3〜4交代制を導入。

 リラックスできる環境を整えるためにWIFI環境すら開放させ、のびのびできる環境を構築した。

 

 そのおかげでクルーの多くは高い士気を保っていた。

 

 

「…お前を臨時艦長に任じた艦長は正に先見の明があるよな。この作戦が終わったら、史上最年少でこの艦の艦長に…」

「こちらCIC。レーダーに反応あり。方位0-1-9より回転翼機が接近中。距離25nm(ノーティカルマイル)(46.3km)。数3」

 

 

 田中が言い切る前に、CICから通信が入った。

 イージス艦「あおば」のAN/SPY-1D(V)レーダー及び、AN/SPQ-9B対水上用レーダーが此方へと近づく目標を捉え、無人機からもデータが飛んできた。

 

 

「…ヘリコプターか。かなり反応が大きいな。相手はMi-35(ハインド)Ka-52(ホーカムB)、おいおいKa-27(ヘリックス)までいるぞ」

「隊員を直接下ろして制圧する気だな。…田中、歓迎委員会だ。我が国のおもてなしの精神を持って全力でもてなすぞ」

 

 

 レーダーや無人機から飛んできた情報を見た川瀬は艦内マイクを持ち

 

 

「…総員、戦闘配置。繰り返す、総員、戦闘配置。敵さんを歓迎するぞ」

 

 

 川瀬の指示にクルーたちは直ちに持ち場につく。

 

 

「敵大型回転翼機。攻撃の兆候無し。既にスタンダードの射程圏内ですが──」

「あぁ、先にやっちまおう。CIC、敵目標を固定しろ」

「了解。目標の座標を入力します」

「総員、対空戦闘用意!!」

「対空戦闘よ〜い!!」

 

 

 「あおば」のレーダーマストに設置されているNOLQ-2が妨害電波を発し、CICの士官がSM-2の発射作業を黙々とこなしていく。

 

 

「座標入力完了。敵機尚も接近中。距離、20nm(ノーティカルマイル)(37.4km)」

「目標振り分け完了。ゲーム開始の歓迎のクラッカーはいつでも発射できますぞ、若人さん」

 

 

 CICからの発射用意を聞いた川瀬は意を決した表情を見せ

 

 

「左舷対空戦闘!!スタンダード発射用意!!」

一斉発射(サルボー)!!てぇ!!」

 

 

 CICへ力強く命じた。

 その瞬間、Mk41 VLSの蓋が開き、スタンダードミサイル──SM-2がブースターの噴煙を撒き散らしながら飛び出し、目標へと向かうべく、遥かな高空へと上がっていった。

 

 

「艦長よりCIC、ECM開始!」

 

 

 

***

 

 

 

 その頃、「あおば」を制圧すべく向かっていた『特殊強襲連隊』の面々は……

 

 

「指揮官機より全機へ。敵艦まで、残り100km。繰り返す。敵艦まで、残り100kmだ。このまま高度と速度を維持せよ」

「「「了解」」」

「護衛機は敵艦を捕捉次第、攻撃を開始せよ」

「アリゲーター1、了解した」

 

 

 彼等を載せた強襲ヘリコプター『Mi-35M』やKa-27M、護衛の攻撃ヘリコプター『Ka-52』は3機ずつの編隊を組み、海面を這う高速艦よりも速い速度で向かっていた。

 

 指揮官機であるMi-35M3に乗っている隊長「マサノリ・フキタ」海軍中佐は上記の感想を漏らしながら、部下と共に下界に広がる大海原を眺めていた。

 

 ──ハラダ殿からの命令ならば、必ずや我が聖なる王国に楯突いた愚かな蛮族国家の軍艦を屈服させなければ。

 マサノリはそう心情を漏らし、日本国軍の軍艦に対する敵対心を顕にする。

 

 

「隊長、敵艦まで残り100kmです」

「早いな…ヘリコプターならあっという間だ」

「敵艦はまだ我々に気づいてない模様…そのまま乗り込んで敵兵の首を刈り取ってやりましょう」

「あぁ…我等が精強たる強襲連隊の実力を見せてやろう…」

 

 

 指揮官機のMi-35M3では、隊長と隊員がまだ見えぬ敵艦に対する殺意をあらわにする。

 

 だが、コックピットではそんな優雅な状況ではなくなっていた。

 

 

「…チッ、レーダーの反応が!」

「…レーダー士官、どうした?」

「レーダーが反応を示さない。奴等からのECM(電子妨害)だ」

「何、ジャミングだと?こんな敵国のど真ん中で?」

「他の機はどうなんだ?」

「…他の機も同様にレーダーが反応しないとのことだ…今アナログに切り替える!」

 

 

 ヘリコプター編隊は不明の妨害電波を受け、全てのレーダーが使用不可になっていた。

 それを仕掛けたのは言うまでも無い敵イージス艦(あおば)なのだが、彼等には知る由もなく、レーダー士官がレーダーをアナログに切り替える。

 

 その刹那──

 

 ピーピーピーピーピーピー!!!!

 

 

「──っつ!!て、敵ミサイル接近中!!」

「何っ!?クソッタレ、こんな時に!!」

「ECCMで無効化しろ!」

「ダメだ!!アルゴリズムが書き換えられていて効かない!!」

「ミサイルを避ける!手近なものに掴まってろ!」

「チャフとフレアを放出!お客さんを必ず送り届けるぞ!」

 

 

 突如鳴り響くミサイルアラート。

 それに慌てふためくコックピットでは、パイロットは迫りつつあるSM-2を避けるべくチャフとフレアをばら撒き、操縦桿を傾けて回避機動に移る。

 

 と、その瞬間──

 

 ドッカアァァァァァン!!

 

 

「どうした!?」

「カモフが…Ka-52がやられてます!」

「何っ…!?」

 

 

 指揮官機のMi-35M3のコックピットにいた隊長が窓の外を見ると、護衛で飛んでいたKa-52がいとも簡単に空中で吹き飛ばされていく様子が見えた。

 

 

「護衛機ロスト!」

「…クソッ、ロシアの最新鋭機が……だが大丈夫だ。まだハインドが生き残ってる…指揮官機より全機へ。高度を下げ…」

 

 

 ドッカァァァァン!!!

 

 

「こちら2番機!機体に当たった!!」

「3番機も被弾!第1エンジン故障!エンジン出力低下!」

「出力が維持できない!」

「ローターがやられた!」

「メーデーメーデーメーデーメーデー!!!!」

 

 

 「あおば」から発射されたSM-2はヘリコプター編隊へ正確に接近。

 先に脅威となるKa-52を片付けて、丸腰になった本命のMi-35M3やKa-27Mを片っ端から吹き飛ばしていく。

 

 

「ターゲットα(アルファ)、全機撃墜。ターゲットβ(ベータ)2機、θ(シータ)2機撃墜確認」

「敵さんは高度を下げた。水平射撃モードで攻撃続行!」

 

 

 イージス艦「あおば」はAN/SPY-1D(V)レーダーとイージス武器システムの性能をもって、護衛機のKa-52とMi-35M3、Ka-27Mを確実に撃墜。残りは高度を下げた指揮官機のMi-35M3とそれに追随するKa-27Mだ。

 

 

「無人機より座標取得。スタンダード第2陣攻撃用意!」

「座標振り分け完了!撃て!」

 

 

 続けてMk41 VLSからSM-6が水平射撃モードで発射され、母艦誘導を必要としないアクティブレーダー・ホーミング方式のミサイルは高度を落として飛行していた指揮官機のMi-35M3とKa-27Mへ到達し──

 

 

「スタンダード第2陣、目標に到達!」

「ターゲットの撃墜を確認!」

 

 

 高度を落としてまで接近していたMi-35M3とKa-27Mを撃墜した。

 

 

「両エンジン停止!燃料バルブ切れ!」

「燃料供給停止!衝撃に備えろ!!」

 

 

 それぞれメインエンジンとローターに被弾したMi-35M3とKa-27Mは眼下に広がる大海原へと落ちていく。

 

 

「クソッ…これまでか。諸君、任務を遂行できないのは酷く残念だが、これより我等が征くのは地獄ではなく、最高神たる初代国王とその神々が住まう天空の楽園なのだ!!殉職することを誇りに思え!!」

 

 

 警告音が鳴り響く中、隊長は叫び、操縦不能になったMi-35M3とKa-27Mは排他的経済水域の海中へと没していった。

 

 

「敵対空目標、ターゲットα、β、θの撃墜を確認」

「了解。対空戦闘用具納め…」

「レーダーが新たな目標を探知!数3。方位は前目標と同じです!」

 

 

 ヘリコプター編隊を落とした「あおば」のレーダーが次に捉えた目標は、特殊強襲連隊の制圧用高速艦だ。

 

 

「クソッタレ…ヘリコプターがやられた…日本国め、仲間を殺していい気になるなよ…敵艦確認。イグニス発射!」

 

 

 3隻の高速艦──03160型"ラプター"高速警備艇は急拵えで取り付けたミサイルランチャーから短距離対艦ミサイル「イグニス」を発射。

 

 

「同座標より敵ミサイル接近中!距離17nm(ノーティカルマイル)(31.4km)。速度約200km。数3!」

「対水上戦闘用意!!奴等を撃ち落とせ!」

 

 

 約500kmの視程距離を持つAN/SPY-1D(V)レーダーとイージス武器システムは捉えた目標に合ったミサイルを一瞬のうちに選定。

 

 

「前目標に続き、ESSM発射用意!」

「目標諸元、入力完了!」

「撃て!」

 

 

 再びMk41 VLSからESSMを発射。

 発射されたESSMは近接信管でイグニスを叩き落とし、高速艦から放たれた脅威を排除した。

 

 

「敵ミサイルの迎撃を確認」

「…了解した。戦術長、ESSMの残弾数は?」

「既に6発消費しましたので、残り14発です」

「分かった。…残りは主砲と機関砲で対処するか」

「敵を引きつけるんですね?」

「…その通りだ」

 

 

 川瀬はESSMを温存させるべく、あえて敵艦をこちらに引きつけることにした。

 

 

「クソッ!ミサイルを落とされた!」

「ならばこのまま突撃するまで!栄えある王国海軍のプライドを見せてやる!」

「全艦、このまま敵艦に突っ込み、制圧するぞ!」

 

 

 高速艦は更にスピードを上げ、速度は驚異の50ノット(約93km)を叩き出す。

 

 だが、これが川瀬の思う壺であった。

 

 

「左舷対水上戦闘。左砲戦、主砲撃ちぃ方始め〜!」

「撃ちぃ方始めぇ〜」

 

 ドンッ!!

 ダン!!ダン!!ダン!!ダン!!ダン!!

 ズドドドドド!!

 

 

 艦首に鎮座するMk45 5インチ砲とMk38 25mm機関砲、そして50口径チェーンガンを備えたFN Sea deFNderが一斉に火を噴く。

 

 主砲から放たれたBAE製の超音速発射体は高速艦を装甲をまるでボール紙のように貫通し、各機関砲群からも機関砲弾が殺到。

 

 高速艦は回避しようとしても、主砲はFCSによる未来位置計算をもって砲撃を加えていく。

 

 

「何だこの濃密な弾幕はっ!?」

「怯むな!この程度の弾幕、大したことない!我が栄えある王国の技術力を信じろ!」

「──あっ、3番艦がやられた!」

「クソッ!」

 

 

 既に1隻の高速艦を撃破。あとの2隻は1隻はコックピットにHVPが命中し、操縦不能に。健在なのはあと1隻のみだ。

 

 

「反撃しろ!」

 

 

 生き残りの高速艦も反撃に転じて、主兵装の遠隔操作ステーションから14.5mm 重機関銃と7.62mm機関銃を撃ち込む。

 

 14.5mm重機関銃はまるで鑿岩機のような音を発しながら、M2ブローニング重機関銃の12.7mm弾よりも約1.5倍の破壊力を持つと言われている14.5mm弾を「あおば」へ撃ち込んでいくも、それを脅威とみなしたイージス武器システムが25mm機関砲から徹甲焼夷弾と閃光弾を発砲。

 

 遠隔操作ステーションごと重機関銃を破壊し、近くで7.62mm機関銃を撃っていた隊員を巻き添えにした。

 

 

「クソッ、艦を放棄!脱出する!」

 

 

 高速艦に乗っていたSea Kightersの隊員のうち、ボディアーマーを着ていた隊員は逃げようとした刹那──

 

 

「グワァァァァァ!!」

 

 

 突然、高速艦が爆発。

 隊員らに逃げる暇さえ与えることなく、高速艦は木っ端微塵になった。

 

 

「ターゲットスプラッシュ!」

「ふぅ…何とかCIWSが間に合ったな」

 

 

 ファランクス 20mm CIWSが一部に徹甲焼夷弾を混ぜたタングステン弾を撃ち込んで高速艦を仕留め、射撃を終えたM61A1の5砲身の銃口から硝煙がたちのぼる。

 

 

「レーダーに反応なし、すべてのターゲット沈黙を確認」

「了解。対空戦闘用具収め」

 

 

 これで全ての目標を迎撃したと思っていた川瀬たちであったが…

 

 

「派手に殺しやがって…仲間の仇を取ってやる」

 

 

 なんと高速艦がファランクスの餌食になる前に脱出した1人の隊員が「あおば」の艦尾の甲板に降り立った。

 

 レーダーに反応は無かったが、川瀬に既に勘づいていた。 

 

 

「はぁ…終わった、か…どうなることかと思ったよ…」

「…まだまだ敵さんとのお遊戯は続くぞ」

「…はい?川瀬、どう言うことだ?」

 

 

 すると、艦内全域に侵入を知らせるアラームが鳴り響いた。

 

 

「…ほらな。次は白兵戦だ。全員武器を持て」

 

 

 川瀬たちはH&K HK416A5やHK417A2、SIG SAUER MCX Virtus、ベネリ M4で武装し、防弾チョッキを着けた上で艦内を見回る。

 

 

「川瀬。何で侵入者が分かったんだ?」

「──勘だ」

 

 

 怪訝な顔で訊いた田中に、川瀬はそう一言言う。

 その頃、Sea Kightersの隊員「マサキ・カンベ」海軍大尉は艦尾側のドアを破壊。ズカズカと中へと侵入した。

 

 

「こちらカンベ。敵艦に侵入した」

「了解。作戦に変更はない。敵兵は見つけ次第、全員殺せ」

「了解」

 

 

 カンベはパワードスーツを纏い、艦内を歩く。

 

 

「これが蛮国の軍艦か…我が海軍艦艇とは違い、飾りっ気の一つもない、しょーもない艦内だ…まあいい。俺の手で全員ぶっ殺してやるさ…」

 

 

 カンベはパワードスーツのHUDに表示される視覚情報を頼りに敵兵を探す。

 

 その頃艦内を見回る川瀬たちは左右の曲がり角へと着き、部下へハンドサインを送っていた。

 

 

「…ここに敵がいるのか?」

「あぁ、この辺が最も匂うな…俺が指示を出す。フラッシュ投擲用意」

 

 

 部下たちは川瀬の指示に従い、グレネードを取り出した。

 その刹那──

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 突如、部下の1人が角から何者かに引きずり込まれ、遠く投げ飛ばされた。

 

 

「やっぱりいやがったか…衛生兵、外傷はあるか?」

「投げ飛ばされただけのようです。外傷はありませんが…膝をひどく捻挫しています。しばらくは安静が必要かと」

「分かった。彼を頼む。後は続くぞ」

 

 

 負傷した部下を衛生兵に任せた川瀬は部下を引き連れてゆき、途中で二手に分かれた。

 

 そのうち、田中は機関室へと入り……

 

 

「海軍大尉。今、何か叫び声がしましたが…」

「あぁ、敵が此処に紛れ込んだようでな。部下が負傷した。こっちで侵入者は見なかったか?」

「いえ、機関室には誰1人として入ってはおりません」

「ならいいが…」

 

 

 すると……

 

 シュポン!

 

 カランカラン……カランカラン……カランカラン…

 

 水密扉のボルトが1本外れ、こちらへと飛んできた。

 

 田中らがそれに視線を集め、呆気に取られている間にも、次々にボルトが外れ、あちこちに飛んでいく。

 

 その内、田中はこちらへと飛んできた1本のボルトを片足で止める。

 

 と…

 

 ガシャン!!!!!

 

 ボルトが吹き飛んだ水密扉がこちらへと吹っ飛んできた。

 そして、金属がしなる音と共に現れたのは…

 

 特殊強襲連隊で唯一生き残った隊員であるカンベだった。

 その彼が纏うパワードスーツは、王様の命令により王国軍主導で中小・零細企業に作らせたパワードスーツ「King Knight Aermer」であり、並の口径弾ではビクともしない装甲が特徴である。

 

 

「こちらカンベ。日本兵を発見。繰り返す、日本兵を発見した」

「こちら司令部。作戦に変更は無い。敵兵は全員殺せ」

「了解。作戦行動に入ります」

 

 

 作戦行動に入ったカンベは田中たちへ近づく。

 見たこともないパワードスーツの雰囲気は凄まじく、見る者にある種の敗北感さえも植え付ける。

 

 

「ここは俺に任せろ」

「…え、1人で戦えるんですか?」

「…いいから行け!」

 

 

 田中は無理に部下を逃し、カンベへ銃口を向ける。

 

 

「武装を投棄して両手を上げろ。繰り返す、すぐさま武装を投棄しろ。さもなくば、実力を行使する」

 

 

 田中はHK416A5を向け、カンベへ警告。

 だが、彼はそれを無視して近づく。

 

 

「後で後悔しても知らないぞ。最後の警告だ。直ちに武装を投棄せよ」

 

 

 それでも無視した兵士へ、田中はHK416A5をトリガーを引く。

 毎分750発の5.56×45mmのNATO弾。通常なら、たとえアーマーを着こんでいてもボロ雑巾のように身体を引き裂かれ、ミンチ肉へと化してしまうのだが……

 

 歩く装甲車との異名を持つアーマーを着込むカンベには通用しなかった。

 彼の顔の前にあるディスプレイには田中の両目の動きや心拍数、武器の情報が表示されている。

 

 

「無駄なことを。俺が嬲り殺しにしてやる」

 

 

 カンベは変わらず豆鉄砲をぶつけてくる田中を嘲笑う。

 効かないと察した田中はHK416A5を手元に置き、たまたま足元に転がっていた金属バールを拾い上げ…

 

 

「さっさと失せろカンカラ野郎!!」

 

 

 ガキン!!!!!

 

 金属バールの重い衝撃がカンベに喰らう。

 だが、カンベはそれでも怯むことはなく、パワードスーツのパワーで田中を片手で軽く持ち上げ、近くの壁へ投げ飛ばした。

 

 

「グハッ…ゴホッ、ゴホッゴホッ…」

『フン、愚か者が。ここからは俺のターンだ。せいぜい俺に殺されたことをあの世で自慢するといい』

 

 

 カンベは地面へと倒れた田中へと近づき、片手から12.7mm口径のガトリング砲を、もう片手からはダガーナイフを展開。

 

 

『さぁ、愚かな蛮族よ、此処が貴様の墓場だ!!』

 

 

 その刹那、カンベの背中へグレネード弾が命中。

 田中が見ると、川瀬が構えていたHK417A2の銃身下、ピカティニーレールを介して装着していたM320の砲口から白煙が上がっていた。

 

 それにカンベは焦った。

 何故ならパワードスーツの背中には各戦闘データやAIが内蔵されているコンピュータがあるからだ。

 しかも今の攻撃で、一部の兵装の使用ができなくなってしまった。

 

 

《戦闘データ、及び電磁機関砲とレーザーガン使用不可》

『余計なことしやがって…貴様も俺が殺す。殺す、殺す、殺してやる!!』

 

 

 カンベは今度は川瀬へ攻撃と殺意を向け、7.62mmNATO弾をぶちこむ川瀬へ向かう。

 

 

『この任務をクリアし、無惨に死んだ仲間の仇を取るのだ!!』

 

 

 カンベはパワードスーツのパワーを上げ、川瀬へ迫る。

 川瀬はM320に擲弾を装填。トリガーを引き、再度発砲させる。

 

 ポン!!

 

 気の抜けた発砲音と共にグレネードがカンベへ命中。

 辺り一面を白煙が包み込む。

 

 川瀬はそのスキを突いてカンベへ殴りかかろうとした。

 だが、王国の技術の粋を集めたパワードスーツには通用せず、逆に壁へと投げ飛ばされてしまう。

 

 その頃、少しよろめきながらも起き上がった田中はカンベの間合いに入ろうとする。

 

 川瀬もよろめきながらも起き上がり、カンベとの間合いに入ろうとした瞬間、視線の先にいた田中へこう伝えた。

 

 

「…田中、CICへ行け。何をやろうとしてるかわかるな」

「……」

 

 

 川瀬の言葉を察した田中は何も言わずにCICへと駆け込んで行く。

 だが、カンベはそれを追おうとせず、川瀬へ殺意を向ける。

 

 

「…かかって来い、お前の相手は俺だ」

 

 

 ディスプレイに川瀬の情報が表示されているカンベは、咄嗟にに走り始めた川瀬を追い始めた。

 

 

『逃すかこの蛮族め!!』

 

 

 田中はCICへと向かい、川瀬はカンベを引きつけながら艦内を駆け抜ける。

 

 そして、川瀬が先にSPYレーダーと5インチ主砲が鎮座する艦首へと来た。

 

 

『やはり蛮族は蛮族か。自分から追い込まれてやがる』

 

 

 カンベはそう川瀬を罵り、パワードスーツの力で川瀬を投げ飛ばし、利き手からダガーナイフを展開。

 

 

『これで奴の心臓に突き刺せば、俺の仕事は終わる…』

 

 

 その頃、CICへ着いた田中はインカムを取り付け、5インチ砲を作動。

 

 

「来い来い来い来い…」

 

 

 それに合わせて川瀬は兵士を砲身へとおびき寄せる。

 

 それを知らないカンベは川瀬を柵へと追い込んだと思い込み、ダガーナイフで刈り取ろうとした瞬間…!?

 

 川瀬は柵のロープを両手で掴み、身を投げた。

 それに呆気に取られたカンベを田中は見逃さなかった。

 

 

「撃ち方始め」

 

 

 田中は冷たい表情のまま、ジョイスティック型のトリガーを引き、5インチ砲を発砲。

 

 背中から零距離射撃を受けたカンベはパワードスーツの誘爆に巻き込まれ、本当の愚かだったのは自分であることに何の自覚も持たぬまま、物言わぬ肉片へと化し、海へと落ちていった。

 

 川瀬は一瞬で挽肉となって落ちていった敵兵と、ガコンと大きな音を立てて薬莢を落とす5インチ砲を見つめていた。

 

 

***

 

 

 その頃、高速艦と特殊部隊を派遣した重原子力巡洋艦「コウゾウ・スガ」では…

 

 

「クソッ…全部隊ロスト。対空ミサイルの餌食になってしまった…」

「敵艦の制圧を図ったカンベ大尉からも通信が来ない…」

「なんと…きっと奴等に嬲り殺られたのであろう…残念だ」

「なんと非情な…では、我々こそが敵艦を沈めてやろうではないか!」

「それも全て我等が栄えある神聖日本王国、ひいては偉大なる国王、ムネタカ陛下の為に…!!」

 

 

 Spektr-G1光学迷彩で姿を消していた重原子力巡洋艦を含む1個分隊のクルーたちは、まだ見ぬ敵イージス艦への復讐の念を誓っていた… 

 

 

 

 







次回もお楽しみに。
それでは〜(・ω・)ノ


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