日本VS日本   作:もちうさ

7 / 32


今回から日本国側と神聖日本王国側の台詞が混ざっていくので、日本国側の台詞は「」、神聖日本王国側の台詞は『』で分けていきます。

7/31 追記:ストーリーの変更を伴った加筆修正を行い、サブタイトルも「次々と迫り来る脅威」→「神の盾の実力』へ変更致しました。
8/15 追記:一部加筆修正致しました。



第4話 『The AIGIS WEAPON SYSTEM(神の盾の実力)

 

 

「クソッタレ!!」

 

 

 神聖日本王国が並行世界の日本国並び並行世界殲滅作戦を打ち立ててから早1ヶ月。

 

 とある日の昼間を迎えた神聖日本王国の王宮では、憤怒を携えた1人の男が自身の執務室で怒りに任せてバン!!と、デスクを叩くと共にバリトンボイスでそう吐き捨てる。

 

 吐き捨てた主は軍務卿であるハラダ。

 そして、その彼のデスクに置かれていたのは王国海軍総司令部と王国軍総司令部から届けられた数枚の報告書があった。

 

 王国の主言語である日本語で『極秘』や『Top secret』と掘られたスタンプが押されていた書類には、ハラダ自身が未だしぶとく生き残ってやがっていた日本国の軍艦を制圧する為に差し向けた海軍特殊部隊『特殊強襲連隊』が壊滅し、制圧作戦が失敗したとする内容が書かれてあった。

 

 

「たかが並行世界の蛮族国家が…よくも我が栄えある特殊部隊をぶち殺しやがって…一体何の分際があって殺されなければならんと言うのだ…」

 

 

 神聖日本王国ならではの我田引水・自分勝手を地でゆくハラダは未だに憤怒を手放さなさずに阿修羅の如く顔を真っ赤にし、息を荒くする。

 

 その原因であるハラダに手渡された報告書類に書かれてあったのは、特殊強襲連隊のMi-35M3やKa-27Mと護衛機のKa-52やラプター高速艦が日本国の軍艦による対空/対水上射撃によって壊滅し、運良く敵艦へ侵入した隊員も行方不明になり、作戦失敗から1週間後に救難母艦と潜水救難艇によってボロボロに朽ち果てたパワードスーツを着込んだ特殊部隊の隊員の遺体を発見したとする内容であった。

 

 なかでもその報告書類に書かれていたのは、敵艦の防空能力を脅威とする内容であった。

 

 なんでも、ヘリコプターと高速艦が攻撃を受けたのは敵艦まで80〜100kmの地点で、ヘリコプターは対空ミサイルで、高速艦はミサイルに加え、主砲による射撃で無力化されたという。

 

 80kmないし100km以上にも上る敵艦の防空能力。

 

 まさか並行世界の日本国海軍がそのような高性能艦を持っていた事実に王宮と王国軍のごく一部の高官らは目玉を飛び出すくらいの衝撃を受けていたものの、作戦を編んで決行させた張本人たるハラダをはじめ、大半の王国政府や軍の高官らは"そんなのまぐれ当たりだ"と相手にもしなかった。

 

 ただ、それでも海軍創設当時から連綿と受け継がれてきた艦隊決戦至上主義と大艦巨砲主義という立て看板を背負う王国海軍にのし掛かった衝撃は計り知れなかった。

 

 王国海軍の艦艇も防空能力こそ持たせてあるものの、それらは全て林のように林立している各種レーダーやハリネズミのように設置されたCIWSたるカシュタンやAK-630によるもの。

 

 時代が進むにつれて改良はされているものの、旧式レーダーの上書き程度では満足した防空能力を得ることはできず、同時に探知できる目標もSPYレーダーはおろか、NATOの防空システム以下だ。

 

 そして極め付けは戦術海軍を引き摺るがあまり、軍艦や艦隊のみでの行動しか頭に無く、他軍との連携は想定されておらず、更には航空戦力や対潜戦をおざなりにし、陸軍や防空軍、空軍とは使用しているデータ共有システムはバラバラだ。

 

 だが、"我が王国は強い"という根拠のない自信と王国至上主義を普段から無意識のうちに刷り込まれ、他国の軍事力を測る物差しとしていたハラダたちは並行世界に到着した直後に勃発した日本国海軍との戦闘でほぼワンサイドゲームであったため、敵に大した軍事力は持っていないだろうと完全に高を括り、その権化たるハラダが特殊部隊による制圧作戦を決行したのだ。

 

 だが、今回の作戦失敗で日本国海軍の艦艇に対する脅威論が巻き起こりつつあり、作戦が今後も滞りなく進める為には彼等に対する過大評価をするべきではないかとする論議が王宮や王国軍、海軍内で意見されている。

 

 そして、作戦を決行させたハラダ本人は……

 

 

「フン、たかがヘリコプターと高速艦を数機数隻殺っただけでいい気になるなよ。それに我等が対峙している敵艦はたった1隻だ。第07艦隊の前では貴様らの軍艦なぞ敵ではない」

 

 

 特殊部隊をやられてしまった衝撃こそあるものの、今自分たちが対峙している敵艦はたった1隻であることに楽観視していた。

 

 それを見るに、日本国側は自分たち神聖日本王国を脅威と感じ、増援の一つも寄越していないのかもしれない。

 

 だがそれでもハラダは自分自身と聖なる王国に泥を塗ってくれた日本国に対する敵対心と復讐心を心中に宿さずにはいられなかった。

 

 よくも我が王国海軍が誇る精兵たちを殺してくれたものだ。

 そのような大罪人どもには王国の最高神たる初代国王とその神々による聖なる罰を下し、死の世界へ突き落としてしまわなければ。

 

 この世界に於いて圧倒的な軍事力を持つ神聖日本王国のプライドにもヒビが入ってしまう。

 ──それだけは、絶対に避けなければ。

 

 ハラダは決めた。

 

 このままでは国王ムネタカ様のご期待に添えられないかもしれない。

 ここは早期に国王に第07艦隊を派遣するよう上奏し、貴重な特殊部隊を惨殺した悪逆非道な蛮族国家を艦隊の圧倒的攻撃力と聖なる罰をもってぶちのめし、並行世界の各国に弾道ミサイルを撃ち込み更地にしてやる。

 

 そう深く決意したハラダは席を立ち、ガチャとドアを開けて国王の居る執務室へと向かった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 丁度同じ頃、並行世界の日本国。

 お昼を迎えた国防海軍横須賀基地では──

 

 

「うわぁ、デケェ…とうとう国はあんなもの作っちまったのかよ…どれもこれもバケモン揃いだな…」

 

 

 横須賀基地では複数隻の新型艦艇の進水と命名を祝う式典が開かれていた。

 

 参加しているのは国防大臣と国防軍のトップたる統合参謀本部長並びに数人の統参幹部らと海軍のトップたる海軍作戦部長をはじめとする海軍高官と、アメリカからは国防総省の高官と海軍高官をはじめとする海軍関係者、そして在日アメリカ大使という錚々たる顔ぶれである。

 

 そして、参列していた参加者の前で鎮座しているのが、新型のミサイルイージス駆逐艦とイージス巡洋艦、2隻のミサイルフリゲートである。

 

 それらは皆、進水を祝う飾り付けがなされ、艦首には紅白の布やリボンが飾られ、艦橋やマストには安全を祈願する旗や飾りが掲げられている。

 

 進水を祝うスピーチをする国防大臣や統合参謀本部議長を横目に1人の海軍士官は驚きの余り、上記のセリフを吐いた。

 

 そして、何故国防海軍の式典にアメリカの関係者が来てるのかは海軍作戦部長のスピーチで明らかとなった。

 

 

『…今回、この新型艦艇が陽の目を浴びたのは、現在アメリカ海軍が進めております「DDG(X)」無くてはなし得ることは出来ませんでした。DDG(X)が持つ、次世代のステルス形状に新型レーダー、イージス武器システム、推進システム、その全てです。そこに多層化しつつも薄型に成功した新型装甲と海軍艦艇では世界初となる水上戦闘艦用の電磁レールガンに国産防空ミサイルと巡航ミサイルという、我が国が誇る技術力を余すことなく結集致しました。これは正に日米同盟の強固さを表すと共に、今後我が国を取り巻く情勢に於いて、非常に心強い存在となることに喜びを感じております。今回、我が国にDDG(X)の協力プログラムを打診してくれたアメリカの各方面の関係者の皆様方には感謝申し上げます』

 

 

 そう。今回進水した新型ミサイルイージス駆逐艦とイージス巡洋艦はアメリカ海軍が進めている次世代駆逐艦プログラムたる『DDG(X)』と設計を共有しているのだ。

 

 だが、設計を共有していると言ってはいるものの、共有しているのは艦体の基本設計やデザイン、基準/満載排水量のみで、その内部には日本国が得意の魔改造が施している。

 

 最新のイージスシステム『ベースライン10』に対応したAN/SPY-7(V)2多機能レーダー、円形のテーブルとディスプレイに囲まれたCIC、艦橋側と後部構造物の上部に取り付けられた指向性エネルギー兵器のAN/SEQ-4 ODINとHELIOS。

 

 武装では5インチの電磁レールガン『NEG-5』が取り付けられた艦首で真新しいステルス形状のカバーや砲身をこれ見よがしに見せつけ、Mk41 VLSにはSM-6やトマホークと一緒に国産の23式や12式が収められ、F-35Aの25mm機関砲を流用したオリジナルCIWS『25mm CIWS Block 2A』と挙げ続ければキリがない。

 

 謂わば、DDG(X)とは名ばかりの事実上別モノの艦なのだ。

 

 それだけでもお腹いっぱいになるというのに、その艦の左隣に鎮座している艦はそれよりも大きく、全長も艦首区画を中心に10m以上は伸ばされているのだろうか、電磁レールガンの後ろに大口径の主砲が鼻高々に聳え立っているのが見えた。

 

 そして、真ん中と左隣のバケモノ艦に負けじとオーラを見せていたのが、右隣と右端に鎮座する、それらよりも小ぶりの艦である。

 

 海軍作戦部長曰く、この艦はフリゲートであり、JMUの150mコンセプトをベースにベースライン10に対応したAN/SPY-6(V)1を搭載し、日米の各種ミサイルを運用可能な艦隊防空型のフリゲートに仕上がっていると言う。

 

 見ると、海軍作戦部長がJMUのCEOと固く握手しているのが見てとれた。

 どうやら今回の4隻はJMUの横浜事業所や呉事業所など、全国の各事業所で分担して建造されたそうだ。

 

 

 

「最近中国の動きがキナ臭いし、ウクライナに打ちのめされたロシアも極東の方で良からぬ動きを見せてるし…アレらは全て、専制主義の連中から我が国を護るための盾になるのか…」

 

 

 進水式に参加しながらも、主人公たる新型艦艇に対する感想を漏らす士官──『井上優希』海軍大尉は特別な目で見つめ…

 

 

「コイツらなら、(くだん)の連中どもとも、やりあえるんじゃないか…?」

 

 

 井上は海軍の上は将官から下は尉官クラスにまで報されている(くだん)の敵国──神聖日本王国の軍艦に1隻で対峙している川瀬たちへ問いかける。

 

 その間に新型艦艇の艦名の除幕式が行われ、新型ミサイルイージス駆逐艦は『おおなみ級イージス駆逐艦"おおなみ"』、イージス巡洋艦は『やまと級イージス巡洋艦"やまと"』と名付けられ、2隻のフリゲートもネームシップの『よしろ級ミサイルフリゲート"よしろ"』と『はやぶさ』と名付けられ、国防軍音楽隊の演奏と共に、除幕を祝う紙吹雪や風船が華々しく空へ飛んでいく。

 

 

 

「やまと、か…」

 

 

 

 海軍作戦部長から発表された新型イージス巡洋艦の艦級名を聞いた井上は、思わず空を仰ぐ。

 

 かつて大日本帝国海軍の聯合艦隊旗艦だった、世界最大で最強の超弩級戦艦。

 

 その名が70〜80年の月日を経て、現代の日本の守り神となるべく甦ったのだ。

 

 

「これから面白いことになりそうだぜ、川瀬」

 

 

 井上は海の向こうで戦っている戦友へ向かって、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、排他的経済水域を航行していたイージス艦「あおば」は…

 

 

 

「艦橋よりCIC。敵の反応はあるか?」

「こちらCIC。レーダーに反応はありません」

「了解。ソナー室、敵潜の反応は?」

「こちらソナー室。敵潜の反応はありません」

「…了解。今後も警戒を厳となせ」

 

 

 小笠原諸島より南に50km。

 川瀬が指揮を取る「あおば」は文明から遠く離れた絶海の波を掻き分けながら進んでいた。

 

 

「敵さんのお相手をし始めて早1週間か。あれから敵の動きが見られないな…』

「…まぁな。だが、奴等は何処から現れるか分からん。警戒は厳と成す方が身のためだぞ」

「…それもそうか」

 

 

 川瀬と田中は艦橋で電子双眼鏡を覗き込み、敵影がいないか見渡す。

 

 やって来たと思えば、あれよあれよと言う間に神聖日本王国の艦艇が闊歩するようになったこの海域。

 

 今のところレーダーに反応は無いが、神聖日本王国の軍艦は光学迷彩という反則級の技術を持っているため、敵艦が放つウェーキや陽炎、排熱に睨みを利かせながら、潜水艦の相手もしなければならない。

 

 そこで威力を発揮するのが海軍から派遣された洋上監視型の無人機「MQ-4C(トライトン)」や『MQ-9(リーパー)』並びに空軍から派遣された『MQ-1C(グレイイーグル)』。

 

 偵察衛星と連携しながら敵艦の防空レーダーシステムの索敵範囲より遥かな高空から敵を探すその目は川瀬たちからすれば、心強い味方である。

 

 それに加えて国防海軍は、岩国基地から更なる対潜無人機を派遣させた。

 

 

「CICより艦橋。岩国からの応援が到着しました。既にリンク16接続済みです」

「了解」

 

 

 それが、対潜無人機『Bell V-247 Vigilant』である。

 

 アメリカや日本がMV-75をとして制式採用されたV-280をベースに無人機化させたティルトローター式の無人機は、「あおば」と既に応援に来ている無人機らとリンク16を接続。

 

 機体下のハードポイントに大量の魚雷や対潜ミサイルを抱え込み、自機からMADを投下して敵艦の防空範囲外から獲物を探す。

 

 

「艦長。V-247のMADが敵潜を捉えました。方位090。距離50km。数1」

「了解。さてさて、敵さんとのご挨拶といこうか。田中、面舵一杯。機関最大戦速」

 

 

 戦術長の報告を聞いた川瀬は、「あおば」を敵潜がいるであろう座標へ向かわせる。

 

 

「ヤケに反応がデカいな。どんな鯨が潜ってんだ?」

「デカい潜水艦と言えばコロンブス級が思い当たるが、この反応を見る限り、それよりも大きい奴かもしれないな」

「コロンブス級よりも大きい潜水艦……まさか、タイフーン型か?」

 

 

 自分たちがいる海面の下を潜る敵潜を川瀬と田中はそう推察。

 

 もちろん、2人の推測は当たっているのだが、それを知らない王国側は──

 

 

「メインタンクブロー。潜望鏡深度まで浮上」

「了解。これより浮上します」

 

 

 自分たちよりも遥かな高空から敵の無人機が睨みを利かせていることなど夢にも思っていない潜水艦──タイフーン型をベースに建造された重原子力潜水艦「カミタカ・トモチカ」が潜望鏡深度まで浮上。

 

 全長300m、全幅95m、水中排水量5万トンの準トリマラン構造を持つ巨漢の潜水艦の発令所では…

 

 

「敵はいるか?」

「艦長殿、少々お待ちを」

 

 

 「カミタカ・トモチカ」の発令所では乗組員が潜望鏡を動かし、敵艦がいないか警戒。

 

 ソナー員はヘッドホンを着けて、敵艦の音を拾うべく耳をそばだてる。

 

 

「…艦長。潜望鏡からでは敵影は認められなかったようです」

「…了解した副長。ソナーはどうだ?」

「ソナーにも反応はありません」

「了解した。ならば潜航するか。潜望鏡納め。操舵手、深度150まで潜航。潜航後、両舷前進微速」

「アイ・サー。深度150。潜航後、両舷前進微速」

 

 

 艦長の命令を復唱しながら「カミタカ・トモチカ」は潜航して行く。

 

 

「…にしても、はぁ…総司令部の奴等め、我々サブマリナーを散々下に見てきやがって…なにが潜水艦は何も出来ないだ、出来損ないのポンコツだ…」

 

 

 潜航していく潜水艦内で艦長『ヒロノリ・イワブチ』海軍大佐は毒付く。

 

 彼が毒付く理由、それは王国海軍に於ける潜水艦の扱いにある。

 

 王国海軍の潜水艦は全て海軍隷下の直轄組織『潜水艦隊司令部』に属しているのだが、そこは海軍で不正を働いた海軍兵や士官の左遷先として有名であり、戦艦紛いの洋上打撃能力を求める海軍との間で縦割り行政による軋轢が生じていたのだ。

 

 当然潜水艦乗りになりたくて入隊する者もいるのだが、先ほども言ったように戦艦紛いの艦砲射撃をぶちかます艦艇を主力に添えたい海軍からは冷たい態度を取られ、"潜ることしか能のない愚かな兵器"や"ロクに艦砲射撃の一つも出来ない、出来損ないのポンコツ"というレッテルを貼り、対立してきた経緯があるのだ。

 

 

「今や潜水艦は戦略兵器の一つとして国家の安全保障を決定付ける非常に重要な装備品となっているのに…海軍と王宮の頭の悪い連中どもは、それが理解できていないんだな…」

 

 

 その権化たる王国唯一の主流派「ムネオ派」に属していない彼は、そんな頭の固い連中どもへ対する愚痴を溢し、艦長席へと着く。

 

 だが、彼らの動きは既にV-247に捕捉されており、方位や座標は川瀬たちへ逐一報告されていた。

 

 

「CICより艦橋。敵潜の潜望鏡を確認」

「了解。さて、見つけたぞ…化け物鯨め。CIC、V-247のデータを使用し、攻撃を開始しろ」

「了解」

 

 

 CICのオペレーターは川瀬の指示でV-247のデータを使用し、対潜ミサイルや魚雷の発射用意を整えて──

 

 

「かくれんぼを終わらせるぞ。攻撃開始!」

 

 

 川瀬の指示でCICのオペレーターはミサイルと魚雷発射ボタンを押すと、Mk41 VLSから07式対潜誘導弾と3連装魚雷発射管からMk50短魚雷が放たれ、V-247からもVLAとMk50短魚雷が投下された。

 

 

 

 

 

 

 

 その頃──

 

 

 コーン…コーン…コーンコーンコーン…

 

 

「ソナーコンタクト!!敵魚雷です!!方位180、距離50km!数3!」

「同座標からミサイル発射を確認!数3!」

「…クソッ、総員、配置につけ!!操舵員、急速潜航!!潜れ潜れ潜れ!!」

 

 

 突然の敵魚雷と対潜ミサイル接近に艦内は蜂の巣を突いたような騒ぎになり、潜水艦は艦長の指示で戦闘配置と急速潜航を行う。

 

 

「レーダー員、敵ミサイルは?」

「敵ミサイル接近中!…あっ、敵ミサイル着水を確認!対潜ミサイルです!」

「何っ…完全にこちらを狩る気ではないか!ソナー員!!敵魚雷は!?」

「敵魚雷、尚も接近中!!距離30km!」

「砲術長、ありったけのデコイを放て!ECMも忘れるな!」

「了解!!」

 

 

 「カミタカ・トモチカ」は艦尾からデコイを展開し、ECMや音響妨害をはかる。

 

 だが、旧式の装備をつかまされている潜水艦に、Mk50は騙されることはなかった。

 

 

「敵魚雷、なおも接近中!!距離、20km!」

「デコイとECMが効いていません!」

「クソッ!!王宮と海軍のバカどもが、旧式の装備でどう戦えってんだ!!」

 

 

 普段から海軍から冷遇されている潜水艦隊司令部は王宮や海軍から充分な予算が割り振られず、魚雷はともかくデコイや電子戦装備が10〜20年前の古いものをつかまされていた。

 

 そして今、そのツケが彼等へ迫りつつあり、着弾まであと20kmということもあるのか「カミタカ・トモチカ」の艦内は恐怖に染まっていく。

 

 

「操舵手、そのまま急速潜航を続け!」

「アイ・サー!」

 

 

 ヒロノリ大佐は操舵手へ急速潜航と両舷前進最大戦速を命じ、手近なところを掴み、衝撃に備え──

 

 

「敵魚雷、着弾まであと10秒!!」

「総員、衝撃に備え!!」

 

 

 艦内を艦長の大声と警戒アラームがけたたましく鳴り響く中、一瞬の間を置いて──

 

 「あおば」とV-247から発射された計5発のMk50短魚雷は潜水艦「カミタカ・トモチカ」へ命中。

 

 命中したMk50は弾頭のHEAT弾を炸裂させ、玉子の殻を破るが如く耐圧船殻を破壊。

 その後、破壊した余力をもってバラストタンクにダメージを与えた。

 

 その直後、トドメを刺さんとばかりに計3発の07式が到達。

 既にズタボロ状態になっていた耐圧船殻にダメージを与える。

 

 

「本艦並びにV-247の魚雷と対潜ミサイル全弾の着弾を確認」

「あけだけジャブを喰らわせたら鯨も音を上げるだろう。ソナー員、敵潜の反応は?」

「圧壊音を確認。ですが、まだまだしぶとく生き残ってますよ」

「了解。あとは浮上するのを待つのみだ」

 

 

 「あおば」のCICでは敵潜水艦への魚雷と対潜ミサイル命中を確認し、川瀬の指示で敵潜が浮上してくる前に、自艦のレーダーを使わずにトマホークBlockⅣとLRASMによる攻撃を指示。

 

 

「偵察衛星と無人機からデータリンク。座標並びに目標諸元入力完了」

「VLS25番から28番及び、33番から35番発射準備」

 

 

 CICの迅速な対応により、トマホークが収めてある艦首側のMk41 VLS 25〜28番と、LRASMが収めてある艦尾側のVLS 33〜35番のセルが開く。

 

 

「操舵員、方位2-2-0から0-9-0へ。旋回後、両舷前進第3戦速」

「アイ・サー。方位090ヨーソロー。旋回後、両舷前進第3せんそ〜く!!」

 

 

 操舵手の『高垣智紀』海軍軍曹は川瀬の指示を聞き、復唱しながら操縦輪を回すと、「あおば」はゆっくりと傾きながら旋回。

 

 敵潜がいる方位0-9-0へと艦首を向ける。

 

 そして旋回した後、スロットルレバーを前へ倒して加速。

 スクリューの旋回による白い波を立てながら敵潜へ急速接近をしかける。

 

 

「CIC、敵潜が浮上したらミサイルを撃て」

「…了解」

 

 

 CICにいたクルーたちはレーダースクリーンを見ながら、敵潜が浮上してくるその瞬間を待つ。

 

 切迫した空気が「あおば」の艦内を流れ、クルーらは皆、その一瞬を逃すまいと瞬きひとつせず、その瞬間を待つ。

 

 そして──

 

 

「ソナーコンタクト!!敵潜浮上!!」

「よし、今だ。CIC指示の目標!!攻撃開始!!」

「了解、トマホーク並びにLRASM発射!」

「撃て!」

 

 

 浮上してきた敵潜「カミタカ・トモチカ」を捉えた「あおば」は前後のMk41 VLSのセルからトマホークBlockⅣとLRASMを発射。

 

 前後のVLSのセルから解き放たれた計6発のミサイルはロケットブースターによる加速で一気に急上昇。その後、ブースターを捨て、トマホークはGPS/INS誘導の下、敵潜へ向かい、LRASMはGPS並びにAIによる自律飛行で目標へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「バラストタンク2番から5番が破壊!潜航不能!」

「緊急浮上!手近なものに掴まってろ!」

 

 

 イージス艦「あおば」が攻撃準備に取り掛かっていた頃、潜水艦「カミタカ・トモチカ」は急遽襲来した敵魚雷による被弾でバラストタンクが破壊され、緊急浮上していた。

 

 

「クソッ!ダメージコントロール班!被害状況は!?」

「はっ!バラストタンク2番から5番が破壊され、被弾した機関室では数人の負傷者が発生しております!被弾した耐圧船殻から浸水が認められた為、現在当箇所を閉鎖しております!」

 

 

 ダメージコントロール班から伝えられた被害状況に、艦長のヒロノリは思わず天を仰いだ。

 

 まさか自艦が攻撃に晒されるなど、夢にも思ってなかった。

 こちらのレーダーやソナーには反応の一つも拾ってないのにも関わらず、敵は一体どうやって攻撃を仕掛けて来たのか。

 

 

「こちらのレーダーやソナーには敵潜や敵艦の1隻も確認できていないのに、何故…はっ……ま、まさか…か、彼等はむ…無人機で攻撃を仕掛けてきたのか?」

 

 

 ヒロノリは正解とも言える推測を立てるも、今はそれどころではない。

 

 

「副長!今浮上してる近辺に味方艦がいる筈だ!敵魚雷の攻撃を受けたと至急、連絡してくれ!」

「御意!」

 

 

 ヒロノリの命令を受けた副長は急ぎ、近辺にいる味方艦「コウゾウ・スガ」へと伝える。

 

 だが、それは「あおば」による傍受で筒抜けであった。

 

 

「緊急浮上中の敵潜、味方艦へ支援を要請してる模様」

「方位と距離は?」

「方位は0-9-0、距離は26nm(ノーティカルマイル)(48.1km)。速力は恐らく30ktかと」

 

 

 CICから伝えられた川瀬は──

 

 

「…やっぱりな。ヤケに怪しいと思っていたんだ。CIC、敵艦への目標諸元を入力せよ」

「了解。敵艦の目標諸元を入力します」

 

 

 川瀬はついでにとばかりに近くにいた敵艦──重原子力巡洋艦「コウゾウ・スガ」に対する攻撃指示も飛ばした。

 

 一方、味方艦への救援要請を傍受されているとは夢にも思っていない潜水艦「カミタカ・トモチカ」は……

 

 

「浮上まで、あと30秒!」

「浮上後、対艦弾道ミサイル発射準備に移れ!」

「了解!セルは何番を使いますか?」

「05番から07番だ!」

「通常弾頭のですね!?了解です!!」

 

 

 その後、潜水艦「カミタカ・トモチカ」は浮上。

 排水量5万トンと言う、潜水艦にしては反則級な大柄な艦体をあらわにし、イージス艦「おおすみ」に対する対艦弾道ミサイル発射準備に入る。

 

 発令所では敵艦の目標諸元が入力され、ミサイルを収めてあるセルが開放。

 その様子は巡洋艦「コウゾウ・スガ」からもハッキリと見てとれた。

 

 

「味方潜水艦が急速浮上。現在、敵艦への攻撃準備に取り掛かっています」

「…分かった。ならば我等も攻撃の準備に取り掛かろう。中央指揮所、180mmの発砲準備に入れ」

「了解。超電磁レールキャノン、電圧チャージ開始」

「弾種、対艦フレシェット弾並びに対艦榴弾」

 

 

 「コウゾウ・スガ」の超電磁レールキャノンへ電圧がチャージされ、対艦フレシェット弾と対艦榴弾が装填。

 

 

「超電磁レールキャノン、チャージ率60%!!」

「このままチャージを続けよ。あと中央指揮所と防空管制は警戒を厳となせ」

「中央指揮所、了解しました」

 

 

 敵艦への攻撃準備が整いつつある艦内で艦長は艦橋から味方潜水艦がいるであろう大海原を眺める。

 

 

「…そろそろですね、艦長」

「あぁ、我等が特殊部隊を亡き者にしたツケはしっかりと払ってもらうぞ」

 

 

 副長に話しかけられた艦長はそう応え、イージス艦に対する復讐心をあらわにする。

 

 

「超電磁レールキャノンへの電圧チャージ、75%!」

「手近なものへ掴まれ!」

 

 

 艦内では発砲の衝撃に備えるべく、クルーたちが手近なところを掴む。

 艦長も副長と共に手摺りを掴んだ瞬間──

 

 ドオォォォォォォォォォン…!!!!!

 

 遥か先で爆発を伴った炸裂音が聞こえ、僅かながらな衝撃波が巡洋艦を揺らした。

 

 その後、火焔が吹き伸び、黒煙をもくもくと上がるのが僅かながらに視認できた。

 

 

「…ヒッ……い、一体何が起こったのだ…?」

「な、何でしょうか…」

 

 

 艦長と副長は自分たちの目の前で一体何が起こったのか、理解出来ずにいた。

 

 

 

***

 

 

 

「対艦炸裂弾道ミサイル、発射準備完了!」

「発令所より命ずる!これより対艦炸裂弾道ミサイルを発射する!サブマリナーの諸君らは手近なものを掴んで発射の衝撃に備え!」

 

 

 イージス艦「あおば」からのミサイル攻撃を受ける数分前、潜水艦「カミタカ・トモチカ」は「あおば」に対する対艦炸裂弾道ミサイルの発射準備を整え、後は発射を待つのみとなっていた。

 

 

「艦長、味方艦から通信。超電磁レールキャノンによる艦砲射撃を行うとのことです」

「それは心強い。後で味方艦へ感謝を伝えなければな」

 

 

 艦長であるヒロノリは味方艦の援護に目を細める。

 

 

「ここで一矢報いなければ、我々サブマリナーは今後も海軍や王宮の連中から後ろ指を差されることになってしまう。ここで潜水艦の実力を見せなければ」

「えぇ」

 

 

 その頃、「あおば」から発射されたトマホークとLRASMは終末段階へと入り、トマホークは航法/通信衛星システムによる正確無比な飛行を行い、LRASMも高度を一気に下げて海面スレスレのシースキミング飛行へと切り替える。

 

 そして、先に敵潜を捕捉したのはLRASMだった。

 LRASMはAIによる目標識別を行い、敵潜のウィークポイントを識別。

 そのまま目標へと突っ込んでいく。

 

 

「…な、何!?れ、レーダーに敵影確認!!方位090より敵巡航ミサイル接近中!距離10km!数2!」

「何だと!?れ、レーダーに反応は無かったのか!?」

「それに距離10kmだと…もうそんなに距離が無いではないか!」

「艦長、潜航出来ない今の我々は丸腰であります。ここは一つ、先に敵艦へ弾道ミサイルを発射するべきです!」

「…致し方ない。対艦炸裂弾道ミサイル発射!」

「3、2、1、発射!」

 

 

 潜水艦「カミタカ・トモチカ」は砲術長による発射強行を受け入れ、対艦炸裂弾道ミサイルを発射。

 ミサイルセルから解き放たれた対艦炸裂弾道ミサイルはロケットブースターから発射炎と白煙を撒き散らしながら遥かな高空へと向かう。

 

 

「敵ミサイル、着弾まであと10秒!!」

「総員、衝撃に備えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

 

 レーダー士官からの悲痛とも言える叫びにヒロノリは喉が潰れそうな程の大声を出し、乗組員らは衝撃に備える。

 

 その直後──

 

 LRASMは潜水艦「カミタカ・トモチカ」へ命中。

 瞬く間に火焔が吹き伸び、衝撃波と炸裂音が艦体と海面を大きく揺らす。

 艦内でも炸裂音と衝撃波が容赦なく襲いかかり、衝撃波で何人かの乗組員らが吹っ飛んだ上、艦内で火災が発生。

 

 AIによるウィークポイントへの命中により、「カミタカ・トモチカ」の耐圧船殻はぶち抜かれ、被弾した箇所から火炎が登る。

 

 停電により非常灯が点いた艦内には黒煙が立ちこみ、無意識に黒煙を吸った乗組員らはゲホゲホと咳き込む。

 

 

「総員…被害報告を…」

 

 

 LRASM着弾の衝撃で吹っ飛ばされ、背中と後頭部を強く打ちつけたヒロノリは朦朧とした意識のまま、被害状況を尋ねる。

 

 

「は、はっ…自艦が被った被害ですが──」

 

 

 と、副長が報告しようとした刹那──

 

 

「敵巡航ミサイル第2波接近中!」

 

 

 悲鳴のような叫び声でレーダー士官が叫ぶ。

 LRASM着弾から1〜2分後、トマホークBlockⅣは満身創痍な敵潜に容赦なく着弾。

 

 着弾。閃光。爆発。

 轟く炸裂音と衝撃波が「カミタカ・トモチカ」を葬らんとする。

 

 艦内では乗組員らが吹っ飛ばされ、傷を負った彼等から噴水のごとく鮮血が吹き出し、壁やディスプレイへキャンバスを描く。

 

 

「負傷者発生!!衛生兵、至急応急処置を!!」

「艦長、第1から第5区画浸水!!手がつけられません!!」

「クソッ…もはやここまでか…」

 

 

 もうなす術がないと悟るヒロノリはゆっくりと目を瞑る。

 

 

「皆…すなまい…」

 

 

 その刹那──

 

ドッカァァァァン!!!!!

 

 V-247とイージス艦「あおば」による魚雷と対潜ミサイル、LRASMとトマホーク BlockⅣによる攻撃によって、潜水艦「カミタカ・トモチカ」は重要区画が浸水し、被弾した火焔が装填されていたミサイルや魚雷へ引火して一斉に誘爆。

 

 一瞬で物言わぬ骸となった艦長以下の乗組員らを乗せたまま爆発炎上。その身を排他的経済水域の底へと沈めていく。

 

 そして、発射した弾道ミサイルも……

 

 

「目標群αへSM-3発射」

「撃て」

 

 

 弾道弾迎撃ミサイルのSM-3 Block2Aにより、全弾迎撃された。

 

 

 

「敵弾道ミサイルの迎撃を確認」

「レーダー及び、ソナーに反応なし。敵潜の破壊を確認」

「了解。さぁて、後はコイツらだけだ」

 

 

 CICの報告を聞いた川瀬は勝ち誇ったような表情を見せる。

 

 

「コイツらって…この写真に写ってるコイツらか?」

「あぁ、あの特殊部隊を差し向けた艦たちだ。そのツケはしっかり払ってもらわなくてはな」

 

 

 そこには無人機や偵察衛星によって撮影された、王国海軍特殊部隊『特殊強襲連隊』を載せていた増援の艦たちの写真があった。

 

 

「まだ敵側からの攻撃の兆候は無い。SPYレーダーの索敵範囲にはガッツリと入ってるがな」

「索敵範囲324kmだろ?それで気づいてないところを見るに、敵側の対空レーダーの索敵範囲はそれ以下かもしれんな。200kmとか150kmとか」

「だからと言って、神の盾を舐めてもらったら困る。CIC、敵艦3隻を目標を固定せよ」

「了解。敵艦の目標諸元入力。武装は?」

「さっきのと同じやつで頼む。発射はマニュアルで」

「了解。VLS29番から34番、36番から40番発射準備」

 

 

 手際のいいCICのクルーらによる発射入力により、艦首側の29番から34番と艦尾側の36番と40番の発射準備が完了。

 

 

「敵さん、今ごろ味方の潜水艦がやられたことに焦っているかもな」

「あぁ、あと無人機が敵艦の主砲発射準備を捉えた。グズグズしてたら二階級特進の最短コースだぞ」

「無人機からデータリンク!方位0-9-0の敵艦、大型主砲発射準備完了とのことです!」

「ECM開始!CIC指示の目標、撃ち方始め!」

「了解!トマホーク並びにLRASM第2陣、発射!」

「撃て!」

 

 

 再びMk41 VLSのセルが開き、トマホークとLRASMが高空へと解き放たれた。

 

 

 

***

 

 

 

「潜水艦は…一体どうなってる!?」

「今通信を試みていますが反応がありません!」

「クソッ!」

 

 

 重原子力巡洋艦「コウゾウ・スガ」の艦橋では撃沈した潜水艦「カミタカ・トモチカ」への通信を試みていた。

 

 が、向こうから聞こえてくるのはザーという砂嵐ばかりで反応が返ってくることはなかった。

 

 

「これは……やられたな」

「えぇ……」

 

 

 艦橋にいた艦長と副長は、潜水艦が敵により沈められてしまったと悟る。

 

 

「しかし艦長。まだこの聖戦、我々の負けではありません。味方艦も多数いますし、超電磁レールキャノンの攻撃準備も完了しつつあります」

 

 

 まさか自艦がイージス艦の索敵範囲内に入っていることに思いもしない艦長以下の乗組員らは超電磁レールキャノンの発砲準備を整える。

 

 

「超電磁レールキャノン、電圧チャージ完了!!」

「対艦フレシェット弾並びに対艦榴弾装填完了!!」

 

 

 中央指揮所から超電磁レールキャノンの発砲準備が出来たとする報告が届き、艦長は息を大きく吸った後、

 

 

「これまで散って行った連中の仇を取るぞ…主砲、発砲──「…発砲中止!!繰り返す、超電磁レールキャノン発砲中止!!」」

 

 

 声高らかに発砲を命じようとした刹那、中央指揮所から発砲中止を訴える通信が割り込んできた。

 

 

「艦長より中央指揮所、一体何が起こったのだ!?」

「超電磁レールキャノンの射撃統制システムがエラーを起こしました!恐らくは敵の妨害電波では無いかと…」

「なん、だと…」

 

 

 「あおば」川瀬の指示の下、敵艦「コウゾウ・スガ」へECMを展開。

 

 レーダーによる目標識別に頼っていた超電磁レールキャノンをエラーへ追い込み、艦砲射撃を出来なくした。

 

 

「えぇぇい!!ならばミサイルによる攻撃だ!中央指揮所、敵艦へのミサイル飽和攻撃をせよ!」

「…それが対水上レーダーの他に対空捜索レーダーも反応が…」

「ECCMで無効化しろ!」

「…ダメです、効きません!!こちらのアルゴリズムを書き換えてます!」

「…クソッタレ!!」

 

 

 「あおば」によるECMにより、「コウゾウ・スガ」は全てのレーダーが使えなくなり、ECCMで無効化しようとも、無駄な努力で終わった。

 

 

「…艦長。こうなれば、直接照準射撃に賭ける他ありません。まだ光学照準なら生きておりますので」

「…致し方ない。中央指揮所、レーダーによる射撃から直接照準射撃に切り替えろ。目視による光学照準なら生きているだろう?」

「了解。180mmやP-800並びにP-350による攻撃から、直接照準射撃に切り替えます」

「光学照準装置、起動。敵艦の座標取得」

 

 

 「コウゾウ・スガ」はミサイルによる飽和攻撃から前時代的な光学照準によるレールガンによる直接照準射撃に切り替え、発砲準備を進めていく。

 

 

「対艦フレシェット弾、装填完了!!」

「敵目標照準!!主砲電圧チャージ60%!!」

 

 

 甲板に鎮座する180mm超電磁レールキャノンの砲身は敵艦がいる方位へ向けて、砲身を向ける。

 

 

「主砲発砲シーケンス開始!発砲まで30…29…28…27…26…25…………10…9…8…7…6…5…」

 

 

 残り5秒で発射しようとした瞬間──

 

 

「て、敵巡航ミサイルが7発接近中!方位090、距離10km!」

「何っ!?」

 

 

 イージス艦が持つ神の盾の索敵範囲を知らず、いつの間にかそれに入っていることに気付きもしていない「コウゾウ・スガ」が呑気に主砲の発砲シーケンスを行っていた間にトマホークとLRASMは敵艦を捕捉。

 

 さきほどの潜水艦を仕留めた時のようにトマホークは航法/通信衛星システムによる正確無比な飛行で、LRASMは高度を下げたシースキミング飛行で終末段階へ移行。

 

 確実に死神が「コウゾウ・スガ」へ対して、鎌を振り下ろそうとしていた。

 

 

「対空戦闘よぉぉぉぉぉい!!!敵巡航ミサイルを撃ち落とせぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

 

 艦長は喉が潰れそうな勢いで対空戦闘を命じると、中央指揮所と防空管制の乗組員らは艦首から甲板、艦尾にかけて設置されているカシュタンとAK-630Mを稼働させ、濃密な火の壁を構成。

 

 更に甲板に乗組員が出てきて14.5mm 重機関銃やKord重機関銃を撃ち込んでいく。

 

 

「奴等をこちらに近づかさせるな!!撃ち落とせえぇぇぇぇぇ!!!!!

 

 

 そして艦長が咆哮する中、こっちに来るなとばかりに弾幕を展開するも、その数瞬の間を置いてトマホークとLRASMは着弾。

 

ドオォォォォォォォォォン!!!!!!

ズドォォォン!!!ズドォォ……バシャァァァァン!!!!

 

 

「クソぉ!!何故世界最強の我等がこんな目に…クソクソクソクソクソォォォォ!!!!!」

 

 

 艦長が艦橋で断末魔を叫ぶ中、LRASMは艦橋と左舷のカシュタンとAK-630Mへ着弾。破壊された残骸が周囲に飛び散り、近くで重機関銃を撃っていた水兵らを容赦なくシュレッダーへかけていく。

 

 防空に大穴が空いたそこへトマホークが到達。艦橋や各種レーダー、UKSK VLSやS-300F広域防空システムを破壊し、内蔵されていたミサイルを一斉に誘爆させた。

 

 艦長や副長、航海長はもちろん、作戦専任将校や砲術/ミサイル長など、艦の幹部らは即死し、遅れて中央指揮所へも引火して乗組員を死傷させた。

 

 艦全体が火焔と黒煙に包まれ、上空ではキノコ雲が出来ているのがこの爆発の凄まじさを物語っていた。

 

 

「無人機より巡航ミサイル着弾時の映像がデータリンクで届いています」

「どれどれ…」

「うわぁ、ヒデェ…」

「これは生存者の望みは無いな」

「あぁ……だけど、ツケはしっかりと払えたようだな」

 

 

 「あおば」の艦橋やCICでも「コウゾウ・スガ」の爆発の映像が届き、それを見た川瀬と田中はそれぞれ感想を漏らした後「あっち側じゃなくて良かった」とため息を漏らした。

 

 LRASMとトマホークBlockⅣによる飽和攻撃に晒された「コウゾウ・スガ」は、見るのも耐えないほど痛々しい姿を見せていたが、元々キーロフ級をベースに建造されたのが効いたのか、何とか艦の形は保てていた。

 

 だが、LRASMが撃ち抜いた超電磁レールキャノンの心臓部から漏電を起こし、それがやがて赤い電光へとなり、艦首全体を包み込むように散らしながら再度大爆発。

 

 今度こそ「コウゾウ・スガ」は艦体が崩壊し、排他的経済水域の底へとその身を沈めていった。

 

 そして、残りの増援の巡洋艦「ローザ・ド=クロエ・トモチカ」と「セイヤ・トモチカ」にもトマホークとLRASMが着弾。

 

 何も任務を遂行できないまま大柄の艦体を沈めていき、生き残った乗組員らは一時捕虜として「あおば」へ連行されるも、1日〜2日ほどで解放された。

 

 

「これで敵さんの増援の分は半分を無力化できたな」

「あぁ、だが、本当の戦いはここからだ。これで(やっこ)さんも本気になるだろうからな」

 

 

 解放され、王国海軍の艦へと戻っていく王国海軍兵を見つめる川瀬と田中は艦橋から見える彼等を眺めつつも、本当の戦いはこれからだと気を引き締めていた。

 

 

 






  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。