とある平凡な青年が神様の悪ふざけで死んでしまったそうな。
流石に不憫と思った神様はその青年の魂を呼び出して、別世界にはなるが魂と記憶を引き継いだ状態で二度目の人生を与えると伝えた。
複雑な気持ちだったが強くてニューゲーム的な事に青年は喜んだ。
最後に神様は青年に問いかけた。
───次はどんな人生が送りたい?。
「えーと……才能と容姿に恵まれた幸運で健康的な人生がいいです」
───そうか、ならばそうなれる様に次の人生にはちょっとした特典を与えよう。
そうして青年の魂は新たな世界に送られた。
青年が転生してから10年、地獄の赤ちゃん期を乗り越えた彼は逞しい小学生になっていた。
新たな名前は
博麗神社の神職を代々受け継いできた博麗家の一人息子である。
(まさかの東方project……)
ちなみに幻想郷在住ではなく、東京の片隅に神社を構えた呪術師の家系である。
(東方と思わせて、まさかの呪術廻戦……)
あの青年……霊矛は産まれ直した直後から自身の環境に押っ魂消るばかりだ。
けれど少年は人間としても呪術師としても健やかに日々成長していった。
だが、なんでもないある日のこと霊矛が1人で家に居る時に電話が鳴った。
受けた霊矛は不思議に思った、相手がずっと黙っていたからだ。
しかし沈黙はいつまでも続かない、電話越しに相手の声の震えが分かった。
『任務中にご両親が亡くなりました』
『相対した呪霊は事前の情報とは異なり、特級相当の強力な呪霊が確認されました』
『加えて博麗さんたちは居合わせた民間人を護りながらの戦いでしたが……民間人は大きな怪我もなく全員救助されています』
『……私などが言うまでもなくお二人は、立派な呪術師でした』
どうやって電話を切ったかを霊矛は憶えていない。
ただ不思議と涙は出なかったし落ち着いていた。
「明日からどうしよう」
1人分の夕飯を料理しながら彼は、自身の薄情さに驚いた。
その日の夜は、厳しくも優しかった今世の父と母を思い出しながら布団で眠りについた。
やはり涙は出なかった。
翌日、霊矛は学校に行く気にもなれず家の縁側でぼーと呆けていると和装の女が訪ねて来た。
「ご両親の件お悔やみを申し上げます、僭越ながら私は禪院家で女中をしております田中です」
「禪院って御三家の?」
「はい、ご用件を伝えさせて頂きますとご当主であられる禪院直毘人様が貴方様とお会いしたいという事で僭越ながら私がお迎えに上がりました」
「暇ですし行きますよ」
「ありがとうございます、玄関前で待機させて頂きますので身支度が済みましたらお声掛けください」
「ははっ、こんな子供にかしこまらないでください」
「……私の事はお気になさらず」
田中に背を向けながら部屋に戻る霊矛は深くため息をついた、この先の展開がなんとなく予測できたからだ。
霊矛は寝巻きの甚平から外行き用の神官服へ……着替えようとしてやめた。
(父さんと母さんが生きてたら怒られるだろうけど……これからはラフな格好でいいや)
彼は紅色の浴衣に白い帯を巻いた。
前世では東方projectファンだった事もあり、自分の元ネタとなっただろう博麗霊夢に服装を少し寄せていたのだ。
性別が男という致命的な解釈違いこそあれど顔立ちや雰囲気が中性的であり、なにより博麗霊夢的であったのだから原作ファンである彼的にも寄せるしかない。
(それにしても神様、確かに俺は霊夢推しだったけど……まぁお願いした'才能と容姿に恵まれた幸運で健康的な人生'って奴が博麗霊夢にドンピシャだったんだろうけどさぁ)
今世の両親を呪霊に殺されて幸運か?原作の博麗霊夢はかなりの酒飲みだったが健康的なのか?。
少しだけ疑問符が浮かんだが、今更どうでもいいかと霊矛は気にするのをやめた。
「お待たせしました、田中さん」
「いえ、大分お早いかと……。移動はお車で5時間以上掛かるかと思いますが手荷物等は問題はないでしょうか?」
「全然大丈夫、そのかわり車で寝させて貰います」
「はい、ご自由にされてください」
こうして、博麗霊矛は京都にある禪院家の総本山に出発した。
そこから遅れて数時間後、博麗神社に1人の男が現れた。
目隠しをつけた白髪長身の男だった。
「……今回は出遅れちゃったか」
「あーあ、残念」
流行りに便乗、ただし亀更新