ボクんちの英雄(超低速更新中)   作:haldon

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覚醒からアズノワです。


しゅらばらばーず

「それから、あそこにいるのはラズワルド。暗夜の――」

 

「ア……ズール?」

 

 エクラは、隣にいた少女の雰囲気が変化したことに気がついた。こっそりと盗み見れば、なにやらどす黒いオーラめいたものが漏れ出している……ような気がする。

 

「なんで……なんでこんなところに……」

 

 これが噂の裏人格というやつか。半ば感心しながら、エクラはこっそりと身を引いた。巻き込まれてはたまらない。

 

「この、この浮気男が! 我を置いてどこへ行ったかと思えば、このようなところでうつつを抜かしおって! 我がどれだけ、どれだけ心配したと思っておるこの大うつけ!」

 

 おおう、とその勢いに仰け反るエクラ。これはラズワルド死んだかもしれないな――胸の中でこっそり手を合わせつつ、この二人を会わせたのは失敗だったかしら、と思う。しかし、これからおなじ城で生活することになるんだし、遭遇は避けては通れない(レイがニノを避け続けられているのは、いっそ奇跡である)わけで、遭遇すれば修羅場は必至。となれば、早めにシュラバってもらった方が傷は浅いと考え直す。

 

「ノワールか」

 

 ふと聞こえた呟きに目をやると、いつの間にかジェロームがそこにいて、今まさにラズワルドに掴みかからんとするノワールをじっと見つめていた。あいにく仮面のせいで、何を思っているのかはよくわからない。

 

「ああ……骨は拾ってやろう」

 

「ラズが死ぬの確定なんだ」

 

「ああなったノワールは、誰にも止められん」

 

 呆れたように、彼は首を振る。でもどこか楽しげに見えるのは、気のせいだろうか?

 ジェロームとノワールと、それからアズールは幼馴染み。何の感情も持つなと言う方が難しいだろう。

 

「ジェロームも混ざってきてもいいんだよ?」

 

 そう言ってみたら、絶対零度の視線が返ってきたのだけれど。

 

 

 

「アズール! おい、聞こえておるのか!?」

 

「ふえ……ノワール!?」

 

「よ・く・も、我を置き去りにしおったな!」

 

「えええ、ちょ、ちょっと待ってノワール待って」

 

「待たん!」

 

 再び合掌。まさに魔王様降臨である。

 ラズワルドは、詰め寄ってきたノワールに首を絞められて真っ青になっている。弓を取り出さないだけましだと思うべきだろうか。一応、後衛職のノワールだから、腕力はそれほどないはずだ……たぶん。

 

「ノワール誤解だ誤解! 話聞いてお願い!」

 

 ラズワルドが息も絶え絶えに叫んだところでようやく魔王様は退散なさってくれて、元の弱気なノワールが戻ってきた。手の力も弛んだのだろう、ラズワルドの顔も生気を取り戻す――まだ目には怯えの色を残しているけれど。

 

「誤解って……なあに?」

 

「それは、その……」

 

 ラズワルドは何かを気にするように二、三度辺りを見回した後、ゆっくりと口を開いた。

 

「その、つまりね、ナーガ様からの秘密の依頼だったんだよ」

 

「ナーガ様、の?」

 

「そ。異界の同胞のために、力を貸して欲しいって」

 

 ノワールはうつむいた。納得していないようにも、諦めてしまったようにも見える。確か、ナーガ様というのは彼らの世界の神竜の名だ。神にも等しいその名を出されては、反論もできないということか。

 

「僕と、セレナと、ウードの三人でね。行った先は暗夜王国というところ――僕らはそこで、名と正体を隠して、王家に仕えていたんだ」

 

「秘密だから……私たちにも言えなかったのね」

 

「うん。ごめん」

 

 ラズワルドはそっとノワールの頭を撫で、それから優しく抱きしめた。仲睦まじい恋人たちの様子だ、うらやましい――

 

 

 

 ――と思っていた時代が、エクラにもありました。

 

「あー、ラズワルドやっと見つけたの! マークス様が呼んでいるのよ!」

 

 いつもなら愛らしい声が、このときばかりはひどく恐ろしく響……いや、いつものことだった。

 

「また女の子泣かせたのね。マークス様に言いつけてやるの」

 

「わわ、違うよピエリ。それは誤解だって」

 

「あなたも気を付けるの。ラズワルドは女たらしなのよ。騙されちゃいけないの」

 

 ラズワルドの話など聞かず、ピエリはノワールにそう忠告する。親切心からなのだろうけど、エクラとしては、魔王様の逆鱗に触れやしないかとドキドキものだ。

 

「あなたは?」

 

「ピエリはピエリなのよ! マークス様の一の臣下なの!」

 

 えへん、と胸を張るピエリは無邪気なものだ。

 

「アズ……ラズワルドの、お友達?」

 

「そうなの。あなたは?」

 

「わ……私は、ノワール。その……ラズワルドの……」

 

 おそらく、どのように説明したものか困ったのだろう。ノワールがラズワルドとピエリの顔を交互に見る。

 

「と、友達、だよ! ははは!」

 

 あはは、と愛想笑いを浮かべるラズワルド。もちろん正体を隠すのなら、彼女のことを詳しくは話せないけれど――そのセリフが失敗だってのは、さすがのエクラにもわかった。まあ正解が何だったのかはわからないのだが。ノワールが落ち込みながら黒いオーラを放っている。うん、ラズワルド、ご愁傷さま。

 

「……ラズワルド、ノワールに謝るの」

 

 ピエリもノワールの様子に気づいてか、圧のようなものを発している。さすがに殺意ではないと思うけれど……たぶん。蚊帳の外のはずのエクラも身震いするほどの恐ろしさだ。

 魔王と狂戦士に挟まれた彼の、助けを求める目線がこちらを向く。

 

「自業自得だろう」

 

 しかし仮面の騎士は冷たい一言で切り捨てて、背中を向けてしまった。まあエクラとしても、完全に同意。彼の場合は、そもそも普段の言動が全ての元凶と言えよう。

 

「じゃあ、頑張ってね!」

 

 エクラもジェロームに倣って慌てて背を向ける。くわばらくわばら、巻き込まれてはたまらない。

 なんだかんだ言っても、ピエリもノワールも根は優しい子だ。殺されやしないだろう。あとたぶん、ノワールの案内も彼らが済ませてくれるに違いない。それなら、エクラにできることはもうない。もうない――ってことにしておこう。うん。

 




ソレイユは何も悪くない。悪くないけど……覚醒子供組のことを思ったら、ラズワルドは誰ともくっつけられなかった。


ちなみに裏ではジェロセレも発生しているため、ジェロームはノワールの気持ちがめっちゃ分かるので止めない、という設定があります。
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