ルフレ♂:デフォルト
ルフレ♀:淡いブロンド・ショートカット・大柄かっこいい系・さばさばして男っぽい(というか子供っぽい)
カムイ♂:デフォルト
カムイ♀:淡い桃色の髪・ショートカット・つり目美人系・お茶目
でお送りします。
(マイユニ女の子しかプレイしてないのバレバレやね)
エクラは、顔を合わせた英雄の名前や略歴が『理解る(わかる)』。それは、この世界に喚ばれる前にはなかった能力で、初めてヴィオールを喚んだときにはあった能力。だからおそらく、それは神器の力だ。
その時も、初めて見たはずのその男の名前が頭に浮かんできて、エクラは確かめるように口にした。
「解放の王、ゼフィール……?」
それは、苛烈でありながらも静かで、惹き付けられるような強さと物悲しくなるほどの虚無が同居する、不思議な目をした男の名だった。
〜主君と臣下〜
「う、えっ!?」
廊下を歩いていたナーシェンは、前方から歩いてきた男の姿を視界に捉えるや、まるで人形のように動けなくなってしまった。鋭い眼差し、威風堂々とした振る舞い、重厚にして華美な鎧。間違いない。
「む、」
男の方もナーシェンの存在に気づいたのか、足を止めた。ナーシェンは気力を振り絞ると、強ばった足を必死に動かして、男の前にひざまずく。
「こ、これはゼフィール陛下、この様なところでお会いするとはなんたる奇遇、行幸で御座いましょうか」
「ナーシェン、か」
ああやはり、かつて仕えていた主、ベルン王ゼフィールだ。その声も懐かしく、そして恐ろしい。
「貴様がいる……ということは、マードックやブルーニャもいるのか?」
「い、いえ、そのお二方はまだ喚ばれてはおりませぬ。あの無能な召喚師めは、喚ぶ相手を自分で選べぬようでして」
ベルン三竜将、ひいてはその主たるゼフィール陛下が揃えばどのような敵も相手ではないというのに。ナーシェンはそう言葉を続けたが、ゼフィールは興味なさそうにそれを聞いていた。
「あの……陛下?」
しばらくひとりで喋っていたナーシェンだが、ふと気がついた。ゼフィールがじっとナーシェンの顔を見て、何事か考えている。ナーシェンは内心慌てた。
ベルン戦役では、エトルリア地方の制圧を任されたにもかかわらず、あっさりとエトルリア軍に土地を奪い返され。最終的には三竜将三人のうちで真っ先に倒されて。ついでに、西方で色々やらかしたこともたぶんバレている。そんな自分に、この苛烈な王がどんな裁きを下すのか、それが心底恐ろしかったのだ。
しかし、そんなナーシェンの思いとは裏腹に、ゼフィールはすっと彼から視線を外した。
「滑稽だな」
「え?」
言葉の意味を計りかねて問い返すと、ゼフィールは再びナーシェンに視線を向ける。
「わしも貴様も、一度は死んだ身。死者に頭を垂れるとは……滑稽なことよ」
「そ、わ、私は! そんなつもりでは!」
「よい」
それは、これ以上喋るなという合図だった。
口をつぐんだナーシェンの横を、ゼフィールは何事もなかったかのように通りすぎる。こっそりと後ろを振り向くと、完全に背を向けたところで彼は立ち止まっていた。
「ナーシェン」
「は、はいっ」
礼を失したことを咎められたのかと思い、慌ててまた頭を下げる。
「貴様に、一つだけ感謝していることがある」
「へ、あ、一つだけ、ですか……?」
それは光栄に思うべきなのか、それともがっかりするべきなのだろうか。ゼフィール王はこちらを振り返ることもせず、背を向けたまま続けた。その感情を計り知ることはできない。
「貴様のお陰で、人間の愚かさを忘れずにいられた、迷わずにいられた……皮肉なことにな」
そうして、今度こそ歩み去っていく。ナーシェンはその後ろ姿を、呆然と見守ることしかできなかった。
〜人と竜〜
エクラは腕のいい軍師である。このことに異を唱える者は、この城にはいないだろう。今日、そのエクラの采配で戦ったカムイは、しみじみとその事実を噛み締めていた。
自分だって故郷では軍を率いたし、白夜と暗夜というまったく文化の異なる国の出身者を纏めあげて、なかなか上手に戦えていたと思う。しかし彼の場合は、文化は二つどころではなく。下手をすると全員が違う世界の出身者という、よく考えたらとんでもない混成部隊を指揮しているのだ。
その上、竜に変身するという、よく分からない戦力まで存在して――いや、これはカムイ自身のことなのだが。
「ほんと、エクラさんってすごいわ。あたしも見習わなくっちゃ」
ぐぅ、と伸びをして、部隊を見回した。エクラは腕試しも兼ねるのだと言って、いつも変わった編成をする。今日の仲間はカザハナと、ホークアイと、それから最近仲間になったばかりのゼフィール。かなり攻撃重視のようだ、とカムイは分析する。
「相変わらずお強いですね、カムイさま!」
「ううん、カザハナこそ。また腕をあげたわね」
カザハナとは気心も知れた仲だ。しかし、後の二人のことはよく分からない――だって二人とも無口なんだもの。内心ため息をついていると、意外なことに二人のうち片方が声をかけてきた。
「娘……貴様は、竜なのか」
それはゼフィールのほうで。少し驚きながら、カムイはうなずく。
「はい。珍しいですか」
他の人たちの話を聞く限り、どの世界にも竜に変身できる種族はいるらしい。けれど、例えばカムイのいた暗夜王国では、竜化できるのはカムイ自身と息子のカンナ、それから暗夜王ガロンの三人だけのようだったし。そんな風に、ほとんど見たことのない人もいたって、おかしくはない。
けれど、彼の反応は『珍しい』というのとは少し違うようだった。
「いや……」
そのまま何かを考えこんでしまうゼフィール。
カザハナと二人、はてと首をかしげていると、今度はもう片方が――ホークアイが、話しかけてきた。
「我らの世界では、竜は滅びて久しい。僅かに残った者たちも、少しずつ衰えていく……そんな時代だった」
「ホークアイさんは、ゼフィールさんと同じ世界から?」
「……そのようなものだ」
やはり、この二人はよく分からない。
「お前は、竜でありながら人と交わるのだな」
ホークアイは何やら感心しているらしく、とても幽かで柔らかな微笑みを浮かべて、こちらを見つめていた。それは、子を見守る父親のような眼差しで――正直、悪くはないけれど居心地が悪い。
「人だろうが竜だろうが、カムイさまはカムイさまだもの!」
カムイの戸惑いをどう受け取ったのか、カザハナがカムイを守るように前に立った。めいっぱいに胸をそらしているが、ホークアイとの体格の差がひどくて、獅子にケンカを売る子猫ってこんな感じかしら――そんな場違いな感想が浮かんでしまう。
「あたしは、カザハナを始めたくさんの人に支えられて、今ここに立っています。あたしは竜である前に、人ですから」
カザハナの肩に手を置きながらそう言ってみると、彼女は向日葵のようににぱっと笑った。
「それが、あるべき姿……なのかもしれぬな」
ホークアイもそう言って、分かりにくい笑みを僅かに深めた。
その話を聞きながらゼフィールが何を思っていたのかを、カムイは知らない。ただ、すごくすごく内側を見つめているような、自分の内側に籠っていくような、そんな顔をしていたことだけは、知っている。
なんだか声をかけてはいけないような気がして――だからカムイはこの人のことを、もっと知りたいと思ったのだった。
〜敵と味方〜
ゼフィールが中庭を通りかかると、そこでは何人かの若者たちが武道の試合に興じていた。その中に知ったような赤髪がいるのに気がついてふと足を止めると、若者たちもこちらに気がついたらしく、手を止め一礼する。
「あ!」
一人が声をあげ、前に出てきた。やはりゼフィールの見当に間違いはなく、それは見知った赤髪――フェレの公子、ロイだった。
「ゼフィール様……その、お久し振りです」
「……ああ」
かつては敵として相対した相手だ。今でも、この若者に望みを邪魔されたことは、恨みとして残っている。しかし、この場でそれを持ち出す必要はないだろう。ここはエレブ大陸ですらなく、自分たちは同じ陣営に属する、いわゆる味方同士なのだから。
ロイのほうもそれは分かっているらしく、複雑そうな顔をしながらも、少なくとも表面上は穏やかに挨拶をした。
「……ここには『英雄』が集められていると聞いた。なれば、貴様がいてもおかしくはないな」
「そ、れは……」
ヒトの歴史から見れば、彼はヒトを守った英雄だ。それを自分は是としないけれども、それは別の問題として、彼が英雄と呼ばれることには何ら反対しない。歴史とは、そういうものだからだ。
「ロイの知り合いか? 高貴な身分の方とお見受けする。俺はクロム。イーリス聖王国の一応、国王だ」
ロイと手合わせしていた青年が、握手のつもりか手を差し伸べてくる。だが、ゼフィールは応じなかった。別に、意地が悪いわけでも、見下しているわけでもなく――ただ、そうするべきではないと思ったからだ。
クロム、というその青年は、怪訝そうにゼフィールを見上げた。
「クロム……貴様、絆というものを信じているか?」
「え? あ、ああ」
質問の意図が分からなかったのだろう、クロムは戸惑った様子でなんとかうなずいた。しかし、ゼフィールにとってはそれで十分だ。
「なれば、わしらは相容れぬ。握手は不要」
クロムは混乱を隠せていない。ロイも何か言いたげな顔で、こちらを見ている。それでもゼフィールは、それ以上弁明も説明もするつもりはなかった。必要ならば、ロイが何か言うだろう。
ただ。
「わしが死んだあと……イドゥンは、ギネヴィアは、どうした?」
それだけが気になった。
ロイは答える。
「……イドゥンは、ナバタの里で預かってもらっています。それからギネヴィア姫は――いえ、ギネヴィア女王は、貴方の代わりにベルンの王座につきました」
「そうか」
それを聞いたところで、何がどうというわけではない。自分はイドゥンを利用した。自分はギネヴィアを拒絶した。その事を後悔するわけでもないし、間違っていたとも思っていない――けれど。
「礼は、言おう」
そう言うと、ロイはひどく複雑に、顔を歪めた。
〜救ったものと救われたもの〜
「そうそう、そうしたらそこで、お塩をひとつまみ」
「えと、これくらい?」
「はい。よーく混ぜて、味を見てくださいね」
そこは厨房なのだろうか、食べ物の匂いとともに、料理をしているらしい女たちの声が聞こえてきた。
「うーん、ちょっと薄いかな」
「少し薄いくらいが丁度いいんですよ」
「オリヴィエ、こっちも見てくれるかしら」
「はーい、今行きますー」
そっと覗くと、緑の髪の子供が小さな鍋をぐるぐるとかき回していた。他にも何人かの女たちがいて、おそらくこれは、料理教室というやつなのだろう。
子供は鍋の中身をひとすくい小皿にとって、口に含んでは首をかしげている。
「どうかな、もうちょっとかな? うーん、お料理って難しいや」
子供にも、料理にも、女たちにも別段興味はない。しかし、何かが心に引っ掛かって、ゼフィールはその場を動けないでいた。
「どうですか、ニノちゃん」
「オリヴィエさん、これくらい?」
「そうですね……うん、おいしい。ニノちゃんはお料理上手ですね」
教師役の女が褒めると、ニノとかいうその子供は嬉しそうに頬を染めた。
「あたしね、いつか家族ができたら、みんなでテーブルを囲んで、美味しいご飯を食べたいんだ」
だから今のうちに料理の練習をするの、と言う。
「ニノちゃんなら、きっといいお母さんになりますよ」
「そうかな、えへへ」
「家族……」
ふと、ある思い出が脳裏をよぎった。暗闇の中で何かを祈る自分、少女の声、剣戟の音、守ってくれた手、眩しさ、そしてほのかに残る暖かな気持ち。はっきりとは思い出せないそれは、けれど自分にとって転機だったようにも思えて。
「家族、か」
まだ、家族の絆というものを信じていたころの自分だ。今から思えば、ずいぶんと青臭い。
「家族など……まやかしだ」
思い出を振り払うようにその場を後にする。家族など、まやかしだ。そう、自分に言い聞かせるように呟きながら。
何故か無性に、マードックの顔が見たかった。
心優しいゼフィール王子は、嫌われても嫌われても、父のことを愛そうと愛されようと必死だったに違いない。マードックは王子の努力を支え、 ブルーニャはそんな一生懸命な王子に惹かれ。
でも、その努力が無駄だと知ったとき、王子の世界はたぶん壊れてしまった。
王子が王になったとき、マードックやブルーニャはどんな気持ちだっただろう。一番側にいながら、彼を止めることも叶わず。
ギネヴィアが彼のために苦悩のなかで彼を裏切ったように、二人は彼のためにきっと苦しみながら彼に仕えた。三人は結果こそ違えど、みんな彼のために動いた。それだけ、彼は――王子は愛されていたのだと思う。
そして、そうして自分を愛してくれる人が目に入らなくなるくらい、王は絶望していたのだと思う。世界を壊し、すべてを静寂の中に落とし込むことでしか、彼には平穏が訪れなかったのだと。
せめてこの賑やかな世界では、自分を愛してくれる存在に気がついてほしい。もといた世界にも、そんな存在がいたことを思い出してほしい。
そんなことを思いながらつらつらと。