五条の嫁   作:ただのコマチ

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どうも。

『アレ』、動きます。



発芽

 

6月3日

 

黒閃を出すと、一種のぞーんに入れるんだとか。

意図的に黒閃を出せるのは私だけみたいなので、出す前と出した後で動きがどれだけ変わるか実験しました。

すごーく変わった!ってわけじゃなかったけど、呪力操作はすごーく細かくできました。「黒閃が連続で出やすい」のは、たぶん呪力が細かく分かるようになるからだと思います。悟さんは、七海くんの術式は黒閃が出しやすいんじゃないかって言ってました。がんばれ七海くん!

 

 

 

6月10日

 

任務に行った先で強い呪霊と戦った時に、頭の中で声みたいなのが聞こえました。

何かを指示したり、焦ってたり、安心したような感じの声がしてびっくりしました。

今はもう聞こえないけど…

 

悟さんには話さない。

心配をかけたくないもん。

 

 

 

6月14日

 

久しぶりに傑さんと組手をしました。

七海くんと灰原くんと一緒に多対一の練習もしました。傑さんはあの日から少しずつ、呪霊の術式を自分のものにしようとしているみたいで、最近やっと三級呪霊の弱い術式なら安定して使えるようになったらしいです。

じゅうぶん早いと思いました。

私も龍灸を使って戦うのに慣れてきて、傑さんに褒められちゃいました。やっぱり褒められるのはうれしいです。

 

ホクホクしてたら傑さんがちょっと震えてました。

なんでだろ

 

 

 

6月17日

 

今日はちょっとだけ寝坊しちゃいました。

なんだか頭の奥でザーザーって鳴ってるような…長引いたら硝子さんに診てもらおっかな…

今日は学校も任務もないし、悟さんが前に言ってた映画を観よっかな…

あ!悟さーん!

 

 

 

 

 

 

 

6月18日

 

…あた ま… …いた い

ずっ と、 お と ひびい、 てる…

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「……」

「…珍しいね。悟が考え込むなんて」

「いや…ちょっとな…」

 

朱莉の中の『アレ』は、まだ分からないことが多すぎる。目覚めた理由も分からない。

ただ、アレが朱莉に危害を加えるんならさっさと祓わなくちゃならない。

 

「もしかして朱莉のことかい?」

「…なんで分かんだよ」

「悟は基本悩まないだろ?悩むとしたら朱莉のことだと思ってね」

「……」

 

…傑だったら、話していいかもな…

口はかてぇし…強い。俺よりはよえーけど。

 

「なあ傑……あのさ…」

 

 

……

 

 

「…そんなことがあるのかい?」

「あったんだよ…マジで…」

「……呪物…いや、御三家にあっても厳重に保管される。朱莉の待遇を考えれば見ることすらできなさそうだ」

「ああ…それに、こっちに来てから出てきたみてぇだし…」

 

 

「……悟、あれから咎められたことはないのかい?六眼なら、常に視えていたっておかしくないだろう?」

 

 

…たしかに、あれから何度も朱莉を見てるのに…咎められたことはない…

六眼は常に呪力が視える。ならアレが常に視えるはずなのに、今まで朱莉以外は…

 

……あ?

 

「…俺……なんで顔がはっきり見えてんだ…?」

「…悟…そんなの当たり前じゃ……」

「俺にゃ当たり前じゃねえんだ!今までは、傑も朱莉もこんなにはっきり見えてねぇんだよ!!」

 

俺を見つめる傑の肌の色が、呆けたような顔が、目の奥に映る俺が、はっきりと見えた。

今思えばおかしかった。

喧嘩した俺らを呆れた目で見る硝子も、俺らを正座させて叱る先生も、傑と体術の訓練をしていた灰原も、俺が訓練でボコボコにした七海も……朱莉も、はっきりと色が付いて視えていた。

六眼が機能停止したわけじゃない。少し意識すれば、今まで通り呪力の流れが視えた。

 

 

「朱莉がかわいすぎて気づけなかった…!!」

「悟、君重症だよ」

「ならいつから……」

ふと、朱莉の術式がわかった後で眼に走った痛みを思い出した。

「あれか!?」

「…どれのことだい?」

あの痛みが走るまではこんな見え方はしていなかったはずだ。

アレがなんかしたのは確実だ……「与えてやるから覗くな」ってことか…?

 

 

「…こんなことまでできんのかよ…」

 

 

まあ害になってる訳じゃねぇし、朱莉に害を与えてる訳でもねぇっぽいし…あいつが朱莉の中にいる利点もあるかもしれねぇ。

とりあえずは様子見か…

 

 

 

「今日はひとりごとが多いね」

「あー、悪いな。聞かせたのに」

「…珍しいじゃないか。風邪でもひいたかい?」

「んなわけねーだろ……あー、朱莉のせい、かもな」

「確かに…悟も丸くなったね。朱莉には、感謝してもしきれないね」

「…お前、最近呪霊の術式だけ食ってんだろ?」

「ああ。朱莉がたまたま術式だけ残して燃やしてね。そこから思いついて、一昨日やっと二級の術式を取り込み始めたんだ」

「おっせー、まだ二級かよ」

「かなり難しいんだ…君にも一度呪霊を食べてみてほしいな」

「クッソ不味いもん食う訳ねーだろ?」

「食べてみたことないだろ?もしかしたらすごく甘いかもしれない」

「うるせー」

「…ふふっ」

「…ははっ」

 

「…悟、ラーメンでも食べに行こうか」

「…いーじゃん。行こうぜ」

「決まりだね…そうだ悟、聞きたかったことがあるんだ」

「なんだ?」

「いや、悟はなんで呪術師をやってるんだい?」

「あ?……なんでってー…なんでだ?」

 

 

「…ふっ」

「…はっ」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

  6月20日

 

雨も止んですっかり晴れて、頭の中の声も止まって……止まってない。落ち着いた。

 

『…まだ……じん…らぬか………とぎr………ればよいg……』

 

一昨日はすごーくつらかった……頭の中でずっとザーザー鳴ってるんだもん…

今もザーザー聞こえるけど、昨日の夜からだんだん言葉が聞こえ始めてびっくりしちゃって、けっきょく悟さんを心配させちゃったな…

 

『やh、r……しk…い……kれで、けば…ぉよぃ………す…てお……か……?』

 

…ほんとに何を言ってるんだろ…

たまに『五条』とか『術式』とか聞こえたから、私の周りのことは分かってそうだし……でも、悟さんは気づかなかったし…

もしかして呪霊…?でもそれなら私でもわかるし…傑さんの強い呪霊センサーで分かりそうだし……

…イヤな感じはしないんだよね…

なんでかわかんないけど、ずっと一緒にいたみたいに安心するし…?

 

『…n、い…か、が…い……れも…れのえ…うか…』

 

…あ、硝子さんみたいに身体の中に呪力ながせば燃やせたり…それならなんとかできるかも!

いけー!流れろー…!!

 

『はっ…がお…r、sいz…!…やh、り、ぉ…につ…ら、ば…』

 

……できない…(´・ω・)

やっぱり硝子さんってすごい人だったんだな…

相談……は、したら心配かけちゃうし…

 

『む…めのじゅ、し、を…わ、て……r、う……

 

 

 

 

   どうだ?聞こえているだろう?』

 

 

えっ⁉︎だっだっだだっだれ‼︎⁇

 

『そう焦らんでもよい……娘…いや、五条朱莉………貴様には言わねばならん…伝えねばならんことがある』

 

男の人…いやちょっと高いような…女の人にしては低いような……不思議な声。聞いていると威圧感を感じて、でもどこか安心するような、そんな声。

「(えっと…あの、あなたは…)」

『…このままでは少し話しづらいな。こちらに招こう。……どちらかと言えば、は居候の身だがな』

「えっ、それってどうい……う…」

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬きをすると、そこはもう私の部屋じゃなかった。

 

 

目の前には、色が抜け落ちた様な荒野が広がっていた。ところどころ植物が生い茂って鮮やかな緑色になっていたけど、それも一部分だけ。

 

そして、薄紫色の炎が揺らめいていた。

 

 

 

 

『ここは、娘、貴様の心の中…〈生得領域〉だ』

 

 

振り返れば、炎が形作る玉座に悠然と座る『私』が目に映った。

 




 

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