プロローグだけなのにたくさんの人にアンケートで「おもしろい」と思ってもらえてすごく嬉しいです。
「もうちょっと頑張ってほしい」という意見もあるので、誠心誠意頑張っていきます!
…不定期投稿ですが…
すべてはここから始まった
がしゃん
「なにをしている。責任を持って片付けろ」
「…はい……申し訳ありません…」
幾度となく聞いた高圧的な声に怯え従う。
碌に休むこともできず、食事も着替えも最低限にしか与えられない。
一族相伝の術式、【赤血操術】を持たないとわかった時から、私の扱いは最低…よくて人以下だった。
ここは賀茂家。呪術界隈で強い権力を持つ御三家のひとつ。
そこに生まれた私は…俗に言う『出来損ない』だった。
呪力を練ってもなぜか不自然に散ってしまうことが多くあった。
女性であるが故に男性に比べて必然的に体力面でも劣っていた。
そんな私が実力と血統を重視するこの家で生き残ることができたのは本当に幸運なことだったと思う。
家事の才能はあったらしく、毎日蟻のように働く。
休む期間がある分蟻の方がマシかもしれない。
最低限の教育のみを施され、最低限の生活のみが保証され、家の外に出ることもなく、
『誰かが連れ出してくれる』
いつしか、そんな淡い幻想を抱くことも無くなっていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「園遊会?」
「ええ、賀茂家にて開催される、当主様の奥様を決定するためのものです」
「要するに婚活パーティーでしょー?」
「…そうですな。今回に限っては当主様には必ず参加していただかなければなりません」
「はぁ?……くそ、お菓子いっぱいだせよー。飯と同じかそれ以上なー」
「…賀茂家に出すようにさせておきます」
あんな安い条件で請け負った自分がバカだった。
先日の自分を恨みながら、この園遊会の主役である五条家当主、五条悟は賀茂家の長い廊下を歩いていた。
婚活なんて無視して甘いお菓子を好きなだけ食えると思っていた矢先、出されたのは酒と会席料理。
目に野心を灯した女とジジイが死体に湧く蛆のように群がってくる。甘味を楽しむなんてできたものじゃない。
呪力を無駄に使って威圧し外に出てきたはいいものの、後でうちのうるさいジジイから口煩く言われるだけ。適当に庭を見ながらぶらぶらと歩くだけだった。
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今日は家中が浮き足立っていた。
詳しいことは聞かされなかったが、なんでも同じ御三家である「五条家」の当主様が来られて、えんゆうかい?が開催されるとのこと。
御三家同士で結ばれて、権力が強まることはこの家にとっても喜ばしいこと。しかも当主となれば、いわゆる玉の輿?というものになれるのだろう。
通りで掃除洗濯を念入りにさせられるわけである。昨日は丁寧に掃除したはずなのにまだできるだろうと殴られた。出したくもない血が出て、せっかく掃除した畳が汚れてしまった。他人が汚し、私が掃除をする。あまりにも無駄なことだと無駄な存在でありながら思った。まあ、いつもの殴る理由よりは筋が通っていた。
そうは思っても出来損ないには反抗することもできず、赤血操術も使えないが故に畳に付いた血を手作業で洗うことになってしまった。お陰で食事をとることもできず、倒れても血に栄養を生み出させられることで無理矢理に回復される。
今日も上手く動かない身体に血液を操作するという鞭を打たれ、園遊会で出される食事を作らなければならない。
…でも、今日はいつもとは少し違っていた。なんでも五条家当主様から甘味を多く、それも懐石料理以上に作るように言われたのだとか。
お菓子ならば、材料と作り方を守り味と見た目に気を使えば、いくらでも装飾を工夫することができる。同じものを別のもののように作ることができる分懐石料理よりは楽だが、その分量を作らなければならないのは…妥協すべきだと思う。
普段より人手も多い分少しは楽ではあるが、配膳まで私に任せられる。ごくたまに出来のいいものを持ち去って行く方もいた。
…そんなに美味しそうだったのかな…?
「遅いぞ!五条様をお待たせするんじゃない!」
「…はい…申し訳、ありません…」
理不尽な叱責が身を襲う。
こちらも身体を拙い呪力操作で少しでも動くようにしているが、まだ頑張らなければならないらしい。
「(まだ…終わるまでだいぶんある…ゆっくりできる暇なんてない……大丈夫、いつもと同じ。なにも言わずに、ただただ働けば…)」
暗転。目の前が霞む。
身体は限界を迎えてなお動いている。赤血操術によるドーピングが切れれば倒れるのは必然だった。
「(まだ…だめ…)」
ただ、精神は異常だった。恐怖と不安によって縛られた想いは限界を無視することを決めさせ、精神力で身体を動かしていた。
「(また、血を操ってもらおう。殴られるだろうけど、倒れて何度も殴られるよりマシ…)」
限界を迎えた身体では視野も狭まる。
曲がり角を歩いてくる長身の男に気づくこともできず、衝撃で持っていた甘味も…
落ちなかった。
甘味は空に止まっていた。器は廊下に落ち、音を立て割れたというのに。
遅れてぶつかったことを謝罪しなければならないことに気づく。霞む目で見上げた顔はこの家で見たことのない顔で、その男は客人であった。
「ぁ…もう……しわけ…ぁ、ありません…」
上手く出ない掠れた声を絞り出し、割れた器を片付けようとする。
その手は、長身の男に掴まれて止められた。
いつも手を掴まれるときは殴られるときだけであり、手を掴まれるという行為は恐怖を思わせるものであった。
ただその手からは、不思議と恐怖を感じなかった。
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曲がり角でぶつかったのは小柄な下女らしい女だった。
苛立ちに任せて声をあげようとした時、その女からは掠れた声がした。
「ぁ…もう……しわけ…ぁ、ありません…」
恐怖と怯えに塗れて、驚きが塗りつぶされ消えたように感じられる声。艶のない黒髪に曇った目。ズレたサングラスの隙間から視えたその女の体は酷いものだった。
呪力を訓練しないまま常に纏っていたのか、呪力は底をつきそうでありながら不自然に生み出されている。血流は弱い鼓動では巡るはずがないほどの濃度で巡り、服で見えない傷が多く視えた。
どんな生活をしていたかありありと想像ができる。御三家の暗い面を意図せず垣間見て吐き気を覚えるなかで、女は驚くことに素手で割れた皿を片付けようとした。助ける義理もないのに、思わず止めていた。
「…おい、なにしてんだ?」
「ぁ……ぃ、いえ…その、片付け、なければ…なりません……」
「だからって、素手でするか?普通…」
「…道具を、持ってくる暇、なんて、ありません……はやく、片付けないと…」
そう言って、女は尚も手で破片を集めようとする。
特段綺麗であるというわけでもない。
人を魅了する魔性というわけでもない。
なのに、なぜか目が離せなかった。
ふと、女の手から甘い匂いがするのに気づいた。色々な匂いが混ざっており、そのような匂いが付くのはお菓子を作っていたからに他ならない。
「なあ」
「…ぇ、あ、なん…でしょうか」
「今あっちで出てるお菓子ってさ、お前が作ったの?」
「は…はい、ぁ、あの…質が、悪かったのでしょうか…」
驚いた。
この身体で、あれだけの量を、味と見た目両方の質を落とさずに作り続けられることに。
今まで多くの高級菓子を食べてきたが、今日食べたものが1番美味かった。
「いや、すげぇ美味かった」
「そぅ…ですか、あり、がとう…ございます…」
返ってきたのは形式的な言葉だけだった。
一瞬だけ光を灯した様に見えたが、女の目は虚で、こちらの姿など写っていなかった。何かを恐れて、何かに怯えるかのように、ただただ責務をこなすことだけが生きる理由であるかのように見えた。
そんなことを思っているいると、後ろから煩い声が聞こえてきた。
「五条様。そろそろ会場へ……どうされましたか?」
賀茂家の…よく覚えていないが、おそらく上の立場の奴だ。
「…いや、なんでも…
「……当家の端女が、なにか粗相でも?」
……」
“端女”
…この女のことだと理解するのが少し遅れた。
「申し訳ありません。これは当家の責任でございます。よく躾をしておきますので…」
「…躾ェ?」
「五条家の現当主であるあなた様に粗相を働いたのです。それ相応の罰で躾なければなりません」
女はいつのまにか立ち上がっていた。脚は上手く力が入らないのか震えていて、手は欠片を集めたからか血で汚れていて、先程止めた意味がまるで無かった。
「ぁ……も、しわけ…あり、ません…」
虚な顔で頭を下げる女を当然のことのように見る男に嫌気がさした。
『躾』…想像はできる。この女が厨房から抜ければ、あの美味いお菓子を食べられなくなるのが残念に思えた。
名案が浮かんだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「…この宴会って、要するに俺の嫁探しだろ?」
「…はい、その通りですが…お気に召す娘でもおりましたかな?」
「もちろん。俺が決めていいんだよな?」
「もちろんでございます。それならば、早くお戻りを…」
「こいつ」
「……は?」
「あれ?聞こえなかった?こいつ、今から俺の嫁ね」
「…ぇ?」
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