前書きも言い訳も邪魔なのではないかと思い始めた今日この頃です。
五条家に生まれた六眼のガキを、面白半分で見に行ったことがある。
後にも先にも、背後に立った俺が気取られたのはこの時だけだった。
だから、削った。
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side.伏黒甚爾
依代が居ると分かってから、俺はやり方を考え直さなければならなくなった。
俺の勝ち方はふたつ。
先に五条悟を殺すか、依代を殺すか。
どちらかといえば、先に五条悟を殺した方がいい。
楽に潰しやすいのは間違いなく依代。だが依代を手札として使いたい分、五条悟は依代を守る動きを強制される。術式の使用も制限できれば隙も増える。
あの勘の良さは潰せはしないが、それを動きの制限で補う。完全にとはいかなくとも十分だ。
それに、依代を残すとなれば不確定要素が付き纏う。戦闘能力、使用呪具、戦闘経験…あらゆる情報が少なすぎる。
依代は代々あらゆる情報が秘匿されていた。
“術式を受け継いでいる”、“五条家への対抗手段となる”という情報からは推測も難しく、調べても今までの任務に安全なものが多すぎて碌に情報が出ない。孔が掴んだ情報で術式は判明したが、それだけだ。
だとしても、最優先は依代になる。
依代の術式は厄介だ。
天逆鉾は依代の血筋が製作し、禪院に渡ってきたと聞いた。
“術式を貫通”する天逆鉾。これを製作できた理由は間違いなく依代の術式である“呪力を燃やす術式”が大きく関わっている。
燃やせる呪力の範囲がどれほどか、呪具に刻まれた術式を燃やすことができるのか…
やはり依代には不確定要素が多すぎる。不用心でいれば、最悪天逆鉾を機能停止にされかねない。
天逆鉾の術式を失えば、俺が五条悟を殺すことは限りなく不可能に近くなる。そういう意味でも必ず依代は仕留める必要があった。退くのも五条悟が相手だと厳しいだろうしな。
依代は生け取りにすれば金になる。殺してもまあまあな金にはなる。
生かして引き渡すとなれば御三家どもはこぞって金を出すだろう。
五条悟への対抗札であるうえ、子を産ませれば術式が遺伝する可能性もある。成功すれば御三家の中での立ち位置は大きく変わる。
あろうことか五条家に渡った対抗札が返ってくるとなりゃ、賀茂家からの報酬は期待できる。
殺してしまえば御三家のパワーバランスは崩れない、そのうえどちらかといえば危険分子と言えるものがなくなる。御三家としちゃ得にはならなくとも損にはならず、むしろ得に近い。
賀茂家の力が落ちるって意味じゃ、五条家も禪院も金を出したがるだろうしな。
だから生かす殺すはどっちでもいい。
むしろ殺した方が楽だ。反転術式で復帰される可能性がなくなればその分五条悟に集中できる。
だから俺は最初に五条悟を狙った。
依代ではなく、だ。
それで相手は俺が依代より五条悟を狙っていると考え、依代への警戒は薄くなる。
依代に付き纏ってる
ラッキーだ。
仕上げに、五条悟が攻撃を行えず、意識が完全に防御に向く瞬間。それを意図的に作り出す。
必要な立ち位置は依代と五条悟の間。
タイミングはやつらの意識が俺から外れた瞬間。
依代にわざわざ天逆鉾を使う必要はない。
かと言って生半可な呪具で殺し損ねれば不味い。
ちょうど、
依代が殺せなくとも、依代に付き纏ってる気配を殺せればいい。
嫌な予感がしやがるからな。
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「コフッ…」
刺された
ポタポタと落ちていく血が見えて、お腹が熱くなる。
いつもなら聞こえるはずのカグさんの声も聞こえない。
カグさんも痛いのかな。
「…朱莉」
悟さん、ごめんなさい
また足を引っ張っちゃいました。
さっき「がんばろう」って思ったばっかりなのに、カグさんに「気をつけろ」って言われたばっかりなのに、全然分かりませんでした。
戦ってる途中なのに天内さんを気にしちゃって、それで次は悟さんを気にしちゃって…
「…さとる…さん……」
「っ……喋んなよ…キズ開いちまうだろ」
…大丈夫ですよ、悟さん。
痛いですけど意識はありますし、フラフラしますけど立ててます……あ、もう無理かもです。
でもこんなの全然つらくないです。悟さんに嫌われたりした方がもっとつらいですから。
喋ったら痛いです。息を吸いこむだけで痛いです。気を失っちゃいそうです。
ほんとははやく治してもらいたいです。
悟さんにもっと甘えてたいです。
抱きしめて欲しいです。
でも、今はまだダメですよね。
「…私は……いいですから……」
「……そんなこと…できるわけねぇだろ」
そういって、悟さんは私を抱きしめてくれました。
痛いけど、嬉しくて、ちょっぴり恥ずかしくて、
なんだか感じたことのある、温かい感じがしました。
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朱莉をできる限り優しく地面に寝かせる。
意識していないと朱莉をぞんざいに扱ってしまいそうだった。
今すぐにでも朱莉を連れて離れたいけれど、相手がそれを許すほど甘くはない。
本当に俺は何をやってんだ。
最近ようやくカグツチに朱莉を任されるってとこだったのに、ちょっと気を逸らしちまっただけでこのザマかよ。
視たところ、カグツチもキツそうだ。
俺があいつをぶっ飛ばさなきゃならねぇ。
今の俺は冷静で、だけど冷静じゃない。言い得て妙だけど、ほんとうにそうとしか言えない気持ちだ。
あいつをぶっ飛ばしてぇ気持ちが溢れてる、けど朱莉が悲しみそうだから殺したくはないとも思ってる。
朱莉が刺された怒りと悲しみに塗れた自分がいて、でもそれと同じぐらい
堪忍袋の尾が切れたのか、
越えられない一線を越えたのか、
俺の中で何かがぷつりと音を立てる。
今、俺はどんな顔だろう。
朱莉に怖がられるような顔じゃなきゃいい。
今、俺はどんな気持ちなんだ。
朱莉を優しく扱うことすら難しく、
朱莉が心配な気持ちが思っていたより薄いのはなんでだ。
今、俺はなんで、こんなにも
「…それが嫁殺された奴の顔か?」
「わざわざ待ってたのかよ、律儀なこった」
「……
「…そうかぁ?……そうだなぁ…そうかもなぁ………そう
「……しくじったかな…!」
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