五条の嫁   作:ただのコマチ

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どうも。
「アレ」の話は引きずっていきますよ〜。



朱莉の決別

 

「…当主様、賀茂家の者が来ております」

…またか。

 

俺の嫁…朱莉の名前が決まってから2週間、朱莉は地頭がいいのか、早くも中学2年の内容を学習し始めた。ま、俺が教えてるから当然だけど。

…結局、朱莉の中のアレをどうするかもまだ未定のまま。

そんな中で日を重ねていくたびに、朱莉が笑うことが増えていった。話し方もぎこちなかったが、詰まることも少なくなっている。

初日の夜、朱莉の歓迎会で料理を見た時の朱莉の顔は忘れられない。目がキラキラ光っててかわいかった。夜蛾先生も口元緩んでた。

最初は俺以外には警戒しまくってたけど、最近はマジで無警戒だ。

   …ジェラァ

…?…なんだこの気持ち…

まあいいか。

 

賀茂家だが、いまだに朱莉が俺の嫁になったことが信じられないらしく、3日前から賀茂家のやつが来てる。なんか考えなおせとか言ってる。

…挨拶してねぇからか?

 

「…朱莉、もういいぞ」

「……アリガトウゴザイマス…」

朱莉は賀茂のやつがくるたび隠れてる。最初は何も言わなかったからほんとに焦った。いつの間にか姿が消えて気配も無くなっていて…俺の背後から出てきた時はホッとした。

「やっぱ、あいつらには会いたくない?」

「…はい」

まだ陰りが見える顔の奥には、まだ不安が残っているように見えた。

「…よし」

朱莉はまだ『賀茂家』に縛られている。

俺に連れ出されるだけじゃ足りない。

朱莉自らが飛び出さなければならない。

 

「朱莉!賀茂家行って絶縁して来ようぜ!」

 

「……ふぇ?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…ぁ」

隣に悟さんがいる…それだけでは震えは治らなかった。大きな門…私が、生まれた家の…

悟さんは絶縁しようって言ってた……私が、怖がってた…から?いやいや…きっと悟さんも私の実家が嫌いなんだ。うん。

『絶縁でも一応挨拶だし、おしゃれをしていった方がいい』

夏油さんにそう言われて、無地で派手ではないが、それでもいい生地の着物を着てここにいる。

「…五条様、お待ちしておりました。どうぞこちらへ」

…?

門をくぐった瞬間、少しだけ目眩がした。

 

……

 

豪華な部屋に招かれ、襖が開かれる。

そこにはたくさんの人がいて…ほとんどが、きれいな女の人だった。

「…ねぇ、こんなに女揃えてなんのつもり?」

隣から聞こえる声からするに、悟さんも分からないようで…私にも検討が付かず、呆けてしまった。

 

その瞬間に、頭に激痛が走った。

遅れて、髪の毛を乱暴に掴まれ引っ張られていると理解する。抵抗しようにも、いつの間にか手足が生温かく赤い紐で縛られていた。

「さとるさッ…!…」

咄嗟に出した声は口を塞がれ、喉の奥に消えた。

 

閉じていく襖の先で、悟さんが振り向き手を伸ばしてくれたのが見えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「朱莉ッ‼︎」

伸ばした手は襖に遮られ、朱莉には届かなかった。

朱莉が引き摺られて行くのに気付くのが不自然に遅れた。

門をくぐる時の違和感が蘇る。

…そういう結界が張られていたのだろう。警戒をするべきだった。

「どうかされましたかな?」

「…マジで、なんのつもり?」

 

「いえ、返品に来られたのでしょう?」

 

「……は?」

“返品”……朱莉を…か?

「やはりあの下女では役不足…名前も無いようでは仕方のないことです。再度当家から奥方を選ばれるというのは、こちらとしても喜ばしいことです」

誰かも分からない野郎の声はよく聞こえなかった。それよりも、そんなことよりも、朱莉に対して“返品”という単語を使ったことに怒りを覚えた。

 

短い間ではあったが、朱莉の人柄を知るには充分な時間だった。

最初こそ怯えて警戒していたが、朱莉はいい意味で呪術師に向いていないと分かった。

朱莉は人に寄り添って、人のために頑張っていた。俺に美味い飯を作ってくれた。

任務で傷を負った傑を心配していた。

硝子が治療で疲れているとき、疲労を少しでも減らそうとしていた。

上げていけばキリがない。

…いつの間にか、朱莉は俺の中で大きな存在になっていた。

俺以外と親しく話す様子を見て、感じたことがない感情を感じた。

ようやく、それが嫉妬であると分かった。

「…朱莉は?」

「あの下女ですかな?あれならば、再び当家の元で働くよう、厳しく躾を…」

 

「そうか…分かった

 

ここでは誰も殺さず、呪力を放つだけに留めた。

 

……

 

「朱莉‼︎」

朱莉から漏れ出るアレの呪力の残穢を辿ってある部屋にたどり着いた。

そこには、赤い針…赤血操術で壁に縫い付けられた朱莉と、朱莉に複数の血の針を向ける賀茂家の男がいた。震える朱莉の目からは怯えと恐怖が伝わり、硝子が整えた髪は乱れ、傑が着せた着物は汚れていた。

「おや…これはこれは、五条様。お気に召す娘がおりませんでしたかな?」

何事もないかのように振る舞う男の言葉よりも、朱莉の安否の方が大事だった。

「朱莉!大丈夫か⁉︎」

「…ッ…さとる、さん……」

血の針を抜くと、朱莉は俺にしがみついてきた。

「…また、あんな生活は…嫌です……さとるさんと……離れたくないです…」

小さな声で、震える声で、朱莉が伝えた言葉に胸が震えた。そして、軽率な行いを悔やんだ。

相手は血統大好きの御三家、それも朱莉のことを嫌っているやつらだ。こんなことでなくとも、朱莉が何かされるのは予想できたはずだったのに。

朱莉を、賀茂家から引き剥がすことしか考えていなかった。

「…五条様…その下女は、なんの価値もない女です……そんなものよりも「黙れ」…ッ…」

 

「…朱莉、無理なら…」

「……悟、さん…私、がんばります」

「…大丈夫か?」

「…はい、がんばれます!………ぃ、今なら……その……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…五条様、先程は当家の愚か者が失礼を致したようで…申し訳ありません」

取り繕うような言葉と態度に、既に落ちきった評価が更に落ちていく。

招かれた応接間…そこに戻ってきた。

服の裾をつかまれふと見れば、朱莉は震えていた。顔は青ざめ、小さく歯を鳴らしている。本当なら、すぐにでもここを離れて安心できる場所に連れて行って抱きしめてやりたい。

 

でも…でもなぁ……あんなこと言われたら、朱莉に任せるしかないだろ。

 

「…して、いかがされましたかな?その下女は…そのまま手中にということでしょうか」

“手中”…手中、ねぇ……

朱莉は俺の所有物じゃない。朱莉だってひとりの人間だ。

毎日を楽しむ権利がある。

幸せになる権利がある。

生きる場所を選ぶ権利がある。

 

「…がんばれ、朱莉」

 

朱莉の目の奥に光が見えた。

 

 

 

「…ゎ…わっ…私は‼︎

 

朱莉が叫ぶ。

今まで心の奥底に隠し続けた本音を。

 

「もう、こんなところに居たくないです!」

 

賀茂の奴らは呆気に取られている。

朱莉が、今までずっと反抗もしない従順な下女ではなくなったことに。

 

「私は!悟さんのお嫁さんです!」

 

俺は朱莉の意思を尊重したい。

朱莉の進む道は朱莉自身が選ぶものだ。

 

「い、今は、まだっ、なんにも知らないし、なにもできないけど!」

 

朱莉はがんばる。

自分がどれほど俺の中で大きな存在であるか知らないから。

まあ、そこも良いんだけど。

 

「私は、悟さんの側に居たいです‼︎」

 

その言葉を聞くだけで胸が躍る。

満たされていく感覚と、さらに求める感覚に襲われる。

 

「もうこの家とは縁を切ります!私は…私は!」

 

朱莉の言葉を思い出す。

あの言葉ほど嬉しくなった言葉はないだろう。

 

 

『…はい、がんばれます…!……ぃ、今なら……その………さ、悟さんが…イテクレル…ノデ……』

 

 

 

私は!もうずっと、五条朱莉です‼︎!

 

 

 

本当に…あのとき朱莉を選んでよかった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…はひゅ…」

門をくぐり外に出ると一気に力が抜けてしまった。

もうここには二度と来たくない。

「おいおい、大丈夫か?」

そう言って悟さんは手を差し出してくれる。

…手を取って、いいのかな……自分でも立てるけど…

悩みながらもおずおずと手を取って立ち上がる。

そして、悟さんは私と手を繋いだまま歩き始めた。

「えっ⁉︎さ、悟さん、その、手…⁉︎」

「あれ…ダメ?」

「ぁ…だ、ダメ…じゃない…です…」

穏やかな微笑みを浮かべて問いかけてくる悟さんに何も言えなくなる。

顔が熱を持ち始め、隣を歩く悟さんから目を背ける。

「…あの、悟さん…」

「どしたの?」

「……ほんとに…私でよかったんですか…?」

問いかけてから、答えを聞くのが怖くなった。

後悔しているとでも言われたら、

そう思うと…とても、辛くなった。

 

 

「…朱莉がいいんだ」

 

 

思わず足を止め顔を上げる。

悟さんと目が合う。

 

「最初は…めんどくさい嫁選びに来させられて、たまたま朱莉と出会って、お菓子が美味かったし、なんかビビッと来たから嫁に選んだ」

 

照れくさそうに語る悟さんから目が離せなかった。

 

「一緒にいたら…朱莉がすごくかわいいって分かって、朱莉がすごく優しいって知って……朱莉のことが、ほんとに好きになった」

 

そう言って、悟さんは私の手を離してこちらに向き直った。

 

「だから、もう一度言わせてくれ。……朱莉、俺は…お前が好きだ」

 

突然の言葉に脳が追いつかなかった。

言って欲しかったその言葉を頭が理解して、思わず目が潤んだ。

 

「これから、まだまだお前を好きになる。お前ともっと一緒にいたい。だから…俺の嫁になってくれ」

 

いつもの気の抜けた、でもどこか安心できる笑顔はなかった。真剣な面持ちの悟さんを見て、場違いだとは思うけど、かっこいいなって思った。

 

私にとって悟さんは、最初は私を救ってくれた恩人様だった。

でも今は違う。

近くにいるだけで嬉しい。顔を見ると少しドキドキしてしまう。さっき手が離れたとき、ちょっと残念で寂しくなった。

 

「私も…悟さんが好きです」

 

涙が溢れてしまう。涙で濡れていく顔は、決して綺麗ではないだろう。でも、伝えたい。

 

「私も、悟さんと…ッ、ずっと一緒に居たいです」

 

悟さんとずっと一緒にいたい。

悟さんをもっと好きになりたい。

悟さんにもっと、好きになってほしい。

 

「私を、ッ…悟さんの…お嫁さんにしてください…!」

 

「…よっしゃぁ‼︎」

「ふえっ⁉︎」

悟さんが突然抱きしめてきて、気の抜けた声を出してしまう。顔はまだまだ赤くて、涙も止まりそうにない……嬉しくて、たまらない。

「これからよろしくな……朱莉」

「…はい!…よろしくお願いします…!」

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「…ん?朱莉ー?…寝ちゃったか」

俺におぶられ、静かに寝息を立てる朱莉の寝顔はとてもかわいらしい。

…考えるなら今のうちだな。

「……さて、問題は…アレだよな」

というか、賀茂のやつらは気づいてなかったのか?

アレからは常に呪力が漏れ出ていないとおかしいほどの呪力量…それを上手いこと隠してやがったのか…

朱莉の呪力が不自然に生み出されたのもそれが原因か………待て…なんで最初は咎められなかった?

朱莉と初めて会ったとき、俺は朱莉を六眼で視たはず…なのにあいつが咎めたのは2回目に見た時だ。

賀茂家ではまだ居なかった?

…ならどこで拾って来たか説明がつかない。

となると、ひとつに絞られる。

 

「…高専に来てから、なんらかの条件で覚醒した」

 

 

「ただ……目的はなんだ?」





『…ほう、なかなか頭が切れる……娘と此奴、どちらが先か…見物だな』

どんな話が欲しい?

  • 五条×オリ主のいちゃいちゃ
  • 戦闘シーン
  • オリ主の高専生活
  • オリ主と高専の人々の絡み
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