僕らには視える   作:ACE END

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早くもお気に入り登録者の方がいらっしゃることに驚愕なんですが……。ありがとうございますっ!


入試

「ふぅん……。話には聞いていたけれど、やっぱり大きいね。予想以上だよ」

 

姿が変わって10年が過ぎ、永は中学三年生になっていた。

 

あの後、両親や兄に自分のことを話した。個性が発現した際に、大きな精神負荷を負ってしまったこと、その精神的な負荷から永本人は心を壊し、閉じこもってしまったこと。

 

そして自分自身のことは「永が己の肉体を生かすために作り出した人格」ということにした。この超常社会の中で、別におかしなことでもなかったからだ。自らの個性の負荷に耐えきれず別人格が生まれることなど意外と起こるものらしく、病院で検査した際にも特に何も言われることは無かった。完全に……ここからは家族間で通しているアルという名で呼ぶが……アル本人の精神が安定しきっていたこともあるのだろう。

 

そうして10年の月日は流れ、彼は雄英高校の正門前に立っていた。

 

「それにしても、これはかなりの倍率になりそうだ。骨が折れそうだが、やりがいは十分だろうね。それに、これは僕だけの戦いじゃないからなおさらね」

「(わかってるさ。でも今日は頼むよ、アル)」

「まぁ、受験票の写真撮る時にはまだ君の人格を表に出せなかったからね……仕方ないよ」

 

そう心の中に住む親友とも言うべき宿主にそう伝え、彼は雄英高校へと足を踏み入れた。瞬間

 

「っと?」

「あ゙?」

 

どうやら誰かとぶつかったようだ。相手は前の方で不機嫌そうな顔をしてこちらを振り向いている。ツンツン頭の金髪に、人を射殺すような三白眼。見るからに不良のような彼も受験生のひとりなんだろう。

 

「すまない、前の方で止まっていた僕の落ち度だ。怪我とかはないかい?」

「……チッ」

 

舌打ちを1つして、彼は前に進んでいく。その先で緑髪の縮れ毛の少年を見るやいなや怒鳴り散らしているが……。

 

「(随分不機嫌というかなんというか……ヤンキーってヤツかな?)」

「……おだやかじゃないね、彼」

「(出たね、その口癖)」

 

心の中の彼と軽口を叩き合いながら、アルも雄英高校の敷地内へと足を踏み入れた。

 

 

 

筆記試験もつつがなく終わり、次は実技試験だ。自己採点の結果、全て満点であっているだろう。

 

「(相変わらずだなぁ……やっぱずるいよ、それ)」

「仕方ないさ、これが僕だからね」

 

小声で話をしつつ実技試験の説明を聞くべく講堂へ向かう。

 

「お前だな、宇志亜 永というのは」

 

名前を呼ばれたので振り返ると黒い長髪に不健康そうな目をした男が立っていた。

 

「……そうですが、あなたのお名前を伺っても?」

「相澤消太。ここの教師だ。実技試験について、お前に伝えておかなきゃならんことがある」

 

男はそう名乗ると、ついてこいとばかりに背を向ける。それに小首を傾げるとアルは相澤について行った。

 

たどり着いたのはとあるひとつの教室だった。物珍しそうにしていると相澤が教壇の位置に立ち、書類を差し出しながら

 

「適当なところでいい、こいつを持ってとりあえず座ってくれ」

 

と声をかけられたので書類を受け取り、相澤の真正面右の席に座った。そうして暫くは試験の内容の紹介をされた。

 

「ひとまずここまでで質問はないか?」

「はい。問題ありません」

「そうか……。さて、ここまで呼び出しておいてすまんがお前には実技試験でやって欲しいことがある。」

「やって欲しいこと……ですか?皆目検討もつきませんが」

 

正直特に何かした訳でもした覚えもない。すると相澤はおもむろに口を開き思いがけないセリフを吐いた。

 

「二重人格……だったか。宇志亜永」

「……よくご存知で」

 

中学から連絡を受けていたのだろうか。いや、彼がここの教師ということはヒーローでもあるはず。ということは

 

「なるほど、兄や叔父をご存知でしたか」

「話が早くて助かる。彼らから一応話だけは聞いていた。最近になって元の人格を表に出せるようになったと、ついでに言えば容姿や使う力も変わってくると」

 

なるほど、随分と情報を喋っていたようだ。きっと目の前の男はヒーローとして一線で戦っている彼らも、信用するほどの人間なのだろう。

 

「宇志亜、お前は今回の試験で元の人格を使わず今の人格のまま突破するつもりだろう?」

「ええ。もとよりそのつもりです。願書の写真を撮った際にはまだ元の人格である彼を表に出せなかった。余計な混乱を招かないためにもそうすることがベストかと思ったのですが」

「だろうな。余計なことをしないようにする性格は実に合理的で好ましいが、今回ばかりはこちらの意向を聞いてもらう」

「と、言いますと?」

「両方の人格を使え。でなければ合格ラインに入っていたとしてもお前を合格させるつもりは無い。」

 

なるほど、これを伝えるためにここに連れてきたのか……と納得した。人格云々の人のデリケートな話題をわざわざ大勢の前でするのもどうかと思ったのだろう。

 

「なるほど、分かりました。全力でやらせてもらいますね」

「あぁ。もう講堂に行かなくてもいい。直接試験会場に送ってやる」

「それはどうも」

 

微笑みをたずさえながらそう返すと、彼らは試験会場へと向かった。

 

 

 

「いやいや……どれほど金をかけたんだ……これは……」

 

思っていた以上の試験会場の広さにアルは驚いていた。どう考えても街1つ分の大きさはある広さが学校の敷地内にある、と考えてしまうと一体いくらかけたのやら……ともなるものでもある。

 

「(いやいや、広すぎるでしょ……おかしいおかしい……)」

 

予想以上の広さに主人格である彼も驚きを隠せないようだ。

 

「さて、と……試験時間は15分……もう分離しておく?」

「(いや、ギリギリまで待とう。予定以上の力を使うような事態になったら流石にマズいからね)」

「……それもそうだね」

 

傍目からしてみれば1人でブツブツと喋っているようにしか見えないため、少し気味悪がられていたが、そこへ間の抜けた大きな声が響いた。

 

「ハイスタート」

 

瞬間、アルは飛び出した。周りの受験生はアルを見て右往左往しているが、プレゼント・マイクのヤジが飛んだ。

 

「どうしたどうした!実戦じゃカウントなんざねーんだよ!走れ走れ!賽は投げられてんぞ!」

 

ほかの受験生が走り出し始めた、その間にアルは1Ptの仮想敵を発見する。

 

『ヒョウテキホソク!ブッコロス!』

「おだやかじゃないね」

 

アルがおもむろに右手を前に差し出すと紅い色をした、胸にあるのと同じ形のクリスタルが発現した。それは姿形を変え赤い大剣として彼の手に収まる。そして軽く後方に腕を振るうと剣の形は変形し、青い光の刃が顕現する。持ち手の鍔にあたる部分にはただ1つ、『斬』という文字が浮かんでいた。

 

「モナド『(バスター)』」

 

そう一言告げ、大上段から兜割りを叩き込み、まるで豆腐のようにスッパリと斬り裂いた。裂かれた仮装敵はバチバチと音を立てると派手な音を立てて爆発した。

 

 

宇志亜 永

 

 

個性:モナド

 

 

特殊な赤い大剣を発現させ、未来視を行える複合型の個性。

 

 

「さて、と……とりあえずサクッと1位を取ろうか」

 

そう言いながらアルは元の人格である宇志亜 永本人と分離した。意識と肉体が別れ、15歳の姿に成長した永が現れた。アルの胸には普段つけているクリスタルの真ん中がX状にくり抜かれた形に、そして永の胸にはくり抜かれた形のままのクリスタルが現れていた。

 

「よっと……さて、競争しよっか、アル」

「どっちが多く倒せたか、ね。いいよ。ポイント制と撃破数制どっちがいい?」

「撃破数で!」

「了解!」

 

永は先程までアルが握っていたものと同じモナドを、アルはそれよりもさらに細く、まるで太刀のようなモナドを顕現させる。そのまま背中合わせに構えるとお互い逆方向に弾け飛んだ。

 

 

 

とある一室

 

「オイオイオイ……マジかよ……とんでもねーぞアイツら」

「すごいわね……ダンバンの弟でしょ?アレ」

「元の人格も出せとは言っておきましたがまさか人格ごと分離するとは……予想外でした」

 

様々な声が響くモニタールーム。永とアルを見て驚愕の声を漏らす者ばかりだった。

 

「あれ、いいのか?ほぼほぼ反則みたいなものだろう。彼一人別会場にするべきだったのでは……」

「おいおい、それじゃ例のアレが見れないだろう?」

「だが確かにこのままでは彼一人でほとんど全てのターゲットを破壊しかねない……同じ試験会場の彼らにはもう一度試験を受けてもらうのがいいのかもしれんが……」

 

それでは二度手間三度手間となる。この中にいる1人である相澤にとって、そんなことは非常に非合理的で宜しくない。

 

「仮想敵、追加投入しますか」

「その必要は無いのさ!彼……と言うより彼らが破壊し損ねているものを倒している子は少なからずいるのさ。それも大通りから外れたピンポイントなところで大量にね。」

「……なら問題ないですかね……」

「うん、それに真意が試されるのはここからなのさ!」

 

言うが早いか、その小さなシルエットはいかにも自爆スイッチのような見た目のボタンを躊躇いなく押し込んだ。

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

 

「アル!」

「承知している!」

 

街のど真ん中に現れたのは巨大な仮想敵だった。その姿にある者は逃げおおせ、あるものは我関せずと周りの仮想敵を始末し続け、ある者は仮想敵の登場に巻き込まれ、崩壊した建物の瓦礫で動けなくなっていた。

 

「どうする?」

「彼らの避難及び救助が最優先だ。だが、このままではさらに被害が加速する」

「なら、アレを壊す役目がいるよね」

「僕か君なら行けるだろうけどね……」

 

2人は思案する。どうすれば最も被害を抑えられるのか……

 

「おい、そこ二人!危ねぇぞ!早く逃げねーと下敷きになっちまう!」

 

見るとギザギザの歯をした黒髪ロングの少年がこちらに向かって叫んでいた。

 

「……ここで悩んでいても仕方がない、か」

「じゃあ僕が行くよ。彼らの避難、任せていいかい?」

「ああ、任せてくれ。そこのギザ歯の君、少しいいか?」

「え?お、俺か?」

 

声をかけられた少年はおそるおそる彼らに駆け寄った。

 

「おい、どうするつもりだよ、早く逃げねーと……」

「これから僕たちはアレを倒し、瓦礫の下で下敷きになってる受験生たちを救出する。君にはその手伝いをして欲しい」

「は、はぁ!?正気かよ!?アレ壊してもポイントにはならねーんだぞ!?それに俺らの方がやられちまうってあんなの!勝てるわけねーだろ!?」

「問題ないよ、アレなら一撃で倒せる。アレがサイボーグとかじゃないただの機械なら尚更ね」

「はぁ!?」

 

意味がわからない、という顔をする少年。彼らは自らの受験を棒に振って彼らを助けるというのか、と。

 

「アル、僕は先にアレを始末するから……」

「わかってる、その間に僕と彼でみんなを……」

「ちょっと待てよ!なぁ、本気で言ってるのか!?アレ倒してもポイントにはならねーし、最悪俺らがやられちまうかもしれねーんだぞ!?」

 

そう、至極当たり前の思考だ。彼の言っていることは何ら間違ってはいない。受験生として、ならば。

 

「おかしなことを言うね、君」

「……は?」

「僕らはなんのためにここにいるのか、忘れたのかい?」

「なんのためって……そんなの、雄英に受かる為に」

「違うよ?君は目的と手段を履き違えてないかい?」

 

だからこそアルは彼を諭す。なんのためにここにいるのか、なぜ、自分たちがその思考に至ったのか。

 

「僕らは確かにまだヒーローでもなんでもない、ただの学生さ。けれどね、ヒーローになりたいと言っている人がたとえどんな状況であれ、助けるべき相手に手を差し伸べないのはおかしいと思わないのかい?」

「け、けどよ!これは俺らがヒーローになるために」

「ならば君はヒーローになるためなら、今にも怪我をするかもしれない、もしくは現在進行形で怪我をしている赤の他人なんてどうでもいい、と?」

「んな事一言も言ってねーだろ!俺だってこんな状況じゃなきゃ……」

「そこがそもそも間違いだと言っている」

「……っ?」

「試験だろうとなんだろうと関係ない。僕らはヒーロー志望だ。ならばいついかなる状況下でも、最優先で考えるべきは自らの利益では無い。考えなければならないのは、この非常事態でどう動くべきか。それだけだ」

「……!(俺は……俺は、また……!!!)」

 

それは間違っている……とは口が裂けてもいえなかった。1度見捨てようとしてしまったことがあるから。でも、それはとある1人の少女が解決した。自らの危険を顧みずに動けたあの少女と、怖くて足が竦んで動けなかった自分を比べるだけで恥ずかしくて。憧れたヒーローの言葉に背くような行動をとった自分が情けなくて。

 

「(ここで動かなかったら俺はあの時と同じ後悔をしちまう……!救えた人を救えなかったと後悔しちまう……!そんなの……)」

「アル、僕は先に行くよ?」

「……俺も!」

「「ん?」」

「俺も、やってやる!もう、後悔はしねぇ!俺は、護れるヒーローになる!情けねー自分との決別だッ!」

「……いいね、彼」

「……うん。なら、任せるよ」

 

そう言って、アルはモナドを起動させた。

 

「モナド『(エンチャント)』」

「ん?うおぉっ!?なんだコレ!?」

 

少年の体に青いオーラが現れた。永はアルと頷き合うと0Pt敵に駆け出して行った。

 

「そいつを纏っているあいだ、君は非生物が相手なら紙切れのように引き裂き、砕くことが出来る。そいつで瓦礫を破壊しつつ、みんなを救出してくれ」

「おう!わかった!」

 

そうしてアルと少年はお互い別方向に駆け出し、ほかの受験生たちを救出し始めた。

 

 

 

一方その頃

 

「モナド『(フライ)』!」

 

永はモナドを解放し、高速飛行で0Pt敵に接近していた。

 

「思ったよりも大きいな……『(バスター)』であっさりやれるかと思ったけど、それでは破壊した後に周りに被害が出かねない。……なら!」

 

高速飛行を行いながらモナドを解放する。浮き出た文字は……『撃』。そのまま高速で地面に向かって前方回転しながら着地、その反動で思い切りジャンプし下から上に向かって渾身の一撃を叩き込んだ。

 

「エアスラァァァッシュ!!!」

 

その一撃を受けた0Pt敵は遥か上空に吹き飛ばされる。逃がさんとばかりにそのままさらにモナドを解放し、文字を浮かばせる。次の文字は『翔』。

 

「はあああああああああ!!!」

 

上空に吹き飛ばされた0Pt敵に追いつき、追い越す。そして新たにモナドを解放すると再び文字が浮かぶ。次は『複』。

 

「この高さで破壊すれば、地上に被害は出ない!一気に片付ける!」

 

瞬間、モナドが2つに増え、『斬』の文字が2つのモナドに浮かぶ。

 

「これで終わりだ!!!モナドォォォ……『(バスター)』ァァァ!!!」

 

巨大な青い刀身を背中で十字に重ね、すれ違いざまに0Pt敵を4つに切り裂いた。見事に4等分にされた0Pt敵はその数秒後上空で爆発を起こし、消し飛んだ。そのまま永が着地を決めた瞬間、アナウンスが鳴り響く。

 

「しゅーーーーりょーーーー!!!!!」

 

モナドを戻したあと、永の元にアルと先程の少年が駆け寄ってきた。

 

「お疲れ様。なかなか良い太刀筋だったよ」

「お前すげェな!やっぱお前らの言葉信じてよかったぜ!」

「ふふっ、ありがとう。2人だってみんなを助けてたじゃないか。助かったよ」

 

そういうと永の体が光り出す。これに慌てたのは少年の方だった。

 

「お、おいおい!?な、なんか体光ってるけど大丈夫なのか!?」

「問題ないよ。そろそろ限界だったってことか」

「うん、思ってたより体力使っちゃった。キツいかもだけど任せていい?」

「もちろん」

「いや、話についていけねーんだけど!?」

 

永の体が完全に光に包まれると、粒子となってアルの体の中に溶け込んで行った。

 

「っ……!かなり動いたなぁ……これは。結構キツいや」

「ええええええええええ!?どどどどーなってんだお前!?さ、さっきまでいたアイツ消えちまったぞ!?」

「……彼は、僕自身なんだよ」

「いやドユコト!?」

 

アルは、彼に自分自身のことを話した。二重人格であること、その経緯、最近個性の応用で、自分たちの人格を分離させて動かすことができるようになったことなどを。

 

「無茶苦茶すぎんだろ……てことはアイツお前の元の人格ってことか……」

「そう、僕の個性は精神的な負荷が大きくてね。基本的に僕が表に出るようにしている。まだ彼に無茶はあまりさせたくないしね」

「……」

「どうかしたのかい?」

「いや……さっきの話で出てきた未来を見れるって……そんな感じのヒーロー、なんか聞いたことあるよーなないよーな……と思ってさ」

「そうだね。まぁわりかし知名度ある人だから、調べれば出てくるんじゃないかな」

「……」

「では僕はこれで。早めに身体を休めなきゃいけないしね」

 

そういうと、アルは背を向け歩き出した。

 

「永、アル!」

「ん?」

「俺は切島!切島鋭児郎だ!もし、お互い受かってたら、そんときゃよろしく!」

 

それを聞いて目を見開いたアルはその後フッ、と息をついてこう返した。

 

「あぁ。是非ともよろしく頼むよ」

 

そう言いながら、手を振り去っていった。

 

 

 

「(受かってたね。彼)」

「そうだね。……護れるヒーローか……きっと素晴らしいヒーローになるよ、彼は」

 

 

 

「あれー?切島、なんかいい顔してんね?」

「……あぁ。目標にしてぇダチができたからな。俺、やっぱもっと頑張んねーとな」

 

 

 

それから数日後

 

現在、単身赴任中の両親と離れ、兄と2人で生活をしている家に、大きな声が響いた。

 

「ただいま、永!届いたぞ!雄英からの通知だ!」

「ありがとう、兄さん。アルと一緒に見させてもらうよ」

 

永はそう言って黒色の長髪をもつ彼から手紙を受け取ると、アルと分離し自室に入っていった。

 

「とりあえず開けてみようか」

「さて、中身は……なんだコレ?」

 

中に入っていたのはひとつの端末であった。

 

「なんかスイッチがあるね……押してみようか」

「うん……」

 

そうしてスイッチを押すと映像が浮かび上がり、先日話した相澤が浮かび上がってきた。

 

「相澤先生だっけ?実技試験前に話してたよね」

「そうだね。相も変わらず不恰好だけれど」

 

すると相澤が話を始めた。

 

『久しぶりだな、宇志亜。早速だがお前の結果を発表する。まず、筆記試験だがオール満点。文句なしの合格だ』

「だってさ」

「まぁ、うん……仕方ないね」

『続いて実技試験だが、撃破Pt55と56。こちらの提示した条件も満たしてあるから当然合格だ。だが、今回見ていたのはそれだけじゃない。救助Ptという、いわゆる人助けに関するポイントも加算される。』

「試験前にはなかった情報だね。なんでだろう」

「ヒーローとして人助けというのは当然だからじゃないのかい?事前に言われない上で、それを考えて動けるかどうかを見られているのだと思うよ」

『結果として、救助Ptはお互い40ずつ。合計して191Pt。合格だ。後日届く書類に、いろいろと提出物が入っているためそれを入学前に記入し、提出すること。以上だ』

 

端的にそう告げると、映像はここで消えた。端末を封に戻すと、永とアルは再び1人に戻り、永の人格となって部屋から出た。

 

「どうだった?永」

「合格だってさ。これで、兄さんと叔父さんに1歩近付けたね」

「そうか……フッ、俺もお前たちに剣を教えた甲斐があったというものだ。とりあえず、おめでとうだ。親父たちにも連絡しなきゃな」

「ありがとう、兄さん」

 

満足気な顔で合格を祝われ、少し照れくさそうにしながらもお礼を言う。早速両親に電話をかけている兄を横目に見ながら、アルと話す。

 

「これで晴れて雄英生か……。かなりの試練が待ち受けているんだろうね」

「(まだその未来は視えてはいないけれどね……。だが、この国で1番のヒーロー育成校だ。初日から覚悟はしておいた方がいいだろうね)」

「うん、これからもよろしくね、アル」

「(こちらこそ、永)」

 

 

 

雄英高校

 

「試験結果、出ました」

「撃破Ptだけで2位とはな……」

「素晴らしいタフネス、そして一見派手だが、使い方はとても繊細……個性の制御は見事だな……性格に難はありそうだが……」

「反対に救助Ptだけで7位……」

「アレに挑むのは例年何人かいるが、今回は2人もいたか……」

「俺ァ思わず『YEAH!!!』って叫んじまったよ」

「しかし発現したばかりの赤子ような拙い個性の制御……使う度にぶっ壊れてんじゃ非合理的です」

 

教師たちが次々と生徒たちの評価を下していく中、最後に話題に上がったのは永だった。

 

「1位の子、圧倒的ですねぇ……」

「俺ァ分離した時には思わず『WHAT'S!!??』って叫んじまったよ」

「幼少期に個性の負荷に耐えきれず精神を病み、第2の人格……家族間では『アル』という愛称で呼ばれている者が生まれた……」

「この超常社会においてよく聞くことではあるけれど、この子に関しては異端そのものよねぇ……」

「しかもそれぞれの人格で個性を扱え、状況判断能力も高い、そして味方への叱咤激励もこなす、と……」

「ほんとに学生が疑わしいレベルだな……それにあの剣技……兄に教わったのかそっくりだったな」

「桜剣ヒーローダンバンの弟……そしてオールマイトとも関係の深いサー・ナイトアイの甥……」

 

様々な評価が下される中、やせ細った鋭い目をした男は思案する。

 

(彼が来たか……5年前、疎遠になりかけた私とナイトアイを再び繋いでくれた少年……そうか……私も歳をとるわけだ)

 

珍しい少年だったと記憶している。あの年頃の少年で、支える者への魅力を嬉々として語る姿を初めて見た。子どもとは、良くも悪くも強大な力に憧れる。ヒーローに憧れるものは多いだろうが、サイドキックまで目を向ける子どもなどなかなかいないだろうと思っていた当時のオールマイトにとって、あの少年が放った言葉は衝撃的だった。

 

『たとえ最強無欠だとか、絶対無敵なんて言われても、独りで何でも為せる人間なんていません。支える者と支えられる者、その2つが成り立ってこそ人は独りで為せないことを為せる。でなければ人という字は成り立たないでしょう?であれば支えられる者よりも、支える者に魅力を感じるのは必然だと僕は思います。それに、カッコいいじゃないですか、縁の下の力持ちって』

 

ここまで達観している少年を見たのは初めてだった。ヒーロー以前に人としての言葉を投げかけられるとは思えなかった。おおよそ、今の彼の実力は支える者としてではなく、支えられる側の実力なのは置いておくとして……。そう思案しているとネズミなのかクマなのかよく分からない小さな生物に声をかけられる。

 

「オールマイト、君は彼と知り合いだったね。昔からこんな感じだったのかい?」

「……そうですね。歳の割に達観した子だとは思っていました。とても利発そうな子だとも。ナイトアイと私の間にあったいざこざを解消してくれたのも、他でもない、彼自身でしたから」

「全く、大の大人が情けないとも思ったが、あの子のナイトアイとダンバンへのあこがれは強いからねぇ……。ナイトアイが落ち込んでいる姿なんて見たくはなかったんだろうさ」

 

とはいえ自分を救ってくれた相手とも言える永のことは、オールマイトとしても感謝しているし、正月にはお年玉をあげたりなんかもしているくらいには付き合いがある。なんなら自らの秘密を共有してもいるので、自分にとって2人の師や、今となっては独立した彼の叔父や兄と同じくらいには感謝していて、大切な存在でもあるのだ。

 

「まぁこの子の合格は確実として……オールマイト、くれぐれも贔屓なんてしないようにね。新米とはいえ依怙贔屓は宜しくないからね」

「うぐっ、も、もちろんです校長……」

 

自分にとって弟子とも言える少年も今年入学を決めたことを考えると、2人を贔屓しそうで怖くて仕方がないオールマイトであった。




正直分けるか悩みましたが某サイヤ人のように「ま、いっか!」って軽いノリで全部載っけちまいました。
や、書いてて思うけどほんとチートだなモナド……。ちなみに『斬』使わなくても振るうだけで機械ならスパスパぶった斬れるので、一学期の期末試験が従来通りロボ無双だったら余裕で合格しちゃうんですわ。
ちなみにモナドアーツですが従来から存在しているものと、スマブラでのオリジナルに、作者のオリジナルも入れてますので「原作と仕様違くね?」と思った方、ご都合展開ってことで見逃してくださいも。

モナドアーツ

『斬』(バスター)
機械(無生物)特攻の火力技。ぶっちゃけこれを使わなくてもスパスパ斬れるけど刀身が伸びるのでリーチ長くしたい時に使える。人相手だと吹き飛ばす。

『機』(エンチャント)
モナドが切断できるものを周りの人々や特定の人でも破壊できるようにするバフ技。

『翔』(フライ)
某ドラ〇ンなボ〇ルみたいに空を飛べる。スマブラでのオリジナルアーツで、本来はジャンプ力強化ですが、こっちではオリジナルとして飛行能力とさせていただきます。

『撃』(スマッシュ)
こちらもスマブラオリジナルアーツ。効果はスマブラと同じく対象物を吹き飛ばす力を強くする。この作品では無生物相手に吹き飛ばすための手段として使います。

『複』(コピー)
本作オリジナルアーツ。モナドを二刀流にするだけ。ただそれだけ。ちなみにそれぞれでちがうアーツを使用可能。
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