仮面ライダー龍騎SPRITS   作:bassher

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ここは02年度放映された特撮番組『仮面ライダー龍騎』の二次小説です。『仮面ライダー龍騎』、並びそのスタッフ、また講談社マガジンZ連載『仮面ライダーSPIRIT』著者には、一切関係ありません。
公開は07年11月からとなります。



コア・ミラー 03-01-01

 02年12月25日

 

 

 

「今日はクリスマスなのによ!」

 

 鼻頭が赤いマガゼール、ガゼール種の中でも頭の角が一際巨大で歪曲している、が5匹、全裸カップルを捕獲したところ龍騎が見つける。

 

「うりゃ、ライダー必殺トンコツ斬り!」

 

 シンジがこの世でもっとも斬るのに苦労したのがトンコツだった。それをいとも簡単に斬るシンジだけが分かる凄まじい威力だ。マガゼールめがけてドラグセイバーを8の字を描くように何度も何度も袈裟斬りにしていく。だがシンジが考える以上にこの連続での高速攻撃はドラグセイバーの特徴を活かしている。振りぬいた勢いを殺さず全身をバネにした反動でさらに斬り込む。ナイトならば薙ぐにしても突くにしても単発に近い、切り刻む程ダメージの累積を重ねる事ができず、またダメージが極めて狭い範囲となる。もちろん刀身の耐久性を無視したミラーワールドならではの話であり、そうでなくともナイトは反面間合いが広い。

 

 爆破!

 

 白珠が浮かぶ。食らいつくドラグレッダー。

 

「夢だ、なんかのまやかしだ!」

 

 助けた男女がさかんにそのような事を叫んで、ただ出せ、出せとまるで龍騎がこの全てが反転している世界に連れてきたかのような憤りをぶつけている。

 

「引き擦り込まれる前の場所を思い出して、そこを探してみるんだ。いいか。ここは右は左、左は右だからな。迷うなよ。」

 

 だが気のいいシンジは、恰好をつけながらドラグセイバーを振り回して指図する。

 

「襲われるー!」

 

 と慌てて逃げるカップル。

 

「なんだよ。せめて感謝の言葉くらい言えよな。」

 

 シンジは不貞腐れた。

 

 

 

 

 

 

 02年12月27日

 

 

 

「砂色のマグナギガ、」

 

 埋立地、四方を真新しい道路に仕切られ、雑草が生え始めた大地に、ゾルダの契約クリーチャーと同種のマグナギガ。見つけたのはナイト。既にウィングランサーを召還済みである。

 

 ガトリング砲連射、

 

 サンドブラウンのマグナギガ、右腕は砲身が回転するガトリング砲、左腕は刃の鋭いかぎ爪が4本並んで掌を形作っている。掌を返すと手首の大口径ビームが覗く。

 

「いい実験台だ。」

 

 横走りして弾幕を回避するナイト。だがサンドマグナは腰を砲座のごとく軸回転させてナイトの動きを追尾する。

 

「横は隙が無い、が、」

 

『アドベント』

 

 走りながら装填するのは契約クリーチャー、哺乳類翼手目に属する、翼が膜でできた加波保利から転じてコウモリ呼ばれる種に似たそれは、翼を広げナイトの背中へととまる、いや装着される。

 契約カードダークウィング、AP4、インスタントとして使用した場合、1高速運動による攻撃、2超音波を発しての聴覚撹乱、3ナイト背部に装着しての飛行、がある。

 

 飛翔するナイト、

 

 両腕を迫り上げてなお追尾するマグナギガ。

 

「射程が縮んだ、やはり重力はミラーワールドにも通用するみたいだな。」

 

 宙でマグナギガの攻撃を観察するナイト、飛び回って、もっとも弾幕の薄い一帯を見つける。

 

「頭上か。」

 

 マグナギガ頭上へ達して、ウィングランサーを逆手に構える。

 

「はぁ」

 

 投擲、上下一直線に串刺しになるマグナギガ、爆破、

 

「やはりライダーとただのクリーチャーでは、まるで違う。だが北岡が契約クリーチャーを前面に出さない理由が分かった。まるで動けない。」

 

 ナイトはただミラーワールドという世界に浸っていた。

 

 

 

 

 

 

 03年1月1日

 

 

 

 深夜、飯田橋駅直下の川掘り。

 

「共食いしてるぞ、レン。」

 

「見れば分かる。騒ぐな。ここは待ちだ。」

 

 神田川底で蠢くクリーチャーの大軍、各個に意志と目的をもって動いているにも関らず、橋上から見下ろすシンジとレンの二人には、なにかグロテスクな液体の化学反応のようにも見える。

 爬虫綱有鱗目、胴と尾の区別がないまるで一本のヒモのような体、目蓋が閉じる事がまず無い目、猛毒の牙、シャーマニズム信仰において不死や豊作の神として崇められる蛇の肉体を持つのはスネーカー種。既に数十というスネーカーが息絶え、その屍の上をのたうつ白、黒、カーキ、紫の4匹のスネーカー種。屍はやがて発泡し、夜の飯田橋に白い珠が次々と浮かび上がる。それを次々と呑み込んでいく4匹のスネーカー。

 

「なんで、こんな事やってんだよ、正月だってのに。」

 

「鏡餅というのは蛇が精盧を巻いている姿らしいからな。」と恵理から聞いた事があるレンである。「しかしライダーバトルと同じだな。あの4匹はおそらく組んでいたのだろう。4匹になるまでという事で。そして4匹だけ生き残った。これからが真のバトルだ。」

 

 紫のスネーカーが先制する、珠食いを早々に切り上げて、珠食いに没頭する黒スネーカーに巻き付いて絞める、黒の死の絶叫を聞きつけたカーキが紫に突進し白が続く、エラを張る紫、紫はコブラに容姿が近い、その円曲したエラからさらに八方に爪が伸びる。伸びた爪ですれ違い様カーキの喉元を切り裂き、背後にいた白に噛付いた。紫の、ベノスネーカーの勝利が確定した。

 

「スゲ・・・・・」

 

 唖然とするだけのシンジ、

 

「ボヤボヤするな。あれだけの魂を食らったクリーチャーを逃す訳にはいかん。変身!」

 

 既にデッキを片手に、川へ飛び降りるレン。空中でスーツを纏う。

 

「あ、抜け駆けしやがって!変身!」

 

 変身してナイトを追いかけるシンジ。

 

 シャァ

 

 罅割れた叫びで並び立つライダーに威嚇をかけるベノスネーカー。

 

『ガードベント』

 

 取り敢えず防御を固めるナイト。

 

『ストライクベント』

 

 対して龍騎は龍頭のグローブを召還した。

 

 確かにあの蛇は飛び道具がないようだが、

 

「どうせ蛇に対抗して龍で威嚇してやろうとでも思ったんだろう。」

 

 ナイトは裏腹な事を言ってみる。

 

「え、どうして分かった、ガオーっ」

 

「キサマはやはりバカだ。」

 

 見直した自分を恥じたナイトは、無言でバイザーを抜く。もちろん逆手だ。

 

「いくぜ!アツアツ熱い砲だ!」

 

 構えてドラグクローを向ける龍騎、

 

 シャァ、

 

 それは毒液、ベノスネーカーの方が先手にいく、口から吐き出された唾液のような毒が、龍騎とナイトに向かって吐き出される。

 

「いかん」

 

 ナイトが龍騎を右へ蹴り飛ばす、蹴り飛ばした反動で自分も左へ。二人が立っていたアスファルトが、浴びせかけられた毒で煙を吹きながら止めどもなく熔けていく。

 

「なに、蹴っ飛ばしてんだよ」

 

「勘違いするな、一番速い回避を選んだだけだ!」

 

「一応助かったから礼だけは言っといてやる!」

 

 足首が浸かるか浸からない程度の川を左右に駆ける両ライダー。

 

『ソードベント』

 

 ナイトはウィングランサーを召還、左右を交互に見やるベノスネーカーに隙を見出し突進、

 

「今度こそアツアツ熱い砲だ!」

 

 右に回り込んで同じように踏ん張り固めてポーズを作る龍騎、

 

 シャァ、

 

 だがベノスネーカーはライダーの両面作戦など見透かしたように、斬り込んでくるウィングランサーはその尻尾を叩きつけ、龍騎にはその毒牙を向けて突進した。

 

「一撃でか、」

 

 ベノスネーカーの、その金に光る尾の先端が交差し、ウィングランサーが一瞬にして消失。

 

「やべ」

 

 ベノスネーカーの瞬発力効いた突進を辛うじて跳躍で躱す龍騎、ベノストーカーの頭は川掘に突き刺さり、上方のアスファルトまで亀裂が走った。即座に頭を抜き取って龍騎を追いかけ這い登るベノスネーカー。

 

「武具が消失する条件は、AP以上のGPで受けた場合、APを上回るAPで受け止めた場合のみ。ヤツの尾はライダーの武具を越えるというのか。」

 

 ナイトは川から路面へ飛び出そうとしているベノスネーカーを呆然と眺めている。

 

「レンは武器を失ったのか」

 

 龍騎はそれでも路上で踏ん張りを効かせ、三たび火砲の構えを取る。

 

 放たれるドラグクローファイヤー、

 

 頭を出すベノスネーカーの顔が迫る火砲に照らされて赤く灯る、

 

 再び毒唾液を吐くベノスネーカー、

 

 相殺、宙で炸裂、

 

「こいつ強過ぎる、」

 

 ベノスネーカーはドラグクローの攻撃を撥ね除け、なお蛇行して龍騎に突進をかける。

 

『ソードベント』

 

 天空より現れ、回転しながら降ってくるドラグセイバー。

 

「掴むと見せかけて、」

 

 しかし掴まない。龍騎はサラリと避けて回転するドラグセイバーを素通しする。

 

 刺さる目、

 

 シャァっ、

 

 左眼にソードが直撃して悲鳴を上げるベノスネーカー。

 

「ぃや!」

 

 ベノスネーカーの頭に飛び乗る龍騎。跨って目に刺さった剣を掴んでさらに押し込む。

 

「暴れるなこら、」

 

 ベノスネーカーは執拗に目を抉る龍騎を振り祓おうと闇雲に首を振り、時に街路樹や交番の壁、書店の看板に頭ごと龍騎を叩きつける、しかし龍騎も根負けしない。

 

「困るんだ。せっかく準備していた計画が台無しになるところじゃないか。」

 

『フリーズベント』

 

 いずこから響いた声と共に一瞬で硬直するベノスネーカー。痺れて動けないというより、空間の全てから圧迫されるような硬直。硬直すると共に薄い氷白の膜が包み、摩擦係数が一気に低下した表面から龍騎はあっさり滑りオチた。

 瞬間凍結、インスタント、対象クリーチャーを凍りつかせ、行動不能にする効果。クリーチャーを行動不能にするという事は、単純に対ライダー戦においてアドベントカードを封殺するだけでなく、クリーチャーと共にあってはじめて効果を発揮するファイナルベントを封殺する事も意味する。

 

「イテ、なんなんだこれ」

 

 尻をつく龍騎。だが龍騎には何事が起こっているか見定める暇は与えられない。

 

『ファイナルベント』

 

「ぐぉっっっ」

 

 突如跳ね襲うクリーチャー、巨大な5本の爪が龍騎の腹部に深々と刺さる、刺したまま一直線に疾走するクリーチャー。

 

「なんなんだぁぁこいつ」

 

 龍騎は自分の腹部を貫き地面に引きずりながら疾走するそのクリーチャーを見た。白地に青のストライプ、ネコ課最大種に属する容姿、即ち虎、しかも白虎、体格はどちらかというと白熊に近いかもしれないそれは《デストワイルダー》。

 

『ファイナルベント』

 

「キャンセル、」

 

 デストワイルダーの向かう先、降り立つナイト、その腕にはウィングランサー、ウィングウォールも纏っている。

 

「はぁ」

 

 衝突するナイトとデストワイルダー、ウィングウォールが消失し、勢いを失したクリーチャーにランサーを叩き込むナイト、

 

「討つには足りんか、」

 

 デストワイルダーは吹き飛ばされるものの、爆発はしない。むしろナイトのランサーの方が消失する。

 

「ごめん・・・、レン、オレ、おまえがトドメ刺せるように、引き付けたんだけど、ごめん、」

 

 腹部を抉られ、さらに背中を引きずられたダメージがシンジに窒息しそうなほどの苦痛を与え、未だ起き上がる事ができない。

 

「分かっている、黙れ、この間の借りを返しただけだ。」

 

 龍騎を見下ろすナイト。仮面越しながら龍騎がファイナルベント寸前のダメージを与えられた事をナイトも皮膚で感じる。だが対して龍騎はナイトに視線を向けていない。ややズレた離れた位置で視線が停止した。

 

「危ない!」

 

 まるでなにかのクソ力というのか、突如龍騎、起き上がりナイトを押し飛ばす。その龍騎に襲い来るのは、デストワイルダーと全く同じ五本の爪、

 

 火花散って上から下へ一直線、

 

「ぁぁぁぁ!」

 

 火花散って再び仰向けに倒れる龍騎、

 

「しぶといなまだ死なない。」

 

 黒いスーツを全身に纏い、大胸筋を象ったプレートを装着、龍騎を引き裂いた爪は前腕が3本並ぶほどの幅、その前腕から歪曲したかぎ爪が5本ずつ生えている。そしてナイトや龍騎と同じデッキ、虎の顔のロゴマークが入ったブルーのデッキがベルトに。マスクド・ライダー12号タイガ。

 

「キサマ!」

 

 ナイトがいままで聞いた事の無い高いテンションで叫び、ダークバイザーで切り付ける。喉元に一閃して龍騎から引き離し、さらに胸元へ打ち込んでタイガを仰け反らせる。タイガもその巨大な両前腕で防御しようとするが、構える前にナイトのサーベルが既に懐に斬り込んでどうにもならない。ついには転んで仰向けになり、サーベルを首に突き付けられた。

 

「いやだなぁ、本気になって、分かっているんだよ、君は決定打が無い。」

 

 そのタイガの声はだがしかし上擦っている。

 

「だがキサマの喉元をかき切る事ができる。ライダーを倒すんじゃない、人間のキサマの首をこの剣でかき切る事がな。」

 

「分かった、了解だ。スネーカーをあの数集めて戦わせる事にこちらは多くの労力と時間を割いた。あのスネーカーだけは頂く。その代わりここから手を引く事にする。」

 

「随分都合がいい事を言う。そして現実を分かっていない。」

 

 スーツ越しに喉元へ刃を圧し込む。タイガがやや息を乱す。

 

「神崎だ、神崎士郎に依頼されただけだ。」

 

「なに、」

 

 だがレンに、考える暇、暇などという時間概念すら与えられる事は無かった。

 

「消えた、」

 

 途切れたように消え失せるタイガ、思わずアスファルトへ前のめりになるナイト。ミラーワールドに拡がる飯田橋の廃墟、その中であの巨大でかつてない強力さを誇ったベノスネーカーもまた忽然と消えていた。

 装着を解くレン。

 

「神崎め、時間を止めて助けたか。」

 

 今なお苦痛に呻いているシンジに、レンは視線を送る。

 

「どういう訳か借りが返せん。イヤなヤツだ。城戸。」

 

 

 

 

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