仮面ライダー龍騎SPRITS   作:bassher

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ここは02年度放映された特撮番組『仮面ライダー龍騎』の二次小説です。『仮面ライダー龍騎』、並びそのスタッフ、また講談社マガジンZ連載『仮面ライダーSPIRIT』著者には、一切関係ありません。
公開は07年11月からとなります。


最後の三日間 03-01-19 Cパート

 

 

 

 

 

 炸裂するシネマシティ4階。爆炎は道を横断して伊勢丹まで到達しビル全体のガラスを粉砕した。

 

「戦いがあるなら、オレになんで声をかけない。」

 

 と一人ほくそ笑むのは彷徨い続けた挙げ句偶々緑川通りをフラついていた浅倉威。

 粉壊が落下するに紛れて浅倉威の前に二体のクリーチャーが急襲する。それはタイガとの契約が失効したデストワイルダーとサイコローグ。

 

「そうかいそうかい、そうだよな、二人掛かりでなきゃ太刀打ち出来ないよな。」

 

 急降下攻撃を受ける寸前、ベルトをデッキに装填、横回転しながらスーツが纏わり付く。

 的を外した二体のクリーチャーは共に疾駆して王蛇へ執拗に付き纏う。

 

「ライダーキッっク、」

 

 だが王蛇へ肉迫するクリーチャーに逆撃の錐揉みキックを見廻せる。まともに食らって倒れたデストワイルダーの首をそのまま踏みつけて抑え、

 

「なんてな」

 

 横に逸れたサイコローグの顔面の穴に、バイザーのピックを突き刺す。

 

「試してみるか」

 

 突き刺したバイザーを、持ち手の親指で器用に開け、開けると同時にカードを引き、カードインとほぼ同時に閉じる、2,5行程最速のベントイン。

 

『ユナイトベント』

 

 特殊カードユナイト、パーマネント、契約した3体のクリーチャーを合成させ、幻の四獣の一体、ジェノサイダー同等の能力を持たせたキメラ合成獣を誕生させ、ジェノサイダー召還中、王蛇の持つ各カードもまた影響を受け強化される。

 

 ヴォと吠えるメタルゲラスの尻の穴からジリジリと震音を立てるベノスネーカーが貫通して喉元へ首を擡げ、さらにその背に空を裂く衝撃波を響かせながらエビルダイバーが合体、そのエイの姿を後退から前進翼へ変形、ここに西洋の竜、二足歩行の肉食恐竜に近いフォルムにドラグレッダーのような頭部と翼を持つジェノサイダーが復元される。

 

 ォォォォォォォォォォォォ

 

 意外と甲高い、だが腹底に響くジェノサイダーの遠吠え。巨大な頭を支える細い首が揺れる度に威圧感がにじみ出ているようだ。

 

「いいな、オレもろとも全て喰われそうだ。」

 

 ジェノサイダーの右前腕が軽く捻られる。たちまち捲られるアスファルト、見えない風圧の手で街路樹が引き抜かれ、街路樹の一本がサイコローグを弾き飛ばし、シネマシティと伊勢丹を繋ぐ陸橋がサイコローグの激突で根こそぎ持っていかれる。王蛇もまたこの激しい風圧を体全身で感じ悦に浸った。あるいはこの世で初めて馬の合う存在と出会えた、その悦びかもしれない。だがそれが、浅倉人生の不覚となる。

 

 脇腹に衝撃、

 

「あぅ!」

 

 一瞬で打ちのめされ、アスファルトに転がる王蛇。それは踏みつけていたはずのデストワイルダーの爪、爪だけが虚空に顕れ王蛇の脇腹を抉り跳ばす、それは同じく四獣の一体デストワイルダーの空間制御。起き上がる動作すら無くそのまま虚空に消え、同じく虚空より顕れ俯せの王蛇を見下ろす。

 

「ォォォォォォォォ」

 

 そのまま脊椎を刺して交差点まで疾走するデストワイルダー。王蛇はアスファルトに火花を散らしながら引き摺られる。タイガと契約中の時は空間制御時に微動だにしなかったデストワイルダー、しかしその束縛から解放された時、デストワイルダー本来の凶悪な力もまた解放される。

 

 宙へ放り上げられる王蛇、

 フロム中武の看板へ衝突、そのまま落下、

 落下地点には既に空間を割って位置を占めるデストワイルダーが、

 

「ぐ」

 

 デストワイルダーの爪が王蛇の胸を貫通する。瞬間凍り付く王蛇の肉体。声をあげる暇すらない。デストワイルダーはゴミくずのように冷凍王蛇を放り捨てた。

 

 ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ

 

 吠え猛るジェノサイダー。しかしそれは王蛇の死を悼んだものではない。

 

『ソードベント』

 

 ジェノデストロイ、AP5、パーマネント、メタルホーンの頭に角でなくベノサーベルが生える。

 

「不思議だ、イライラが消えた。これほどスッキリしたのは初めてだ・・・・」

 

 宙を飛ぶベノサーベル、王蛇の得物からベノサーベルの部位だけが射出され、デストワイルダーに向かって一直線、メタルホーン部とベノサーベル部はエビルダイバーの尾、即ちエビルウィップが接続し、リーチ無限の武器となる。

 

 振りかぶる爪、自立して避けるサーベル、

 

 迎撃するデストワイルダーだったがしかし、その爪をベノサーベルは寸前で回避し、回り込んで背中に刺さる。驚くべきは、王蛇が操っている訳でもないのに、ベノサーベルが意思を持って宙を舞っているという事。いや得物がどうというよりも、凍結したままなお平然と動く王蛇がもっとも驚くべきか。

 

「喰え」

 

 ライダーを葬れる程のダメージを食らって瀕死のデストワイルダー。空間を裂いて逃げようと半身だけ消えているところを強引に引っ張りあげてジェノサイダーまで飛ばす王蛇。

 

 フォォォォォォォ

 

 静かなる四獣、〈空〉を司るデストワイルダーが初めて吠えたのは断末魔だった。飛ばされたデストワイルダーの胴に喰らいつき、有無を言わさず咬み砕いた。本来互角であるジェノサイダーとデストワイルダー、しかしジェノサイダーと契約したライダーの力はその域を超えていた。

 

「生まれて初めてだ。いままでの苦痛が嘘のようだ・・・・雲の上にいるのはこんな気分か。」

 

 さらに伸ばすベノサーベル、

 その向かう先は遠くパークアベニュー前で先ほどまで伸びていたサイコローグ、無限に伸びるエビルウィップがローグの首に巻き付く。

 

「この爽快感の先に何がある!」

 

 まるで釣り上げるようにサイコローグを引き寄せる王蛇。交差点から交差点へ宙を飛ぶサイコローグ。

 

『ファイナルベント』

 

 サイコローグが落下した地点は、ちょうど王蛇とジェノサイダーを挟んだ路上。ジェノサイダーが豪声を上げ、その胴体中央に孔が開く。大気が畝ってその孔に向かって吹き上げていく。

 

「血も出ない、これでいくらでも戦える!」

 

 ローグに向かってアスファルトを疾走する王蛇、勢いを乗せて跳躍、両足を揃えて錐揉みしながら蹴撃、これがローグの腹に入り、ローグはそのまま大気のうねりに呑まれてジェノサイダーの孔に縮みながら吸収されていく。

 ドゥームズディ、AP8、インスタント、ジェノサイダーの孔を開け、王蛇の跳蹴で圧し込む。空間を吸収圧搾し、マイクロブラックホール、死の渦によって全てを貪る。

 

 コォォォォォォォォォ

 

 肉体の半分縮みながら吸収されるサイコローグ、絶叫をあげて必死に腕を伸ばすも、既にその頃には頭が孔の中に押し込まれ、もはやビクビクと震える指先だけが露出した時、蓋が閉じた。

 

 ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ

 

「ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 共に吠える死の僚友だった。しかし王蛇、まだ物足りない。背後を振り返り、次の獲物を指差した。

 

「次はおまえだ、この爽快な気分を味わい続けたい。」

 

 緑川通り交差点から東、既にスーツを纏い、炎をバックに広げられた片翼を描いたカードを掴むライダーがいた。

 

「悪霊め・・・・うっとうしいな・・・」

 

 城戸真司、マスクド・ライダー8号龍騎の声には興醒めしたかのような境地すら垣間見られた。

 

 

 

 シネマシティ4階内。

 

「見た目の割に大した事無い威力だな北岡。」

 

 最後のカードを消費し除装した蓮に歩み寄るゾルダ。

 

「まさかまだ生きているとはな。意外としぶといな香川。」

 

 その蓮の足許に、同じく除装し、粉々となったバイザーの破片に震えた手を伸ばして這いずる香川がいた。引きずっている具合からすればおそらく両足が折れている。

 

「バカな・・・・・なぜだ、なぜここで北岡、なぜなのだぁぁ!」

 

 それに答えたのは蓮だった。

 

「分からなかったのか。公園からずっとこいつが見張っていたのを。」

 

「なに、では、私が眠っている間・・・・・、バカな、貴方を庇って傷まで負った私より、こんなイカサマ弁護士を信用したというのか・・・あれほど敵対していたにも関らず、」

 

「おまえが執拗にあの王蛇にこだわったのが引っ掛かっていた。そこへ北岡が教えてくれた。コア・ミラーの時のタイガはおまえだったとな。その瞬間繋がったよ。ライダースーツは契約者でなければ変身できない訳ではない。」

 

「敵の敵は味方、ボクには基本だけどね。香川、おまえは得体が知れなさ過ぎたんだよ。せめてこのス~パ~弁護士のように情報は公開しておかないとね。交渉というのはそういうものだ。」

 

「秋山・・・・いずれ後悔する事になるぞ・・・まだ私と組んでいた方がマシだったとな・・・」

 

「そうかもしれん。しかしそれならそれで構わん。甘んじてうけるさ。取り敢えずそこで寝ていろ。この神崎の仕掛けたゲームが終わるまで生きていられたらまだツキの女神はおまえに微笑んでいる。」

 

「くそ・・・・・この凡俗共め・・・・・天才のこの私がなぜぇぇぁぁ!」

 

「それも簡単な答えだ香川。おまえも、あの替え玉の坊主も、死の覚悟の無い奴が秋山のような人種とまもとにやって勝てる訳がないのさ。まあ覚悟を持てと言われてできる奴はそうはいないが。」

 

「無力な奴に構っているだけムダだ。北岡、場所を変えるぞ。」

 

 喚き散らし言葉にならないうめきを上げる香川に背を向ける蓮。

 

「甘いな。甘過ぎだ。」

 

 一発、

 

 途端起る静寂、

 

 香川の声がピタリと止んだ。あっけない最期だった。振り返った蓮が見た光景は、ゾルダが香川の首を片足で抑え、マグナバイザーで側頭に一発撃ち込んだ直後。

 静かに朽ちて塵となる香川だった死骸から浮き上がる、見る角度によって白にも青にも紫にも光る珠。掴み取ってベルトに収めるゾルダ。もしこの場に秋山蓮がいなかったら、ゾルダがここまでの行動に走ったか。

 

「これで二つ、一歩リードというところかな。」

 

 そう言ってバックルからデッキを外す北岡秀一。彼の肉体は病魔と先のリュウガの一撃で限界に達しており、僅かにでもスーツを着脱するしか苛まれる肉体を保つ術が無かった。

 

「・・・・・」眺める蓮の表情からは何も読み取れない。「いや、二つならタイだ。」

 

 毅然とした態度を崩さない北岡の表情が険しくなる。

 

「そうか、ボクが去った後、一人始末したか。どうせおまえの事だ。他人にヤらせるより自分の手を汚したんだろう。おまえはそういう奴だ。ここでいい。そろそろやろうか。」

 

 蓮は無言でデッキを抜く、北岡もほぼ同時に抜く、

 両者ほぼ同時にスーツを纏う、

 ナイトはカードを引きつつバイザーの柄頭を引く、ゾルダはバイザーの撃轍を引きつつカードを引く、

 ナイトはカード装填、ゾルダはバイザーを腰から手に取る、

 ナイトは柄頭を押す、ゾルダはカード装填、ゾルダかどうしてもテンポ一つ遅い、

 

『ソードベント』

 

「分かっているさ」

 

『シュートベント』

 

 ゾルダ、カードを装填しつつも銃口を向け連射、

 

 ふん、

 

 だがナイト、マグナバイザーの弾撃を逃げる事も防ぐ事もなく不動にして受け止める、受け止めつつ召還されたウィングランサーを片手で掴む。

 

「気取るな!」

 

 ゾルダもまたギガランチャーをその手に掴む、同時に弾圧が止む、

 

「気取るさ!」

 

 ナイトはウィングランサーを片手に肉迫、

 ゾルダはランチャーを撃ち込んで、対手を怯ませた上、アドベント+ファイナルで畳み掛ける事ができる、あるいはランチャーのクリティカルと至近迎撃で一気に勝負を終える事が叶う。

 ナイトはランサーを伐ち込んでダメージを負わせ、ナスティ+ファイナルのコンボ、あるいはトリックによる多層な攻撃といくつも繋げる事ができる。

 互いにこの一瞬に全てがかかっている。しかし、

 

 ドクン、

 

 こんな時になのか、

 

 全てが掛かった一瞬に、ゾルダの中のなにかが断たれた。視覚が一気に奪われ、ランチャーを持つ重さの感覚が失せ、上下の感覚すら喪失した状態が北岡の肉体を襲う。

 

「北岡!」

 

 静止したゾルダにナイトのランサーが容赦無く突き込まれた。照準はバックル、即ちナイトはデッキ外しを狙った。

 

「負けなのか・・・・」

 

 北岡が気力で意識を覚醒させた時、眼前に広がるのは宙を舞う何枚かのカードだった。既に除装した生身の北岡は片膝を折った。

 

「終わりだ。」

 

 ナイトはその内マグナギガが描かれた一枚をランサーの細い先端で切断した。

 

 ブォォォォォォォォォォォォォォォォ

 

 北岡の背後、床を透過して浮かび上がるのはマグナギガ。

 

「契約を失効した場合、契約者は、契約クリーチャーにその命を捧げなければならない。ライダーの基本だ。」

 

 脂汗をダラダラと流しながら、なぜだろう、北岡の顔は笑っていた。

 

「十分に承知している。だから、こいつを召還しておいたんだ。」

 

 投擲、

 

 放たれたウィングランサー、串刺しになり爆発するマグナギガ。

 

「つくづく甘いな、しかし・・・・・」

 

 劇場観覧席の床に悶絶気味に倒れる北岡秀一。

 

「どうした」

 

「触れるな!」片腕を辛うじて持ち上げナイトを制止する北岡秀一。その掌は既に泡立っている。

 

「なぜだ、オレは、二度と同じ過ちを繰り返す訳にはいかんのだ!」

 

「ライダーの戦いとは関係無い。これは、僕の寿命の問題だ。病気でね。替えのドナーもついに見つからなかった。手詰まりになって、挙げ句神崎の甘言にすがりついてしまった。しかし、この為体だ。」

 

「もういいそこで寝ていろ。俺が、ゲームを終わらせてちゃんと治療を受けさせてやる。必ずだ。」

 

「キサマが一番厄介だと最初から思っていた。キサマの方が病気のオレよりもさらに死に近かったからな。賢明にコミュニケーションを取り、社会の中で地位を確保した。だが結局僕は社会の一部にしかなれず、僕自身としてなにも得るものが無かった。優等生というのはこういう惨めなもんだったんだな。勇気が無かった。浅倉やキサマのように、一歩踏み出す勇気が。」

 

 既に手足が消失した北岡を、ナイトは黙って見守るしか無かった。

 

「オレはオレの中で、おまえより優れた部分を知らない。」

 

「おまえはつくづく甘い・・・・、正直になるというのはこういうみじめに踏みにじられる感覚なのか・・・・、いや、違う、僕は北岡秀一、ライダーの戦いに負けた訳でも、病に負けた訳でもない。ただ僕が、生きる事にちょっと、飽きたのさ。」

 

 北岡だった遺体が発泡し大気に拡散していく。

 

「ゴローちゃん、部屋の電気は寝る時でもつけてって言っといたじゃん!寒いよゴローちゃん!ゴローちゃん、早くこっちに来て、僕の手をさすってくれよ、お願いだ・・・・・・」

 

 泡の中心からは3つの珠が浮かぶ。

 

「そうだ、おまえは負けていない。」

 

 3つの珠は、ただ一人、その舞台に残ったナイトの頭上に集まって、グルグルと回転を始めた。と同時にベルトからもう2つの珠が出現し、回転に加わった。

 

「これでおまえが得た魂は5つ。」

 

 そのナイトの背後より声が響いた。中性的なコートの青年が立つ。

 

「神崎」

 

 ナイトの頭上を巡っていた5つの珠は収束して一つとなり、一枚のカードへと変貌し、ナイトの手元に降りてくる。

 

「サバイブの権利を受け取るがいい。」

 

 ナイトの手に収まったカードには、黄金の片翼が描かれている。

 

「神崎、ここまでやるおまえの願いはなんだ?」

 

「戦え、その果てにおまえが得たいものの全てがある。」

 

「そうか、ならば、おまえをまず叩いてもいい訳だ。」

 

 怒りのぶつけどころを見つけたナイトに反応したか、摘んだサバイブのカードが青白く光を放つ。放つと同時に屋内に乱気流が四方から吹き荒ぶ。乱気流の中心に立つナイトは徐にダークバイザーを逆手に掲げる。サバイブカードの光に充てられ変形、アームプレートとなって左腕に装着されるバイザー、それはシールドになりながらも剣を収める鞘も兼ねている、即ちダークバイザーの強化型である《ダークブレード》を収めている。だが強化はそれだけではない、バイザーには2つ、アーマーとブレード柄にカードインスペースがある。そのアーマー部分のカードインスペースに片手で摘んでいたサバイブのカードを装填、これは半永久的に持続するパーマネントの効果を持つ、パーマネント効果は列記すればキリが無いが、一言で言えば、進化、である。

 

『サバイブ』

 

 剣を引き抜く、

 

 剣は幅広で刺突にも断裂にも使えるバスタードソード、

 同時に、乱気流のエネルギーがナイトに集約して一つの新たな像をスーツに被せる。胸から肩にかけてコウモリが拡げた翼のような幅広のアーマーが覆い、各部のプレートも厚みを増している、頭部の仮面は鋭角さをさらに増し、マントが微風になびく。

 これぞマスクド・ライダーナイトサバイブ。その力は全てのライダーの力を凌駕し、およそミラーワールドにある限り、ライダーはサバイブの力に物理的に敵う事ができない。

 

 剣を一振り、宙を斬ってその質量を実感するナイト、

 

「また時を止めて逃げたか。」

 

 だがその威力を試す対象は既に虚空に消えていた。

 

「城戸・・・・そうか、残っているのはおまえか。」

 

 サバイブのカードを所有したものは、知覚と認識が異常拡大する。

 

 

 

 北岡秀一。

 30歳。欲しいものは手に入れ、やりたい事は全部やる、の言葉通り、大隈大学で射撃部に属しオリンピック級の実力を持ちながら主席で卒業、卒業と同時に司法試験に合格、しかもその間模型雑誌にてオラザク選手権グランプリを獲得し、女性ファッション雑誌の表紙を飾るオマケまでつく。

 弁護士になってからは、クロをシロにする、のキャッチフレーズ通り、事実の如何を問わず修辞と弁証の限りを尽くして裁判に勝ち続け、依頼人の社会的保全を図りつつも、法外なギャラをせしめてきた。そのギャラは次の裁判の際、原告側への裏取引に使われる事はよく知られていたが、原告側の生活苦を救済し、被告犯罪人の遺族を保護する為にしばしば使われていた事はあまり知られていない。

 

「永遠の命」

 

 そして彼の不治の病は、ごく僅かな者しか知らない。

 およそ情報というものに対して、知っている事と知らない事の差をこれほど熟知していた者は他にいないだろう。

 そんな彼のミラーワールドでの姿こそは、マスクド・ライダー7号ゾルダ。

 契約カード

 バレルベント

 シュートベント

 ショットベント

 ガードベント

 ファイナルベント

 状況とタイミングに応じて火力を振り分けるバーンタイプのデッキ。故に彼我の状況のコントロールに完璧な手腕を求められ、バイザーによる威嚇を最大限に活かしてあくまでアウトレンジから攻撃できる有利を崩さない事が肝心である。難しいものの傍で眺めれば一方的に対手を殲滅しているかのようなデッキである。ほとんどがインスタントというタイミングを外されればこれほど脆いデッキも無く、とくにほとんどのカードがパーマネントであるデッキにはことごとく攻撃を弾かれて一方的に敗退する事になる。しかしアウトレンジ攻撃の優位は、それを差し引いて余りある。

 

 

 

「生意気っ」

 

 龍騎に向かって投擲されるジェノデストロイ。その刃が届けば、AP5の破壊力が龍騎を一撃必殺するだろう。しかし届かない。

 

 光るカード、

 

 その時輝いたのは龍騎が手にする炎渦巻くサバイブカード、同時に場が凍り付いたように停滞、サバイブが発する炎と、手にする龍騎だけがこの世の中で唯一動いている。サバイブのカード発動時、時か停止する。

 カードが発する赤色の輻射にバイザーを翳す龍騎、反応して変形し《ドラグバイザーツバイ》が出現、腕に纏わり付いていた手甲が、手持ちの、龍の頭を象った銃へと進化。バイザーツバイの口が開き、そこにサバイブカードを収める龍騎。その時周囲の炎が龍騎めがけて襲いかかって包み、人型の像を持つ、龍騎のプロテクターが全体1ランク上の厚みを形成、胸部と頭部が龍頭が逆鱗を拡げるように肥大化する。これぞマスクド・ライダー龍騎サバイブ。龍騎がバイザーツバイを掲げると同時に再び時が動き出す。

 

「イラァ!」

 

 ベノサーベルの刃が龍騎に向かって動き出す。

 変形するバイザーツバイ。象った龍の頭、額の部分から片刃が突き出て、握られるグリップも90度折り曲がる。それは龍頭を柄に持つ刀剣。

 

「おまえ、いいかげん調子に乗るなよ。」

 

 弾く、

 

 APが5であろうが100であろうが関係ない。ライダーの攻撃である限りサバイブの刃に一切無効にされる。

 

「イライライライラ!」

 

 だが王蛇のジェノデストロイはなお健在であり、サーベルの刃を背面展開させ龍騎の後背を討たんとする。

 

 再びカードを引く、そして再び時が静止する、

 

 手に持つバイザーツバイの龍頭、その鰓の部分が角度を拡げると、カードインスペースか現出する。龍騎もまたナイトと同じく、カードインスペースを二つ持つ、カードを装填すると、ちょうど掌が鰓を覆いかぶせる形になる。そのまま閉じる龍騎、行程にして3、しかし装填して閉じるの速さから2,5と言っていい。

 

『ストレンジベント』

 

 再び開くバイザー、先程入れたカードは絵柄が変わっている。

 

「なんだこりゃ」

 

 全てから逸脱したような呑気さの龍騎。

 特殊カード、ストレンジベント、バイザーに装填する事で、既存のいずれかのカードへとその身を変え、能力を使える。いずれのカード能力になるかはランダムである。即ちやってみて初めて効果が分かる城戸真司を体現するかのようなカード。

 

「面倒臭いよこれ」

 

 再びバイザーを閉じる龍騎、

 

『ジェノデストロイ』

 

 今回は王蛇と同じ得物。

 

「待ちくたびれたよ、遅えよ。」

 

 龍騎の腕に武器が収まった時、ようやくにして時が動き出す。

 

「なんだ」

 

 王蛇は瞬きしていないにも関らず、視界が微妙に変化している事を察知、脳内で警笛がかき鳴らされたが攻撃を仕掛ける。龍騎は己が得物で振り向き様それを弾く。この場合AP5VSAP5、両者のジェノデストロイは消失する。

 

「おまえなんかに構ってる暇は無いんだ。」

 

 再びカードを引く龍騎、再び時が止まる、

 

 このゼロカウント召還というライダーのルールを超越したところにサバイブの本質がある。

 

『バーニングセイバー』

 

 ソードベント、インスタント、AP7。

 龍騎の片刃のバイザーが炎を上げる、高々と刃を掲げると、幅コンマ5メートル、刃渡り10メートル超の長大な両刃、もはや火柱のそれが天に向けてそそり立つ。そこまで完了してようやく時が動き始める。

 

「なにをやっているんだ、おまえ!」

 

 王蛇の叫びを無視して振り下ろされる、いや倒れ込む炎の柱、

 

「頭の悪いバカに教えてやるよ。おまえはもう死んでるんだぜ。」

 

「な!」

 

 ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

 

 だがその攻撃は王蛇から剃れ、その背後、ジェノサイダーへと振り下ろされる。バターがスライスされるように両断されるジェノサイダー、両断された左右の塊は即爆破した。

 その中央より出でる3つの珠。一つはジェノサイダーそのものの命、一つはワインレッドのライアの命、そしてもう一つ、紫光に輝く珠が一つ飛び出した。それを眺める王蛇は指で差してそれを追うが、その指先の変化に気づいて視線を両掌に移した。

 

「なんじゃぁこりゃっ」

 

 王蛇はダメージを受けていない、痛みすら無い、むしろ心地いい爽快感の中にあるにも関らず、その肉体は泡立ち始めている。

 

「だから言っただろもう死んでるって。あのクリーチャーからもう命を取られてて、死体になって動かされてたんだおまえは。」

 

「ウソを言え!」

 

 スッ転ぶ王蛇、スッ転んだ拍子にバイザーが取れて浅倉威の悪鬼の形相が顕れる。既に四肢の先が消失している。

 

「いいかバカ。オレは蓮と約束してるんだ。だからおまえみたいに邪魔なところに立たれるとうっとうしいんだよ。」

 

 絶叫する浅倉に龍騎のその言葉は届いているのだろうか。天を見上げ放心するその浅倉は、なぜだろううすら笑みを浮かべていた。

 

「そうか、そういう事か、生きていたからなのか、オレが、イライラしていた原因は、そうか、この肉体って血袋に閉じ込められていた事がイライラして仕方無かったんだぁ!」

 

 高笑いを上げる浅倉の顔はもはや人外のケダモノの領域であり、ひたすら自分だけの為に透徹した満足と、それ以外不器用になにもできなかった卑屈がほのかに加味されていた。 浅倉威は産まれたが為に充足を求め、他者の命を脅かす事で代替していたが、その抜本的な充足を得る為には、自身の死をもってしかなかった、あるいはごく当たり前の、ただの一本気なだけの男だったかもしれない。全身が泡になった時、浅倉威の顔は安らかだった。

 

「全く余計な労力使わせやがって、イライラする奴だったぜ・・・・・イライラ?」

 

 除装する龍騎、顕れ出でた城戸真司の表情は困惑に満ちていた。

 

「なにやってんだオレ・・・・これじゃ、これじゃ、あいつと、これじゃ・・・・同じじゃねえかぁぁ!」

 

 誰もいない深夜の路上。両膝を屈して項垂れる真司の背に、後悔の二文字が重く伸し掛かった。

 

「おまえらしいな。やるだけやって、自分のバカを後から気づく。しかしバカをやって後からでも気づかんバカよりは、マシかもしれん。」

 

「蓮。」

 

 立川曙橋交差点中央。二人の傷だらけの男が立つ。

 

「蓮、教えてくれよ。願いを叶えるってなんだ?」

 

「願いを叶えるという事は、それ以外な大切なモノを切り捨てるという事だ。その為にオレ達は互いを殺し、踏ん切りをつけなければならん。オレはオレを辛うじて人として生かしてくれた女の為に、おまえを殺す。」

 

「でもオレは、優衣ちゃんもだけど、おまえも救いたいよ・・・・救う為にライダーになったんだから。」

 

「オレを救いたければオレと戦え。オレに殺されオレが鬼になる礎となれば、おまえはオレを救う事になる。」

 

「分かった、やるよ。オレも、おまえに全てをぶつけて、答えを出すよ。」

 

 この世界、ミラーワールドで唯一残った者二人の、血で血を洗う戦いが今はじまる。

 

 

 

 浅倉威。

 25歳。彼が凶悪な犯罪者の道をひた走ったのは、間違っても彼の自由選択ではない。彼はその人生以外歩めない不器用な男だからである。

 

「戦え」

 

 幼児性暴力症を拡大させて生きていた浅倉が敏腕刑事須藤に現行犯逮捕されるまで、警官を含む1858の人間に被害を与え、15の家屋を破壊した。

 彼の弁護人となった北岡は、一審が無期懲役、二審において幼児性障害を原因として病院送りになろうとしていたところさらに上告し、世間を騒がせた。

 

「浅倉さん、いっしょに裁判を勝ち取りましょう。死罪をね。」

 

 熱心に弁護をする北岡に対して、時に暴言を吐き、刑務所の金網に蹴りを入れてキレる浅倉だった。

 そんな彼のミラーワールドでの姿こそは、マスクド・ライダー13号王蛇。最後に造られたデッキであるものの、その製作目的は実験の意味合いが強い。

 契約カード×3

 ソードベント

 ユナイトベント

 ファイナルベント

 本質的に3体のクリーチャーによって四獣の一体、冷酷なる〈死〉を司るジェノサイダーを模造する為のデッキであり、戦闘能力は低い。しかしジェノサイダーの一部であったベノスネーカーに併せてチューンした結果、高速な召還カウントで重いカードを使いこなす変則ながら強力なデッキへと変貌を遂げている。具体的には、契約者の精気を過剰摂取し召還に還元、高速カウントする出血毒。そしてサブ契約クリーチャーを敢えて犠牲、契約者の滋養として生命力ギリギリで回復しつつ、デッキをリセット、再度生命力の限りを尽くして、時にクリーチャー再契約も織り交ぜ強力なカードを召還し続ける、無限カードリロードの戦術。

 王蛇の戦いはこの3体のクリーチャーを駆使した多方面攻撃と、ガードベントを突破する強力なファイナルベントの連発という派手なものとなる。他のデッキとは違う変則的であるが、イニシアティブを維持すれば隙の無い強力さを発揮する。ただし契約者は限りなく死に近い状態で戦いを強いられ、たった一押しで脆く敗れ去る事になる。

 またそのデッキ開発の本質としてのジェノサイダーへの合体をした瞬間、スペックは強力になるものの、カード枚数は半数に減り、上記した戦術はことごとく封じられ、結果としてソードベント一本で全てを凌がなくてはならない。スペックを取るか戦術の幅を取るか判断を問われるデッキである。

 

 

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