仮面ライダー龍騎SPRITS   作:bassher

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ここは02年度放映された特撮番組『仮面ライダー龍騎』の二次小説です。『仮面ライダー龍騎』、並びそのスタッフ、また講談社マガジンZ連載『仮面ライダーSPIRIT』著者には、一切関係ありません。
公開は07年11月からとなります。


レン 03-01-19

 

 

 

 

「戦え」

 

 駅前のペデストリアンデッキより曙橋交差点を眺めるのは、コートを羽織り、中性的でいて辛うじて男子と分かる人物。

 

「戦って、戦って、戦い抜き、」

 

 コートを剥ぎ取る神崎士郎。一糸纏わぬいでたちとなってただデッキケースだけを握り立川駅北口に立つ。握るデッキには鳳の模様が描かれている。

 

「優衣の命を潤すがいい!」

 

 高笑いは、今の龍騎とナイトには聞こえない。

 

 

 

 立川北口が曙橋交差点を中心に紅蓮の炎に包まれたかと思いきや、凄まじき強風によって一瞬でかき消され、残るのは倒壊した廃墟。高島屋も、伊勢丹も、ビックカメラも、トポスも、全てが瓦礫の山と化している。

 

「このヒネクレ野郎!」

 

 最後のカードを引く龍騎サバイブ。

 

「バカめ」

 

 ダークアローシュート!

 

 ナイトのダークバイザーツバイがソードを収めた状態ならば、柄頭はちょっとしたレーザー砲となる。

 

「あち」

 

 カードを焼かれ思わず手を放す龍騎。

 サバイブはカード発動時に時を止める。しかしその止まった時の中、同じサバイブならば動く事ができる。ライダーのルールを破綻させたサバイブはサバイブ同士で新たなルールが構築され、故にサバイブの権利は最後のライダーに勝つ為の必須条件となる。

 

「おまえの負けだ。」

 

「くそ変身が!」

 

 最後のカードが消費される。即ちそれはスーツの除装を意味する。途端気力の糸が切れたように膝を折りし、罅の入ったアスファルトに尻をつく真司だった。

 

「おまえのデッキは強力で速いのが長所だ。だがその速さを維持する為に対手に率先してカードを消費していかなくてはならない。終わったな。」

 

 ナイトサバイブはダークソードを抜き、真司の顎にその刃先を差し向ける。

 喉を鳴らす真司はしかし、怯えてはいない。

 

「やれよ。変身、解けちまったら、もう、オシマイだ。でも、こういう形なら、タメで、オレが負けたって事にならねえからな。諦めたけど、悔しいって、思わないよ。おまえ、に、負けた訳じゃない。」

 

 肩で息をする真司。それはただの負け惜しみでしかない。

 

「なに」

 

 だがそのただの負け惜しみに反応して動かなくなるナイト。カードを意図して損耗させ、対手の変身を除装させたのである。はっきりとライダーバトルとしての巧拙の差を見せ付けたとしか言い様がない。しかし真司の一言は真司の意図しないところで、アキヤマレンの心理を巧みに揺るがす。他の者ならこんなバカな挑発に乗らない、つくづくウマの合う二人である。

 

「実力の差というものを見せてやる城戸!」

 

 デッキを外しナイトのスーツを自ら除装するレン。そうしてヘタり込む真司の胸倉を掴んで持ち上げ、鼻に一発鉄拳を見舞った。

 

「っにすんだこの!」

 

 危機から脱したクリティカル真司。蹌踉けて曲がった鼻を両手で抑える。両手を塞いだまま猛り狂って突進、その無心な突進は、レンの迎撃のワンツーを掻い潜り顔面へバッティングが入る。

 

「っぐ、キサマもう少しスマートにできんのか!」

 

 ストリートの経験なら浅倉にすら負けないレンのプライドが、今の鼻の角度程に曲がった。

 

「レン、今だから言うがな、最初から気に入らなかったんだ!オレの事さんざんバカにしやがって!」

 

「バカにバカと言ってなにが悪い!オレがどれだけおまえの鼾に苛まれたと思っている!」

 

 もはやライダーの戦いとすら言えない泥沼の殴り合いが展開された。

 

 

 

 喫茶『花鶏』。時は最期の三日間が開始される以前、1月14日まで遡る。

 

「ごめんください。遅れまして。」

 

 扉を開くと、備え付けられた鈴の音が鈍く鳴り響き、店主に客が来た事を知らせる。

 

「いらっしゃい。ここは、紅茶しか出さないよ。看板に偽りナシってんだ。それでもいいかい。」

 

 老女がいた。両眼の焦点が合っていない。八方に乱れ伸びているグレーの髪は、老女の精神の顕れのごとく乱れつつも落ちついている。

 

「神崎、沙奈子さんですね。」

 

 もののけ婆・・・・

 

 OREジャーナル編集長桃井令子は厳かに振る舞う神崎兄妹の扶養者、どこかこの世から逸脱したものを醸し出すみすぼらしい神崎沙奈子に聞かなければならなかった。

 

「さあてねえ、アタシャ、ただの紅茶好きの山口百恵かもしれないねえ。実は近所なんだよ。他にもハーブ売ってる町子ちゃんが有名どころかねえ。」

 

 このまま老婆のペースに巻き込まれ全てをうやむやにされる前に、単刀直入に攻める事にした。

 

「お電話した通り、神崎兄妹についてお伺いしたいのですが。」

 

 本来なら、ボイスレコーダーを出すところだが、警戒されて心根を明かさないケースが多い。故に令子はレコーダーからコードを体の中に通して左腕の袖にピンでごく小さなマイクを止める事にしている。マイクを向ける時不自然にならないように、普段から身振り手振りを大げさにするよう心がけている。

 

「・・・い?、ああ優衣の事かい。あの子はいい子でねえ。私といっしょに暮らしてくれてるんだよ。」

 

「私が聞きたいのは、まずお兄さんについてなんですが。」

 

 一瞬、沈黙が起った。老婆は一杯の紅茶を飲み干し、再びティーポットに湯を注ぎ込んで再び口を開いた。

 

「優衣はいい子だよ。眼がねえ、クリクリしてるんだよ。」

 

「容姿と性格は、この際あまり・・・」

 

「この間、優衣の咳が止まらなくなってね。夜中だったけど、あたしゃ駆けずり回って病院をあたったよ。でもヒドイヤツラでね。たらい回しさ。可哀想に、あんないい子なのに、顔を真っ赤にして苦しんでるのに、病院の奴等は鬼だよ。」

 

 令子は思い直した。インタビュアーとして手腕が問われるところだと。

 

「では先に優衣さんについてお伺いいたします。失礼とは思いましたがこちらで調べさせてもらったところによると、神崎優衣、現在20歳。まだ19歳でしたか。東京都文京区生まれ、ええ、こちらで沙奈子さんがお店を開いて以来こちらに移る。義務教育を満了してこちらで家事手伝いという略歴ですね。まさかこちらで正式な雇用手続きを取ったわけではないですよね?つまり高校には進学しなかったと。」

 

「優衣はね、いい子だから、お店の事を第一に考えてくれたのさ。あの子がお店を切り盛りしてくれるから、私は趣味の旅行にも行けるようになった。」

 

「そうでしょうか。調べたところによると、優衣さんは3つの高校と1つの専門学校、これはアニメーションの学校ですね、とにかく受験に失敗しています。」

 

「試験官が意地悪だったんだよ!あんないい子をたかだかテストの点数で見るなんて!」

 

「いえ、公立高校に関しては無理な偏差値の学校だったという事なんですが、私立と専門学校に関しては、入学金の問題に見受けられますね。」

 

「そんなんじゃないよ!」

 

「ではもっと質が悪い。貴方がここに閉じ込めてたいって事なんですか?」

 

 令子はメモ帳に、沙奈子は優衣がいい子前提、過保護?と速記した。

 

「何言ってんだい!不愉快な事ばかり言うとこの紅茶がアンタの顔にかかるよ!」

 

「まあまあ、確かに言い過ぎました。お詫びいたします。では話を変えて神崎士郎さんの事をお伺いしましょう。」

 

 実はここまでは令子にとって想定の範囲である。多少怒らせる方向にいったが悪い展開ではないと思っている。怒らせるという事は相手である沙奈子に注意を向けられた事も意味する。このままイニシアティブを保持しようとする令子。

 

「・・・・・・、」

 

 だがやはり、奇妙な、抵抗感の無い反応の沙奈子。

 

「士郎さんはおわかりですよね?」

 

「何言ってるんだい?」

 

 だが沙奈子の次の言葉は、令子の想定をはるかに凌駕していた。

 

「優衣は一人っ子だよ。」

 

 令子は天と地がグルグルと動転するかのような、この世の根底を成すものが掘り返された想いに駆られた。

 

 

 

「オレをバカにするんじゃねえ・・・・」

 

 真司の顔はもはやその原型とどめていない。いや腫れる程度の力で殴られて収まっているというのが正解か。

 

「バカにバカと言って何が悪い。おまえは結局人を救いたいと一人よがりにわめき立てて、その救いたい人間を犠牲にしてきただけだ。」

 

 一方のレン。右の眼の周りに実に黒く綺麗な痣が円を描いている。端正に澄ました表情を保とうとするが故に健気で哀れだ。

 

「何!おまえなんか、その恵理さんとか言う人はまだ生きてるんだろ、だったらいいじゃないかそのままで、生きてさへいればなんでもいいじゃないか。おまえ結局恋人を口実にして生きてるだけだろっ!」

 

「生きてさへいれば、なんでもいいと言うのか・・・・」思わずデッキを手に取るレン。「おまえは言ってはならん事を言った!」

 

 そして装着されるナイトサバイブの鎧。即刻アームプレートに差したダークブレードを抜いて真司に刃を向ける。

 

「レン、おまえとのくされ縁はもうコリゴリなんだよ!」

 

 真司も直ちに龍騎サバイブへ。

 

「最後の勝負だ!」

 

 ダークブレードの柄はダークバイザーと同じくコウモリを象った紋章になっており、やはりダークバイザーと同じく縦割れしてカードインスペースが顕れる。カードを引く、触ってもいないのにバイザーが自動で展開、カードを装填、カード装填に連動する形でバイザーが閉じる。サバイブと化してバイザーも数世代進化している。

 

『無想斬』

 

 ファイナルベント、インスタント、AP8、貫通、全てを断ち、同じ大地の上に自身以外の者が立つ事を許さぬナイトの技の極み。

 

 キィィィィィィィィィ

 

 宙より顕れ出でて飛翔するダークウィング。だがサバイブの力は召還されたダークウィングに硬質なスーツをまとわり着かせる。そう、ライダーが契約クリーチャーから力を受けるように、契約クリーチャーはサバイブから力を受け姿を変える。その名も《ダークレイダー》。金属的なギミックで翼を稼働してジェット噴流で高く高く飛翔。

 

「はぁ」

 

 ナイトもまたその高さに飛翔、

 待ちかまえるダークレイダーがナイトのアームプレートと合体、胴体から翼をピンと張り、アームを中心として頭足を上下する大回転、その軌跡は回転する薄い円の刃。そのまま龍騎に向かって急降下。

 

「オレは救う、そう選択したんだぁ!」

 

 龍騎サバイブ。はるか天上で点にしか見えないナイトをただ見つめ立ちつくしている。手にする銃型のバイザーが軟質に変形、巨大な龍の頭のガントレットと化す。それはドラグバイザーの進化型。剣、銃、そして手甲と三態に変化するこれが龍騎の《ドラグブァイザーツヴァイ》。カード装填は全て共通、剣だった時のそれと同じく、カードを引くと同時に、カードインスペースがややせり上がり、その薄い孔にカードを装填、覆い被せるようにバイザーを閉じる。

 

『ドラゴンライダーローリング』

 

 ファイナルベント、インスタント、AP9、迎撃型、真司の全ての想いを貫徹する必殺の力。

 

「オレは負けんんんんんん」

 

 はじめて出会った時は、インテリアの一つでしか無かった。

 気の置けない者になったのは、初めて対峙した時。城戸真司のライダーとしてのセンスの高さに、レンはそれまでの辛苦がゴミクズのように扱われたような悔しさを覚えた。自分の方がはるかに優れている事を証明すべく戦い、そして完璧に敗れた。少なくともあの時のレンはそう思った。

 借りを作られた事もあった。貸しを作った事もあった。そんな人間じみたことに塗れ、あるいはこのままではこの男に呑まれて、自分が自分で無くなってしまう、コア・ミラーでの決別はそんな危機感の蓄積がさせたのかもしれない。

 そしてこの曙橋交差点で対した時、即ち最後に残ったライダーが自分とこの男だったという事実は、殺さなければならぬ対手である事を自覚した。

 そして城戸真司が最後に言った、

 

「おまえ結局恋人を口実に生きてるだけだろっ!」

 

 その言葉は、レンに事実であると認めさせるが故に、城戸真司を滅ぼさねばならぬ対手である事を痛感させた。恵理に生かされる為には、城戸真司に生かされる訳にはいかない。

 

「こぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 

 縦一文字に回転の刃が龍騎の額へ振り下ろされる。

 

「オレ、決めた、鬼になるよ」

 

 それを見上げ敢然と立ち尽くす龍騎。

 

「ぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁ」

 

 大車輪の刃が龍騎の脳天に斬り込んでいく。しかし龍騎は動かない。顔面から喉、胸元へ割って入る、それでも龍騎は動かない。

 

「城戸ぉぉぉぉぉ」

 

 炸裂する龍騎のスーツ、弾けたドラグバイザーの龍頭がプレートに激突し,弾き飛ばされるナイト。

 

「・・・・・なぜ、まともに、」

 

 転ぶナイト。そこからナイトの耳には静寂しかない。俯せから四つんばいになり、視界にある白線が車両停止線である事を認識できるまで起き上がる事ができなかった。

 

「オレ・・・・・・考えたんだぜ、鬼になるって。おまえならオレなんかよりずっと、みんなを救えるだろうから・・・・・だから、」

 

 真司は既に除装され、横向けに倒れてレンを見つめていた。体が半分見えないが、地面に埋もれているわけではない。

 

「バカが、俺に命をくれてやって、俺が喜ぶと思っていたのか!そんな覚悟を決めるんだったら俺を倒す覚悟をしろ!俺はおまえに伐たれれば、それでも救われたんだぞ!」

 

「ごめんよ・・・・オレバカなんだな・・・・・気づかなかったよ・・・・、でもおまえなら恵理さん救った後・・・・、な、頼むぜ・・・・・」

 

 泡立つ真司の肉体が拡散、紅蓮の珠がレンの手元に寄り添っていく。

 車も、雑踏も無く、信号の動きすらないこの世界。二人だった世界が一人となって、存在感が満たされぬ大気はもはや埋めようがない。

 

「友を殺したぁ」

 

 一人残ったレンの言葉は、涙に塗れた甘えの言葉だった。

 

 

 

 城戸真司

 23歳。ネットSOHOであるOREジャーナル記者。編集長大久保とネットオフの集まりで大学の同輩と分かり記者、記者見習いとして雇ってもらえる。大久保は、仕事ができないが人知を越えたクリティカルな面を持つ彼に、大事件を吸引するなにかを期待していたらしい。そんな価値観で判断して真司を珍重する大久保も変人の一人かもしれない。

 

「人を助けたい」

 

 その言動は現代社会の虚構性が反映した、リアリティに欠ける性格が言わしめる。およそマンガアニメなどメディアの中に存在するリアリティが刷り込まれてそれを頑なに信じているからであるが、反面社会適応のできない自分を幼少から早々に正統化する術をそこに見出した結果とも言える。

 彼の略歴は、中の下の大学を卒業したのち、小さな会社に就職後、1年しないで行方不明。たったこれだけの人間と今の社会は断じている。

 そんな彼のミラーワールドでの姿こそは、マスクド・ライダー8号龍騎。13のデッキの中で一つの節目となる第2世代完成型。

 契約カード

 ソードベント

 ガードベント×2

 ストライクベント

 ファイナルベント

 装着型として完成度の高いバイザー、ほぼパーマネントというごくシンプルだが強力なカード群に彩られた肉弾戦主体の中庸なデッキである。

 しかしその契約クリーチャーが四獣の一体、猛々しい〈生〉を司るドラグレッダーであった事が、このデッキをそれ以前と全く異なるモノへと変質させる。

 ドラグレッダーのエネルギーがカードを1ランク上のカウントで召還させ、一段高い力を持ったパーマネントが、同時に召還した対手のカードをあっさりと駆逐する。カードバトルに拘束されたライダーはこの脅威から逃れる事はできない。

 このデッキの存在は、後続のデッキの設計コンセプトを大きく転換させ、強力さは制作される毎に増すインフレーションを引き起こし、ある意味ではライダーバトル全体を活性させていく事になる。

 ただし後続するデッキに対して、基本スペックが脆弱であり、リュウガ、王蛇などに対しては徹底的に相性が悪い。龍騎以前のデッキ使い達と同じく、ひたすら己の習熟と処世のレベルの振るまいに賭けねばならない。

 

 

 

 喫茶『花鶏』前。ミラーワールド。

 

 マスクド・ライダー6号、ナイトサバイブは、この場所が最後の決戦地である事を直覚したものの、そこに立つ者が誰であるかはさすがに知りようがなかった。

 

「恵理、なぜ、恵理なんだ。」

 

 片足立ちしているナチュラルパーマの女、レンが最後に見た時はまだボブ臭い髪型だった、身につけている病院の寝具は右腕と足半分盛り上がるべき膨らみが無い。腰にはバックルの無いベルトを巻いている。手には鳳の紋章を象ったカードデッキを持っている。

 

「よくぞ辿りついた。最後のライダー。」

 

 だがその声は、レンの脳内をここ1年駆け巡ったあの声ではない。別の知っている人間の声だった。

 

「神崎、乗っ取ったか、それとも幻覚か。おまえの目的はなんだ?およそ優衣に関る事だという事は察しがついている。おまえは実体が無い。だからおまえの大切にする存在の為おまえは突き動かされている。」

 

「サバイブの力がそこまでおまえの知覚と認識を拡大したのだ。しかし誰かの為に誰もが動くと思い込んでいるところがおまえの限界でもある。縛られていると言ってもいい。おまえが集めた12の魂を回収する為に、おまえの願いそのものと戦ってもらう。願いと戦い、それでも願いを全うできるか。」

 

 バックルにカードを差す小川恵理。装着されるスーツはライダーの中でも一際異形、黄金を基調とした羽根を思わせる金属をいくつも体に纏わり重ねた仮面の者。その腕には仮面の者の身長ほどもある錫杖があり、上部は不死鳥を思わせる扇型の装飾が施されている。マスクド・ライダー1号。全ての始まりにして全ての終わり、オーディンがここに降臨する。

 

「その恵理は幻覚だ!」

 

 ナイトサバイブもまたダークブレードを抜く。

 

「おまえは分かっているはずだ。サバイブによって拡大された認識から本物の小川恵理である事をな。」

 

 錫杖型のゴルドバイザーが伸びる。それはあのファムのウィングスラッシャーと同等のそれであり、およそ牽制を考える限り最上の武具と言える。

 

「恵理が、最初のライダー、だからあれほどの大怪我を・・・」

 

 ナイトは抜いた剣の刃先をしかし、地に突いている。

 最初はオドオドするばかりの辛気臭い女だった。だが枯れる事を知らぬ金脈のように遭う度に喜怒哀楽を増していく恵理に、引きずり込まれるような中毒性の感覚を愉しんでいる自分がいた。02年1月19日、彼女というクスリを断たれても、脳内麻薬で代替し彼女への中毒を持続したレン。

 

「だがここで下りるには、もはや人を殺し過ぎた!」

 

 伸びてくるゴルドバイザーを下から袈裟斬りで弾く。そしてカードを引く、ダークブレードの柄が自動的に開く、装填、自動的にバイザーが閉じる、

 

『疾風閃』

 

 ソードベント、AP6、ダークブレードを強化しつつその身ごと跳躍気味に突撃する一塵の風。

 

「サバイブ無限とは、魂として吸収したクリーチャーを幾重にもサバイブしているという事。」

 

 剣を両手で握り込んで肩で刃を担いで突撃してくるナイトに、オーディンもまたカードを引いた。

 

『ゴルドシールド』

 

 ガードベント、GP4、貫通無効。ゴルドフェニックスの尾を模した巨大な鉤爪のようなラージシールド。

 AP6VSGP4

 寸でで召還された盾にその身ごと弾かれるナイト。

 

「カウントが速過ぎる。」

 

 オーディンもサバイブ体、カード召還中は時が止まる。ナイトもまたサバイブ体、その止まった時の中で活動する事ができる。だがその止まった時の中でも、オーディンの召還は速過ぎるオールカウント1、いや極限漸近線のように契約を重ねる度にゼロに近づいている。

 

「カードに全てのライダーが拘束されている限り、オーディンに敵うはずはない。」

 

 続け様錫杖の半ばをスライドしてカードを装填。

 

『ゴルドセイバー』

 

 ソードベント、AP4×2。ゴルドフェニックスの翼を模した扇状に広がった刃の二刀の得物。

 

「知るか!」

 

 負けじとカード引くナイト。

 

「もう一度言う。ライダーである限り、オーディンに屈せざるを得ない。」

 

 投擲される一刀のゴルドセイバー。

 弾かれるカード。弾かれカードもろとも『花鶏』看板に突き刺さるセイバー。

 

「矛盾という言葉を知っているか。」

 

 機転を利かせたナイト。その刺さったセイバーを引き抜いて、再度突撃をかける。オーディンもまたセイバーを構えた。

 

 AP4VSAP4、相殺、

 

「まだだ」

 

 ナイトの攻撃はここからが本領、ブレードの横薙ぎが既にオーディンに迫る。

 

「!」

 

 だがオーディンもまた対応している。既に錫杖を突き出しナイト鳩尾へ。

 

 相打ち、

 

 オーディンは右の二の腕から喪失。ナイトは割れて消失。割れて消失?

 

「トリック!?」

 

『無双斬』

 

 頭上を見上げるオーディン。いままで戦っていたのがトリックによる分身である事を悟って、頭上から大気の流れを感じた。

 

「トドメだっ!」

 

 既に大回転するダークウィングと共に降下してくるナイトがいた。

 

「関係ない。」

 

 だがオーディン、錫杖をアスファルトに刺して固定、刺した腕でカードを引いて装填。

 

『タイムベント』

 

 特殊カード、〈時〉を司るゴルドフェニックスの力が発揮される。

 異様な光景が起こる。降下したナイトが上昇し、オーディンの一連の操作が逆行する。鍔迫り合いから疾風閃の直前まで時が巻き戻っていき、オーディンの腕もまた再生している。それまでの行動がゼロになったオーディンとナイト。

 

「なにをやった、カードがない!」

 

 しかしその記憶はナイトの頭に刻み込まれ、そしてあったはずの疾風閃のカードがない。

 

「それがサバイブだけの世界だ。」

 

 サバイブとなった者はタイムベントの影響、巻き戻った時に関係しない。ただしカードは消費したままであり、記憶も残っている。

 

『ゴルドフェニックス』

 

 すかさずアドベントを使うオーディン。宙より出現する金の鳳。大空を自由に舞って、その羽根をナイトの頭上に降らせる。

 

「ぐぉ」

 

 爆破爆破爆破爆破、

 

 まとわりついた羽根の一つ一つが近接爆破、割れるトリックナイト、そして路地裏からもだえ苦しみ表通りに倒れ込む真のナイト。

 

「・・・・、だが神崎」ナイトはブレードを杖に立ち上がる。「これでおまえのカードは既に半分以上消費されている。」

 

 即ちナイトはトリック1枚でオーディンに4枚のカードを消費させた。

 

「関係ないと言った。」

 

 なお1枚のカードを引くオーディン。

 

『スチールベント』

 

 特殊カード、対手の得物を争奪する。

 

「なにっ」

 

 ナイトが杖にしていたブレードが突如消え失せ、瞬間移動してオーディンの手に。

 

「これぞトドメ、だ。」

 

 オーディンはそのブレードを足元に捨てた。

 

「ライア・・・」

 

 この状況はナイト最初の戦いで、散々な敗北を味わったあの状況そのもの。

 

『エターナル・カオス』

 

 ファイナルベント、AP10、ガード貫通。その破壊力は対手の盾を粉砕しなおかつライダーを打倒しうるに十分。

 飛来するゴルドフェニックス、腕組みし両肩を掴ませ、ゴルドフェニックスに身を任せて足が地を放れるオーディン。天高く上昇し、見下ろせば地球の丸みが識別できる。その高さ+ゴルドフェニックス渾身の加速で急降下。

 

「オレは、生き残る!」

 

 にらみ付けなお腕を組みながら急降下するオーディンを待ち構えるナイトには、左のアームプレートでブロックを固めるしかない。

 

「優衣、もうすぐだ。」

 

 地表スレスレでオーディンを離し反転急上昇するゴルドフェニックス。ナイトの盾とオーディンの頭が衝突、ナイトの盾が粉々に砕け、オーディンが纏う金色のエネルギーがナイトサバイブのカード焼き尽くす。なお勢い止まらぬオーディンはナイトをはじき飛ばし、アスフェルトに頭から刺さり、罅が割れたかと思ったら破片が一枚一枚噴煙と共にめくれ上がって、露出した地面が半球状に抉り込んでいった。

 

「恵理・・・・・・まだ・・・・だ、」

 

 だが塵糟のように吹き飛ばされたレン、既に除装してどこかにデッキが弾け飛んだ、レンは顔面血だらけにし、地面に這いつくばってそれでも生きていた。

 

「やはりしぶとい。バイザーのシールド能力などという理屈は、言い訳にもならん。」

 

 そのレンの姿を見つめるオーディン。カードの使用は既に6枚に達し、小川恵理の姿を晒す。

 

「アキヤマレン、だが多少しぶといだけだ。恋人に命を差し出す勇気を持ちたまえ。」

 

 レンは起き上がる。視線が合っていないが必死で頭を振って平衡感覚を取り戻そうとしている。

 

「・・・・命はとっくに差し出している。」その手に握られているのは黒いカードケース。ナイトのそれではない。「勝つ為に、力をくれ!城戸っ!」

 

 纏わり付くスーツは龍騎サバイブ。

 

「な」

 

 よもやのセカンドデッキに唖然とする小川恵理。

 

『バーニングセイバー』

 

 オーディンの姿を纏った時それは致命的なタイミングだった。既に火柱が倒れ込んでくる。

 

「恵理っっっっっ!」

 

「優衣・・・・・・」

 

 火柱に呑み込まれるオーディンの肉体。炎で全てが焼き尽くされる。たたきつけられた炎は四散し、立ち上る蒸気の中から珠が一つ、小川恵理の魂が今龍騎の姿を纏ったレンの手に。戦いは終わる。

 

「くそぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 レンの哀れな絶叫を聞く者はいない。見渡す限り街をコピーした、圧迫するような空虚な世界。あるいはヒトのいない理想の世界。

 もはやミラーワールドという世界には、レンただ一人。だが動くものならばレンだけではなかった。様々な色どりを見せる十数個の珠がレンの頭上でグルグと輪を描いている。描きつつも収束し、一つの珠となった時、光の柱が立ちそれがユラユラ揺らめいている。

 

「オレはこんなものの為に・・・・」

 

 光の柱に纏わりつくドラグレッダーとダークウィング、溶けるように2体のクリーチャーは光へ吸収され、光は一つの形へと変化していく。

 

 私をよくも目覚めさせたな、

 

 光、それはドラグレッダーにコウモリの翼が生えた、龍にして龍ならざるもの。

 

「願いをこんなものが叶えるのか・・・・」

 

 この応龍の姿は問題ではない、全てがそうであるように、この姿はおまえの要求した手順に過ぎない、眼に見えたものと本質が限りなく似ていて非なるものであるように、

 

 その応龍の鳴き声は奇妙にも軽やかな音階を奏で、動く姿は円を描き、時に曲がる時は直角と為す。

 

「こんなもの・・・・」

 

 レンの顔面に雨が降り注ぐ。雷の光もレンの顔に差し込み、その響きはレンの足元から全身を揺すぶる。

 

 穢れた私の体をおまえの13の魂が僅かながらも清めてくれた、

 

「ならば借りがあるという事だ。」

 

 借りを返そう、

 

「小川恵理・・・、いや小川恵理を含むこの世界から命を踏みにじられた者に、再び命と、そして未来を。」

 

 アキヤマレンは、そう言うと大地に倒れた。その肉体からは泡が立ち始めていた。

 

「オレは、もう疲れた。」

 

 

 

 マスクド・ライダー1号オーディンは、いくつかのプロトタイプを経て、実戦投入された最初のライダーである。

 契約カード

 ソードベント

 ガードベント

 ファイナルベント

 という初期の設定から、契約クリーチャー、ゴルドフェニックスの時を操作する力を持って数世代先の技術で改良を続け、

 スチールベント

 タイムベント

 という2枚が追加される。

 クリーチャーとの実戦のノウハウも無く、いきなりの実戦投入の対手がその時の最強クリーチャー4体という無謀な状況で、ゴルドフェニックスを含む2体を捕獲、1体を打倒する事に成功。ただし装着者第一号も半身を失う程のダメージを負ったという。

 以後のライダーデッキはこのデッキの能力を仮想敵として構築されていく事になる。

 だが最初のスタンダードにしてもっとも異端たるオーディン、ゴルドフェニックスの力によって改良を重ねる内に、クリーチャーの契約が累積するサバイブというシステムの開発に成功、バイザーの改良洗練、基本カードの充実、限り無いゼロカウントなど、第3世代どころか十数世代程の進化を遂げた。

 半ばチートな能力は隙が無い。弱点はと問われれば装着者に求めるしかないだろう。

 

 

 

 木野というモグリの医者が、一年間保存され、つい先日脳死した遺体の臓器を、これまた一年集中治療室で半身を失ったまま入院していた患者に移植成功させた奇跡的トピックはしかし、この医者と患者以外誰も喜ばせる事がなかった。

 遺体は既に死亡届けが遠縁の親類よって手続きされており、入棺を待つばかりであったし、半身のままリハビリをし、ようやく退院までのメドが立った矢先患者の手術であった為、病院側はリハビリの為さらに患者入院を続行させねばならなくなった。しかもこの患者からは入院費を見込めないのである。

 遺体側の遺族は、名誉毀損の訴訟する構えを見せたが、

 

「雅人がね、弟なんですが、やれと言ったんですよ。私に。」

 

 などとまるで社会性の欠如した相手に、出頭させる事すらおぼつかないような事態となった。

 

「これまでのリハビリが全部無駄になってしまいました。」

 

 患者、昏睡状態で伸びた髪を切り揃えショートボブとした小川恵理は、まだその髪型の違和感が気になって左腕で始終撫でている。

 

「では、清明院大学で何があったかは、一切覚えていないというのですか?」

 

「ええ、悪いんですが。」

 

「神崎士郎も、香川英行も、同室の研究生だったと聞いてましたが。」

 

「ごめんなさい。」

 

「では、このアキヤマレンという方の事は?」

 

 令子は一枚の写真、撮られている事を意識しているくせにレンズに視線を合わせない横顔を小川恵理に見せた。

 

「この人怖い顔・・・・」

 

 しばらく眉間に皺を寄せて眺めていた恵理がようやくその言葉を絞り出した。

 恋人だった事も、と聞くかどうか令子は迷った。以前の令子なら、直線に聞き出す事以外考えなかったが、今はなぜだろう、そういう自分ではもはやいけないのだと思うようになった。

 

「忘れるってとても大事な事なんだって最近思うようになったんです。」

 

 空いた頭の空虚を手探りするも、手応えが無い苦渋が小川恵理を苛んだ。しかしその桃井令子の言葉に、目を瞬かせて凝視した。令子は依然笑顔で答える。

 

「悪い想い出は、もちろん未来へ行こうとする自分の足を竦ませるわ。でも良い想い出もね、実はあまりに心地好くて未来へ行く気持ちを失わせるの。それは良い想い出に対しても悪いと思うの。だから忘れる。忘れてあげると言えばいいかしら。貴方はたぶん、忘れてあげたのよ。良い想い出に絡まれないように。だから、新しい記憶を埋めて、幸せになれば、良い想い出は喜んでくれるんじゃないかしら。」

 

 私何を言ってるのかしらね、と微笑む令子。それだけ言えるようになるまで、いくつの経験を重ねたのだろうか。

 

「強いんですね。先生と同じ事をおっしゃる。」

 

「先生?貴方の、」体で人体実験した、という言葉を呑み込む令子。「手術をなさった、そんな言葉をかけてくれるようには、とても見えない方のような・・・・」

 

「意外な方でしょ。こうもおっしゃられてました。この右手とか、ある女性から受け取った体。人体実験なんて言う人もいますけど、私がこれから生きていくという事は、その人が私の体を使って生きるという事でもあるんだって。」

 

「なんだかカワイイ人ですね。狙ってる?」

 

 令子は笑った。

 

「いえ、私はとてもああいう影のある人には、ついていけないなぁと思うんですよ。貴方こそどうです?」

 

 二人の女の雑談はその後1時間におよんだ。

 中断を余儀なくされたのは、令子の携帯への再三のコールだった。

 

「では失礼します。また遭いましょう。私いい喫茶店知ってるんですよ。」

 

 と言って退室した令子。一階の待合室にたどり着いたところで、携帯のストラップをグルグル回した。

 

「あ、ナナコ、いい加減さ、手綱加減厳しくした方がいいと思うよ。最近あの人増長してるって。ハイハイ、私は絶対相手になんかしませんって。水虫でリーゼントが臭い男はNGなんだから。あの人もさ、あんたにベタ惚れなのよ。見てれば分かるって。北岡の事は言わないで。もうアレにはコリゴリなんだから。だってよ。他に女10人もいるのよ、私がその事聞いたらあの男どう言ったか知ってるっ、ボク程の人間を一人の女が抱えるのはムリだから分担してもらうって言うのよ!」

 

「お嬢さん、病院には病院のルールというものがありますよ。」

 

 あまりにヒートアップした令子を見かねて、シャインレッドのジャケットを羽織った男が注意した。

 

「あ、どうも・・・」急いで携帯を畳む令子。

 

 そんな色着て平気でいる奴に言われたく無いわよ、

 

 と内心思い、謝罪の言葉は明確に言わなかった。

 

「雄一!」

 

 とジャケットの男はそんな令子に構わず、知人を見初めて肩を強く抱き合って外へ出てしまった。

 

「うわ・・・・・」

 

 令子が唖然としていると、待合室のテレビに見慣れたイヤな顔が映し出されてるのが目に入った。

 

『その無免許医を訴えても、一文の得にもならんですよ。』

 

『シロをクロにする貴方でもですか。』

 

『名誉毀損では住所不定の男には通用しない。出頭もしないでしょうし、賠償などする前に海外で生涯を過ごしますよ。ですが死体遺棄で刑事告訴したとしたら、身柄を厳重に拘束できるものの、原告側が望んでいる賠償金は得られない。刑罰が与えられるだけです。』

 

「なに言ってんのアイツ、ああいうキドったところが・・・・あ、あの隣のアナウンサー狙ってる絶対よ。もうアタシの方から願い下げ。」

 

『では、本題の幼女誘拐殺人の件についてお伺いいたします。貴方は東條悟というこの容疑者を・・・』

 

「あの・・・・・令子さん・・・・」

 

「うるさいわね、ようやく来たの!アンタね、アタシがどれだけ待ったか分かる!トイレに何分かかってるの!」

 

 と癇気が極まった絶妙なタイミングで令子に近づいてくる男がいた。パーカーと半ズボンで身を固め、背を執拗に丸め込んで口をあんぐり空けている。

 

「芝浦!今度私を待たせたら、その蟀谷にヒールが貫通するからねっ!」

 

 それはすっかり記者見習いが板につき、令子に教育され尽くした芝浦淳の姿であった。

 

「しません、もうしませんです。すいません!」

 

 なぜか令子の罵倒を受ける度に喜色を抑え切れぬ芝浦だった。

 

「口を動かす暇があったらさっさと行動する、車回す、この辺り全部、私らで記事にしなきゃいけないんですからねっ」

 

「はいぃ」

 

「待て、芝浦、」

 

「はい?」

 

「聞いてるわよ。お父さん、宅配便の運転手になったそうじゃない。再就職おめでとう。」

 

 ある秩序が生まれた時、それはある序列の成立をも意味する。芝浦は今度の秩序では芳しくないポジションに収まったようである。これをマシになったと思うか、ミジメになったと思うかは人それぞれである。

 

「え?そうなんですか?知らなかった・・・・」

 

 そんな芝浦淳に向かって悠然と向かってくる男がいる。芝浦は背を向け、男は俯いている。

 

「んだよ、てめえ!」

 

 ぶつかる両者。

 

「すまんな。」

 

 男、執拗な黒尽くめの男は、そんな怒声をあげた芝浦など意に介する様子も無く素通りしようとする。この程度で収められるようになるまで、いったいどれほどの時間が必要だったか。

 

「芝浦、なにヤってんの!警察に行くわよ!刑事とパイプをようやく作ったんだから。」

 

「ハイ令子様、キサマ!今日はこのくらいにして・・・・いねえ!」

 

 既に黒づくめの男は病院エレベーターのドアを閉めていた。

 

 

 

 病院の屋上は髪が横凪ぎになる程に強い。

 アキヤマレンは、ここから恵理がリハビリしている姿を眺めるのを割と気に入っている。

 

「見つけたぞ!」

 

 干からびた声で威嚇する仮面の男、マスクド・ライダー13号王蛇がいつの間にかレンの背後に立っていた。

 

「浅倉、しつこいなおまえも。」

 

 しかしレンはひさしぶりの刺激に喜んでいる。

 

「イラァ!」

 

 有無を言わせず斬り掛かる王蛇。

 

「言ったはずだ。鏡の番人には手を出さない方がいいと。」

 

 ベノサーベルを素手で受け止めるレン。

 

「ぉわ」

 

 サーベルを受け止められた瞬間、既に上下の感覚が失せた王蛇、気がついた時は屋上の反対サイドで無様に伏していた。いつもこうだ。

 

「威!大丈夫かい!」

 

 ウィングスラッシャーが伸びる、

 

 やはりそれを素手て掴むレン。

 

「いい加減殺されろおまえ!」

 

 再びレンの耳孔に向けて刃を繰り出す王蛇。それでも再三受け止めてしまうレン。

 

「殺すか生かすか、アタイらはこんな半端はもうコリゴリなんだよ!」

 

 マスクド・ライダー10号ファムはブランバイサーを抜いて両腕を塞いだレンの脇を狙う。だが抜いた瞬間上下の感覚が失せ、気がついた時に、仰向けに倒れレンに首を踏みつけられていた。

 

「すまんがおまえらをミラーワールドから出す事はできん。出せばそこからクリーチャーもこっちへ出てしまうのでな。オレではそれで精一杯だ。何度も同じ事を言ったはずだ。それがダチから願いを引き継いだオレの役割だと。」

 

 そして彼はポケットからカードデッキを取り出す。

 

「だがヤツは今それを忘れているだろうがな。変身っ!」

 

 

 

『タイムベント』

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