仮面ライダー龍騎SPRITS   作:bassher

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ここは02年度放映された特撮番組『仮面ライダー龍騎』の二次小説です。『仮面ライダー龍騎』、並びそのスタッフ、また講談社マガジンZ連載『仮面ライダーSPIRIT』著者には、一切関係ありません。
公開は07年11月からとなります。



シンジ 03-01-19

 

 

 

 

 

 

「オレ・・・・蓮、ごめんよぉ・・・・」

 

 泣きじゃくって万歳状態で跳躍する龍騎。宙で一回転、それは両足を揃えた蹴撃の構えとなる。オーディンはその上方65度からの攻撃を呆然と見上げている。

 

「勝った」

 

 オーディンの胸に龍騎の足裏が入るか入らないかという寸前、両手で龍騎の足首を握るオーディン、掴んだまま両腕を拡げると、龍騎の体は股間から亀裂が走り、頭まで綺麗に達する。びらんと波打ってピチャとオーディン左右の地面に着く龍騎の右半分と左半分。オーディンは両腕を拡げたまま、天空を仰ぎ見た。

 

「12の純粋なる魂が集まった。優衣、捧げよう。オレの全力を注いだ思いやりの世界を。」

 

 二枚に割かれたシンジ、魂への還元を待つオーディン。しかしその晒された神崎の眼がやや空ろになり、瞬いてシンジの姿を何度も何度も見やる。いや既に顔は男のそれからどこをどうとは分からない微妙な差であるが女のそれへと変貌していく。双子の妹、神崎優衣の人形のような顔がオーディンのスーツの上に乗っている。

 

「なに・・・・これ・・・・・」

 

 ライダースーツを纏った優衣はフラフラとシンジの左側に歩み寄る。

 

「シンジくん、シンジくんじゃない。何寝てるの?ねえ起きてよ、こんなフザケてないで、ボクを一人ぼっちにしないでよ、ねえ!」

 

 裂けたシンジの片側を揺すると、激しく動脈血が流れ出た。優衣は構う事無く死骸を揺すり続けた。

 

「ボクじゃない、お兄ちゃんよ、ボクがやったんじゃないっ、こんなのイヤぁ!」

 

 狂い泣きして顔を歪める優衣はしかし、カードを引きゴルドバイザーへ装填する。

 

『タイムベント』

 

 

 

 龍騎は素手で殴りかかった。

 

 顔面真っ二つ、

 

「優衣め、油断した。」

 

 無防備にその鉄拳を食らうオーディン。そのクリティカルヒットはオーディンのマスクを割って、装着者の素顔を晒す。

 

「なんだよこれ、オレ、たった今死んだんじゃないのか。これ、これって先輩が死んでも覚えてるって、アレか・・・・」

 

 拡大された知覚と認識に振り回される龍騎だった。

 

「だがしかし、オレは優衣の為に生まれたぁ!」

 

「やべ」

 

 ゴルドセイバーが横薙ぎでくる、死ぬまでの記憶はある龍騎、すかさず飛び退く、飛び退いた拍子に『花鶏』の門に背をぶつける、

 

「ぉぁて」

 

 ぶつけて看板が頭に降ってくる。

 

「キドシンジ、おまえはオレを怒らせた。」

 

『エターナル・カオス』

 

 隙を見たオーディン、ファイナルベントを敢行、腕を組んだままゴルドフェニックスに吊され、成層圏のギリギリまで飛翔、加速しつつ急降下。AP10、貫通の攻撃はなにものをも防ぐ事ができない。

 

「みんなを助ける為に、」

 

 龍騎、その全ライダー中最強の攻撃に一枚の盾を翳す。

 

「キサマ!」

 

 素顔を晒して風圧にゆがむ神崎の目に映ったそれは、バイザーと差し替えに奪われたゴルドシールド。GP4、貫通無効。

 

「勝つと誓ったんだぁ!」

 

 激突するAP10貫通VSGP4貫通無効、打ち消される最強ファイナルベント。

 

「キサマぁぁぁ」

 

 アスファルトに打ち付けられ蹲るオーディン。神崎の中性的な顔面が奇っ怪にゆがんでしまった。

 

「オレは!」

 

 攻撃を弾き返した龍騎、奪われ地面に転がっていた自らのバイザーを拾う。

 

「蓮に誓ったんだぁ!!」

 

 引いたカードはもう一枚のサバイブ。蓮の動脈血が今でもこびり付いたそれを、ドラグバイザーツヴァイに装填。

 

『アライブ』

 

 変化するスーツ。龍騎サバイブのデザインそのままに群青の色に塗り替えられ、その背には蝙蝠のような2枚の翼が拡がる。さらに後方ではドラグランザーが出現、ダークレイダーも出現して周回、互いに光となって溶け融和する。出現するのは薄い皮膜の翼を持った群青の応龍。

 

「愚かな、奴は黄龍と契約したのか!」

 

 オーディンの危機感は攻撃衝動となってゴルドセイバーの刃を龍騎へ向けさせる。

 

 斬り込むAP4、

 

 へし折る素手、

 

「バカな」

 

 今の龍騎はもはや素手でライダーを葬れる力を持つという事か。

 

「認めん!」

 

 しかしオーディン、なおもう一刀を振りかざし肩口へセイバーを薙ぐ。防ぎもしないでまともに食らう龍騎。しかしなんのダメージも見あたらない。打ち込まれたセイバーを素手で掴み上げる龍騎。

 

「いいかげん逃げるなよ。」

 

 握力だけでゴルドセイバーを破壊する龍騎。

 

「逃げる?」

 

「おまえは、結局ミラーワールドの力に逃げ込んでるだけなんだよ!」

 

「!」

 

 気がついた時には既に吹き飛ばされているオーディン。おそらく腹を打ったのに違いない。うずくまった後で激痛が走る。股間に生温かい血の感触がした。

 龍騎、対手を突き飛ばしたところで両手を天上へ掲げる。浮かび上がるように現出のは、ドラグブァイザーツヴァイとダークブレード。胸元に下ろして交差させる。

 

「ファイナルベント。」

 

 もはやそれは音声入力。神崎士郎が敷いたライダーのカテゴライズをもはや逸脱した龍騎。

 

『ダブルライダーキック』

 

 2体の像に分離する龍騎。一体の像は龍騎サバイブ、もう一体はダークブレード振りかざすナイトサバイブ、

 クリーチャーもまた2体に分離、ダークランザーとダークレイダーへ、

 オーディンに向かって疾駆するナイトサバイブ、上方へ跳躍する龍騎サバイブ、

 ナイトサバイブの背に合体するダークレイダー、宙にある龍騎サバイブの後背に回り込むドラグランザー、

 

「逃げねば、」

 

 もはやほとんどのカードを消費して無力と化したオーディン、

 

 ダメよ、

 

「体が動かん、優衣なのか、おまえがまさかオレを殺すのか、」

 

 ボク達はいけなければいない方がいい存在だったのよ、

 

「優衣?!」

 

 跳躍しダークレイダーの翼にくるまれ傘状になり斜角30度で突撃するナイト、そのナイトの背後からドラグブレスに推されながら蹴撃をかける龍騎、それはナイトを杭、龍騎を槌とした二人の一年の全てだった。

 杭を腕を組んだまま受け止めるオーディン神崎士郎。表情は既に感情が無く、肩から下が四散しても、表情は変わらなかった。

 

「神崎、おまえの野望もここまでだ。なにがしかたったのよく分かんないけど。おまえは優衣ちゃんの命を助けたかったんだろうけど、オレはそれだけじゃイヤだ。優衣ちゃんも他の人もみんな、みんなみんな救わないとイヤだぁ!」

 

 肩から上しか無い神崎士郎は、なぜか自嘲の笑みを浮かべていた。

 

「おまえは罪深い事をした。」

 

 もはや首が動かせない為に目線だけで龍騎を眺めている。

 

「優衣がオレを造ったのはその力の為に親から虐待を受けたからだった。いや、虐待を受けた為に能力を得たのだったろうか。もはやそんな事はどうでもいい。オレが死ぬのだ。鏡の番人がな。」

 

「待て、どういう意味だ。訳分かんねえ。」

 

 龍騎はなぜかより一層の危機感を募らせた。

 

「鏡の番人とは、このミラーワールドの秩序であるコア・ミラーが破壊された時出現する第二の秩序、即ち支配者だ。それは本来コア・ミラーを守護する獣の中より出現する応龍。だがオレは四聖の獣をいくつかライダーシステムに取り込む事で妨害し、オレ自身が鏡の番人になる事に成功した。おまえにコア・ミラーを破壊させたのはその為だ。だがおまえは鏡の番人であるオレを殺し、そして代替となる応龍は、契約クリーチャーとなっておまえに加担し穢れた。もはや神通力を失い、ミラーワールドを制御する力も、コア・ミラーを復元する力も、そしておまえの願いを叶える力すらない。制御を失ったミラーワールドは、飽和した魂をクリーチャーとして現実に解き放ち、クリーチャーは生きとし生けるモノを襲い、魂とし、そしてまたミラーワールドはその魂を糧にクリーチャーを増産する。地上の全ての命は尽き、ミラーワールドのクリーチャーが世界を蹂躙する。だが次に起るのはクリーチャー同士の共食いであり、その度に魂はミラーワールドで新たなクリーチャーへと無限に再生され、ここに魂のループが完成する。いや、考えてみれば、地表面の生態系とはクリーチャーと同じ殺戮機械のループだったのかもしれない。」

 

 神崎の自嘲に、戦慄した龍騎は絶叫した。

 

「なんだよてめえ、いい加減言ってんじゃねえ!」

 

「妹の愛を受けた男よ。墓穴を掘ったその顔を見られただけで、オレの気は晴れた。自らの愚かさを悔いるがいい。」

 

 塵となる神崎士郎の言葉は、妹を持つ兄の、ごく当たり前な本音だった。

 

「なんだよそれ!はっきり教えろよ!なんだその態度はっ、舐めんじゃねえぞこらぁ!!オレは、バカにされるのが一番キライなんだぁぁ!!」

 

 シンジの頭上には一匹の獰猛な龍が、本能の赴くまま不死鳥を食らっていた。

 

 

 

 キドシンジが気づいた時、既にそこは外の世界だった。おそらくミラーワールドが蓄積した魂をクリーチャーへ還元して放出したその暴発に塗れたのだろう。

 ヤゴを象ったクリーチャーが万単位で眼前に溢れ、ヤゴはいつのまにか繭となり、ある瞬間羽根を生やすトンボをイメージしたクリーチャーと化して飛翔し、空を埋めつくす。

 

「なんなんだよこれ!!訳分かんねえよぁ!」

 

 青年は世界の終わりに絶叫した。

 倒壊したビル、火を吹き上げて路上に交錯する乗用車とトラック、小煩い自衛隊ヘリの騒音、割れて陥没したアスファルト、切れた電線、路面から突き出て勢いの止まらないガス管、

 その中心で両ひざを着いて仰向けの女性を抱える青年、キドシンジ。

 

「ごめんなさいごめんなさい、オレ、なんもできなかった、何を願ってもぁ!」

 

 泣き縋るシンジ。抱えられた女性、桃井令子は、辛うじて片掌をシンジの頭に乗せるだけの力は残っていた。

 

「キドくん、貴方は、がんばったのよね、そうよね、」

 

 こういう子で満足してあげられる女になれば良かったのかしら、

 

 令子の頭は濃い血に塗れていた。シンジを撫でていた掌がスルリと滑って地面に垂れる。その意味を悟ったシンジは、震えながら強く遺体を抱き締めた。

 

「なんでだよぁ!オレ、どうしてこうなんだよ、結局誰も守れないじゃないかぁぁ!」

 

 錯乱するシンジに忍び寄る影が一つ。それは異形。黄金を基調とした羽根を思わせる金属をいくつも体に纏わり重ねた仮面の者が、腕組みしてシンジを見守っている。

 

「どうして、倒したはずだろバカヤロぁ!」

 

 振り返って叫ぶシンジの声は上擦った。

 

「・・・・・・」

 

 あくまで言葉の無いオーディンはただ両手を広げた。突如現れる錫杖。仮面の者の身長ほどもある杖がその者の右側に出現し地面に突き立っている。上部は不死鳥を思わせる装飾が施されており、その平面的に扇型のラインは、半ばのグリップまで続いている。

 仮面の者が徐にグリップを引くと、扇が上下で分断してスライドし、長方形のスペースが顕になる。

 続いてオーディンはベルトのバックルよりカードを一枚取り出す。

 

「もうおまえの思い通りさせねえ!」

 

 拳、

 

 振り向き様その姿を龍騎へと変えたキドシンジの拳が、オーディンの仮面を割る。

 

「ほぉ、記憶が消えなかったか。残念です。」

 

 だがその顔は神崎士郎では無い。神崎のように中性的であるが肉感はギリシャの彫刻のごとく確と在り、だがしかしギリシャ彫刻がそうであるように生物感も人間味もない。肩まで伸びる亜麻色の髪、威厳に満ちた目元と口元、なによりこの上なく純白な肌が人間を超えた叡智を感じさせる。

 

「おまえは、神・・・・・?!」

 

 オーヴァーロード、と言われる少年の顔である事を、なぜかキドシンジは知っていた。

 

「願い、目的、目指す事、その一つ一つがアギトへと繋がり、私の掌からはみ出そうとする。しかしヒトは願う事で必ずこのような悲劇となるのです。もうおやめなさい。私に逆らうのは。津上翔一を名乗るヒトよ。」

 

 そしてキドシンジもまた、龍騎ではなく津上翔一、本名沢木哲也の姿へと戻っていた。

 

「おまえが、おまえがこんな幻想を見せたのか!」

 

「それは違います。貴方が見たものは貴方の心の中です。なにかを願う貴方の。様々な思考が人格の身を纏って争い、その結末はごらんの通り見渡す限りの廃墟。どうです、貴方がアギトという志向を持つ限りこのような悲劇が繰り返されるのです。ヒトの運命は私の手の中にあるべきなのです。」

 

「ヒトの運命がおまえの手の中にあるのなら、オレが、オレが奪い返すっ!!」

 

 ‘アギト’なる龍騎に酷似した姿へと変貌する津上翔一。その拳を繰り出すも、見えない壁によって青年に届かない。

 

「では、また、繰り返してもらいましょう。」

 

 青年は取り出したカードを錫杖の長方形のスペースにはめ込む。はめ込んで杖のグリップを逆にスライドさせた。

 

『タイム・ベント』

 

 そして時がまた戻る。

 

 

 

「津上!」ギルスが叫ぶ。

 

「津上さん!」G3ーXもまた叫ぶ。

 

 雑木林、2人の仮面の男が見上げる先、一つの珠の渦が浮かび上がり、めまぐるしく光のムラを変化させていた。珠ではいったい何が起こっているか、2人には皆目分からず、ただ見守る事しかできない。珠の中心にいるであろう神を名乗る青年と、珠の中に蹴撃で飛び込んだアギト=津上翔一の絶叫が共に聞こえてくる事がいよいよ不安をかき立てた。

 だがボクらは知っている。この直後の物語と津上翔一の未来を。

 

 

 

(終わり)

 

 

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