仮面ライダー龍騎SPRITS   作:bassher

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仮面ライダーナイト/剣と盾 02-01-19

 

 

 

 

 

「どうしておまえがこんな風になるっ!」

 

 黒いコートを纏った秋山蓮は激怒した。だがそれは医者に対しての八つ当たりに過ぎない。

 医者は首を横に振って退室した。残ったのはレンと、ベッドで横たわる彼女、そして白衣を羽織った男が二人。

 その女性はほぼ半身が無い。右腕は右の乳房から削り取ったように欠けており、左足は生殖器から食い千切られたようだ。女性、小川恵理はショック状態で奇怪な笑顔で硬直している。

 レンの恋人、その日起った出来事が小川恵理の全てを破壊した。

 

「あれは、事故です。事故なのですよ。」

 

 右拳が出る、

 

 その流暢な日本語を語る白衣の男にレンは拳を見舞った。見舞った後で、

 

「ふざけるな! あれが事故か!」

 

 レンは信じられない光景を目撃した。恵理の通う清明院大学まで迎えに行き、恵理に食らいつく、あの鏡から飛び出した化け物コウモリの姿を。

 

「我々401号室の研究員を代表して、私香川英行がお詫びする。しかし、ミラーモンスター、我々はクリーチャーと名付けましたが、不意にあの世界を開いてしまったのは、紛れもなく事故でした。」

 

「恵理をどうしてくれる!」

 

 口を切った香川は金属フレームのメガネをキラつかせてレンを睨んだ。同伴した若い、背の低い研究員がレンに掴み掛ろうとするも、香川自身が腕で止めた。

 

「事故でした。それが全てです。もちろん、ここの入院代は大学の方で全額負担するように致します。ですが、あのクリーチャーに関しては、おそろしくデリケートな問題です。貴方の振る舞い一つで、社会がパニックに陥る事も考えられます。ここは我々に任せてもらいたい。貴方は、ただ、彼女を看病して、一日も早く社会復帰させてあげる手助けをすればいいのです。」

 

 全てを流暢に言われて、レンは震える拳を収める事しかできなかった。考えれば考える程に香川は先に答えを出してしまっている。レンはこの香川の無神経な銀のメガネがキライになった。

 

 

 

「捨てないで、お願いよ、」

 

 この男に泣き縋る姿がレンにとっての母の姿であった。

 母がレンを産んだのは15の時、姉は13の時産んでいる。母は中学に入った時とある会社の社長子息に愛人として囲われ、以後数年金を供給され姉とレンを育てた。しかしその子息が正式な婚約をする為に、愛人である母の存在が邪魔になる。レンが5つの時だった。母は酒浸りになり、時に暴力を奮って人生の落胆を慰めた。姉はレンを庇って自分一人で痣を作っていた。

 母が自殺したのは24の時である。

 

「迎えに来るからね。レン。」

 

 二人で施設に保護されたが、14になった時早くも姉と別れる事になる。姉が自立して働く年齢に達した為だ。携帯の生産工場で働く事になった姉は、迎えに来るという言葉を残して以後レンとの連絡を途絶える。

 そんな姉と再会したのは22の夏だった。

 

「捨てないで、お願いよ、」

 

 レンが6年後見た姉は母と同じだった。

 酒浸りになり、男に縋る事でしか生きる方法を持たない女になり下がっていた。自分を庇ってくれた気丈な姉は、レンがいるからこそ気丈であった事をレンは悟った。奇しくも姉はやはり男に捨てられ、自殺した。

 

「なんだ、ゲームすんだよね?ボクは元々腕っぷしで勝負する気なんかないよ。ボクはこれ、」茶髪の青年は札束をチラつかせる。「これで仲間を作って君と戦う。」

 

 モデルやホストなどにスカウトされた事もあるレンだったが、すぐに拳でカタをつけようというディスコミュニケーションで、結局ケンカ屋の真似事で食っていく事になる。

 芝浦淳というターバンとTシャツの重ね着をしてGBアドバンスを片手にした男と10万の勝負をする事になったレン。芝浦は大会社の社長の息子という財力を駆使して10人の若者を引き連れてきた。

 

「殴ったね、君がこの後どうなるか、ボクは知らないよっ」

 

 10人の男をなんとか蹴散らし、芝浦がそう言って逃げ出した時には、レンの意識は朦朧としてそれどころではなかった。体中痣だらけのレンは、裏路地に座り込み、今日の宿を路上に決め静寂の中眠りにつこうとした。

 

「こいつです!須藤さん。」

 

「おぼっちゃん、私は管轄が違うんですがねえ。」

 

 だがその静寂を破るように再び芝浦が刑事を伴ってやってきた。

 

 左ストレート、

 

「ふん、ガキが。」

 

 受け止める刑事。

 

「須藤さん、こいつ捕まえてくれよ!傷害罪だ!」芝浦は頬にアザを作っていた。

 

 レンはまたか、と思った。また逮捕歴が一つ増えるだけである。拘置所の中でも、この瞬間もおそらく人を殴っている事に変わりない。

 

「違います!私に最初に、あの、言い寄ってきたのはそちらの人です!あの人は、私を助けてくれたんです、ほんとです!」

 

 と怯えた視線の女性が芝浦を指差す。それが芝浦と勝負する事になった原因なのは事実だった。小川恵理をなぜ助けたのか、レンも分からない。もしかして姉の泣き顔に似ていたかもしれない。

 

「またですか・・・・芝浦さん、困ります。」

 

「須藤さん、オヤジにあんだけ世話になってんだから、」

 

「私はこれから大捕物をしなければならないんですから。今回は勘弁してください。」

 

 腕を振りながら須藤なる刑事が行ってしまった。芝浦もなにか悪態をつきながら追随して逃げおおせる。

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「オドオドするな。もっと堂々としていろ。」

 

「ごめんなさい、」

 

「そんな事でイチイチ謝るな・・・・」

 

 レンはそのまま体中の痛みから失神した。

 荒んで他人を殴る事でしか何も見出せない、そんな人生を歩んでいたレンにこの女、小川恵理は優しく微笑みかけてくれた。

 

 

 

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