仮面ライダー龍騎SPRITS   作:bassher

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ここは02年度放映された特撮番組『仮面ライダー龍騎』の二次小説です。『仮面ライダー龍騎』、並びそのスタッフ、また講談社マガジンZ連載『仮面ライダーSPIRIT』著者には、一切関係ありません。
公開は07年11月からとなります。



仮面ライダーナイト/剣と盾 02-07-06

 

 

 

 02年2月28日

 

 

 

「恵理、オレが一生おまえの面倒を見る。」

 

 消灯した室内、暗い部屋の中、

 恵理が集中治療室から解放されたのは1ヶ月を過ぎた後。

 

「死なせてやった方がいいな。」

 

 背後、ドアの先の廊下から二人を眺めている男がいた。壁に背もたれし、背広のズボンに両手を突っ込んでいる。

 

「なにか言ったか、」

 

 ツカツカと廊下を出て男のネクタイを掴むレン。この威圧的な態度にしかし男は繭一つ動かさない。

 

「彼女もそう望んでいる。もう死ぬしかない人間にとって、周囲の人間が生かそうと望む事が一番苦しいんだ。」

 

 右拳が出る、

 

 だがそれでも狼狽えず、反撃もしない男。狼狽えたのは病院の看護婦、後に看護士と呼ばれる事になる女性の方だった。

 

「北岡さんは病人なんです」

 

 と突き放される。病人と聞いて、一気に感情が冷めるレンだった。相手は弱い者だ。

 

「おまえもその内辛くなる。見放す時が来る。見放さなければ、彼女の方が辛くなる。彼女を楽にしてやれ。死なせてやれ。」

 

 看護婦達に強引に引き離されつつ、北岡という男はレンにその言葉を吐き捨てた。最後のセリフだけは目が血走っていた。

 

「オレは・・・・」レンは一人、恵理のベッドを見やった。「オレは、恵理を見捨てたりはしない・・・・・」

 

 

 

 

 

 

02年76日

 

 

 

「実はオレは、恵理に飼われているのかもしれん。」

 

 なぜかここ半年そう思えるようになったレンだった。昼は病院に通い、夜はホストクラブで金を稼ぎ、恵理が帰る家の頭金を作るところまで貯金した。ただ身一つでその日その日の雨風を凌げればいい生活をしていた頃とはまるで変わった半年だった。なにか拘束されたような圧迫感に苛まれつつも、悪くはない、しかし辛い毎日だった。

 今日も4時間の睡眠の後、病院へ直行し、エレベーターを5階まで上げる。いつもの行動だ。今日は赤いジャケットが印象的な男が同乗した。最近よく見かける男。案外同じ境遇かもしれないし、同じ性格かもしれない。愛想がレンと同じく無いのは確かだ。

 

「背後に気を付けろ」

 

 今日はその赤い男が唐突にレンに語りかけてきた。奇怪な事を言う。

 

 なに?

 

 同時に殺気のようなものを背後から感じ振り返るレン。

 エレベーターには、体の不自由な者の為におおよそ等身大の鏡が備え付けられている。レンの背後にはその鏡しか無い。だが映っているのは自分の姿ではない。自分の姿に重なるように、馬のような顔をした人型の化け物がそこに。レンは慌てて鏡の反対、ドア側を見た。

 

「違う、そこにはいない」

 

 赤いジャケットの男は叫んだ、叫んで胸ポケットから軽やかに一枚のカードを取り出した。そのカードには「SEAL」と書かれている。クリーチャーはそのカードの効果で怯んでいる。

 

 呻きを上げるクリーチャー、

 

「これは、まさかクリーチャー、」レンが叫んだ。あの時の香川のセリフは一言一句刻みこんで覚えていたレンだった。

 

「そうか、知っていたか。という事は、あの女が襲われたところを見たと言うことか。だがこれ以上関るな。いいな。」

 

 そう言い放って、赤いジャケットの男は同じ胸元から、同じく軽やかに赤いケースを取り出す。それは半月状の、どこかエイを思わせるシンボルが刻まれている。

 

「変身!」

 

 赤いジャケットを着た男がケースを鏡に映す、鏡から出現し、ベルトが男の腰に定着する。そのベルトにケースをセット、たちまち男全身に鏡から光が放たれる。

 

「なにものだ、」

 

 レンが眩しい輝きの中に見たそれは、銀の仮面を纏った異形だった。全身を黒いスーツが包み、足先、手先、肩、胸、そして仮面がワインレッドのプロテクターで保護されている。とりわけ両肩のアーマーが左右共に胸プロテクター程の表面積があり、両端がせり上がっている事で逞しさが印象づけられる。仮面に刻まれた横スリットが、まるで8つある細い目のようで、なぜか妖しさを際立たせる。もっとも怪しいのは、その西洋甲冑的なデザインの中で、同材質感ながら、異質な形状をした左腕の盾らしきモノ、生きたエイを思わせる。

 マスクド・ライダー3号、ライア。

 

「忘れた方かいい。」

 

「待て、」

 

 驚くべき事に、鏡の中に入っていく仮面の男。壁を透過して消えるのではない。鏡の中に入って、その中の世界であの馬と戦っている。

 

「なんなんだ、あれは、」

 

 レンも咄嗟に追いかけようとした。しかし既に鏡の世界は閉じてしまっていた。レンの掌は鏡の冷たく硬い感触が伝わるだけだった。

 

「戦いたいか」

 

 その戦いを遮るように立ちつくす影。トレンチコートを纏ってレンを精気の無い眼で眺めている。レンよりもはるかに整った顔立ちに中性的な、あるいは人形的な印象を与える容姿の男。年の頃は20歳を超えているかいないか。

 

「誰だ。」

 

「このミラーワールドを作った者だ」

 

「神だとでも言うのか。」

 

「よく分からん」

 

「教えろ、なぜ恵理を襲った。」

 

「クリーチャーの生態だ。命無き生態は命を持つモノを食らい命を吸い続ける。だがその命はまた別のクリーチャーが食らい、そうして集まった命は、新たな奇蹟となる。」

 

「あのモンスターを造るとでも言うのか」

 

「消えかけた命に明日を与える事もできる」

 

 レンの心が今揺れた。

 

「選択するがいい」

 

「ウソを言え、できるものか、恵理を」

 

「オレを信じれば、あるいは、おまえの大切なものを取り戻す事ができるかもしれん。だがこのまま背を向けてもかまわない。この世界と可能性を忘れ、あの不随の女との平穏な日を過ごすがいい。」

 

「癒せるのか、奇蹟で恵理を癒せるのか」

 

「選択すれば、どんな望みでも叶う方法を教えよう」

 

「答えろ!はっきりと、キサマの口から、恵理が元通りになるか聞きたい!」

 

「望みを言え。ライダーとなって、最後まで生き残れ。そうすればおまえの望みは叶う。」

 

「恵理に、恵理に、明日を・・・・」

 

 

 

 エレベーターの扉を開けた通路上が戦場。

 

「敵は、2体、ゼブラスカルだったか。」

 

 マスクド・ライダー3号ライアが対峙するのは2体の同種のクリーチャー。基本的に人型であるが、その顔はロングノーズの馬であり、模様は白と黒の縞。縞馬がモチーフである事は間違い無い。ゼブラスカル。2体の違いは頭部の鬣が青銅であるか鉄であるかのみ。

 

『スイングベント』

 

 ライアは、左腕に装着しているエイを象った盾を構え、その盾の一部が尻尾の部分からスライドして四角いスペースが顕れる。続いてベルトのバックルから、先のSEALのそれと同じ形状のカードを取り出し、エイの盾の頭側からスペースへはめ込む。そのまま盾の尻尾側を上方に向け、握り閉じる。これがライアのバイザー、《エビルバイザー》。不思議な事にそれと共にミラーワールド全体より声が木霊し、中空より鋼鉄を蛇腹状に連結したムチが出現、ライアの手に華麗に収まる。

 エビルウィップ、パーマネント、AP2。格闘武具に類するパーマネントとしては最大の射程を誇る。

 

 ヴルルルゥゥゥゥ

 

 2体のゼブラスカルが同時に襲いかかる。

 

「正しい。正しいが故に読める。」

 

 鉄頭の、ゼブラスカルアイアンが両腕に装着された剣を横薙ぎに、青銅頭の、ゼブラスカルブロンズもまた突きの構えで向かってくる。ライアはアイアンの間合いに入る直前、エビルウィップを首に巻き付け宙へ放り上げ、ブロンズの突きをそのエイの盾で弾いてしまう。

 

 ヴルルォォォォォ

 

 と呻くのは地に倒れたアイアン。エビルウィップはなおゼブラスカルの首に巻き付き、電流を放って麻痺させる効果がある。

 

「後は、」

 

 ウィップを翻し、体制を立て直しつつあったブロンズへ放つ。ゼブラスカルブロンズは突撃を牽制され微動だにできなくなる。

 そうした上で、再び盾の尻尾を引くライア、カードを一枚取り出す。しかし装填は一旦中断する事になる。

 

「なに、」

 

 光、光り放つエレベーターの鏡。鏡の中から光輝く者が。光源はむしろその者が持つカード、放たれる光に起き上がろうとしたゼブラスカルアイアンが魅了されていた。

 

「新たなライダーか」

 

 ライアが言う通り、それはライアと酷似したデサインのスーツ、ライアよりもさらに西洋甲冑の趣向が強い銀のプレートアーマーと縦のスリットが入った仮面。その姿が徐々にゼブラスカルと同じ白黒の縞へと染まっていく。ライアとの最大の違いは、腕に盾が無く、腰元にナックルガードが大きなサーベルがある事。

 誕生するマスクド・ライダー6号ナイト。秋山蓮が変身した姿だった。

 

「こうか」

 

 ナイト、レンは手探りするように、サーベルの柄頭を引く、ナックルガードが縦割れし、ベントインスペースが出現、ライアと同じくベルトのバックルから一枚カードを取り出し挿入、柄頭を押すとナックルガードが元に戻る。

 

『ソードベント』

 

 召還され、宙を舞って落ちてくるところ握り止めるナイト。それは西洋において馬上の騎士がジョルトに用いたランス、細い三角錐の3メートル近い得物。その握り手は、ナイトの拳を完全に覆い隠す。

 スカルランサー、パーマネント、AP2。ロングリーチで精密な突きと質量にまかせた薙ぎを繰り出すナイトデッキの中核を為すカード。

 

「これがオレの武器か・・・・」

 

 まじまじとランサーを眺めるナイト。

 

『ファイナルベント』

 

 それはライア、姿を顕す彼のクリーチャー、盾と全く同じデザインのワインレッドの軟骨魚綱板鰓亜綱に属する魚類、上下に偏平で本体に対して倍の長さを持つ細長い尾を持つエイ、エビルダイバー。海でなく宙を飛翔、ライアはダイバーの背に立ち乗りし、地面スレスレで衝撃波を後ろへ走らせる。

 ハイドベノン、AP5。ダイバーの背に乗って突撃するファイナルベント。突撃系ファイナルベントの中で、特に精密さに秀でる。

 向かうはゼブラスカルブロンズ、

 

 炸裂、

 

 衝撃波をまともに食らい、肉体が割れて爆炎と化しながら吹き飛ぶゼブラスカルブロンズ。その先にナイトがいる。

 

「はぁ」

 

 薙ぎ割る、

 

 真っ二つにする炎、ナイトの両サイドで硝煙が吹き荒れる。

 

「これが、クリーチャーを倒すという事か」

 

 ナイトはその手にはじめて紛い物にしても命を奪った。

 

「違うな」

 

『コピーベント』

 

 ただの光がライアの手に握られる。握られた光は、ナイトのスカルランサーを照らし、いつのまにか全く同じ形状と化す。

 特殊カード、文字どおりライアの指定した対象のカード能力をコピーする。この場合のコピー対象はナイトのソードベント。即ち、パーマネント、AP2のランスとなった。

 

 交差するランサーとランサー、相殺して消失、

 

 AP値で表されるカード能力は、同AP以上の攻撃を受ける事で破壊される。この場合、全く同じAPの為互いに消失する事になる。

 即ち、これがコピーベントの恐ろしさ。相手のカードを使うどころか、同じカードを相殺する事ができる。これが敵デッキのキーとなるカードであれば、戦局を左右できるカードとなりうる。

 

「なにを」

 

「オレが倒した。あの魂は、オレが貰う。」

 

 ナイトの背後、浮かぶ光の珠、それはゼブラスカルブロンズの魂。跳躍して取ろうとするゼブラスカルアイアンを押し退け、エアロダイバーが掠め取っていく。

 

「これがライダー同士の戦いという事か。」

 

「それも違う」

 

 バイザーで殴るライア、

 

 うぐ、

 

 腹部を打たれ、怯むナイト。だがナイトは体制を即座に立て直す。

 

「ライダー同士の戦いはたかがクリーチャーの魂を奪い合うような生温いレベルではない。殺し合いだ。」

 

 ウィップを再び振るうライア、ナイトの足元を狙ってムチ打つ、

 

「殺し合いだと」

 

 ナイトはただその攻撃を躱す事でせいいっぱい、

 

「ライダーは自分のたった一つの願いを叶える為に、このバトルを勝ち残り、12人のライダー全てを殺し、ミラーワールドで唯一生き残る。それが神崎士郎の敷いたミラーワールドのルールだ。」

 

「そういう事か、生き残るとは、そういう事か、ならば」ナイトは腰のサーベル、スカルバイザーを抜いてウィップを弾く。「オレが唯一のライダーとなる!」

 

「さしずめあの女が目的だなおまえは、」

 

「おまえの知った事か!」

 

「オレはずっとおまえたちを囮にクリーチャーを誘き出して来た。おまえは実に分かりやすい。」

 

 弾いたバイザーを逆手に握り換え、カードを挿入する。

 

『ファイナルベント』

 

 ナイトの背後からゼブラスカルアイアンが出現、出現して人型の形態から前後に蹄を伴った脚を持つ馬型のそれへと変化し疾走、疾走してくるゼブラスカルの背に飛び乗って剣を突き立てそのままライアに向けて突進するナイト。

 騎走撃、AP5、ナイト最大の技、騎馬突。

 

「遅い、」

 

 ライアもまたバイザーにカードを装填する。

 

『プロテクションベント』

 

 バイザーを翳すライア、その盾であるバイザーに光の膜がコーティングされる。

 ハイドプロテクション。インスタント。ライアのパーマネント並びバイザーにGP+1を付加する。

 その召還はナイトがファイナルベントを召還した後ながら、突撃前に効果が発揮している。

 

「恵理を元に戻す!」

 

「愚かな。」

 

 激突するナイトの剣とライアのバイザー、ナイトの剣とゼブラスカルの衝突力の合力がライアに注がれる。

 

「ぐぁ」

 

 ライアのコーティングされた光が割れるように消える。同時に消えるゼブラスカル。投げ出されるナイト。

 GPを持つベントは、その数値を越えるAPの攻撃を加えられる事で破壊される。しかしその代わりそのダメージは全て吸収し、本体、ライダーへのダメージを完全に無効にする。カードの召還カウントはAPやGPの数値に比例して長くなる故、ファイナルベント級の攻撃を防ぐ臨機対策として恰好のカード。ちなみに、今回はインスタントであり、GPを下回るAPの攻撃であっても、消失する事になっている。

 

「小川恵理を大切に思うおまえの心理はわからんでもない。」

 

「恵理は捨てられるか、」

 

 起き上がるナイト。再びカードを装填する為にバイザーを手にとる。

 

「しかしそれは脳が作り上げた物語だ。」

 

 ウィップが跳ぶ。ナイトのバイザーを絡め取る。バイザーが瞬時に抜き取られ、ライアの手元に。

 

「キサマ、」

 

 バイザーを奪われもはやどうする事もできなくなるナイト。

 ライアのエビルウィップ最大の強みは非装着型のバイザー、並び手持ち装備のパーマネントを奪い取れる事である。バイザーを奪い取られたライダーはもはや戦闘不可能に陥る。

 

「一人の女に執着する必要はない。失えば失ったでまた脳が物語を書き換える。それで済む。」

 

 そしてライアは悠々とバイザーにカードを込める。

 

『ファイナルベント』

 

 再びハイドベノンを発動するライア、急降下してくるエアロダイバーに飛び乗って、ナイトに突撃。

 ライダーのデッキには同じカードが2枚入っている事があるが、ファイナルベントを2枚所持しているのは、後にも先にもライアのみである。

 

 掠める、

 

 掠めるだけで吹き飛ばされるナイト。

 

「今のは態と外した」

 

「おまえは、では、おまえは、」

 

 地に伏して起き上がれないナイト。

 

「オレは、このライダーバトルという虚しい戦いを止める為にライダーになった。この愚かな戦いは在ってはならない。」

 

 そのナイトの腕を踏みつけるライア、

 

 ぐぁ、

 

 骨の音がした。左の二の腕が折れた。

 

「それでも、オレは、恵理を・・・」

 

「忘れろ。ライダーから手を引け。いいな。」

 

 動かなくなったナイトに背を向けたライアだった。

 マスク・ド・ライダーナイトの戦いが今始まった。

 

 

 

「もし」

 

 レンはミラーワールドを出てエレベーターの中でうずくまった。変身を解いた途端左腕に激痛が走り、皮肉にも激痛がいつまでも持続するおかげで失神する事だけは免れていた。

 

「もし、貴方、今鏡の中から出てきましたよね。もし。」

 

 耳だけ立ててその女声を聞いていた。エレベーターのドアが自分の腰に当たっては開き、また閉じようとしては腰に当たるをくり返す。

 

「見間違いだ。ここで寝かせてくれればそれでいい。放っておいてくれ。」

 

 それだけ絞り出した。

 

「もし、貴方が鏡に入れるようになったのは、もしかして私の兄に会ったからじゃないですか。もし!」

 

 それが、神崎優衣との出会いだった。

 

 

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