仮面ライダー龍騎SPRITS   作:bassher

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ここは02年度放映された特撮番組『仮面ライダー龍騎』の二次小説です。『仮面ライダー龍騎』、並びそのスタッフ、また講談社マガジンZ連載『仮面ライダーSPIRIT』著者には、一切関係ありません。
公開は07年11月からとなります。


仮面ライダーナイト/剣と盾 02-11-05

 

 

 

 

 

 全てがモックに彩られたモダンで暖かみを感じる喫茶「花鶏」は、厳密には神崎優衣の叔母が所有する店である。だが旅行がちな叔母に代わって優衣が店を一人で切り盛りしている。

 優衣の煎れるコーヒーと紅茶は可も不可も無い。ただ味に対して高い値段設定と、郊外の不便な立地条件が祟って、あまり売上が伸びない。

 1ヶ月前に知り合った城戸真司のミニコミに毛の生えた会社でネット広告を出してもらったが、イマイチ客足が増えない。

 

「でもこうやってゆっくり淹れるのってボク大好き。」

 

 淹れる寸前17グラム計って豆を挽く。あまり細かくならず中挽きがいい。シロートレベルならば電動でもいいらしいが、手で挽くリズムがこの店では大事、と叔母から教わっている。教わっているのもなんだが、実は叔母は紅茶以外淹れない。コーヒーは優衣が専門だ。ペーパーフィルターを折るのもゆっくりとしたリズムで、3つ穴のドリッパーに入れて湯を注ぐ。カップに溜まった湯は一旦捨て、温まったドリッパーと密着したペーパーに中挽きの豆をいれる。一度ドリッパー全体をテーブルで叩く。豆を平らにする必要がある。そうしてようやく湯を注ぐ。淹れる為ではない。蒸らす為だ。豆が膨らんでいくのを眺めている時間もまた楽しい。こうしてゆっくりとコーヒーが出来あがる。

 

「でも一人で飲むのはあんまりイヤだな。」

 

 と優衣がまどろんでいたところ店の扉が開いた。喫茶店でありがちな扉に吊るした鈴が独特に心地いい鈍い金属音を鳴らす。

 

「ですからですね、美穂は絶対無実だと思うんスよ。相手の男達が結託して、罪に陥れたっつうことだと思うんスよぉ」

 

「問題は一審をほぼ通ってしまうって事ですね。むしろ保釈を考えなさった方がいいと思うのですがねえ。」

 

「保釈?釈放できるってことっスか?」

 

「そう、一応保釈金と身元保証人でね。問題はそれからという事で。」

 

「お金・・・・お金・・っすか、はあ・・・・・」

 

「ここ良い雰囲気だねえ。なるほど。」

 

 入ってきたのはあの城戸真司と、濃いグレーのスーツの男。男はスーツの折り目正しさとは真反対に髪型はややロンゲの渋谷的な茶髪であり、ネクタイは赤い星模様。だがなにより驚くのは、スーツの襟に輝く弁護士のバッチだ。

 

「いらっしゃいませ」

 

 優衣は即座に店員として愛想を振る舞い、二人掛けの丸テーブルに誘った。

 

「う~ん、店員もカワイイ子だ。なるほど気に入った。君いい店を知っているね。」

 

「まあそんなホントの事を。」

 

 優衣は裏表がない。マジメにそう言っている。

 

「そうっスか。実は優衣ちゃんの店にいろいろお世話になってて。」

 

「2階であの高鼾だ。世話どころかこっちは迷惑だがな。」

 

 カウンターの奥から無愛想な男がコップを持ってやってきた。執拗に黒を纏う男、アキヤマレンがこのあいだ自作したばかりの黒いエプロンを纏って現れる。レンはファッショナブルなのか趣味が悪いのか微妙な弁護士の前に水を置いた。

 

「お、オレの分は、レン?」

 

 体中バタつかせる真司。あまりに分かりやすい感情表現だ。

 

「客と思っていない」

 

 真司に目線を合わせないレン。しかし好悪の問題ではない。大して気にならない人間に愛敬を振りまくような習慣がそもそも無いレンだった。

 

「優衣ちゃん、こいつになんとか言ってよ!」

 

 優衣に甘える真司。

 

「もうこの人はなに言ってもムダだから」

 

 レンとはここ一ヶ月目線を合わせない優衣はおちょぼ口になる。

 仕方なく自分の分のコップをキッチンに取りに行く真司だった。

 

「なんになさいますか。」

 

 3人がショートコントを繰り広げている間中優衣だけを見つめていた弁護士は、その優衣が振り向いて不意を突かれたようで、

 

「ああ、ここ一番のオススメを。」

 

 と言って誤魔化した。

 

「じゃあボクのコーヒーとレアチーズを。レン、そっちのテーブルに食べこぼしが残ってるから」

 

 と弁護士には笑顔を作り、レンには厳しい口調の優衣だった。

 優衣はレアチーズを取りに行く為にカウンターの奥へ入っていく。必然、テーブルを拭くレンと弁護士だけが店に残る。

 

「おまえ、龍騎か、それともナイトか。」

 

 突如言い放つ弁護士、仰天して弁護士を注視するレン。

 

「何者だキサマ」

 

 爪先立ちをするレン。口端を釣り上がらせる弁護士。

 

「北岡秀一。人読んでスーパーぁ、弁護士。スーパーロゥヤーとどっちか迷ったんだがねえ。」

 

「フザケるな。いったい何が目的だ。」

 

「それは、オレの事務所に来てのお楽しみ。」

 

 北岡弁護士は名刺を一枚取り出しレンに手渡した。

 レンが名刺の表を眺めると菊の花が右端にデザインされている悪趣味に嫌気を差した。裏を返すと、午後3時、と書かれているのが視界に入った。

 

 

 

「ボクに甘えるな。大人に甘えるな。ボクに面と向かって何も言えない君が、このスーパー弁護士に頼み事を通そうなんておこがましいと思わないかい。」

 

 レンが代官山の閑静な住宅街の中にそのビルを見つけ、煉瓦敷きの階段を降りてその白樺でできた玄関を開いた。開くと室内は丁寧に整頓された白を基調とした空間。天井から壁の一面が窓になって、光を上手に使って室内を彩っている。白いデスク、白いテーブル、白い皮のチェアー、そして白い枠のスタンドミラー。

 中ではあの自称すーぱーぁべんごしぃ、の北岡秀一なる男と、あからさまなシブヤ深夜ストリートファイト系のパンチパーマの男、そしてそのパンチ男に両肩を抱かれた少女が対峙して口論に近い事をしていた。近い、とは少女が一切喋らない事、正確にはパンチ男の耳元になにか囁きかけ、それを受けたパンチが北岡に語りかけ、それを受けた北岡は、少女に向かって冷酷な言葉を投げかける。

 

「ゴローちゃん、だからさ、この子の母親が病気だろうと、父親が犯罪に手を染めようと、ボクはさ、弁護士な訳よ。この子いくら出す?出せる訳ないよね。働いてもいないのにさ。」

 

 レンは勘違いしていた。ゴローと呼ばれた男は少女の保護者とばかり思っていたが、実は北岡側の人間らしい。

 だがそれにしても北岡の態度は冷酷というより卑屈だ。なにかの感情に振り回されているかのような。

 

「体売って出直してきな。そこまで覚悟しなきゃ望みは適わない。それを勉強してくる事だお嬢さん。」

 

 最後にしゃがんで笑顔を作り、無言の少女の頭を撫でつつ、キャンディーを一つ手渡した。もちろんこのキャンディーは、自分はせいいっぱいの親切をしてあげました、という記号である。

 そうして3人はようやくレンがすぐ背後に立っている事に気づいた。

 

「ゴローちゃん、玄関のカギはちゃんと閉めとこうよ。ねえ。」

 

 頭を素直に下げるパンチ。このパンチは北岡に対して格下の関係らしい。頭を下げた上で、レンの方へ振り返り、即座に爪先立ちし、左手刀を前面に立てる。

 

「ボディガードか。おまえに必要なのか。すぅぱぁべんごし」

 

 北岡とレンが火花散らす間を縫うように少女が出て行こうとする。レンとすれ違い様、左手を突き出す。その指先には先のキャンディーがあった。

 

「フ・・・」

 

 レンは卑屈な笑みを浮かべてそのキャンディーを受け取った。北岡の前で容赦なくそのキャンディーを口に入れるレン。

 

「ゴローちゃん、とりあえずお茶、出してよ。あの神崎の妹のオママゴトコーヒー口直ししなきゃね。本物出してよ。ねえゴローちゃん。彼は大丈夫さ、まだボクに聞きたい事があるからねえ。」

 

 ゴローと呼ばれたパンチは、レンにメンチ切りながら、奥に引っ込んだ。

 

「優衣の事まで知っているのか。何者だ。」

 

「だから言ったでしょ」

 

 右手を上げて、指を鳴らす。

 

「スゥーパァー弁護士でぇぇぇぇぇス!!」

 

 突如北岡の背後から出現する華やかな5人の女、

 

「どこから出した!」

 

 レンの間髪入れないレスポンス、

 

「今日は看護婦の梓、今日はバニーの莉奈、今日はレオタードの美奈子、今日は女教師のあき、そして今日は下着の千里だ。ボクがこよなく愛するスーパー北岡ギャルだがなにか?」

 

「なんの為に出てきた!」

 

「いいか、理由などというものは、観察者側は必要とするが、対象者は概必要としないもの、」

 

「ないのか!」

 

 ヒソヒソとレンに聞こえないように話しながら、一斉に指差し笑い出す北岡ギャル。

 

 アホは城戸一人でコリゴリだ、

 

 とつき合っていられなくなったレンはコートを翻し、立ち去ろうとする。だがそうはいかない。

 

「ねえねえ、あの子が、例のモンスターに半分体食われた女の子の彼?」

 

「いやねえ、モンスターじゃないわよクリーちゃんよ」

 

「お姉さんもお母さんも同じ年で自殺したんですって、うまくデキてきるわ、おもしろ~い」

 

 レンは振り返らず得ない。女たちの無神経さなどにではない。自分についての情報を敵となる人間が的確に掴んでいる危険性をである。

 

「キサマ・・・」

 

 対する北岡の勝ち誇った顔。

 

「ライアとシザースとはパーティを組んだ事がある。シザースとおまえの戦いを見ていたベルデにどうやら気づかなかったらしいな。今のところライダーを殺したライダーはおまえただ一人。しかしおまえを倒せば、一気に二人分の命を得るオイシイ相手だ。」

 

「やるという事か」

 

 レンが腰裏に手を伸ばす。

 

「ハハ、こいつもうやる気になってるぜ。慌てて損するタイプだ。みんなも笑ってやれ。」

 

 女達がレンを一斉に指差した。

 

「バカにつき合ってられん。」

 

「バカにされて頭に来るのはガキだ。もう少し大人になれ。シザースを倒してくれてこっちは感謝しているんだ。オレは段階と状況に応じて火力を振り分けるバーンデッキ。向こうは防御主体のデッキ。オレにとって一番相性の悪いヤツだったからな。おまえにとってのライアみたいなもんさ。」

 

「いいのかそんなにベラベラと」

 

「オレはオープンソースがモットーさ。情報というのは相手とのコミュニケーションの中でしか武器になりえない。」

 

「やるのかやらないのか、オレはおまえのように暇人じゃない。」

 

「十二分に暇人だと思うがね。まあ、いっそおまえのようなヤツが龍騎だったらオレとしてはやりやすかったんだがな。ドラグレッダーの力は、カードの召還カウントを一段上げるらしいからな。いずれ誰か突き止めるさ。おまえにも教えてやるよ。潰し合ってもらえば好都合。」

 

「帰るぞ」

 

「待てと言っているだろ。クリーチャーがここ最近大量発生している。パーティを組んで狩をしたいと思っている。」

 

「意味が分からん。敵同士でなぜ組まねばならん。」

 

「頭の悪いヤツはこれだから。いいかい。オレはおまえを倒したい、おまえはオレを倒したいという第一の目的がある。しかし折半しようがない。だが互いに力をつける為にクリーチャーを倒す目的は共通するところがある。簡単なゲーム理論さ。クリーチャーはそれぞれ習性があってな。マーキングして一つの餌に執着するおまえの彼女を狙うようなタイプ、それを横取りしようとするハイエナのようなタイプ、単体で活動するヤツ、指揮系統が完全に成立しているヤツ、他の種と組むヤツ、いろいろいる。アビスは一つのテリトリーに入ってきたヤツを軍隊みたいに徒党を組んで攻撃次いでに捕獲する。今回それを退治したい。悪い話じゃない。」

 

 レンはこのきな臭さに戸惑っている。

 

「じゃあ敵情を視察するだけでもいい。着いてこい。」

 

 室内のスタンドミラーに立つ北岡秀一。女たちの黄色い歓声に指二本立てて応え、緑のカードデッキを取り出す。変身ポーズを取る。

 

「変身!」

 

 鏡から飛んでくるベルト、北岡と重なって像が実体となって腰に巻かれる。横からスライドしてバックルに装填されるデッキ。スーツの像が召還され、北岡の肉体に定着していく。スーツのカラーは緑。ナイトや龍騎のそれと違って、直線を多用した重機の塊のようなプロテクター。仮面のスリットは三本の横線。右の腰にはSMGのような銃がぶら下がっている。確か北岡は自分のデッキを火力を振り分けるバーンデッキと言っていた。

 この姿こそマスクド・ライダー7号ゾルダ。

 

「ま、着いてこなくても構わない。おまえの自由だ。」

 

 ゾルダが黄色い歓声に後押しされるように鏡の中へ突入していく。

 

「ライダーは変なヤツばかりだ。」

 

 レンもまた変身、ナイトとなってスタンドミラーに突入していく。

 

「ヤバイヤバイヤバイ、あっちもけっこうかっこいいわ」

 

 今日は看護婦の梓がボソと言った。女達は一斉に肯いた。

 

 

 

「あれがアビスハンマー、遠間から撃ってくる。あっちがアビスクラッシャー、両刀で攻撃してくる。一粒一粒は小物に過ぎないが連携が厄介だ。」

 

 リアルワールドならばデートスポットで著名な埋め立て地の沿岸公園。そこにサメ型、頭の先端が尖り、その下に歯が並ぶ。口内にもう一列歯があるというが、クリーチャーが口を開くまで確認できない。別名でワニともフカとも言う。アビスクラッシャーはそんな典型的なジンベエザメをモチーフにした四肢を持った人型クリーチャーであり、両腕にそれぞれトゲだらけの剣、というより槌を持っている。アビスハンマーは、同じく人型ながら胴がシュモクザメの頭部を象っている。

 ナイトとゾルダが公園に到着した時には、既にテリトリーに侵入した人間を捕獲した後らしく、円陣を組んで捕食に励んでいる。だらしないクリーチャーは捕食した人間の腕や頭が飛び散っていく。

 

「予定変更だ」ゾルダが奇妙に低い声で唸るように言った。「オレ一人で一掃する。」

 

 ゾルダは一点を見つめていた。ナイトがその方向に視線を揃えると、生首が一つあった。首は右の目玉が飛び出ているが、こちらを眺めている。ゾルダにもナイトにも覚えのある少女の顔だった。

 

「まだキャンディーの味は口の中に残っている。」

 

 ナイトもスカルバイザーを抜く。

 

『アドベント』

 

 ゾルダが腰の拳銃を抜く。その名もマグナバイザー。後方へ撃鉄を引くように上部全体をスライドさせると、半ばに位置するマガジン部が下にスライドしてカードホルダーが現れる。左腕を右に回してバックルからカードを一枚引き抜いて装填、マガジン部を下から押し戻す。

 地面から沸き上がってくるのはゾルダの契約クリーチャー。ゾルダに劣らぬ程に直線で構成されたボディ、象のように太く短い立つ事のみに絞った機能の脚、砲身の形状をした右腕、ペンチのような左腕、そして頭部は肩幅を越える巨大な2本の角がそそり立っている。

 契約カードマグナギガ、AP6、カードを使用すると、1腕部より砲撃、2ゾルダを防御、3ファイナルベントとの併用で召還カウントの短縮、のインスタント効果がある。

 

『ファイナルベント』

 

 続いてカードを装填するゾルダ。

 

 シャアアアアア

 

 しかしマグナギガの登場によりその気配に気づくアビス15体、ハンマーは隊列を組み、クラッシャーは両腕の剣を振り上げ包囲を固める。そのフォーメーションの方が若干速い。

 

「案外、甘いヤツだな」

 

 スカルランサーを薙ぐ、

 

 ゾルダと、まさに一斉に飛び掛かろうとするアビスクラッシャーの間へ割って入るのはナイト。既にランサーを召還しクラッシャーの一体を破壊。クラッシャーはただちに半数に分かれ一方はゾルダ、一方はナイトを包囲する。

 

「おまえも、纏めて殺していいよな」

 

 ファイナルベントのカウントは続いている。アビスハンマーの銃撃をまともに食らい続けるマグナギガの背後に立つゾルダ。マグナギガの腰に孔があり、マグナバイザーの銃口がちょうど填まる。トリガーを引くとマグナギガは両腕を上げて照準を取り、胸部が開いて数十のミサイル弾頭が露出する。

 エンド・オブ・ワールド、インスタント、AP7、複数対象を標的とし、範囲内にある標的をAP2~7のダメージを与える。ゾルダにとっても、およそライダー通じても最強の攻撃力を誇る。

 

 ミサイルが発射、

 右腕の砲口が唸る、

 頭部の孔からレーザー、

 左腕の爪が開いて5連に縦列した機関砲が震動を立てる、

 

 マグナギガの全砲門が一斉に火を吹く。アビスクラッシャーが爆圧で後方にもっていかれ、クラッシャーの衝突で撃ち続けていたハンマーもまたヘシャゲてもっていかれる。水平線の彼方まで爆炎が轟き、爆炎の加熱で東京湾から蒸気が沸く。一面白みがかる湾岸公園。

 

 シャアアアアア、

 

 なお残ったアビスクラッシャー2体がゾルダに向けて両サイドから同時攻撃。

 

『バレルベント』

 

 ギガアサルト、インスタント、AP2、ゾルダのマグナバイザーのバレルを伸ばして、弾丸の威力を高め、3点バーストで発射。50発の弾数制限により効果が消失する。

 左へ向いて一斉射、背後を向かずにバイザーを肩で担いで一斉射し一気に2体を消失させるゾルダ。しかし白みの中からさらにもう一体のアビスハンマーが躍り出てゾルダに向けて銃口を構える。ゾルダは全くの無防備だ。

 

「纏めて殺し損ねたな」

 

 スカルランサーが突き刺さる。ナイトが一足で飛び込んでアビスハンマーを葬り去った。

 

「生きてたか。」

 

「分かりやすい合図だったからな。」

 

「6、9でどうだ。おまえが6。」

 

「今日はこれで終わりだ。おまえはもう切り札があるまい。」

 

「おまえつくづく甘ちゃんだな。」

 

 3点バースト、

 

「キサマ、」

 

 ナイトのプレートアーマーに火花が飛ぶ。ゾルダがナイトを攻撃してきた。

 

「オレに切り札がないと思ったらなぜ討たん。」

 

「ぐぁぁ」

 

 海に落ちるナイト、

 

「あの子はイレギュラーだったし、最初は討つ気も無かった。しかしおまえが隙だらけなのがいけないのさ。」

 

『トリックベント』

 

「キサマがその気ならこちらも手は抜かん。」

 

 シャドーイリュージョン、インスタント、分身攻撃。

 次々水面から出現するナイトの大軍、全てのナイトがスカルランサーとバイザーの2刀流でゾルダに襲いかかる。

 

「予想はしている。」

 

『ショットベント』

 

 ギガキャノン、インスタント、AP3、両肩に装備される二連装大口径砲、広範囲の複数対象を標的とし、AP1~3のダメージ。

 

 火花吹く二連砲、

 

 半包囲するナイトがゾルダの砲によって一斉に消失、いやたった一人ナイト本体だけが吹き飛ばされ、手もたれの格子に激突する。

 

「キサマもやはりライダーだと言う事がよく分かった。」

 

「それはそれ、これはこれだ。」

 

 ゾルダ、バイザーのトリガーを引いてスロットをオープン-カードを抜く-カード装填-バイザーを押して戻す、4行程。

 

『シュートベント』

 

 ナイト、ランサーを地に刺し、バイザーを持ち替える-バイザーを開く-カードを抜く-カード装填-バイザーを閉じる、5行程。

 

「遅いんだよ。」

 

 だがナイトがバイザーを閉じる直前、ゾルダは自身のベント発動よりも前にマグナバイザーで連射攻撃を仕掛ける。ナイトのそれは中断された。

 

「ぐぁ」

 

 怯むナイト、

 

「甘いんだよ。カウントを減らす訓練もしていない。」

 

 そうしてゾルダに召還される巨大な一門の大砲。両腕を広げたそれよりも長いその竿を両手で抱えるゾルダ。

 ギガランチャー、パーマネント、AP2、インスタントとして使用した場合、+クリティカルの効果。

 

 撃つ、

 

 巨大な砲撃を胸で食らうナイト、スカルランサーで地面を削り取って辛うじてその威力を殺す。

 

「オレはどんな事があっても負ける訳にはいかんのだ、」

 

 カードが装填されたままのバイザーを閉じる、

 

『ナスティベント』

 

「う」

 

 幻覚がゾルダの視覚情報を混乱させる。白と黒が交互に映り代わる。ギガランチャーをふらつかせるゾルダ。

 

「決め手を消費したのはキサマの失敗だ。」

 

『ファイナルベント』

 

 騎走撃を発動するナイト。ナスティ+ファイナルのコンボは敵に大きな隙を作り一撃を決めるナイトのハメ技。ゼブラスカルに騎乗、スカルランサーを構え突撃する。

 

「切り札はあるさ。」

 

『ガードベント』

 

 天より降ってくる一枚の巨大な盾。ゾルダとナイトの間に割って入り地に突き刺さる。ゾルダは立ち眩みしながらも既に盾を召還していた。

 ギガアーマー、パーマネント、GP3、巨大な亀の甲羅のような盾。

 

「キサ」

 

 突如出現した衝立に驚き天をあおいで反り返るゼブラスカル。突撃の反動で背から跳ね飛ばされるナイト。

 

「知っていたか。縞馬は馬と違って気性が荒く背中が弱い。乗って戦うには無理があるんだ。」

 

 キャノン一撃、

 

 ゼブラスカル木っ端微塵、

 

 ギガランチャーをインスタントで発動、ファイナルベント程ではないが、クリーチャーを破壊するには十分な火力をゾルダは有していた。哀れナイトの契約クリーチャーは光の珠へと還元された。同時に変身が除装される北岡秀一。全てのカードを使い切った時、ライダーは変身を解かれる。

 

「う・・・、キサマ、オレは生き残、」

 

 ナイトは伏したまま起き上がれない。よく見ればその縞模様が失せ、グレー一色のスーツへ変色している。契約クリーチャーを失いブランク体と化したナイト。

 

「これでチェックだ。バックルのデッキは5以上の攻撃力が無ければ破壊できないが、もう一度変身すればフルカード揃ってる。問題なくこれでシザースの分とおまえの分、ライダーの命をいただいて、サバイブの権利にチェックを懸ける。変身!」

 

 再びゾルダの姿と化す。

 

「オレはぁ!」

 

『トリックベント』

 

「しまった」

 

 ナイトは伏せながらもバイザーにカードを装填する。分裂して無数に増殖するナイト。ゾルダは慌ててマグナバイザーを連射し、ナイトの分身を次々片付けていくものの、本体が見つからない。

 

「勝負はお預けだ。」

 

 どこからか声が響いた時には、ゾルダはナイトを一掃していた。しかし残ったナイトはいない。ナイトはその場を逃げ延びた。

 

「ブランクになると同時にカードがリセットされフル装填されたか。オレとした事が。」

 

 ゾルダは天に向けていつまでもバイザーを撃ち鳴らした。

 

 

 

「おかえり秀一。今晩は私よね。」

 

 入ってきた同じスタンドミラーから出てくる北岡秀一。その北岡に体ごと絡み付く今日は下着の千里。下着の色は緑だ。

 

「ヤツはどうした、」

 

「え?なに、」

 

「ヤツだ、ミラーワールドは入った鏡からしか出てこれない。ヤツもここから出てきたはずだ。」

 

「あ~、あのかっこいいニヒルくんね。あれなら美奈子が送っていったわよ。」

 

「だからおまえはバカなんだ!」

 

 ブつ、

 

「なにすんのいきなり!」

 

 北岡に頬をブたれて尻をつく千里。

 

「オレ達は命がけの戦いをしている。ヤツは重傷を負っていたはずだ。だったら、オレが追い詰めたという事ぐらいは分かるはずだろ!」

 

 股を開いて呆然とする千里の股間が湿ってくる。

 

「うれしい・・・・・秀一は私には本当の秀一を見せてくれる・・・・」

 

 髪を掻き上げつつ手で表情を覆う北岡。覆った手を退けて再び千里に顔を向けた時、北岡は笑顔を作った。

 

「ごめんよ。思った通りに事が運ばなかったからちょっと気が立っていた。」

 

「いいの秀一、私分かってるから。貴方病気なんですもの。テキゴウシャがいないとかでしょ。だったら魔法のような事するしかないものね。」

 

 北岡の表情がさきよりも険しくなる。いや険しさを通り越して無機質になる。

 

「知っているのか・・・・・、誰かに話したか。」

 

「いいえ、私と、貴方だけの秘密だもの。秀一・・・?」

 

 その細い首を掴む、

 

「知ってしまったんなら、仕方ない。」

 

「クルシ・・・」

 

 無機質に語る北岡はもがく千里の首を掴んだまま引きずって、スタンドミラーの中に放り込んだ。

 腕が震えている。北岡が呼吸を整える音意外なにも聞こえない。北岡は再び髪を掻き上げた。

 

「ダメダメ、危うくライダーの力に溺れるところだった。ねえゴローちゃん。」

 

 いつのまにか背後にあのパンチのシブヤ系が立っている。ゴローは拝礼したまま顔を上げない。

 

「昼間来たあの子の親の事、調べてくれるかい。父親がなにかの過失なら、被害者からボれるかもしれない。せめて母親をボクの主治医に紹介してもらえるだけでいい。」

 

 ゴローは顔を上げ、喜びを顕にした。

 

 

 

「うるさい、」

 

 タクシーを降りて、今日はレオタードの美奈子を振り払い、いつもの病院にたどり着くレン。手摺を握って腕の力まで使って這い上る先は、恋人の恵理が眠り続けるいつもの個室。看護士達ももはやレンがどのような状態であろうとも声をかけようとしない。関るとロクな事がない事を経験で知っている。遠巻きにヒソヒソと話し合うだけだ。

 

「恵理・・・・・、オレはダメなのか。」

 

 ドアを閉じ、ただ恵理との二人の空間で壁にもたれ崩れるレン。

 

 ・・・・・・・・

 

 忌まわしい音が聞こえた。部屋にたった一つある鏡、顔だけを映す壁鏡を覗き込むレン。この音はクリーチャーがリアル世界に接近し飛び出そうとした時に聞こえる怪音波。

 

「一つの獲物を狙い続ける、習性だと・・・」

 

 北岡の言葉を思い出すレンは恵理の枕下からカードを一枚取り出す。それは優衣から貰ったクリーチャー除けのSEALのカード。

 

「おまえも恵理が好きか・・・・」

 

 それは恵理の半身を食らい千切ったあの巨大コウモリ、鏡の中から威嚇するも、カードの発する光で近づく事ができないでいる。

 

「オレは最初からこういう運命なのかもしれんな。」

 

 カードを投げ棄てるレン。即座に鏡の中から飛び出してくる巨大コウモリ。デッキを取り出し、一枚カードを取り出した。それはCONTRACT、契約のカード。今まさに恵理の喉元に噛付こうとした刹那、CONTRACTから発する光を浴びる巨大コウモリ。

 

「契約しろ、ダークウィング!」

 

 カードに図柄が刻み込まれる。巨大なコウモリの絵。同時にカードデッキに刻まれるコウモリをモチーフにした紋章。

 

「恵理、おまえの体、オレが取り返す。」

 

 マスクド・ライダー6号、ナイトの再誕だった。

 

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