帝国の旗を掲げよ   作:ドイツ軍ファルマート大陸軍集団

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謁見

 

 

帝国

 

それは、このファルマート大陸に君臨する、かつてのローマ帝国を思わせる文化を有する、数百年の歴史を持つ巨大な覇権国家である。

 

だが長い歴史を持つが故に、現在は停滞の憂き目に遭っており、国内も広すぎる領土ゆえの杜撰な管理など、問題も多く存在している国である。

 

そんな帝国にも、ヴィザンツィア騎士団国とドイツ第三帝国との接触は、断片的にではあるがその情報は入って来ていた。

 

皇宮

 

「なに、ヴィザンツィア騎士団国が?」

 

「はい、名前はなんでしたかな…ドクツだのなんだの…兎に角、今までに聞いた事が無い国と接触したと情報が入りました」

 

「うむ…」

 

内務卿であるマルクス伯からの報告に、帝国の現皇帝であるモルト・ソル・アウグスタスは考え込む様な様相でそうつぶやいた。

 

ヴィザンツィア騎士団国

 

公式的には、帝国の属国であるが帝国の言う事はまったく聞かず、独自路線をひたすらに貫く、西の軍事国家であり、帝国にとって最大の仮想敵国。

 

それ故に、その動向は常に目を光らせねばならないものである。

 

だが、名も知らぬ国と接触したとの報告を聞いたモルトは

 

「放っておけ」

 

「よろしいのですか?」

 

「かまわぬ、ヴィザンツィアと名も知らぬ謎の蛮族の国とが徒党を組んだ所で、奴らを倒す策は帝国建国以来から常に考えられている。多少の不安要素があろうとも、帝国の勝利はゆるがん。何よりあの国は、5年前に我が国も義勇軍を送り部分的に参戦したアルグナ王国との戦いにおいて、多くの有力貴族や老将を失っているからな」

 

「なるほど」

 

帝国が大国ゆえの驕りとヴィザンツィア騎士団国が仮想敵国故に、いざという時の対応策は数百年前から考えられていること、そして何よりヴィザンツィア騎士団国は5年前にアルグナ王国および、各国の義勇軍との戦いで辛勝したさい、多くの有力貴族や老齢の軍人を失っている事を考慮したモルトは、その情報を軽視し放っておく様述べた。

 

「それより今は帝国の停滞した内政、そして我が国に対して反抗心を見せつつある、東のクリムラント=ポーラトリア同君連合国に対して考える必要がある…」

 

その頃

 

騎士団国総長宮殿

 

国民の熱狂的歓迎を受けながら、へーヴェルらを乗せた車と、それを護衛する第10親衛騎士団は、騎士団国の国政の中心地である、騎士団国総長宮殿へと到着した。

 

「ここが、この国の中心か…」

 

宮殿へと続く道を整列する純白の軍装の上から銀色に輝く鎧を装着している姿で剣を掲げる、中央騎士軍麾下の近衛兵、そしてその先にある、北欧神話のオーディンやギリシャ神話のゼウスなど、神々の王が住んでいるのではないかと思ってしまうほど巨大な白亜の宮殿。

 

その壮大で、まさに異世界と自覚させるほどの、ファンタージ的な光景を前に、ヴァルター・へーヴェルは思わずそう呟いた。

 

すると

 

「やぁやぁ、ようこそ第三帝国の特使の皆様!まっていたよ!!」

 

「大魔導士殿、外交の場ですよ」

 

「そうは言っても仕方ないじゃないの。へーこれは凄いな!馬が無い馬車だ!どう言う原理で動いてるんだ?魔法?いや違うな、後部から煙を出しているから、何かの熱でうごしてるかな?だとしたらどんな原理で…」

 

黒髪で眼鏡をかけた女性、騎士団国の大魔導士であるミーミル・フォン・シルバーヴェルヒ、そしてクリーム色の髪に同じく眼鏡をかけた細目の、第一印象は穏和そうな優男と言う印象を受ける、若い文官の男の、計二人の人物が出て来た。

 

そして、その一人であるミーミルはへーヴェルにそう言うとすぐに、彼らが乗って来た車に近寄るとまじまじと興味深そうに見ながらそうブツブツと言い始めた。

 

「いや、申し訳ございません。ドイツの特使殿、ミーミル大魔導師殿は、素晴らしい技術を前にすると、我を忘れてしまうところがありまして。しかしこれほどの技術力、素人目ではありますがこれだけで、ドイツの…貴国の高い技術力を知る事ができます」

 

少し笑いながら謝ってはいるが、そこまで困っている様子では無い、正直全く何を考えているのかよくわからない、そんな男であった。

 

「ご紹介しますへーヴェル大使、彼女は、ミーミル・フォン・シルバーヴェルヒ主席宮廷導師です。少し変わり者ですが、我が国一のテクノクラートです」

 

「どうも初めまして、第三帝国の皆様」

 

リィズから紹介されたミーミルは、無邪気そうな笑みを浮かべ、軽く手を振りながらそう言った。

 

「そして、この方は我が国の外務卿の…」

 

「アロイス・フォン・メッテルニヒです。若輩ながら、ヴィザンツィア騎士団国外務卿を務めております。どうぞお見知りおきを」

 

リィズに紹介されたその男事、ヴィザンツィア騎士団国の外交を一手に引き受ける人物、アロイス・フォン・メッテルニヒはそう名乗るとにこやかな笑みを浮かべ、へーヴェルへ手を差し出した。

 

「ドイツ第三帝国特使団の団長である、ヴァルター・へーヴェルです。外務卿殿自らのお出迎え、感謝に絶えません」

 

「いえ、断片的ではありますが聞き及んだ貴国の情報か、我が国としてもぜひ貴国とはこの外交の場だけでなく、永続的な長い付き合いをしたいと思っておりますので」

 

ベーヴェルとアロイスは握手をしながらそう言った。

 

(この男…中々に喰えない男かもしれんな)

 

見た目は優しそうな若者であるが、その細目の奥にある鋭く冷たい目を、へーヴェルは見逃さず、彼が只者でない事を悟った。

 

アロイス・フォン・メッテルニヒ

 

騎士団国伯爵の地位を持つ彼は、若い軍や政府の高官が多いこの国の中でも若く、そして常に絶やさない笑と優しそうな雰囲気と言う仮面の下には、若さに似合わない国への忠誠心と狡猾さを隠し持つ人物である。

 

国益の為であれば長年の敵国と祖国を和解させ、同時に国益の為ならば長年の友好国をも売り渡す、国益の為ならば矛盾する約束も平気で他国と結ぶなど、祖国ヴィザンツィアの国益の為ならば、他国がどうなろうとも知った事ではないと言う信念を持っており、その為エルベ藩王国を中心とした、ヴィザンツィア騎士団国と仲が悪い国々からは蛇の王である"バジリスク"の異名と共に恐れられている人物である。

 

そんな彼の内情は、当然へーヴェルは知らないが、しかし仮にも外交官、そして何よりヒトラー総統の側近として、権謀術数渦巻く権力闘争の魔窟であるナチス・ドイツの上層部の乾物である為、アロイス外務卿から感じる油断ならない人物と感じさせるオーラを、へーヴェルは感じていた。

 

「長旅の所お疲れとは思いますが、まずは我が国の最高指導者であらせらる、ヴィザンツィア騎士団国総長、ラインハルト・フォン・コンスタンティヌス陛下の元へとご案内いたします、どうぞこちらへ」

 

そして、アロイス外務卿は相変わらずの掴みどころが無い笑みを浮かべながら片手を広げ、背後の宮殿の奥へと続く道を指し示した。

 

戦勝の間(玉座の間)

 

ヴィザンツィア騎士団国において、他国との使者の謁見や式典、記念行事などが行われる玉座の間には、すでに、騎士団国総長であるラインハルト・フォン・コンスタンティヌスを含め多くの騎士団国高官が集まっていた。

 

「いよいよですね陛下」

 

「あぁそうだな…」

 

玉座に座り、今か今かとドイツ第三帝国からの死者を待つラインハルトに、銀髪碧眼の美しい容姿をした女性、騎士団国において文化の発展や、国の根幹をなす純潔主義や軍人讃歌などの思想を国民や全ての人種に植え付ける役割を担う、騎士団国文化・思想卿のミレーネ・フォン・シュテーデル文化卿の問いに、ラインハルトはそう呟いた。

 

「もしかして緊張…いいえ、どちらかと言うと楽しそうですね」

 

「まぁね、門の向こうにある未知の国家、その特使と会うのだからね、楽しみではないと言うと嘘になる…ここまで心が躍ったのは、初めて戦場で兵を指揮して勝利を確信した時以来かな…」

 

ラインハルトはそうミレーネに言うと、徐にかつて帝国とヴィザンツィア騎士団国の始祖となる、初代コンスタンティヌス総長率いる、騎士団との戦いである、アルヌス会戦の様子が描かれた壁画が書かれた天井を見上げた。

 

「帝国…そうだ、オーベルシュタイン、念の為に聞いておくが、帝国に今回の事はどの程度伝わっているか?」

 

すると思い出したように、ラインハルトは、騎士団国において対外諜報機関と国内保安一気に担う警察機構、双方の権限を有する組織であり、他国では内務省にあたる権限を有する、国家憲兵隊の総司令官である、ナイル・フォン・オーベルシュタイン憲兵司令官にそう聞いた。

 

「はい、帝都に潜ませている工作員からの情報によりますと、我が国とドイツの接触は、ある程度帝国にも伝わっているようですが、どうやら帝国はドイツの事を未開の蛮族の国と認識しているようで、我が国と彼の国の接触に関しては、そこまで重要視されていないとの事です」

 

ヴィザンツィア騎士団国の国是である純潔主義、それは本来であれば騎士団国と敵対しているはずの帝国の貴族や軍の若い士官の間にも信奉者は存在しており、彼らはヴィザンツィア騎士団国の諜報機関である国家憲兵隊の諜報員と協力関係にありった。

 

その為、オーベルシュタイン憲兵司令官は、易々と帝国国内の情報を手に入れる事が出来ており、今回騎士団国とドイツの接触は、帝国はその事を軽視している事を掴んでいた。

 

「そうか、それは好都合…いや、思った通りかな…」

 

「確かに、帝国は巨大な覇権国です、その覇権国故の驕りから、近視眼になっていると言えるでしょう」

 

「まぁ最も、その方が我々にとってはありがたいですがね」

 

ラインハルトのその言葉に、ヴィザンツィア騎士団国の精鋭部隊である中央騎士軍を総司令官であるラインハルトと共に統括する、茶髪に碧眼の若い軍人ジークフリート・フォン・グナウゼナウ中央騎士軍総参謀

 

そして騎士団国の常備軍総司令官として、10万近い兵士とファルマート大陸の騎士団国領各地に設置された、事実上の騎士団国の地方行政区である軍管区を一括管理する白髪の老将、ウィルバルト・ヨアヒム・フォン・クラウゼビッツ騎士軍総司令官

 

ヴィザンツィア騎士団国の軍事を司る二人はそう述べた。

 

すると

 

「陛下、お越しになりました」

 

「そうか」

 

騎士団国総長副官、他国で言うところの侍従長の役職に当たる、フェルディナント・フォン・シュトライト将軍が、ラインハルトの耳元でそう告げると、ラインハルトはそう一言言うと。

 

「では諸君、長旅を得てここに来られたお客様をお迎えしようじゃなか」

 

部屋に集まっている政府高官や有力貴族達にそう告げた。

 

 

「そう言えばリィズ殿下、ほんの興味本位なのだが、殿下の兄君…ラインハルト総長は、殿下から見てどのような人物でしょうか?」

 

へーヴェル等ドイツ使節団の一人としてヴィザンツィア騎士団国に派遣されて来たヘニング・フォン・トレスコウ少将は、徐にそうリィズに聞いた。

 

「兄…陛下ですか?」

 

「はい、殿下の主観で良いので参考までに」

 

「そうですね…まさに時代が生んだ奇跡のような人物ですかな」

 

「奇跡?」

 

「はい、若く、カリスマ性があって政戦両略の天才、そして国民や人間に対してとても寛大なお心を持つ、そんな人物です。貴国の世界で表すなら、フランスのナポレオンの様な人物と表すのが正しいと思います」

 

「なるほど」

 

リィズの話を聞いたトレスコウ少将は、この門の奥にいる人物が只者ではない事を実感した。

 

(ナポレオンの様な天才か…この国と我が国では文明レベルの差に大きな開きがあるが…それでもこの国は、決して御し易くは無いかもしれないな…)

 

そうトレスコウ少将が、心の中で思ったその時。

 

「第10親衛騎士団団長、リィズ・フォン・コンスタンティス殿下ならびにドイツ第三帝国の特使団の皆様ご入来ーーー!!!」

 

中にいる近衛陛下の大きな声と共に、扉が開かれた。

 

「いよいよか…」

 

「何はともあれ、まずはプロイセン軍人として、恥じぬ対応をするまでだ」

 

そしてへーヴェルとトレスコウ少将は決意を新たにそう言うと、リィズとアロイス外務卿に先導され、部屋の中へと入って行った。

 

「陛下」

 

リィズはそう一言言うと、玉座に座るラインハルトの前に跪いた。

 

「顔あげよ、中央騎士軍第10親衛騎士団エクェストリス団長、リィズ・フォン・コンスタンティヌス将軍よ」

 

「はっ」

 

「まずは、先の門への調査遠征任務、そしてドイツ第三帝国特使団の護衛任務ご苦労であった」

 

「身に余るお言葉、光栄でございます」

 

「うむ」

 

ラインハルトは、まずは任務を完了した第10親衛騎士団の代表であるリィズに労いの言葉をかけた。

 

血を分けた兄妹、そして仲も良好であるが、重要な式典である為、血を分けた家族では無く、主従としての関係で、

 

「して、彼からが」

 

「はい、ドイツ第三帝国の特使団の皆様です」

 

「初めまして陛下、特使団代表のヴァルター・へーヴェルでございます。本日はこの様な機会を設けていただき感謝にたえません」

 

そして、リィズに紹介されたへーヴェルはそう言いうと軽く一礼し、一方でトレスコウ少将は軍隊指揮敬礼、スコルツェニーSS大佐はナチ式敬礼と、それぞれのやり方でラインハルトへ敬意を表した。

 

「うむ、長旅ご苦労であったへーヴェル大使殿、そしてドイツ第三帝国の方々。騎士団国総長として歓迎しよう」

 

「はっ、ありがとうございます」

 

「本格的な交渉は三日後からとするが、それまでは旅の疲れを癒していただきたい」

 

「はっ!」

 

ラインハルトの労いと歓迎の言葉に、へーヴェルはそう言った。

 

(この方が、この国の指導者か…)

 

(確かに、王者としてのカリスマ性を感じるな…)

 

一方でへーヴェル、そしてトレスコウ少将は、ラインハルトから感じる、ヒトラーとはまた違う、生まれながにしての王者のカリスマ性を感じていた。






ラインハルト・フォン・コンスタンティヌス

地位:ヴィザンツィア騎士団国総長

ヴィザンツィア騎士団国総長として、騎士団国を率いる同国の最高指導者。

まだ25歳と若いが、類稀なるカリスマ性と為政者としても軍人としても飛び抜けた能力を持つ天才的能力、そして人種に対する寛大な心から、国民や軍人達からの人気は高く、初代アレキサンドリア総長、第二代ユスティニアヌス総長に並ぶ、ヴィザンツィア騎士団国始まって以来の名君であると言われている。


ミーミル・フォン・シルヴァーベルヒ

地位:主席宮廷魔導士

ヴィザンツィア騎士団国一の頭脳と力を持つ魔導士。

高い知能と、魔法知識を持っており、本来であれば騎士団国の魔法の全てを取り仕切れる魔法ギルドの長にもなれる程の実力を有する騎士団総長直轄の魔道研究者。

殆どの魔法を使えるが、専門は空間魔法分野であり、門を安定させる魔法装置を作った人物でもある。ゲートの先にある世界であるドイツに対しては高い興味があり、彼の国に何は行ってみたいと考えている。

因みに杖は、武器としても使える死神の鎌の様な大型型の杖を使っており、魔法だけじゃなく肉弾戦に対しても高い戦闘力を持っている。


アロイス・フォン・メッテルニヒ

地位:外務卿

ヴィザンツィア騎士団国の外交の全権を担う外務省のトップを務める青年。

クリーム色の髪に同じく眼鏡をか、細目で常に笑みを浮かべる親しみやすそうな印象を受ける人物だが、その全てが仮面であり、実際は祖国に類が及ばなければ、他国がどうなろうとも構わないと考える、腹黒い自国ファースト主義者。

バジリスクと評されるほどの腹黒い人物だが、その外交手腕は辣腕と評されるほど確かな物であり、さらに祖国である騎士団国とラインハルトに対する忠義の心は本物である為、味方からは信頼されている。


ミレーネ・フォン・シュテーデル

地位:文化・思想卿

銀髪碧眼の美しい容姿をした女性であり、騎士団国において文化の発展や、国の根幹をなす純潔主義や軍人讃歌などの思想を国民や全ての人種に植え付ける役割を担う、騎士団国文化・思想省のトップを務める人物。


ナイル・フォン・オーベルシュタイン

地位:国家憲兵隊司令官

ラインハルトの腹心であり、騎士団国内において、治安維持や対外諜報を行う国家憲兵隊の指揮官を務める人物。

常に感情を表に出さず、華やかな文化には興味示さず、ただひたすら職務を遂行する、マックス・ウェーバーが考える理想的な官僚を体現した人物である。


ジークフリート・フォン・グナウゼナウ

地位:中央騎士軍総参謀

ヴィザンツィア騎士団国の精鋭部隊である中央騎士軍を、総司令官であるラインハルトと共に統括する若い軍人。

ラインハルトとは、彼が騎士団国総長に就任する前からの同志であり彼と常に、幾多の戦場を駆け抜けて来た戦友である。


ウィルバルト・ヨアヒム・フォン・クラウゼビッツ

地位:騎士軍総司令官

10万近い兵士とファルマート大陸の騎士団国領各地に設置された、事実上の騎士団国の地方行政区である軍管区を一括管理するヴィザンツィア騎士団国常備軍である、騎士軍の総司令官を務める白髪の老将。

ラインハルトが生まれる前から軍務についていた歴戦の将であり、リィズ率いる第10親衛騎士団エクェストリスに所属するミュッケンベルガーの元上官でもある、歴戦の将である。







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