帝国の旗を掲げよ 作:ドイツ軍ファルマート大陸軍集団
閑話休題:進む準備
軍事パレードから1週間後
1950年9月8日
ドイツ南部の都市:ミュンヘン
ナチ党の発祥の地、ミュンヘン一揆が起きた都市として、ニュルンベルクに並ぶ、ナチスの聖地とも言えるこの街に佇む、ミュンヘン総統官邸
かつて、チェコスロバキアの解体の運命が決まった、ミュンヘン会談が行われた事で知られるこの場所にて、再び歴史を動かす出来事が起きていた。
ミュンヘン総統官邸の一室
「こちらに署名をお願いします」
各国の首脳や大使、ナチス幹部や軍人達が見守る中、再びドイツへと来日していたヴィザンツィア騎士団国の外務卿、アロイス・フォン・メッテルニヒは、ドイツ側の外務大臣であるリッベントロップから、友情の証としてもらったドイツ製の高級万年筆を走らせ、一枚の紙に自身の名前を書き記すと、隣に座るラインハルトにその紙を回し、そしてラインハルトも彼に続くように、自身の名前をこの書類に記した。
「これでよろしいかな?」
「結構、これで貴国と我々は同盟国ですな」
「今後ともよろしくお願いいたします、ヒトラー総統」
そして署名を終えると、ラインハルトとヒトラー互いにそう言い、固い握手を交わした。
この日、ヴィザンツィア騎士団国は、正式にイタリア、ドイツ、スペインの主要3カ国の承認、そしてその他バルカン半島などの中小国の加盟国の承認の元、ドイツとイタリア主導の軍事同盟、大欧州帝国条約機構の新たなる加盟国となった。
今後騎士団国は、ドイツ軍の援助の元、軍の近代化が行われ、三、四年後の1953〜1954年までに、銃で武装した総兵力50万人、戦車保有数2000両、戦闘機保有数700機の、大部隊を有する軍へドイツ軍の協力を得て、進化する事が決まっていた。
「これで我々も、ドイツの同盟国ですな」
「あぁ、だがこれは始まりに過ぎんさアロイス。我々は、これからドイツの力を借りて近代化を始める、そして我が国の手付かずの資源を求めて進出してくるドイツやイタリアと良好な関係を築くための法整備、やるべき事は多々あり、暫くは、増える事はあっても減る事はないだろうな」
軍隊の近代化…聞こえは素晴らしいが、その実やる事は多く、そして多くの問題、特にドイツ製兵器の修理を行う技術者の育成、消耗品である大砲の弾や、その他パーツを生産する工場の誘致、ほかにも補給計画の大幅な変更など、上げただけでもキリが無い。
「しかし、だからと言って弱音を吐く事はできませんな。国の為、民族の為にも、少なくとも4年後位には、兵の質だけでもドイツ軍や他の門の向こうの国と同等の軍事力を持ちたい物です」
「君の中央軍ならそれは可能であると期待して居るジーク。まぁ、いきなり全てを変える事はせんが、ひとまずは3〜4年後までには、ドイツ製の兵器の修理や消耗品の生産程度はある程度できるよう、持って行きたい物だな」
「えぇ、そうですね。私としても、今後はファルマート大陸の国だけでなく、門の奥の国との交渉も行ってくなど、外務省もやる事が多くなりそうですよ」
「期待しているぞ、アロイス」
「微力を尽くしますよ」
グナウゼナウ将軍、ラインハルト、アロイス外務卿は互いにそう述べ、これから始まる自国の急激な発展を前に、全力を尽くそうと心に決めていた。
すると
「所で陛下、肝心の在ドイツ大使の事だが…」
「誰か、候補が?」
「はい、陛下さえ宜しければですが、リィズ殿下を大使になさるのはどうでしょうか?」
「私の妹を、なぜだ?」
「ドイツ側への誠意を見せる為、とでも申しましょうか。何よりリィズ殿下は、我が国の高官の中で初めてドイツと接触なされた人物、ドイツと我が国の橋渡しとしては、申し分ないかと…」
「なるほど…」
アロイスの提案を聞いたラインハルトはそう一言呟くと少し考え込み、そして。
「いいだろう、妹からは私から直接言っておく」
「感謝いたします」
「ただし、妹はアレでいて軍事指揮官として優秀な軍人だ、機会を見て本国へと帰還させる」
「かしこまりました、リィズ殿下が大使としてドイツに赴任している間に、代わりの大使の選定を行なっておきます」
「うむ、頼むぞ」
「はっ!」
アロイスにラインハルトがそう言った時、ある考えが彼の脳裏に浮かんだ。
「そうだ、折角の機会だ。リィズだけと言わず、アイツのエクェストリス騎士団も、先行訓練と称してドイツへと派遣するか…アロイス、ドイツ側とその方向で直ちに交渉してくれないか?」
「分かりました」
「ジークそう言う事だ、アロイスを通じドイツ側からの合意が来たら、すぐにでもエクェストリスをドイツへと派遣したい。エクェストリスには、命令があるまで門周辺で待機せよと命令を下せ」
「かしこまりました」
そしてその考えをアロイスとグナウゼナウ将軍に伝えたラインハルトは、二人にそう命令を下した。
それから1週間後の同年9月15日
ヴィザンツィア騎士団国
首都:コンスタンティヌスブルク
この日ラインハルトは、自国の主席宮廷魔導士であるミーミル・フォン・シルバーヴェルヒと会談を持っていた。
「どうしても…気持ちは変わらんのか?」
「えぇ、本気です」
「そうか…」
会談の内容、それはミーミルが本日を持って、宮廷魔導士を辞めたいと言う、その報告であった。
元々、ミーミルはラインハルトに忠誠を誓う騎士と言うよりも、その才能を見込まれ、ラインハルトによって直接雇われたパートナーという関係性であり、宮廷魔導士として雇われる時に、もし時が来たらいつでも辞めさせてもらう事を条件に、宮廷魔導士となっていた。
その為ラインハルトとしては、確固たる意志を持って辞める事を伝えたミーミルに対して、これ以上引き止める事はせず。
「分かった、君の好きにすれば良い」
「感謝いたします。それと、陛下には大変お世話になった為、その最後のご恩返しと言う訳ではありませんが…」
そこまでミーミルが言うと、ラインハルトの前に、大量の本や書類が収められた籠車が現れた。
「僕の作った研究書です。これを使って、騎士団国の魔法技術をさらに高めていただきたく…」
「うむそうか…しかしミーミル、辞めるのは良いが…この後はどうするつもりだ?まさかとは思うがロンデルに行くなり、帝国に行くと言う事は…しないだろうな?」
流石に、敵国である帝国にゆくと言い出せば、いくら国の功労者であるミーミルであっても、ラインハルトは許すつもりは無かった。
しかし
「ご安心ください、帝国には行きません…僕が行くところは…」
ミーミルはそこまで言うと少し笑い、そしてこう言った。
「次に行くところは…ドイツです」