帝国の旗を掲げよ   作:ドイツ軍ファルマート大陸軍集団

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閑話休題:ただ一度だけ

 

 

ヴィザンツィア騎士団国の大欧州帝国条約機構への加盟と同時に、ドイツと初めて接触した人物の一人である、中央騎士軍第10親衛騎士団エクェストリスの指揮官であり、ラインハルトの妹でもあるリィズの姿は、現在ドイツにあった。

 

ヴィザンツィア騎士団国の大欧州帝国条約機構の加盟式典の後、リィズと彼女が率いる騎士団の幹部や兵士達は、在独ヴィザンツィア騎士団国の臨時大使としてドイツに暫く滞在する事が決まり、ヴィザンツィア騎士団国大使館としてドイツから貸し出された、ベルビュー宮殿に暫く腰を落ち着かせる事となった。

 

そしてその一方で、彼女が率いる騎士団も、リィズが大使の任を解かれ、騎士団国本国へと帰還するまでの間、ドイツ軍の監督下で訓練を受ける為、ドイツへと入国する事となった。

 

そして1ヶ月後

 

ツォッセン

 

ドイツ軍の最重要拠点が置かれるこの田舎町では、現在空にはヘリが駆け抜け、大地にはティーガー2やパンター2が跋扈するなど、まさに戦場のような様相となっていた。

 

「砲塔2時へ、距離1000に敵戦車!弾種徹甲弾!」

 

かつて甲冑に身を包んでいたアンネリーゼは、今は黒いパンツァージャケットを身に纏い、自分が指揮を取る戦車の運転手にそう命令した。

 

「装填完了!」

 

「Feuer!!」

 

そしてアンネリーゼの号令と同時に、彼女が乗る戦車から徹甲弾が発射され、標的となっていたIII号戦車の装甲を貫き、見事敵戦車を破壊した。

 

「命中!」

 

「よし、各戦車そのまま前進!!どこに敵がいるかわからない!注意して進め!」

 

そして彼女が操る戦車、そしてそれに続く戦車隊も、アンネリーゼのその声に続くように、エンジン音とキャタピラの音を響かせながら前進した。

 

「これが戦車か…馬のような可愛げはないけど、力強くて良い!」

 

元来突撃武者的な戦い方を好むアンネリーゼは、戦車の持つ破壊力と力強さに、心を奪われていた。

 

 

(たった1ヶ月でここまで…ヴィザンツィア騎士団国…兵士の根本的な質は、我々とあまり変わらんかもしれんな)

 

そしてそのすぐ後方では、訓練を監督していた、第101SS重戦車大体の大隊長である、ミハイル・ヴィットマンSS中佐が、たった1ヶ月で戦車を物にした彼女達の兵士としての質に、感心していた。

 

一方

 

「訓練から一か月、あそこまで戦車を扱えるとは見事なものだな」

 

「全くです、最初のうちは操縦に苦労していた様子ですが、覚えた瞬間これです。彼女も、そしてその兵士達も飲み込みが早い」

 

エンジン音を響かせ突き進む、アンネリーゼが率いる戦車隊を、少し遠くから観察するように見ていた、武装親衛隊作戦本部長のパウル・ハウサー民族元帥、ドイツ国防軍陸軍装甲兵総監であるハインツ・グデーリアン上級大将は、飲み込みが早く、すっかり戦車の運用を身につけて居る様子である、アンネリーゼ率いるヴィザンツィア騎士団国中央騎士軍の元騎兵達に感心していた。

 

「正直に言うと、我々と接触する前までは中世、良くて17世紀レベルの文明の国の軍であるから、近代化は苦労すると思っていたが…識字率の高さや軍としての統率力など…戦い方以外は、20世紀の国と劣らないほど、高い国民性を持って居るな…」

 

「情報によると、ファランクス戦術だけでなく、分散して進軍する散兵線、更には、浸透戦術に似た戦法もすでに、騎士団国では開発されて居るとのこと…これならば、武器の扱い方や戦術をある程度叩き込むだけで、3〜4年ほどで、我がドイツ軍と肩を並べられる近代的な軍隊へと生まれ変われると言っても過言ではないでしょうな」

 

正直、ハウサー民族元帥も、グデーリアン上級大将も、ヴィザンツィア騎士団国の軍事的近代化に関しては時間がかかると思っていた。

 

だが、中世や古代ローマレベルの文明の国とは思えない程に優秀な兵士と、高い応用能力と識字率、そして、高い愛国心と、近代化の基礎となるであろう能力を、この国は身につけていた事に、二人は思わず彼の国のレベルに舌を巻いていた。

 

すると

 

「ヘリコプター部隊の演習ですな…」

 

ちょうどその時、二人の頭上スレイプニル旅団に属する、ヘリコプターの編隊が、猛スピードで駆け抜けるて行った。

 

「それにしても…姫殿下直々に訓練に参加するとは、中々に軍人として見どころがあるな」

 

そして通り過ぎてゆくヘリコプター部隊を見て、グデーリアン上級大将、そしてハウサー民族元帥はそれぞれそう述べた。

 

 

「周辺に敵影なし!!」

 

「よし、全部隊前進!!進め!!」

 

その頃、ヘリ部隊であるスレイプニル旅団監督の、ヘリコプターに乗る強襲攻撃訓練が実施されていた。

 

「ヴィザンツィア騎士団国の兵士共、ちゃんとついて来い!!姫、麾下の兵士の動向と戦闘地の周辺には、目をくばれ!!」

 

「はい、大佐!総員、いつ敵の襲撃があるかわからない!!注意しつつ前進、ミア!」

 

「大丈夫、付いてきてます殿下!」

 

そして、訓練とはいえ実践さながらであり、指導するミュラー大佐の怒号に近い命令と共に、訓練に参加するリィズと副官のミアは、互いに麾下の兵士達に目を配り、そして同時に戦場全体に目を配るようにしながら、敵陣地を想定した、訓練地の制圧を開始した。

 

「中々、仕上がってきてますね大佐」

 

「そうだな。ヘリコプターの操縦などの、複雑な機械操作には少し手間取って居る様子だったが、射撃や兵の動き、そして何より不測の事態の対応力も高い…良い兵士だ」

 

「あの姫様は、どう思いますか?」

 

「悪くない、視野も広いし勇敢、だが蛮勇ではない。それに、戦略的にものを考えられる力も一流だ、良い将軍になり得ると、俺は思う」

 

そして訓練を行うリィズや、彼女が率いる部隊の、高度な作戦遂行能力を見て、副官のアルフレッド中尉、そしてミュラー大佐はそう評価した。

 

このように、第10親衛騎士団の面々は、日々ドイツ軍の監督の元で近代化の訓練を行い、忙しい日々を送っていた。

 

その夜

 

「Prost!!」

 

「「「Prost!!」」」

 

この日訓練終了後に、ヴィザンツィア騎士団国の兵士たち、そして今回の訓練に参加したドイツ軍達の兵士達の交流会を兼ねた宴会が行われた。

 

兵士達は、えんどう豆やソーセージ、ローストポークなどの、ドイツ料理をつまみに、ドイツビールやワインを飲み、互いに談笑していた。

 

そんな中

 

「どうした姫君、何か浮かない顔をして?」

 

何故かリィズだけは、どうも借りてきた猫のような落ち着かない様子でその様子を見ており、それに気になったミュラー大佐はそう聞いた。

 

「いえただ…このような賑やかな宴会というのは、あまり経験が無いので…」

 

「なるほど」

 

話を聞きミュラー大佐は理解した。

 

いくら国としての団結は強いと言っても、ドイツ以上に階級社会であると考えられるヴィザンツィア騎士団国

 

貴族出身の士官達との会食はいくらか経験があるだろうが、今回のような、下士官と兵士達と共に行う宴会などおそらく初めてであろうと。

 

現に、リィズだけでなく精鋭と名高い中央騎士軍の兵士達の中には、リィズと同じように少し慣れていないような、そんな様子の士官達も、少なからず居た。

 

「ドイツ軍の士官は、この様に兵士達と食事を共にしたりするのですか?」

 

「…まぁ、人それぞれでしょうな。中級の士官でも兵士達と壁を作ってしまう者もいる一方、中には、軍の最高位である元帥の階級でありながら、兵士達の中へと入り彼らに寄り添ったり、あるいは最前線で戦闘に参加すると言う、勇猛な元帥もいますよ」

 

ミュラー大佐は、兵士たちに寄り添い、多くの兵士たちから慕われる元帥であるロンメル元帥

 

そして、最前線で戦闘に参加するなど勇猛で破天荒な指揮官として知られ、現在陸軍のナチ派の盟主的立場にいる、ライヒェナウ元帥の事を、頭の中に浮かべそう言った。

 

「ですが、これは個人的な意見ですが、我々は一度戦場に出れば司令官も下士官も、兵士も関係なく、一戦場に身を任す家族以上の絆を持つ戦友となる。そして戦友同士の強固な絆こそ、最終的に勝利を掴み取ると…だからこそ、我々は互いに命をかける者同士、こうして飲食を共にし、絆を深めなければならないと、私は思うのです」

 

「なるほど…戦友ですか」

 

ミュラー大佐が言った兵士たちの団結、それはヴィザンツィア騎士団国の兵士にとっても重要な要素であり、帝国と言う自国よりはるかに勝る国力を有する国に対して、対抗できる数少ない要素こそ、強固な団結力であるからだ。

 

だが一方で、ヴィザンツィア騎士団国の団結は、思想的、そして優生学的な側面からくる所が多く、こうして兵士一人一人との絆による団結というのは、少し薄いかもしれない…そうリィズは思った。

 

「…兵士も、人間なのですね」

 

「えぇ…戦争をする以上、兵士というのは消耗品であるかもしれない。しかしそれでも、兵達は生きて、そして私たちの様な人間である事には変わりない…だからこそ」

 

「指揮官は、兵士と共にあらねばならないと?」

 

「そうだ」

 

ミュラー大佐のその言葉を聞いたリィズは、何かを感じた様子で徐に自分のグラスに注がれていた、ビールを飲み干した。

 

「へぇ、ドイツのエールは美味しいね」

 

「お姫さん、それはエールじゃなくてビールですよ」

 

「ビールか」

 

その後

 

リィズはドイツ兵、そして自分が指揮する兵士たちの中へと入り、彼らの話を聞き、彼らと本当の意味での交流をした。

 

その話は時に家族の話

 

時に故郷の話

 

そして時には大戦で死んだ戦友の話

 

いろんな話に、リィズは耳を傾けた。

 

(あのお姫さん…本当に良い指揮官になるな)

 

そしてその姿を見て、ミュラー大佐はそう徐に思った。

 

すると

 

「大佐、酒も回ってきましたし、いつものよろしくお願いしますよ!」

 

「うむ、良いだろう」

 

副官の、アルフレッド中尉がそう言い、それを聞いたミュラー大佐はグラスに残っていた酒を一気に飲み干すと、ヴァイオリンケースを取り出した。

 

するとそれと同時に、リィズも朝から立ち上がり、そばに置いてあったピアノの前に座った。

 

「姫、ピアノを弾けるのですか?」

 

「実は私、軍人にならなければ音楽家になりたかったと思うほど音楽好きでして。だから、ドイツで時間を見つけてはピアノの練習を趣味でやってたので、多少は…」

 

「ほぉ、それはすごい」

 

「最近では、自作の軍歌や行進曲も作ってみようと思ってるんです。完成したら、ぜひ聞いて見てください」

 

「それは楽しみだな…」

 

リィズの話を聞きそう言ったミュラー大佐は、自分のヴァイオリンの弦を調整し、そして静かに弓を弦に置いた。

 

するとその時

 

「大佐…」

 

「なんですか?」

 

何故かリィズは顔を少し赤くし、そして恥ずかしそうにモジモジとしながら少し間を置くと、ミュラー大佐にこう言った。

 

「あの…もし良かったら…その…」

 

「?」

 

「もう少し、砕けた言葉で話しかけて下さい!訓練中だけじゃなくて、その…プライベートでも…」

 

「うむ…」

 

それを聞いたミュラー大佐はそう呟くと、少し息を吐き。

 

「それじゃ始めよう、Fräuleinリィズ」

 

そうミュラー大佐は、リィズに言った。

 

「///はい!」

 

今まで姫と呼んでいたミュラー大佐が、Fräuleinと、敬称はついていたものの、自分の名前を呼んでくれた、その事にリィズは、少しだけかもしれないが、ミュラー大佐との距離が縮まった、そんな気持ちがした。

 

そして、そうこうしている内に、ミュラー大佐のヴァイオリンの音色、そして次にリィズが演奏するピアノの音色が酒場を包み込んだ。

 

その曲は、ドイツではポピュラーな曲である"ただ一度だけ“であった。

 

「「「

 

夢を見ているのか?起きているのか?

Träum ich? Wach ich?

 

泣いているのか?笑っているのか?

Wein ich? Lach ich?

 

 

今の私は何をしているのだろう

Heut weiß ich nicht was ich tu.

 

どこにいても 私に向かって

Wo ich gehe, wo ich stehe,

 

皆が微笑みかけて来る

lachen die Menschen mir zu!

 

今おとぎ話は現実になり

Heut werden alle Märchen wahr!

 

今一つの明るい光が見える

Heut wird mir alles klar

 

ただ一度だけ

Das gibt's nur einmal,

 

二度とない

das kommt nicht wieder.

 

本当なら素敵すぎて

Das ist zu schön,um wahr zu sein.

 

奇跡の様に

So wie ein Wunder

 

降ってきたのは

fällt auf uns nieder

 

天からの黄金の輝き

vom Paradies ein gold'ner Schein.

 

ただ一度だけ

Das gibt's nur einmal,

 

二度とない

das kommt nicht wieder,

 

きっとただの夢だよね

das ist vielleicht nur Träumerei!

 

きっと一生に

Das kann das Leben

 

一度だけ起こる

nur einmal geben

 

明日にはもう消えてしまう

vielleicht ist's morgen schon vorbei!

 

きっと一生に

Das kann das Leben

 

一度だけ起こる

nur einmal geben

 

それぞれ春に5月は一度しか無い様に

denn jeder Frühling hat nur einen Mai.…」」」

 

その歌詞はまさに、今起こっている奇跡にピッタリな歌詞であった。

 

言語や文化が少し似ていること以外は、全く別の世界、別の歴史を辿ってきた二つの世界の、二つの国の兵士達が、一緒にテーブルを囲み、一緒に酒を飲み、一緒に歌う…それはまさに奇跡と言うのに相応しい出来事であった。

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