帝国の旗を掲げよ 作:ドイツ軍ファルマート大陸軍集団
ヴィザンツィア騎士団国の建国史の始まりは、今から丁度995年前
多くの国や民族が蔓延るファルマート大陸にて誕生した、とある大国と共に始まる。
その国の名前は帝国…
唯一の覇権国であると自負するこの国に、正式な国名は存在しない。
元は、共和制をとって来た多くの人間の国々が、一人の皇帝の元に結集して作られた、大陸にまたがる巨大な国であり、その国の政体は古代ローマと中世ヨーロッパを融合させた様な国である。
広大な国土、そして強大な軍を保有しており、そしてその中において一際強く、そして団結した軍隊を率いる人物こそ、初代帝国皇帝の弟にして、初代ヴィザンツィア騎士団国総長となる人物
アレクサンドロス・フォン・コンスタンティヌスである。
「初代総長、私達は敬意を込めてアレクサンドロス大総長が率いる軍はまさに無敵だったとのことです。大総長の言葉言葉は、まるで上等な酒のように兵士達の心に染み渡り、そしてその言葉に感化された兵士達は強く勇敢な戦士となりら歩兵は巨大な山の様に固く隊列を組み前進し、騎兵はさながらミスリルの槍の様に鋭くそして何者にも防ぐことは出来ないほどの破壊力で敵を蹴散らし、そして飛竜隊を史上初めて組織し、その部隊はまさに猛禽の如く的に攻めかかったと、あらゆる戦記物語と歴史書に記されて居ます」
「なるほど、君達の初代最高指導者は本当に有能で勇敢な指導者であったのだな。我が国の軍人であれば、心強い名将になれただろうな」
「かもしれませんね」
リィズが説明した様に、当時のヴィザンツィア騎士団国の母体となった騎士団であるヴィザンツィア騎士団は強く、そして固い団結を持ち、そして何より当時は誰も編成していなかった飛竜による航空戦力の創設など先進的であった。
そして話を聞いたミュラー大佐は、その強さと同時に、そんな騎士団を組織したヴィザンツィア騎士団国初代総長、アレキサンドリア大総長の高い先見性と戦略眼、そしてカリスマ性を断片ながら感じていた。
「まぁ、最も当時の騎士団が無敵だったのはもう一つ理由がありましたが…」
「それは?」
「…ミュラー大佐、初めて大佐と私達がお会いした時に、私達の世界の神について話した事を覚えていますか?」
「初めて…」
その言葉を聞いた時、ミュラー大佐の脳裏には、初めてリィズ達会った時…
そう、ベルリン郊外のツォッセンの国防軍の秘密総司令部近くで行われる事となっていた、ドイツ軍の演習を見せる為に、彼女達をヘリコプターに乗せた時に話した事を思い出した。
「思い出した…確かFräuleinの国で信仰されている神…確か、エムロイであったな…」
「えぇ死と断罪を司り、そして戦争にまつわる神です。ですが、この神は我々純血のヴィザンツィア人が信仰していたと言うよりも、最近領土を広げ、支配下に入った人種達が主に信仰しているだけであり、我々ヴィザンツィア人が信じているのは別の神です」
「それはなんだ?」
「戦争と勝利、そして建国の神ヴィクトーリアです」
「なに、ヴィクトーリア?」
リィズの述べた神の名前にミュラー大佐は少し驚いた。
何故なら、ヴィクトーリアは自分たちが住むこの世界においても、古代ローマ帝国時代に信仰され、今では勝利を意味するVictoriaの語源ともなった神であり、ここベルリンにも、ナポレオン戦争に勝利した時を記念して作られた、戦勝記念碑にも、ヴィクトーリアの黄金像があしらわれている。
そして、本や神話が好きなミュラー大佐は無論知っているし、何より定期的に放送されている軍歌のラジオ放送で演奏される、親衛隊の軍歌ジークハイル・ヴィクトーリアにもその言葉が出てくるのだから。
「伝説では当時、エムロイの神官であり亜神であったヴィクトーリアは、どう言うわけかヴィザンツィア騎士団…いや、どちらかと言うとアレキサンドリア大総長に味方し、数多の戦場を駆け抜け、多くの敵を、武器であるオリハルコンの槍によって蹂躙していたと記載があります」
「…確か情報によると、亜神とは君達の世界において不穏分子を叩き潰す…いわば、我々の世界での魔女狩りの異端審問官の様な存在だと聞いているが、何故そのヴィクトーリアは味方を?」
ミュラー大佐は、話を続けるリィズにそう聞いた。
亜神…神に選ばれ、将来神になる事を約束された神官が神になる前に変身する存在であり、文字通りの不老不死の体を持つ存在であり、その役目は禁忌に反した人間や行き過ぎた力を持った存在を世界から消し、ヴィザンツィア騎士団国などが存在する世界の均衡を守る、いわばファルマート大陸と呼ばれる世界の庭師の様な存在であると…
因みに、目に見える存在を神と呼ぶ事に対して、キリスト教を信じる人間が多く存在する国防軍の軍人の殆どは眉を顰めていたが、一方で親衛隊、そして何よりヒトラーは、不老不死になれるという、人類創生以来の人間、そして権力者にとっての最大の夢とも言えるその神秘的な能力に興味を持ち、アーネンエルベに命じて、亜神を含めたファルマート世界の神秘的な存在に対する研究を行う秘密作戦…作戦名"アンブロシア"ギリシャ神話に登場する不死になれる禁断の果実の名を冠した秘密作戦の準備が進められていた。
何はともあれ、ファルマート大陸が存在する世界のシステムを維持する存在である筈の亜神が、一勢力に与する理由がミュラー大佐には分からず、徐にリィズにそう聞いたのだ。
「それは…残念ながら分からないです。色々と、説はありますが我が国で通説となっているのは…」
「なっているのは?」
「我が神ヴィクトーリアは、アレクサンドリア大総長に恋をしていた…だから我々と共に戦場を駆け抜けていたと、そして彼女とアレクサンドリア大総長の間に生まれた子供が、第二大総長ユスティニアヌス芸術総長であり、我々総長家の血脈には、帝国の皇族だけでなく神の血も混じっていると、そう言われています」
「なるほど…」
話を聞いたミュラー大佐はそう言ったが、正直神、或いは神に匹敵する英雄の血を引く王家云々と主張するのは、古代の王家では度々見られた、典型的なプロパガンダ的な話であり、正直少しだけ懐疑的であった。
(だが…案外、神や不老不死の人間がいる分、あり得ない話では無いかも知れないな…)
だがヴィザンツィア騎士団国が存在する世界は、ファンタジー世界…神の血を引く王家が本当にいてもそこまで不自然では無いかも知れないとミュラーは思った。
「まぁ、何はともあれ当時亜神であった、ヴィクトーリアが我々の味方をしてくれた事もあり、我々は多くの戦場で無敵を誇っていました…そして、運命のあの日も…」
「建国の日…確か、今から995年前の12月24日であったな?」
ヴィザンツィア騎士団国の建国日…即ち騎士団国が帝国に反旗を翻した日である。
因みに、最初建国日を聞いた時は、まさかドイツではクリスマスの日として知られる日と同じ日が建国記念日であった事に、ミュラー大佐は、なんとも言えない不思議な気持ちになった事を今でも覚えていた。
だが何はともあれ、ドイツではクリスマスとして知られているその日に、ヴィザンツィア騎士団は、建国されたばかりの帝国に反旗を翻し、反乱を起こした。
その理由は、国内の民族問題である。
帝国が建国された際、国内にはヒトだけでなく、エルフ、キャットピープル、ワーウルフなどの多くの非人間種族…亜人が大勢いた。
その亜人と呼ばれる人種に対して、帝国の元老院や皇帝は、帝国には向かわなければ何もしない、いわば放置の姿勢を取ろうと言う事で話はまとまっていた。
だが、アレキサンドリア大総長とその部下であるヴィザンツィア騎士団の幹部達はその意見に反対した。
「アレキサンドリア大総長は、今後の民族摩擦、そして将来の内戦と分裂の種となる可能性を持つ内なる敵勢力である為、帝国やヒト種の未来を永遠にする為には、奴等の絶滅を前提とした大規模な民族浄化作戦を行う必要があると説明したのです。ですが、事なかれ主義の弱腰であった当時の帝国の元老院や皇帝は、アレキサンドリア大総長の意見を一蹴しました」
「だから反乱を起こしたのか?」
「えぇ、帝国政府は惰弱であり、この様な国家は永遠に栄えない。だからこそ、ヴィザンツィア騎士団のような鋼鉄の団結と民族的優秀性を理解する事から生じる誇利を胸に前に進む鋼鉄の軍事国家を作るべきであると考え、帝国に対して、我々の祖先達は反乱を起こしたのです」
当時、帝国とヴィザンツィア騎士団国の戦力は、30対10と言われており、まともに戦っては勝てる筈が無かった。
しかし、アレキサンドリア大総長の巧みな指揮と精強な騎士団、そして何より亜神であったヴィクトーリアの鬼神の如き活躍により帝国軍に対して、大きな出血を負わせ、何とかいた見分けに近い形となった。
「そして我々ヴィザンツィア騎士団は、大総長以下すべての騎士団メンバーの罪を永久に問わない事を条件に、当時西方の辺境へと追放、そして追放された土地で帝国に対する復讐と反撃、そして亜人の脅威からいずれ全人類を解放すると言う大いなる指名の元、我々騎士団は軍事組織から国となり、ヴィザンツィア騎士団国が誕生したのです」
「なるほど、それが貴国の詳しい建国の歴史が…」
話を聞けば聞くほど、本当に今こうしてドイツと同盟関係を組み、近いうちに観光客まで誘致する所まで関係を築けたとは思えないほどに、まさに狂犬…いや狼の様な国であるとミュラー大佐は感じた。
「所で、前々から聞きたかったのだが建国から900年以上経っているわけだが、Fräulein自身は国の純血主義に対してどう思っているんだ?」
「私ですか?」
「そうだ…個人的な興味だ。どんな事を言おうが、ゲシュタポや君の国の国家憲兵隊に密告しようとは思わない。正直に答えて欲しい」
「…そうですね」
その質問を聞いたリィズは少し考え、そして強い決意を持って答えた。
「正直、亜人に対してそこまで憎しみはありません…が、同時に亜人とヒト種の間には確かな対立関係が存在し、いずれその怒りと憎しみは蓄積され、爆発する時が来ると思います。ならば、今のうちにその目を刈り取っておく事は、世界の為、そして我々の次の世代の人々の為に我々が行うべき事であると考えます」
「なるほどな…」
「少なくとも、今を生きる我々が手を汚す事で、未来を生きる事となる次の世代が憎しみを持たず平和に暮らせるのであれば、純血主義を貫き、そして完成させる事は、義務では無いかと考えます」
決意に満ちた、まさに軍人らしい目つきと答えに、ミュラー大佐はそれ以上何も言えなかった。
(まぁ最も、我々が彼女達の行いを否定する権利は無いがな)
先の大戦では、多くの英国兵やソ連兵を殺し
戦後の冷戦では多くの戦場を飛び回り、ある時はアフリカで独立と社会主義国建国を夢見る現地人を殺し
ある時はボーア人の独立を阻もうとする南アフリカ軍の兵士を空から撃ち殺す
常に戦場に身を委ねる、自由の為、正義の為、国の為戦っていた兵士達を鉤十字とナチズムの旗を掲げ、偉大なる総統アドルフ・ヒトラーの為と思い、戦場で戦い、敵を殺し、そして戦友達を死地に立たせて来た自分に、彼女と彼女の国の主義主張に対して文句を言う資格は、自分には無いと、ミュラー大佐は感じ、そしてこれ以上この話をするのはやめようと思った。
「所で、君達の建国の女神ヴィクトーリアは、その後どうなったんだ?」
「100年後に昇神して、本当の神になりました」
「なるほど、今は空の何処かで君たちの国を見守っていると言うことか…」
ミュラー大佐はそう言うと、すっかり冷めてしまった紅茶を飲んで喉を潤した。
「しかし…」
「どうかしましたか?」
「いや、君たちの世界から見たら過激とも言える君たちの国が、よく今まで滅ぼされずに済んだなと思ってな…帝国を含めた他の国の侵略はないにしても、例えば亜神とかが世界の均衡を守るためと言って、君達の国に対して制裁を行う事は無かったのか?」
ミュラー大佐は、ヴィザンツィア騎士団国の話を聞けば聞くほど、本当によくこんな過激主義の国が、世界の庭師を気取る亜神に滅ぼされなかった物だとそう思った。
すると
「そんな事はありません、実際に亜神に国を滅ぼされそうになった事は一度だけありますよ」
「本当か?」
「えぇ…ですが、我々ヴィザンツィア騎士団国がそれ以上の事を、ファルマート大陸に対してやった事で、今では神すらも恐れて、私たちの国に侵攻してくる者は減りました」
「と言うと…?」
「ここからが、ミュラー大佐が貸していただいた北欧神話に関係があります…」