帝国の旗を掲げよ 作:ドイツ軍ファルマート大陸軍集団
ドイツ空軍総司令部
ゲーリング執務室
「そうか、大佐はリィズ殿下と仲良くやっている様だな」
「はい、ゲーリング閣下」
ミュラー大佐とリィズの二人が、仲良くお茶を飲みながら、ヴィザンツィア騎士団国の歴史を聞いているその頃、世界最強と称されるドイツ空軍の総司令部の一室
ヒトラーを除けば、ナチスドイツ、そして国防軍において、最大の権力を持つとされるナチスと国防軍の大幹部、ヘルマン・ゲーリング国家元帥の部屋にて、ゲーリング、そしてミュラー大佐の副官である、アルフレッド中尉の二人が話をしいていた。
実は、ゲーリングは自身の直轄の諜報機関である、ゲーリング調査局、そして自身の子飼いの軍人を通じて、リィズがミュラー大佐に対して恋愛感情を持っている事に気づいていた。
ゲーリングは、ナチス内部でも一、二を争うほど強い権力欲を有し、そして同時に軍人ではあるが、いや軍人だからこそ無駄な戦いは避けるべきであると考えるやど、陸軍のライヒェナウ元帥やシェルナー上級大将などの軍国主義者とは違い、穏健的な考えを有する人物である。
そんな人物である為、ゲーリングはリィズやミュラー大佐の預かり知らぬ所で、この二人の仲を進展させ、あわよくば結婚させる事で、ヴィザンツィア騎士団国の王室内部にドイツ空軍の影響力を浸透させ、将来的にはファルマート大陸の開発などに関しては、自身の所有する巨大企業、ヘルマン・ゲーリング国家工場、そして空軍と自分の派閥に属するナチス幹部達が中心となる事を狙っていた。
その為、ゲーリングは、ミュラー大佐の部下であるアルフレッド中尉に命令し、ミュラー大佐の動きを逐一報告させる様にしていた。
(何の因果か…アプヴェーアの仕事もやる事がある精鋭部隊所属とは言え、俺みたいな唯の中尉が、我らが太った鋼鉄元帥閣下直属のお使い係とは…)
ただの空軍中尉であったはずの、アルフレッド中尉は今自分が置かれている立場に対して、何でこんな事になったのかと、そう心の中で思う一方、尊敬する、それこそ本来であれば口も聞けない様な上司であるゲーリングや自国の指導者であるヒトラー以上に尊敬する、直属の上司であるミュラー大佐をスパイするなどという、個人的には不名誉極まりない任務をやっている事に対して、罪悪感を抱いていた。
(第一、ミュラー大佐とあの姫様を結婚させて、向こうの王室を空軍が乗っ取るとか…そんなこと出来ると思ってるのか?)
そして同時に、ゲーリングの飽くなき権力欲とヴィザンツィア騎士団国、そしてひいてはファルマート大陸をも空軍の支配下にする事が出来るとゲーリングが豪語するこの作戦が、うまくいくのかとそう思っていた。
「どうしたのかね、中尉?」
すると、そんな億劫な気分が顔に出ていたのか、彼の何ともいえない様な表情に気づいたゲーリングはそうアルフレッド中尉に聞いた。
「いいえ、問題はありません閣下」
そしてアルフレッド中尉は、すぐさま背筋を伸ばしそうゲーリングに言った。
「うむ、まぁいい。引き続きあの二人の動向に関しては目を離すなよ」
「Jawohl!」
「うむ、下がりたまえ」
「Heil・Hitler!」
「Heil・Hitler」
(いざという時、スケープゴートにされるのはごめん被りたいな…)
アルフレッド中尉は、ゲーリングに対して最後にナチス式敬礼をして、部屋から出て行き、同時に部屋から出る去り際、そう心の中で思った。
(しかし…確かに無限の可能性と資源を秘めたファルマート大陸を物にすれば大きな利益を得る事が出来るとはいえ…なぜゲーリング閣下はここまで必死になるのか…)
仮にも諜報機関の実働部隊の士官であるアルフレッド中尉、何処かゲーリングの行動に、焦りがある事を感じ取っていた。
その頃
ゲーリング執務室
「これ程の広大な国土と手付かずの資源と市場…」
ゲーリングは、ヴィザンツィア騎士団国から提供されたファルマート大陸の地図の複写を眺めながら、徐にそう呟いた。
(総統閣下とて不死身ではない。あと10年もすればお亡くなりになる可能性もある…そして、もし総統閣下が亡くなられれば、この国は必ず内戦へと突入するだろう…それまでに、ファルマート大陸の資源、市場を、私の手の中に収め、来る内戦の時には、この大陸の無尽蔵の資源と、そこから生み出される資金が、必ず私を勝利へと導くはずだ…)
ドイツ第三帝国…
先の戦いではフランスを征服し、イギリスを降伏させ、そしてソ連からも膨大な領土を削り取る事に成功したこの軍事大国は、実はとても不安定な状態にあった。
国内はナチ党、国防軍ナチ派、国防軍プロイセン派、そして親衛隊と、四つの勢力が水面下で権力闘争を繰り広げており、最高指導者であり、先の大戦の最大の英雄として国民や軍人達からの尊敬と崇拝を不動の物としたアドルフ・ヒトラーと言う唯一絶対の指導者である、総統が接着剤となっている事で、辛うじて一つの国家として団結している状態であった。
だが、ヒトラーとていつまでも生きているわけではない、いずれ寿命が尽き、死ぬ事になるのは、それは天命であった。
だがそうなった場合、次の後継者がすんなり決まるとは、ゲーリングは考えておらず、おそらく自分を含め、他の誰が次の指導者になろうとも、血を見る事になってしまうのは火を見るより明らかであった。
その為、ゲーリングは来るべき内戦に備え、資金、資源を確保する為に、ファルマート大陸の利権確保に躍起になっていたのだ。
(あの不気味な黒服の連中やボルマンの蛆虫にこの国は渡さん…総統閣下のご意志とアーリア人の伝統を引き継ぎ、この国を守ってゆくのは私だ!必ず、遠くない未来起こるであろう内戦に勝利する!そして勝利の為には…なんとしてもあの可能性が詰まるあの未知の世界が必要なのだ…)
その頃
裏で一人の男による虚栄心と出世欲から来る陰謀が張り巡らされているとも知らず、ミュラー大佐は、リィズの話を聞きお茶を飲んでいた。
ベルビュー宮殿
「建国から500年、その間我々ヴィザンツィア騎士団国は帝国憎しと偉大なる使命の完遂の為、我々はあらゆる技術力を向上させて来ました。魔法、化学、戦略…いわば、我々人類が培って来たありとあらゆる力を結集し、ヴィザンツィア騎士団国が存在するあの半島…ヴィザンツィア半島を開発して来ました」
水面下で、謀略の網が広げられている中、リィズとミュラー大佐の二人はその事を知らずヴィザンツィア騎士団国の歴史を話していた。
「そして、帝国からの追放と分離独立から400年後…我々ヴィザンツィア騎士団国の最盛期となる時代…オーディン神総長の時代が始まりました」
「オーディン…我が世界では、北欧神話最強の神とされているな…」
「えぇ、大佐が言う北欧神話に書かれていたオーディンの様に、オーディン・フォン・コンスタンティヌス神総長も、まさに最強であり、剣を持てば猛将、魔法を使えば大賢者、戦に赴けば大知略家と言われるほどの人物でした。そして当時のヴィザンツィア騎士団国も、今よりも高い魔法技術を有する国でした…ですが、それが災いしてしまいました」
「と言うと?」
「飽くなき探究心と野心を持つ私たちの国を、世界の均衡を崩す存在であると勝手に考えた亜神が、周辺諸国を糾合して我が国に攻め込んで来たんです…」
その話を聞き、ミュラー大佐は先ほど、リィズが教えた亜神の特徴、すなわち不死しである事を思い出すと思わずゾッとした。
新任将校として初めて参加した先の大戦や、その後自分の部隊を持つようになってから参加した、世界中で行われている代理戦争など、数々の死線を潜り抜けて来たミュラー大佐とはいえ、不死の相手と戦って戦意を保てるかと言われれば無理であった。
その為ミュラー大佐は、相手を敵に回して、よくこの国は無事であったなと少し感心したと同時に、とある疑問を感じた。
「その時、どうやって君達の国は助かったのだ?」
「我々騎士団国の国民の大多数が信じている戦勝と建国の神のヴィクトーリア…その加護のお陰です」
「と言うと?」
するとリィズはとんでもない事を言った。
「亜神が我が国に攻め込んできたその時、神となったヴィクトーリアが同時のオーディン騎士団総長を始めとした、軍首脳陣、そして我々中央騎士軍精鋭2万人を亜神にしたのです」
「はっ?」
その話を聞いた瞬間、流石のミュラー大佐も思わず頭が真っ白になった。
「つまり、当時のヴィザンツィア騎士団国は、軍高官など、政府のトップ全員が不老不死になったと言う事か?」
「まぁ、全員というわけでは無く、文官、そしてオーディン神総長の次男などを除く多くの軍人や精鋭兵士が亜神となったのは事実ですね」
「だが二万人の不死の軍隊…それを君達が崇拝する神、ヴィクトーリアただ一人の力で…本当に可能なのか?」
「…でも事実です大佐」
「そうか…しかし二万人の不死の軍隊とはな」
話を聞いたミュラー大佐は、あまりにも壮大でそして驚愕する内容に内心少し戸惑いながらも、そう呟いた。
すると
「大佐は…不老不死になれるとしたらどう思いますか?」
「不老不死か…興味無いな。人間は限りある命だからこそ日々を必死に生きれる。不死など、ただの生き地獄と変わらないのでは…と、俺は思う」
「なるほど」
「ただ…党や親衛隊幹部の中には、必ず不老不死になりたい人間はいるだろう…おそらく、近いうちに亜神に関する研究も開始されるかもしれないな。その際には、自分達が不死になるだけでなく、不死の兵士によるカンプグルッペンも実用化しようと躍起になるかもしれないな」
ミュラー大佐は、ボルマンやハイドリヒなどの野心あふれる幹部たち、そしてヒトラーの顔を浮かべながらそう言った。
「しかしやはりわからないな、なぜ君達の神はそれほどまでに、騎士団国を贔屓したのか…何か心当たりとかはあるか?」
「そうですね…恣意と言えば、ヴィクトーリア信仰の内容…かもしれませんね」
「信仰の内容?」
「えぇ、信仰の教義は神々によってもちろん違いますが、共通しているのが唯一祈る事と信じる事…そしてそれを貫いた者が、神になる前の段階の亜神になれます。ですが、ヴィクトーリアの信仰は祈る事だけでは無くもう一つ、大事な事があります」
「大事な事?」
「戦う事です。破壊と闘争、戦争の勝利の先にこそ永遠の国家と、純粋な世界が待っている、それが我々が信じる、ヴィクトーリア信仰の根幹となっております。なので、亜神の襲来と言う絶望的な状況にも関わらず、最後まで戦おうとした、その姿勢に我らが神、ヴィクトーリアは、当時のオーディン騎士団国総長やご長男のヴァーリ王子や将軍達、そして精鋭2万人の兵士達を亜神になるべき人間であると認めたのでしょう」
「なるほど戦うか…と言う事は、もちろん亜神を追い出して終わり…と言うわけでは無さそうだな」
騎士団国の成り立ち、そして彼らの哲学と思想、それを聞いたミュラー大佐は、自国を破壊しようとした亜神を追い出して、それで終わりになるとは思えず、そうリィズに聞いた。
するとリィズは今までに無いほど生き生きと語り出した。
「勿論です、神に選ばれ不死身の体と不死の軍団を手に入れたオーディン神総長は亡国の試練を乗り越えた後、ついに時が来たと判断しました」
「時?」
「帝国を滅ぼし、世界を再編し、人種による純粋な世界を作る、建国以来我が国の目標であった、民族の聖戦を行う、その時が来たと、そう判断したのです。つまり、今こそ帝国とファルマート大陸全ての国に対して、攻勢を行う時であると、それこそ第一次民族聖戦の始まりです」
民族聖戦…他の国では大陸大戦と呼ばれる今なおファルマート大陸最大の戦いとして知られている、大陸全土を巻き込んだ大戦争である
他国では、ヴィザンツィア騎士団国の2万人の兵士と、当時の戦争指導部全員を亜神にすると言う、戦争の神であるヴィクトーリア神の大暴挙によって始まった大陸史上最大かつ凄惨な戦争として、主に悲劇などの題材として使われ、特にヴィザンツィア騎士団国の殲滅目標である亜人達は、この戦争によって巨人族と呼ばれる亜人を始め、多くの種族が絶滅され、そして生き残った種族も大きく個体数を減らされた恐怖の戦争として認識されており、その為その原因を作ったヴィクトーリアは亜人達からは、今なお種族に災いをもたらす邪神としてみられている。
一方の、ヴィザンツィア騎士団国では、神に選ばれた2万人の勇者達と将軍達、そして不死身の体と多彩な魔法を使う神の如き総長である、オーディン・フォン・コンスタンティヌス総長が活躍する英雄活劇として、今なお首都の演劇場で最も上演されて居る作品として知られており、開戦日の6月23日は国民の祝日として祭りにもなるなど、徹底した神格化が行われている。
「しかし神によって選ばれた不死の軍団か…その進軍姿はさぞ凄まじい物だろうな」
まさに神話の如き戦と軍隊、一体どの様な様子であったのか、リィズの話を聞いていたミュラー大佐は、想像力を膨らませながらそう言った。
すると
「でしたらちょうど良い物があ…」
リィズはそう言うと、部屋の本棚から古く大きな一冊の本を持ち出して来た。
「これは我が国で一番古い、当時の第一次民族聖戦の様子が描かれた本です。古いですが、当時活躍された名のある将の皆様の名前や活躍の風景が記載されており面白いですよ」
「…これは」
リィズの出して来た本を興味深そうに見たミュラー大佐は暫くして驚愕してしまった。
何故ならその本に描かれている人物、オーディンだけでなくワルキューレや他の北欧神話の神々などが、当時のヴィザンツィア騎士団国の不死身の体を得た将軍として描かれていた
(まさか…本当にそうなのか?)
この本を見て、ミュラー大佐は自身が仮説として考えてしまっていた、北欧神話の神がファルマート世界から来たのではないかと言うその説が現実味を帯びて来た、そんな気がしていた。
「どうですか?」
「…すごいな、特に本に描かれている戦いの風景がまた」
一方で、本に記載されていた絵、まるでミケランジェロが作ったとされる、サンピエトロ大聖堂の最後の審判の様な、美しい絵に心を奪われていた。
「第一次民族聖戦戦記…世界で5つしか無い本です。後の四つは兄様とミレーネ様の文化・思想省、中央騎士軍の宝物庫で管理されています」
そしてミュラー大佐の感想を聞いたリィズは少し誇らしそうな様子でそう述べた。
「残り一つは?」
「帝国領の魔法都市、ロンデルにあるらしいです」
「なるほど」
リィズの説明を聞いたミュラー大佐であったが、本に絵がれている最後の一ページに描かれたあるシーンに目が止まった。
そのシーンとは、何も無い原っぱの平原に、野営地の跡だけを残し、人が消えたシーンである。
「最後のシーン、アルヌス会戦の後ですね」
するとその様子を見たリィズが補足する様にそう言った。
アルヌス開戦とは、第一次民族聖戦において、ヴィザンツィア騎士団国と帝国や周辺諸国の軍が一同に介して対決した最後の大開戦である。
この戦いにおいて、ヴィザンツィア騎士団国は不死の軍団と通常の正規軍合わせて10万、対する帝国軍を主体とした連合軍は50万の大軍とがぶつかり合う大決戦であった。
この戦いにおいて騎士団国は不死身の体を持つ12人の女性戦士、ワルキューレ騎士団や2万人の兵士達を最前線に投入し、オーディン自らも最前線で戦った。
その結果、ヴィザンツィア騎士団国は、一万人の犠牲者でもって50万人の兵士達をほぼ殲滅し完勝し、この戦いの影響で兵が無くなり後に滅んだ国も続失し、帝国も一時期滅亡寸前まで陥るほどの痛手を負った。
「それ程の大会戦に勝利し、残すは帝都を落とすまで…の所まで来た後、勝利後の宴の後、一晩明けた後、何故かオーディン総長や不死の2万人の兵士達、その他当時の戦争指導者達が忽然と消えてしまったんです」
「なんだと?それは不思議な事だな…君達の世界の神に消されたとか?」
「分かりません…ですがアルヌスと言う土地は、歴史上唯一ベルリンに出来たような"門"がたびたび出現して来た唯一の土地なんです。ですので、一部の学説では今の我々のように門を通り、異世界へと言ってしまったのでは無いかと言われているんです」
「なるほどな…それで、その後はどうなったんだ?」
「文官気質で、唯一亜神になっていなかった騎士団国の総長家の者であった、オーディン総長の2番目の息子である、ハインリヒ・フォン・コンスタンティヌス陛下が、行方不明になったオーディン総長の代わりに総長の座に着き、各国と終戦協定を結び北部辺境領…今のドイツ軍特別軍政地区の領有権を、帝国の属国の一つであるアルグナ王国に渡す代わりに、領土や賠償金などは互いに求めないと言う合意の元、兵を引き上げました、本当に後もう少しだったのに、今を生きる私たちからしても悔しい限りです」
正直、あれほど好き放題大陸に侵攻した上で、いきなり一方的に停戦、しかも大規模な領土割譲や賠償金もない事に各国は不満が無かったわけでは無かったが、不死身となった騎士団国軍の軍勢の前に、手ひどくやられ、軍隊ももう残っている状況でなく、対してヴィザンツィア騎士団国は戦争指導部が全員行方不明と言う指揮系統の混乱はあるが、唯一国土が戦火に巻き込まれていなかった事もありまだ余力が残っており、違いの利害と状況の一致により戦争が終了した。
だがこの戦争が残した傷は大きく、周辺諸国はヴィザンツィア騎士団国に対して恐れを持ち、できる事ならば今すぐにでも撃ち倒したいと思いながらも、騎士団国を追い詰め、再び同国の守神であるヴィクトーリアが暴挙をはたき、先の大陸での大戦が再来する事を恐れ、周辺諸国と亜神たちはこの国に、下手に手が出せなくなった。
一方のヴィザンツィア騎士団国も、その後起こった多少の内戦騒ぎを乗り越え国を再建した後も、最終勝利目前であったあの戦いの悔しさを噛み締めながら、虎視眈々と機会を伺うと言う状況に陥っていた。
互いに多少の小競り合いなどはあれど大きな戦争は起こさず睨み合うそんな状況となっていたのだ。
「そうか…つまり、そちらの世界でも我が国と同じく、冷戦の最中にあると言うわけだったのだな」
「えぇ、最も我が国はドイツの様に味方となる国などほとんどいませんがね」
話を聞き終えそう言ったミュラー大佐に、リィズは肩をすくめ、笑いながらそう言った。
「ですから、もしかしたら今回のドイツと我が国の接触で、再び時代が動き出すかもしれません…」
だが、何を思ったのかリィズは、おもむろに窓の外を見てそう呟いた。
(時代が動くか…)
そしてミュラー大佐も、その言葉を聞き、そう心の中でつぶやくと、異世界に繋がり大きく変化する世界の中心に立たされた自国がこの先どうなるのかと、改めて思うと同時に
「どんな結果や未来が待ち受けていたとしても…我々がやるべき事は戦う事だけだな」
ミュラー大佐はそう呟くと同時に決意を固めた。
その後
「それでは大佐、お気をつけ」
「あぁ、おやすみなさいFräulein」
お茶会が終わり、すっかり日が落ち所で、ミュラー大佐はそうリィズに言うと、迎えの車に乗り込もうとした。
すると
「Fräulein」
「はい」
ミュラー大佐は車に乗り込む前に、リィズの方を向き。
「また会おう、今度は一緒に食事でもどうかな?ベルリンなら良いレストランを知っているんだ」
「えっ…は、はい!」
去り際のその言葉を聞き、リィズは思わず顔を赤くしそう答えた。
「それじゃ、失敬するよ」
そしてミュラー大佐は敬礼をすると車に乗り込み大使館から去って行った。
「食事に…ですか、大佐もやりますね」
「…なんで、あんな事を言ったんだろうな俺は」
迎えに来たアルフレッド中尉のその言葉を聞き、思わずミュラー大佐はそう言った。
正直ミュラー大佐本人も、自分でもなんであんな事を言ったのか、よく分からなかった。
だが今日のお茶会にて、自分の知らない知識などの話を聞き、本を一緒に読み、互いに感想を言い合った事で心が高揚したのかもしれない、そうミュラー大佐は思った。
後日の話であるが…後にリィズは同じ話を、ナチ党主催の晩餐会の席にてゲッベルス大臣に話し、その話を聞いたゲッベルス大臣は、北欧神話は実在し、門を通りこの世界に来たそのオーディン総長と戦争指導者達、そして2万人の不死の軍団こそアーリア人の祖先であり、つまりドイツ人の祖先であるとの説を広め、ドイツ人とヴィザンツィア人は同じ血を引く兄弟であると宣伝し初め、しまいには第一次民族聖戦を題材とした映画の制作を宣伝省に命じた。
また同時に、同じくその話を聞いた親衛隊国家長官であるヒムラーは嬉々として、親衛隊のアーリア人学説と北欧神話信仰は正しかったのだと力説し、益々オカルトへの傾倒を強め、同時にヴィザンツィア騎士団国やファルマート大陸へのアーネンエルベの調査隊の派遣を進める事となった。
と言う事で、自分でも少し荒い気もしますが、何故あれほど危険な思想を持っておきながらも、周辺諸国や亜神たちが、騎士団国を潰しに来ないのかの理由を書いてみました。
因みに、本当にヴィザンツィア騎士団国の不死の軍団が北欧神話の神であり、ドイツ人がその子孫なのかは…ご想像にお任せしますが、ナチスはその方向でプロパガンダを進める事になりました。
PS、今日はこの話だけでなく最新話の、題名"交流"も同じく投稿しました。