帝国の旗を掲げよ 作:ドイツ軍ファルマート大陸軍集団
交流
ドイツ軍進駐から1週間後
北部辺境地域…現在はドイツ軍特別軍政地区と呼ばれる様になったドイツ軍の占領地域は、元々碌な産業がない為人はほとんど住んでいない。
そうほとんど…つまり、一部地域には、人が住んでいると言う事になる。
アドラーシャンツェから南へ16キロの地点にある、ブドウ農業と畜産を主産業とする村、リーラドルフもその一つであった。
「そう言えば、1ヶ月前に、憲兵が言ってたが、この地域の領主様?兎に角、治める人が変わるんだってな」
「あぁ、聞いた聞いた、一体どんな人が来るんだろうな?」
「わかんね、何はともあれ村が平和ならそれで…」
その日も、村人達はそんな話をしながら仕事に勤しんでいた。
そんな時であった
「何だ、この音?」
どこからか、今まで聞いたことのない様な音が聞こえて来た。
そして
「な、何だありゃあ!?」
「て、鉄の化け物か!?」
音のする方を向くとそこには、鉄の化け物の群れ…もとい、E-50戦車を先頭に、マルダー歩兵戦闘車や兵士を乗せた装甲兵員輸送車とトラックの車列が、ヴィザンツィア騎士団国の国旗とナチスドイツの国旗である鉤十字の旗、そして黒いSSの旗を靡かせながら、村の中へと入って行った。
「総員降りろ!」
「行け、行け、行け!」
そしてその車列が村の中心にある広場に止まると、すぐさま装甲車やトラックから、武装親衛隊の兵士達が銃を手にし、車から下車し、周りの安全、そして村中に展開し、安全と統制を確保した。
「な、何だ?」
「みたことねぇなりに、鉄の化物を従えてるぞ!?」
「それにアレは…中央騎士軍の兵士さんまでも居んぞ」
「一体どうなってんだ?」
村人が、初めて見るドイツ軍兵士や兵器を見て困惑して居る最中、騎士団国中央騎士軍の士官が、村人に向かって叫んだ。
「私は騎士団国中央騎士軍第1親衛騎士師団の士官、シュルツ少佐である!村の代表者はいるか!?」
すると、シュルツと名乗る中央騎士軍の士官が、メガフォンを使い村人に向けてそう呼びかけた。
すると
「はい、村長は私でございます」
村長らしき年老いた男が、前に出てそう言った。
「うむ、では単刀直入に言うが、君達も知っての通り、この村がある北部辺境地域は1週間前より、租借地として我が騎士団国の友邦国であるドイツへと貸し出され、その統治権を移譲する事となった。そして今回、この村の近くにはドイツの最精鋭師団団である武装親衛隊第1SS装甲師団の駐屯地が置かれる事となった。その為、その師団長が挨拶をしに来たのだ」
「ドイツ…?」
「確か俺らの国の新しい同盟国だったな…」
「だけど武装親衛隊てのはなんだ?」
同盟国として知られているドイツはともかくとして、親衛隊だの装甲師団だの、彼らにとっては馴染みがない単語が飛び交い、村人全員が困惑した様子となった。
しかしそんな困惑する村人達に目もくれず、シュルツ少佐は話を続け。
「紹介しよう、武装親衛隊第1SS装甲師団師団長のクルト・マイヤー将軍だ」
シュルツ少佐がそう言うと同時に、随伴して居た軍用車から精鋭として名高い武装親衛隊第1SS装甲師団ライプシュタンダルデ・SS・アドルフ・ヒトラーの司令官である、クルト・マイヤー武装親衛隊少将が車から降り、前に出た。
「諸君、私が武装親衛隊第1SS装甲師団の師団長、クルト・マイヤーである」
クルト・マイヤー…彼は、武装親衛隊最年少の将軍であり、現在は武装親衛隊の中でも、最精鋭として名高い、総統ヒトラーの名を冠した、第1SS装甲師団ライプシュタンダルテ・SS・アドルフ・ヒトラーの指揮官を務める人物である。
「諸君らも知っての通り、この辺り一体の地域、旧称北部辺境地域…現在はドイツ軍特別軍政地区と名を変えたこの地は、ヴィザンツィア騎士団国と我がドイツ、両国の同意及び、友好の証として我が国に租借され、今後は我々ドイツがこの地域の支配を行う事とする」
そして、そんな若くとも将軍から発せられたその言葉に、村人達は圧倒されつつも、どこか不安な面持ちでいた。
当然である、事前通知はあったとはいえ、海の者とも山の者とも知らない、しかも側から見れば鉄製の化け物以外の何物でも無い戦車を率いている軍隊である、当然不安になっていた。
だが、そんな村人達の気持ちを察したのか、マイヤーSS少将は満面の笑みで笑いながらこう続けた
「君たちの中には、新たなる国家、新たなる体制による支配という事で、この話を聞き不安になる者もいるだろう…しかし、我々ドイツ人の民族的、国家的指導者である、敬愛する我らが総統、アドルフ・ヒトラー総統閣下は寛大である。君たちヴィザンツィア騎士団国の民族を、我がドイツ人と同じ、人種的に優れ、世界を支配するにふさわしい民族である、アーリア人として認めている。故に、君達は今後も、我々は君達に対して、変わらぬ生活を保証する事を宣言する」
それから5日後
「一時はどうなるかと思ったけど、ドイツの兵隊さんはみんな規律正しくて良かったな」
一時は鉄の化物を率いる謎の軍団が自分達を支配する事に、皆少し不安を感じていた。
しかし、上層部から特別軍政地区においては規律を保ち、住民に親切にしろと命令が発令されており、その為先の大戦では地獄の東部戦線において、負けていれば戦争犯罪として罰せられていたかもしれないほどの虐殺などに手を染めていた第1SS装甲師団の兵士達も、皆ここでは住民に優しく接しており、非番の兵士たちがよくこの村の酒場に飲みに来たり。
「はいはい、喧嘩するんじゃいぞ」
「みんなと分けるんだぞ」
「ありがとうおじさん!」
見回りに来たSS将兵が、チョコやキャンディなど、支給されたレーションの菓子などを子ども達にあげたりする、和やか風景が日常になっていた。
「ドイツの兵隊さんは優しいな」
「あんな人達と同盟を結ぶとは、さすが総長様だ、これでこの国も安泰かもしれんな」
その風景、さらにはたまに訓練兼交流会を兼ねて、やって来るドイツ軍やSSの戦車隊の勇ましさを見て、村人二人はそう言った。
「そう言えば、おたくの息子のフランク、正規軍として軍隊に行ったんだってな」
「あぁ、なんでも軍拡と軍事改革とかなんだかで、人手が必要らしくてな、風の噂ではそう遠くないうちに、兵員を30万人にまで増やす予定らしい」
「そりゃすごいな、だが息子さんが軍にいっちまって、おまえさん大丈夫か?」
「心配ねぇよ、何より正規軍の兵士になる事は、祖国に支える大変名誉な事だ。笑って送り出したさ」
「そうか」
アイゼンブルク
鉄の城の意味を持つこの街は、ドイツ軍特別軍政地区に最も近い大都市であり、軍事拠点として栄えて来た街であり、この街は軍事基地だけでなく、騎士団国で一、二を争うほど大きな士官学校や訓練施設が存在していた。
「つまり、戦車戦において重要なのは速度と突破力であり、航空機と砲兵戦力、戦車戦力の緻密な連携こそ、電撃戦の重要な…」
その為、ドイツ軍がファルマート大陸へと進駐した現在、ドイツ軍の高級将校や、一部精鋭部隊がヴィザンツィア騎士団国軍の近代化のため、国境を越え講師や教官として来る事が多くなっており、今回は何と、ドイツ軍の戦車戦の名将である、グデーリアン上級大将が講師として壇上に立ち、戦車戦と電撃戦についての講義を行なっていた。
また学校から少し離れた場所にある練兵場では、今までは槍や剣の練習をする兵士たちの掛け声が聞こえていたが、今聞こえるのはドイツ軍より供与されたアサルトライフルStG-44やMG42機関銃の金切音などであり、ドイツ軍の制服を流用した軍服を着用したヴィザンツィア騎士団国正規軍改め国家騎士軍兵士や、純白の制服とヘルメットを被った、中央騎士軍の兵士たちが、射撃訓練や戦闘訓練を行っていた。
異世界へと続く謎の門の出現により、ドイツを含め世界情勢が変わろうとしている様に、ヴィザンツィア騎士団国もまた変わろうとしていた。
ヴィザンツィア騎士団国正規軍は名前を、国家騎士軍と改名し、各地の練兵場には、次々とドイツ軍やSSの兵士や将校が、正規軍や中央騎士軍の教官として送り込まれ、軍の近代化が行われ、政府上層部では、街道の一部を鉄道に改造する計画やインフラ整備などが計画され、所謂近代化が始まっていたのだ。
アドラーシャンツェ
作戦室
「特別軍政地区への我が軍の進駐と、騎士団国各軍管区の練兵場への将兵派遣は順調だな」
「そうだな、防衛陣地の構築はどうなっている、モーデル元帥?」
「問題なく進んでいる、最もヴィザンツィア騎士団国からの情報提供で、周辺諸国の技術レベルは我々よりはるかに劣る。たとえ戦争が起こったとしても、簡単に蹴散らせる」
「…だと良いがな」
そしてファルマート総軍本部では、ロンメル元帥とモーデル元帥と、この総軍を構成する二つの軍集団の指揮官、そして現地における航空戦力である、第6航空艦隊の指揮官であるグライム空軍元帥
A軍集団参謀総長であるクレープス大将とB軍集団参謀総長であるシュパイデル大将他、一国の軍隊に匹敵する戦力を統制し、このドイツ軍特別軍政地区の事実上統制する軍人達が集まり、報告会と会議を行っていた。
「だが油断は禁物だモーデル元帥、如何に生協な軍隊でも、我々は未だこの世界の事をあまり知らない以上、地の利はあくまで帝国側にあるだろう。引き続き情報収集と騎士団国軍との連携を強め、より詳しくこの世界を知らねばならない」
「勿論そのつもりだ、私もその点は考慮し、各地の我が軍の将校達には気を引き締める様伝えてある」
「我々空軍も哨戒を厳にし、また総統閣下のお許しを得て、帝国や周辺諸国への偵察機の派遣を行い、情報収集を常に行わせている」
ロンメル元帥とモーデル元帥に続く様に、グライム元帥はそう述べた。
ドイツ空軍は、総統であるヒトラーの許可の元、戦力が整いつつある現在、偵察機アラドAr234後期型を含めた偵察機を盛んに周辺諸国へと派遣し、情報収集に力を入れていた。
幸いにも、帝国を含め周辺諸国は、ヴィザンツィア騎士団国相手に警戒して…いやそもそも、ジェット偵察機相手に索敵レーダーも何も持ち合わせていない以上、ナチスドイツの偵察機を察知する事は出来ず、地形データなど多くの情報を、ドイツ空軍は帝国や周辺諸国の目を掻い潜り得る事に成功し、このデータは後にドイツ軍や親衛隊の特殊作戦や潜入工作などの秘密作戦の実行において、大いに役立つ事となった。
「よし、それなら良い。次に各地の兵士達だが…規律は守れているか?」
そして続いて、ロンメル元帥はシュパイデル大将に、そう質問を投げかけた。
「はい、閣下の御命令通り兵士たちは規律を守り、現地住民達に対しても親切に振る舞う様心がけているとの事です」
「そうか、諸君も知っての通り今は租借地であるこの地を、総統閣下は、騎士団国政府と交渉を進め、ドイツ軍特別軍政地区を国家弁務官区へ、そしていずれは、ノイス・ラント帝国大管区として、正式にドイツ領へとする予定との事だ。であるならば、この地に住まう住民達をいたずらに虐げ、住民の反発を出発点にするわけにはいかん!今後も、国防軍兵士、武装親衛隊兵士問わず、引き続き兵士達には節度ある態度を求める様言明したまえ」
「分かりました閣下」
そしてシュパイデル大将からの報告を聞いたロンメル元帥は、シュパイデル大将だけでなく、作戦室にいる高級将校達に向けて聴かせる様に、そう訓令を述べた。
「では次に、帝国と騎士団国国境に広がるヘラクレス山脈の要塞化の件だが」
「はっ」
すると今度は、A軍集団総司令官であるモーデル元帥が口を開き、自身が担当している、騎士団国と帝国領の国境線に広がる山脈の要塞化工事について、進捗を話す様参謀総長のクレープス大将に聞いた。
「ヘラクレス国境要塞の進捗ですが、同山脈は元からヴィザンツィア騎士団国が長年要塞化を進め、山脈内部にはまるで蟻の巣の様に人口の洞窟や地下空間が広がっています。現在は、現地のヴィザンツィア騎士団国国家憲兵隊麾下の武装組織である騎士団国国境警備隊や同山脈に駐留する騎士団国正規軍の陸軍改め、国家地上軍の兵士達と協力し要塞化に関するプランを…」
クレープス大将は、求められるままに要塞化工事に関する進捗と計画をモーデル元帥に報告を行った。
すると
(そう言えば、在騎士団国大使達のコンスタンティヌスブルクへの到着はもうそろそろであったな)
ふと空軍司令官のグライム元帥が思い出した様にそう心の中で思った。
ヴィザンツィア騎士団国
首都:コンスタンティヌスブルク
臨時飛行場
首都の郊外に敷設された、野戦飛行場の様な簡素な飛行場は、ドイツとの国交成立が決定した後、ヴィザンツィア騎士団国が、ドイツ軍進駐前に現地に派遣されて来た技術顧問達の指導の元作られた、史上初の国際飛行場である。
そしてそんな完成したばかりの飛行場に、本日つなぎの大使として派遣されていたへーヴェルに代わり、正式な大使が派遣される事となり、今回は外相であるアロイス本人が迎えに来ていた。
「おぉ、来た様ですね…」
突然羽虫の羽の音の様なプロペラ音が聞こえ、その方向を見ると、今ではジェット旅客機が主流になり、ドイツではあまり見かけなくなったレシプロ旅客機の一機である、フォッケウルフ Fw 200が上空に現れ、飛行場に着陸した。
「ここがヴィザンツィア騎士団国か、中々に良さそうな場所だ」
すると今回大使として派遣されて来た人物、そしてヴィザンツィア騎士団国の政治顧問としてドイツ中央政府から左遷…もとい派遣されて来た、元ドイツ外務大臣であったリッベントロップ、その他職議員や将兵などが航空機から降りて来た。
そして彼らが飛行場から降りると、外相であるアロイスがにこやかにお辞儀をし。
「お待ちしておりましたヘス閣下、ようこそヴィザンツィア騎士団国へ」
「お出迎えに感謝しますメッテルニヒ外相殿、星と北欧の神々の導きで、ドイツ民族とヴィザンツィア人、同じ志を共にする兄弟達が手を取り合える事を感謝いたします」
ドイツから派遣されて来た大使事、元ドイツ第三帝国の副総統ルドルフ・ヘスに対して歓迎の意を示した。
アラドAr234後期型
全長:12.6m
航続距離:7400km
最大速度:742km
ドイツ軍で運用されているジェット偵察機。
史実では、大戦末期に開発された機体であるが、この世界でも同じ時期に開発、現在では改良が進められ、アメリカ軍のU-2偵察機に匹敵する機体となっている。
PS、今回は騎士団国史後編も一緒に投稿しました。