帝国の旗を掲げよ   作:ドイツ軍ファルマート大陸軍集団

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帝都での工作

 

帝国…

 

それは、巨大なファルマート大陸の大部分を支配し、多くの人口、多くの民族を支配する大陸の覇権国家である。

 

そして、ヴィザンツィア騎士団国にとっては表向きは宗主国でありながらも、不倶戴天の敵国でもあり、その為この国には、騎士団国の思想である、純血主義者信奉者の貴族などを苗床とし、騎士団国の情報機関である、国家憲兵隊において対外情報を担当する、国家憲兵隊第9憲兵本部による巨大な諜報網が敷かれていた。

 

そして、国家憲兵隊と提携協定を結んだ、親衛隊情報部・通称SDによる情報網も帝国、特にその首都である帝都を中心に深く、そして広範囲に広がりつつあった。

 

帝都

 

南宮

 

帝都には、皇族やそれに近い貴族が住まう宮殿が多く点在している。

 

そしてこの南宮は、帝国の第一皇子である、ゾルザル・エル・カエサルの住まう宮殿である。

 

「ゔ…」

 

「殿下、大丈夫でありますか?」

 

そんな宮殿の主人であるゾルザルは今、布団にくるまり、股間を押さえ苦しんでおり、彼の取り巻きの一人である貴族、カラスタ侯爵公子が心配そうに聞いた。

 

「クソ、なんなんだこれは一体…」

 

ゾルザルは今苦しんでいた。

 

その理由はこそ最近排尿や、勃起時に、股間に激しい痛みを感じており、趣味である自分の飼っている奴隷との行為や、悪所での女遊び、取り巻きの若い貴族達との宴会も出来ずにいた。

 

「殿下、どうか安静に…もうそろそろヘルクスハイマー侯爵が参りますので…」

 

そうカラスタ侯爵公子が言ったその時

 

「殿下、ヘルクスハイマー侯爵様が参りました」

 

「おぉ、来たか!早く殿下を!!」

 

侍女のその言葉を聞き、カラスタ侯爵公子が言うと同時に、部屋に金髪碧眼の一人の男性、エーベルト・ヘルクスハイマー侯爵が数人の白い服を着た男達を連れてやって来た。

 

「エーベルト・ヘルクスハイマー侯爵、ゾルザル殿下の危機を聞きつけ、参上いたしました」

 

「殿下、ヘルクスハイマー侯爵の元には、多くの医者が揃っております、きっとお役に立つと思います」

 

「そ、そうか、感謝するぞ侯爵。本来であれば起き上がって迎えたい所だが…イタタタ…」

 

「殿下!!」

 

「これは不味い…博士、早速だが頼む」

 

「分かりました」

 

苦しむゾルザルと、そんな彼を心配する貴族達を横目に、ヘルクスハイマー侯爵は連れて来た医師団のリーダーにそう言い、医師団のリーダーは、静かに微笑み、頷きながらそう言うと、医師総出でゾルザルを診断した。

 

その結果

 

「淋病…すなわち性病ですな」

 

医師団のリーダーは、部下の医師達からの判断を総合し、そう診断した。

 

そしてその診断結果を聞いた貴族達や、ゾルザルは思わず少し気まずそうな顔をしてしまった。

 

公然の秘密である、ゾルザルの皇族とは思えないご乱行、それを知るが故であった。

 

しかし

 

「どこで感染したなどの事は詮索しません。心配はありません、治療すれば治りますよ殿下、すぐにでも治療を始めましょう」

 

その医師は落ち着いた様子で、ゾルザルを安心させるかのように優しくそう言うと、カバンから注射器を取り出すと、ドイツ語でセファロスポリンと表記された薬を取り出した。

 

「お、おいその針は…なんだ?」

 

すると、注射器を見たゾルザルは、何をされるのかと不安になり、青ざめた表情でそう聞いた。

 

「大丈夫です、痛くありません」

 

「ほ、本当か?…い、いやま…」

 

いや待て、やめてくれ…と、ゾルザルは言いそうになった。

 

すると

 

「ゾルザル殿下、初めてお目にかかった身でこう述べるのも可笑しな物ですが…深呼吸して…心を楽にして…そして、私を信じていただけませんか?」

 

その男は、優しい笑みを浮かべ、ゾルザルを安心させるようにそう述べた。

 

そして、その言葉を聞いたゾルザルは深呼吸し

 

「…分かった、やってくれ」

 

「だ、大丈夫なので…」

 

「大丈夫だ、医者、そう言うわけだ遠慮するな」

 

心配する取り巻きの貴族達に向かって、落ち着いた様子でそう言うと、その医者に注射を刺す様言った。

 

その後

 

医者の腕は確かであり、無痛で注射を打つ事が出来、治療を受けたゾルザルは大したことがないと豪語し、それと同時にその医師団に対して、尊大な態度ながらも礼を言い、それなりの報酬を渡した。

 

「それでは、ゾルザル殿下にはくれぐれもお大事にと言っておいてくれ」

 

そして治療が終わると、ヘルクスハイマー侯爵は侍女にそう言い、医師団のリーダーが乗る馬車に乗り込み、自宅へと帰って行った。

 

馬車

 

そして馬車が南宮から離れた所で

 

「さてと、改めて礼を言わせてください、メンゲレ博士」

 

「いいえ、お気になさらないでくださいヘルクスハイマー侯爵殿、これも任務の内ですので」

 

ヘルクスハイマー侯爵は医師団のリーダー改め、地上の地獄と言われるほどの、悪名が高いアウシュビッツ強制収容所の元医師であり、親衛隊から派遣されて来たエージェントの一人である、ヨーゼフ・メンゲレはそう述べた。

 

ファルマート大陸にドイツ軍が進駐してから約1ヶ月…ドイツの暦だと11月半ばが過ぎ、そろそろ12月になろうとしている現在…

 

帝都にはすでに、ヴィザンツィア騎士団国の諜報機関の手引きを受け、多くの親衛隊情報部やアプヴェーアの工作員達が潜伏し、現地協力者の庇護下で、帝国やファルマート大陸の情報収集を行い始めていた。

 

そしてこのヘルクスハイマー侯爵も、その騎士団国の協力者の一人であった。

 

若いながら、侯爵の地位につく彼は、名前から分かる通り、騎士団国に親戚を持つ帝国貴族であり、同時に代々純血主義を信奉し、代々秘密裏に騎士団国の内通者の一人として暗躍する一族、ヘルクスハイマー家の現当主である。

 

その為、ヴィザンツィア騎士団国国家憲兵隊第9本部の要請の元、親衛隊情報部やアプヴェーアの諜報活動に協力しており、親衛隊情報部やアプヴェーアは、ヘルクスハイマー家を中心に、純血派の貴族の庇護下の元、貿易商や医者、製薬会社などを隠れ蓑とし、暗躍していた。

 

ヘルクスハイマー侯爵邸

 

帝都の西部地区に佇むこの大きな屋敷は、代々ヘルクスハイマー侯爵家の住居であり、権威を示す屋敷であると同時に、ドイツとヴィザンツィア騎士団国の帝都における諜報活動の拠点あり、屋敷の地下は、指紋などの採取を行う科学室、無線室、作戦室、さらにはコンピュータールームなどの、諜報活動に必要な物の多くが揃った、まさにドイツとヴィザンツィア騎士団国の影の軍事基地とでも言うべき物と化していた。

 

 

「なるほど、今回の治療で、帝国の皇室の第一の後継者と目される、ゾルザルの、指紋を含めた多くの情報を手に入れましたか…確かにこれは大きな成果だ」

 

「さすがメンデレ博士…ですな」

 

そしてその地下室の一室である、司令官執務室において、帝都における諜報活動の総指揮を行なっている、オスカー・ヴォルフSS大佐は、部下であるクルト・バッハSS大尉が持って来た、ゾルザル・エル・カエサルの個人情報ファイルを見てそう言った。

 

「これで我々の情報網は、帝国の皇室に食い込んだ、ゾルザルの性格上、近いうちに奴は、博士を主治医にしたいと言ってくるやもしれん、その時がチャンスだ…奴のそばで情報を獲得するのだ」

 

「そうですな…」

 

「だが油断はするな、何処に敵の罠があるかもしれん、慎重に行動するよう、メンゲレ博士を含め他の職員にも述べ、規律を正すよう言っておけ」

 

「了解しました」

 

「うむ、下がって良い…」

 

「ハイル・ヒトラー!」

 

ヴォルフSS大佐への報告を終えたクルトSS大尉は、最後にナチス指揮敬礼をし、部屋から出て行った。

 

(ヴィザンツィア騎士団国の支援があるとはいえ、着実に、諜報網は完成しつつあるな…)

 

帝国や、大陸各地に散らばりつつある、ドイツの情報機関からの報告書に目を通しながら、ヴォルフSS大佐は、確かな手応えと共に、自分達親衛隊が作り上げている情報網が整いつつある事を実感していた。

 

すると

 

「ハイル・ヒトラー!」

 

「ハイル・ヒトラー」

 

入れ違いで、帝都南東地区における親衛隊の工作活動の指揮を務める、フリッツ・アイヒベルガーSS少佐、そしてその護衛であり、そして帝都における唯一の、武装親衛隊の部隊である、武装親衛隊第500SS降下猟兵大隊指揮官ヘルベルト・ギルフォハーSS中佐の二人が部屋に入って来た。

 

「大佐、悪所に流している物品の売上報告をお持ちしました」

 

「ありがとう、少佐」

 

フリッツ・アイヒベルガーSS少佐、彼は帝都南東門周辺、人種と貧困者の坩堝となっており、ヴィザンツィア騎士団国からは、帝国占領の暁には放火して住民諸共焼き殺す計画が建てられているほどの無法地帯となっている、通称悪所での情報収集、そしてドイツ製品を不法に販売し、帝都での諜報活動の資金源を確保する事を主任務とする極めて重要な任務についていた。

 

「なるほど…結構、売り上げもそうだが、リストの品名もしっかりと暗号化されている。良い仕事をするな」

 

「ありがとうございます」

 

そんな、帝都における親衛隊の金庫番であるアイヒべルガーSS少佐からの、報告書と売上リストを見たヴォルフSS大佐は満足そうにそう言った。

 

因みに、ドイツが帝都の悪所において闇取引を行なっている品は、ヴィザンツィア騎士団国から払い下げられた武器

 

ドイツから持ち込まれた、メタンフェタミンやオイコダール、アヘン、モルヒネなどの麻薬などであり、どちらも悪所ではよく売れており、特に娼婦などの夜の仕事に従事する人間からは、疲れとストレスを飛ばし、現地のマフィアやチンピラからは、怪我をしても痛みが消えると言われ、大好評であり、多くの売り上げを得ている。

 

「ただ一つ問題が…」

 

「なんだ?」

 

アイヒベルガーSS少佐が、少し困ったようにそう言うと同時に、ギルフォハーSS中佐が報告を始めた。

 

「知っての通り、我々の闇市場への密売は秘密裏に行っておりますが…最近、我々の裏取引に対して探りを入れて来ている奴等がいるのです」

 

「誰だ?」

 

「悪所の顔役の一人、アモールゥ家と言う奴らです」

 

そう言うと、ギルフォハーSS中佐は、数々の写真が送付された報告書をヴォルフSS大佐に手渡した。

 

「アモールゥ家…なるほどコレは少し厄介だな」

 

ギルフォハーSS中佐の述べた人物の名前を聞いたヴォルフSS大佐は、報告書を読みながら少し顔を顰めそう言った。

 

アモールゥ家…

 

悪所の顔役の一人として知られるこの一家は言わば、悪党の義を重んじる一家であり、裏社会で生きながらも、弱きを守る、所謂任侠集団であり、主に悪所の娼婦街においてミカジメを主な収入源としている一家である。

 

親分である、アモールゥも裏社会で生きる人間ながらも、頑固で義に厚く、筋を大事にする気骨がある人物

 

その為、買収などの懐柔策は一切効かないだろうと、ヴォルフSS大佐は判断した。

 

そこで、ギルフォハーSS中佐はこう提案した。

 

「このまま放置しておけば、我々の諜報活動、そして悪所における資金調達作戦である"Leidenschaft作戦"の妨げになります。そこで、私としては麾下の武装親衛隊を用い、アモールゥ家の襲撃作戦を実行するべきであると考えます。ですので、その許可をお願いいたします」

 

ギルフォハーSS中佐のその意見を聞き終えたと同時に、ヴォルフSS大佐は、報告書のファイル閉じこう言った。

 

「良いだろう、ただしやるなら殲滅だ、誰一人生かしておくな」

 

「Jawohl Kommandant」

 

 

 

 

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