帝国の旗を掲げよ   作:ドイツ軍ファルマート大陸軍集団

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異世界と繋がる時


1950年7月30日

 

ナチス・ドイツ

 

首都:ベルリン

 

あの凄惨な戦争が終わってからあと少しで8年

 

ポーランド総督府や保護国にされたフランス、そしてソ連からもぎ取った西(ヴェスト)ウクライーネ国家弁務官区、ベラルーシ西部とリトアニアとラトビア西部を領土とするオストラント国家弁務官では、ユダヤ人を中心に多くの民族が弾圧されている、悲惨な内情やジェノサイドが行われている中、ベルリンに住む多くのドイツ人達は、その事を知らずに…

 

いや、知ろうとせずに、ナチスの独裁体制の歪みや、秘密警察による監視、それら全てを無視し、優雅に、そして豊かに暮らしていた。

 

来月は、ナチスが戦勝記念日と銘打った、終戦記念日であり、軍事パレードなど、終戦を祝い、ドイツとナチズムの威厳を世界に示す、大規模なイベントが行われる予定であり、街は賑わっていた。

 

そんな時である

 

「なんだあれは?」

 

「こんなもの、昨日まであったか?」

 

ムゼーウムス島とベルリンのウンター・デン・リンデン通りを繋ぐ、橋の真ん中に、突如として謎のギリシャ建築の門が現れていた。

 

「このデザイン…総統閣下のご命令で作られた、戦勝を祝うモニュメントとかではないか?」

 

「こんな大きな物を1日でか?第一、こんな大きな建築物をベルリンのど真ん中に作るなら、建築開始から完成まで、ゲッベルス大臣の宣伝省が何かしらの宣伝をしてるだろう」

 

「じゃあ、一体?」

 

ベルリンの市民達は、突如として現れたこの謎の建築物を前に、戸惑いと困惑の色を隠せず、各々そんな事を話していた。

 

そんな中、すぐさまこの場に市内に展開していたSSや秩序警察などの保安機関保有のパトカーや軍用トラックの車列が現れ、停車すると同時に、秩序警察、さらには武装親衛隊第1SS装甲師団ライプシュタンダーテ・SS・アドルフ・ヒトラー麾下の連隊兵士達が、周囲を封鎖し始めた。

 

「市民諸君、たった今からこの通りは封鎖する、諸君ら直ちにこの場から立ち去りなさい!」

 

するとSS大尉の一人が、メガホンでそう呼びかけ、その後ろでは、武装した秩序警察や武装親衛隊の兵士達が、車をバリケード代わりに展開するなど、封鎖作業を淡々と行っていた。

 

そして、呼びかけを受けた市民達も、ナチスの暴力機関であるSSの命令に逆らっても、碌な事にはならないと知っていた為、皆散り散りに、この場から去って行った。

 

「封鎖は順調か?」

 

「オスカー大佐!はっ、問題ありません」

 

すると、先程市民に立ち去るよう命令したSS大尉、クルト・バッハSS大尉は、この場の封鎖の指揮を行っている、国家保安本部所属のオスカー・ヴォルフSS大佐はそう聞かれると、背筋を伸ばし、ナチス式敬礼をしながらそう答えた。

 

「そうか、引き続き警戒を怠るな」

 

「はっ!」

 

それに対してオスカーSS大佐は無表情な様子でそういうと、目の前に突如とてして現れた、謎の建造物に目を向けた。

 

「それにしても…一体これは、なんなんでしょうか?」

 

そして、クルトSS大尉も、オスカーSS大佐の横で、この謎の建造物を見ながらそう言った。

 

「分からん…だからこそ、警戒しなくてはならない」

 

オスカーSS大佐、相変わらずの無表情の様子でそう言った。

 

するとちょうどその時、上空を多数のヘリコプターの編隊が現れた。

 

「空中騎兵旅団スレイプニル…ドイツ空軍降下猟兵隊に新設された、ベルリン郊外に駐屯するエリート戦闘部隊も投入されて来たか…」

 

第1空中騎兵旅団・通称スレイプニル騎兵旅団

 

戦後、本格的に改良と洗練が行われ、実戦投入できるほどに進化したヘリコプター、そしてそのヘリコプターが大量に配備され、迅速な展開と、強襲攻撃を行う事を任務とする部隊

 

エリート戦闘部隊として名を馳せた、ドイツ空軍降下猟兵隊・第1降下猟兵師団麾下のエリート特殊部隊であり、一年前にも、イタリア領エジプトにて起こった、大規模な反乱に介入し、反乱軍を空から叩き潰すなど、実戦経験も豊富な部隊である。

 

「突然、ベルリン中心地へと出撃命令が降ったと思えば、一体これはなんなんだ…」

 

部隊を指揮する、クラウス・ミュラー空軍大佐

 

空軍士官学校を主席卒業後、降下猟兵隊に志願し、クレタ島攻略やジブラルタル降下作戦では、降下猟兵隊の中隊指揮官として参加した、優秀で若く、そして歴戦の指揮官である。

 

だがそんな彼も、今目の前で起こっているこの異常事態には戸惑いを禁じ得なかった。

 

「ベルリン中心地に現れた、謎の建造物…司令部から聞いた時は、なんの冗談かと思ったが…」

 

「まるで三流のファンタジー小説のようですね」

 

副官の、アルフレッド・グリルパルツァー中尉は、ご様子を見てそう言った。

 

「三流ファンタジーか…ならば、門の中からドランゴンやらフェンリンルなど、北欧神話の生物が出て来るかもしれんな」

 

「そんなバカな…と言いたいところですが、この様子だと本当にそうなりそうですね…本当にそうなったら、どうしますか?」

 

「ドイツ軍の総戦力を持って叩き潰す…軍人としてやるべき事をやるだけだ」

 

アルフレッド中尉とミュラー大佐の二人は、笑いながらそう冗談めいた事を言っていたが、謎の建造物周辺に、次々と展開されて行く、武装親衛隊や国防軍の装甲師団所属の戦車隊の様子を見て、笑い事では無いと思えた。

 

 

総統宮殿

 

戦後、ヒトラーの命令の元進められたゲルマニア計画の元、国防軍最高司令部庁舎、そして計画の目玉である巨大な建造物であるフォルクスハレと共に作られた、西はフランス、東は旧ソ連領、北はノルウェーに広がる巨大な帝国であるナチス・ドイツを支配する総統、アドルフ・ヒトラーの執務室兼住居を想定して作られた建物である。

 

そして現在、ベルリンの中心地に現れた謎の建造物の出現という、緊急事態が発生した事で、宮殿には緊急会議を行う為、国防軍と党幹部、そして親衛隊と、ナチスを支える三つの組織の幹部達が、一同に介していた。

 

「つまり、何も分からない…そう言うことかね?」

 

「はい、現状、あの建物がなのために作られ、そしてどう言う物かは、はっきり申し上げて、判明していないと、断言します」

 

そして会議内で、親衛隊の内外の情報機関である、国家保安本部の長官である、ラインハルト・ハイドリヒSS上級大将は、ヒトラーの問いにそう答えた。

 

「そうか…だがいつまでも分かりませんでは話にならん、早急に調査を行い、一刻も早く、あの建造物の正体を突き止めたまえ、ハイドリヒ長官」

 

「はっ…必ずや…」

 

ハイドリヒ長官は、ヒトラーの檄に、そう一言述べた。

 

「それで、現在の様子は?国防軍の展開は完了しているのか?」

 

そしてヒトラーは、次に国防軍最高司令部総長である、ヴィルヘルム・カイテル元帥へ、そう述べた。

 

「はい、現在国防軍の反乱鎮圧プロトコルである、ヴァルキューレ作戦における、計画の一部を流用し、ベルリン市内の主要施設への軍の展開、並びに例の謎の建造物…我々はTOAと呼称しておりますが、その封鎖を、武装親衛隊と共に行っています」

 

「我々親衛隊も、国防軍と協力し、総統宮殿並びに我が親衛隊本部、ベルリン中央駅など、主要施設への展開並びに、封鎖を完了しております」

 

「そうか、ではこれより緊急戒厳令を布告し、ベルリン全域を正式に封鎖、後にあの門を、徹底的に調査し、正体を解明…」

 

カイテル元帥、そして親衛隊全国指導者である、ハインリヒ・ヒムラー長官の報告を聞いたヒトラーは、席から立ち上がると、戒厳令の布告と、門の調査を命令しようとした。

 

だがその時

 

「閣下!失礼致します!!」

 

ヒトラーの副官である、オットー、ギュンシェSS少将が、会議室に飛び込んで来た。

 

「ギュンシェ君、どうしたのかね?」

 

「会議中失礼致します!例の建造物…門で動きがありました!」

 

ギュンシェ少将の報告を聞いた瞬間、軍、SS、ナチ党の幹部達に衝撃が走り、一斉にざわついた。

 

「動きとは、一体なんだ?」

 

すると、宣伝大臣であるヨーゼフ・ゲッベルス大臣がそう聞いた。

 

「実は…」

 

 

その頃

 

「まさかな…」

 

オスカーSS大佐は、目の前で起こっている事に内心、動揺しながらも冷静な様子でそう呟いた。

 

彼の目の前には、まるで中世の騎士を思わせる軍団と、それを率いる、金髪碧眼の、ナチスの人種イデオロギーに照らせば、理想的なアーリア人に分類される少女が、例の門から現れた。

 

そして彼女達は、周りの風景、そして空を飛ぶ空中騎兵隊のヘリコプターを見て、驚いている様子であったが、それでも敵意を見せる様子は無かった。

 

「大佐、攻撃許可を出しますか?」

 

すると、副官であるクルトSS中尉が、オスカーSS大佐にそう聞いた。

 

「いや、そのまま待機、警戒を続けろ」

 

「はっ…あっ、大佐!どちらに!?」

 

だが、オスカーSS大佐は、SS中尉にそう命令すると、バリケードを超え、謎の騎士団達へ向かって近づいて行った。

 

そしてそれを見た、リーダーと思われる、白馬に乗る少女は、馬を降りるとこちらへと向かってくるオスカーSS大佐の方へと、ゆっくりと歩いていた。

 

そして、謎の騎士団と銃を構え、こちらを警戒するSSや国防軍兵士

 

両者が警戒し、睨み合う中間地点にて、二人は歩みを止めた。

 

すると

 

『貴公は何者だ?』

 

少女は、そうヴォルフSS大佐に聞いた。

 

しかし

 

「?」

 

(古代ラテン語に似ているような言語だが…どこの言葉だ?)

 

オスカーSS大佐は、SSへと入隊し、ハイドリヒ長官の目に留まり、国家保安本部勤務になる前、学生時代は、ドイツの名門大学である、ハイデンベルク大学で言語学や哲学などを学んだ人物であるが、そんな彼をしても、彼女の言語は少しラテン語に発音が近く、共通しているところがあると言う事以外は、全くもってわからない、まさに未知の言語であった。

 

Was zu tun ist...(どうするべきか)

 

オスカーSS大佐は、あまり感情を表に出さないタイプの人物であるが、それでも今回ばかりはどうやって、コミュニケーションを取るべきかわからず、思わずそう弱音を呟いた。

 

しかしその瞬間、目の前にいる少女は、驚きと、そしてどこか安堵するような顔をし、そして次の瞬間彼女の口から

 

Verstehen Sie dieses Wort?(この言葉は、わかりますか?)

 

イタリア訛りはあるもの、はっきりと、オスカーSS大佐にとっては、いやドイツ人にとっては最も馴染みが深い言語、そうドイツ語を話したのだ。

 

「ッ!ドイツ語を喋れるのか?」

 

「ドイツ語…いいえ、これは我が国の言語である、ヴィザンツィア語ですが…」

 

「ヴィザンツィア語…」

 

聞いた事のない言語名、アクセントがイタリア訛り、色々気になるところがあるが、ドイツ語である事には変わりなく、意思疎通に関しては、言葉の壁というものが無い事に安堵した。

 

「では改めて、私はドイツ国家保安本部所属のオスカー・ヴォルフ親衛隊大佐だ、Fräulein、貴方の身分、それを明かしていただきたい」

 

そしてヴォルフSS大佐は、改めて、ドイツを用い、そう彼女に聞いた。

 

すると彼女は、ドイツ語を用いこう名乗った。

 

「私は、ヴィザンツィア騎士団国国王兼騎士団総長、ラインハルト・フォン・コンスタンティヌスが妹、中央騎士団麾下、第10親衛騎士団エクェストリスの軍団長、リィズ・フォン・コンスタンティヌス」

 

1950年7月30日

 

この日…ドイツは、異なる世界とのファーストコンタクトを果たした。

 

 

しかし、この時のドイツは知らなかった…異世界と地球を繋ぐ門、この存在が一つでは無いと…

 

そして、この出会いが、新たなる戦いへの道を、作るきっかけとなる事を…

 

今はまだ、誰も知らなかった…

 

 

 




ヴィザンツィア騎士団国 

国旗    
【挿絵表示】


騎士団国総長:ラインハルト・フォン・コンスタンティヌス

この小説でのオリジナル国家であり、異世界の地、ファルマート大陸に存在する大国である、帝国に次ぐ国力と領土を有している大国。

騎士団国の最高指導者である王家(歴代王達は騎士団国総長を名乗っている)であるコンスタンティヌス家は、帝国の帝室とは血のつながりを持つ分家であるが、かつて数百年前に、帝国が建国されたばかりの時に、帝国の統治や未来を巡って対立し、決別した後に今の騎士団国が建国されたと言う経緯があり、公式的には帝国の属国ではあるが、帝国に対する反逆と帝位の簒奪を、代々狙い国家目標としている国である。

その為、国内では帝国打倒を目指す政策が行われており、義務教育制度と併用して幼少期から全国民に軍事教練を受けさせ、成人後も定期的に軍事訓練を受ける事を義務とする国民皆兵制度

常備軍には、末端の兵士までも士官レベルの教育を受けさせ、戦時には常備軍兵士全員に下士官権限を与え、徴兵された兵を指揮させる軍の制度

常備軍の中でも選ばれた精鋭で編成された、騎士団国総長直下の精鋭部隊である中央騎士軍の編成

他にも、国内の重工業化推進と、秘密裏での兵器開発や魔法研究に力が入れられているなど、軍国的な国家運営がなされており、そして現在の指導者になってから、その動きが加速している。

一方で、二代目国王時代に、帝国に勝つ為には、文化面でも帝国を圧倒するべきだとの考えの元、芸術や文化面においても、高い水準を有している。

ローマ帝国を元ネタとする帝国と相反する存在という事で、この国は、ビザンツ帝国が国のモチーフとなっている。


ファルマート大陸

大陸地図     
【挿絵表示】


ベルリンに現れた門と呼ばれる建造物の向こう側に存在する大陸。

大陸の大部分を支配する帝国と、諸王国と一括りにされるそのほか中小国が多数存在しており、人間だけで無く、エルフや獣人など、亜人と呼ばれる人間とは異なった容姿をしている知的生命体が存在しており、また、ドラゴンなどの地球では御伽話の中だけの存在もいる。
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