帝国の旗を掲げよ 作:ドイツ軍ファルマート大陸軍集団
「では改めて、我々は貴国が門と呼ぶ建造物の奥に存在する国家である、ヴィザンツィア騎士団国からやって来ました。こちらが、私の兄であり、我が国の指導者であるラインハルト・フォン・コンスタンティヌス陛下からの親書になっております」
「拝見いたします」
リィズら三人が椅子に座り、早速会議が始まると、早速リィズはリッベントロップに、兄である騎士団国総長ラインハルトから預かっていた、親書を手渡し、リッペンドロップを通じて、ヒトラーに渡された。
ちなみにこの親書、出発前に穏便な内容である親書と、高圧的な騎士団国に屈服するよう記してある要求書の二つを持たされており、門の先にある国家の文明レベルを考えて、どちらかを渡す様に言われていた。
そして門の先にあった、ドイツ第三帝国の文明レベルを見たリィズは、迷う事なく、後者の要求書を迅速に始末し、そして今手渡したのは、両国の国交樹立を目指した首脳会議の開催の提案や、相互安全保障あるいは騎士団国との不可侵条約の締結に関する会議の開催など、そのような穏健的な内容であった。
「なるほど…親書の内容は理解しました。我がドイツの最高指導者として、私は、貴国とは前向きな関係を築きたいと考えています。今年の9月1日に我が国では、戦勝を記念して、同盟国首脳を招いてパレードを行う予定ですので、貴国の騎士団国総長殿には、その日に我が国の国賓として、陛下をパレードに招待したいとお伝え願いたい」
「分かりました。必ず、ヒトラー総統閣下のご意志を、陛下にお伝えいたします」
「よろしくお願いいたします」
そして、親書の内容を見たヒトラーは、リィズに、彼女の兄である騎士団国総長である、ラインハルトに9月1日に行われるドイツの戦勝記念日のイベントに、国賓として招きたい旨を伝え、ドイツとの関係構築が自国の発展と、来るべき帝国打倒の日である、聖戦を遂行するのに必要であると考えるリィズは、喜んでその提案を兄に伝える事を約束した。
「さて、貴国との外交関係に関する話は一旦置いておき、我々としてはまずあなた方に聞きたいことがあります」
「なんでしょうか?」
するとオブザーバーである、ハイドリヒSS上級大将が、話を切り出した。
「我がベルリンに突如出現したあの門…あの門の正体です」
「それは…」
門の正体…
それを、ハイドリヒSS上級大将から聞かれたリィズは、彼のまるで猛禽類のような鋭い目線と、ヒトラーから感じた熱意とカリスマ溢れるオーラとはまた違う、氷のような冷たく、どこ冷めたようなオーラを感じ、心臓を鷲掴みにされたような気がした。
ドイツとファルマート大陸を繋ぐ穴自体は自然発生した物であるが、しかしそれを維持する魔法装置である門は、自分達ヴィザンツィア騎士団国が作った物である。
ヴィザンツィア騎士団国にとって、重大な"ある事"を調査する為に、わざわざ多くの優秀な魔導士を集めて作ったものだが、自分達が作ったなどと知られれば、場合によってはドイツ国際問題になりかねるかもしれなかった。
(殿下…ここは、誤魔化しますか?)
その心情、そしてその事を察したのか、ミラがアイコンタクトで、そのようなことを伝えた。
しかし
(いや、後々確執が生まれる可能性を考えたら…ここは全て話した方がいいかもしれない…)
リィズはそう判断すると、意を決して静かに答えた。
「私も、専門家では無い為詳しくは説明出来ないのですが、あの門は、時空と時空が繋がる穴を拡張し、そして維持させることを目的とした魔法装置です」
「魔法装置…つまり、あの門は人工的に…貴国が作ったと?」
リィズの話を聞き、会議に集まった幹部達は驚いている様子であり、そしてその中でも、魔法やオカルトなどに、強い興味を持っている人物である、SS長官であるヒムラーは、食い入るような姿勢でそう聞いた。
「半分はそうです…と言うのが、正しいかもしれません。わが国がある世界、ファルマート大陸は、場所は違いますが、長い歴史の中で度も異世界と繋がる穴が開き、そこから多くの種族がこの世界にやって来たと、そう言い伝えがありますので、世界と世界を繋ぐ穴そのものは自然発生した物なのです」
「なるほど、つまり貴国は世界と世界を繋ぐその穴を、維持する魔法装置とやらは建設したが、この世界とあなた方の世界を繋ぐ穴自体は、自然発生した物であると、そういう事ですかな?」
「そう言う事です…」
「なるほど…」
話を聞いたヒムラーは、自身の趣味であるオカルトへの熱意を刺激されたのか、興味深そうな様子でそう言い、他の幹部達も何処か強い興味を持っている様子であった。
すると
「最後に一つだけ…少し踏み込んだ事を聞くが、貴国と我がドイツ、世界と世界を結ぶあの門を使って、我々に敵対する意志…それは貴国にはあるかね?」
最後にヒトラーが、厳しそうな様子でそうリィズに聞いた。
それに対して、リィズは少し肝が冷えたが、息を飲むと意を決したようにこう言った。
「ヴィザンツィア騎士団国代表、そして同国を統治するコンスタンティヌス家の一門を代表して言わせていただきますが、そのような気持ちも計画も、我々には存在しません。言い訳をさせていただくなら、そもそも異世界を繋ぐ穴を維持する門を作った最大の理由は、門の向こう側にある世界が、我が国にとって不利益な事をしてくる勢力が存在するかを確認する事です」
「なるほど、つまり貴国には我が国に対する敵意は一切ないと…そう言う事で良いか?」
「えぇ、そもそも我々には、建国以来倒さなくてはならない敵が…帝国という国を倒すと言う、そういう使命があり、異世界の国にまで戦争を仕掛ける、そのような自国を弱体化させるような行いは一切ありません。そしてそれは、我が騎士団国総長であり、兄であるラインハルト陛下も同じお気持ちです」
「そうか…それを聞いて安心した」
ヴィザンツィア騎士団国とドイツ第三帝国の間には、技術面でも、戦力面でも大きな差がある為、たとえヴィザンツィア騎士団国が、ドイツに対して戦いを挑んでこようとも、一瞬にして蹴散らし、1ヶ月も経たないうちにヴィザンツィア騎士団国を、ヴィザンツィア国家弁務官区へと変え、ドイツの統治下に置く事は容易いと、ヒトラーは考えていた。
だが一方で、ベルリンの中心地と繋がっていると言うのは、少し厄介であり、もしもこちらが彼の国に攻め込む前に、彼方から攻め込まれ、ベルリンを荒らされよう物なら、経済的、民族的、文化的損失は大きい物となる。
その為、相手国が自分達ドイツ第三帝国に敵意を持っていないと言うのを、使節団のリーダーにして、彼の国の王族に断言させられた事は、ヒトラーにとって安心できる事であった。
「リィズ殿下、我々も貴国とは良い関係を築く事を約束ましょう。どのような関係になるか、この先の交渉次第となるが、これだけは約束しよう。我が偉大なる、ドイツ第三帝国総統として、貴国が我が国との友好を保つ限り、貴国に対して、軍事的な侵攻などは行わない事を」
「それを聞いて安心しました」
ヒトラー自身の口から、その言葉を聞いたリィズは、胸を撫で下ろした。
だが
「ただ…」
「ただ…?」
「我が国の国防上の安全確保の為、門がある周辺地域は、我が国の統治下に置かせていただきたい」
続けて、ヒトラーはそうリィズに述べた。
「無論タダとは言いません。我々はその統治地域を通じて、貴国にわが国のインフラや製品、さらには武器の輸出、そのほかにも、国の発展に関する支援を約束しよう」
「…なるほど」
領土をよこせ
正直、他国であればそれだけで戦争になりそうな要求であったが、意外にもリィズや、一緒に出席しているミラやアンネリーゼの反応は、拍子抜けするほど穏やかであった。
門がある場所と、その周辺地域である北部辺境地域は、もともとアルグナ王国と言う、帝国と近い関係を有する中小王国の飛地であり、5年前戦争でもぎ取った土地である。
だが、もぎ取った理由は裕福な土地だからと言う経済的な理由ではなく、帝国と近い関係にある国家が、ヴィザンツィア騎士団国の領土が広がる地域である、ヴィザンツィア半島と呼ばれる場所にあるのは、国防上危険だと言う理由である。
北部辺境地域、特に門のすぐ後ろにある、今は使われていない古い砦が築かれている山には、"燃える石や"、"金や銀など貴金属とは違うよく分からない金属"が取れるウンターメタルベルグと呼ばれる山や"黒色の燃える水"が湧き出す痩せた平原が多い事以外、何も無い地域である。
唯一の産業と言える産業は、帝国と騎士団国国境に駐屯する部隊への、軍需物資の提供など、その程度であり、人口も軍人以外はほとんど居ない事から、自国の中でも最も貧しく国防的価値を除けば、ほぼ無価値に等しい場所であり、正直ヴィザンツィア騎士団国とドイツが不可侵、あるいは同盟を組んだ上で、ドイツがこの地域に軍隊を進駐させ、統治してくれるなら、喜んで放り出したい土地であり、ドイツからの技術供与や貿易など、魅力的な提案の前では、北部辺境地域全土を割譲しても安い物である。
しかし一方で、仮にも領土を割譲すると言うのは、内外の印象的によろしくなく、何よりもあの土地をもぎ取った5年前のアルグナ王国との戦争で、リィズとラインハルトの父、即ち先代騎士団国総長を失っており、そこをそのまま渡してしまっては、内部からの反発も必至である事を、リィズは理解していた。
(ドイツと結びつきを強くする事を考えると、悪い話では無いが…このままハイそうですかと渡してしまっては、国民の感情と対外的な我が国への印象的によろしく無い…一応、考えはあるが…)
そして考えに考えた末に
「その事については、私には交渉権が無いので、一度本国に持ち帰り、兄上に…我が騎士団国総長と相談します」
「分かりました、それで構いません」
一旦領土割譲に関しての協議は、この場で保留となった。
すると
「しかし、我々としてはホッとしました。正直、帰国が我が国に対して、従属せよなどと言う、高圧的な内容の要求でもしてくる可能性も考えていたので、そうなったらどうすべきかと、少しヒヤヒヤしていましたよ」
「そ、そうですか…」
ヒムラーの横で話を聞いていた、ハイドリヒSS上級大将がそうのべ、それを聞いたリィズは、自分がヒトラー達ナチスドイツ政府幹部達と会談する前に破棄した、もう一つの親書という名の、高圧的な要求書を思い出し肝を冷やした。
(お、落ち着け…あの文書は処分したから、大丈夫だ)
リィズは、そう心の中で思っていた。
だが一方
(などと、相手は思っているのではないか?)
ハイドリヒ上級大将は、目を細め、内心焦っているであろう三人をみて、不敵に笑っていた。
もちろん、ハイドリヒSS上級大将が破棄した新書を思い出させるような事を述べたのは、単なる偶然ではない。
会談前
「貴国が永遠の安全と、平穏を得る為に、偉大なる騎士団国総長たるラインハルト・フォン・コンスタンティヌスに服従する事、そして以下の事を命じる…いつみても中々に高圧的な内容…」
会談前に、もう一つ騎士団国から預かっていた、降伏文書であり脅迫文と言っても差し支えないような文章の内容を見て、ミラは思わずそう言った。
「恫喝に近い文章を出して、服従させられれば御の字、出来なくても自然な形で我が騎士団国と帝国との間に介入しないよう中立へと持って行く…けど、もしこの国にこんな物を出したら、即戦争…その後は…考えたくも無いよ」
そしてその言葉を横で聞いていたリィズは、この世界で見た車や建物などの民間インフラ、そして戦車や銃などの武器や、この国の兵士の質を思い出した上で、"その後"を考え、青ざめた様子であった。
「だけど幸いなのは、この書類はまだこの国の首脳に見せてもいないし、見られてもいないと言う事だよ…ならやる事はただ一つ…」
リィズがそこまで言うと、二人は言わずと分かっている様子で頷き。
「急いでこの書類は処分しましょう」
アンネリーゼがそう言うと同時に、この書類が、ドイツ側に知られる前に、急いで燃やして処分する事を決めた。
だが、三人は知らなかった
このナチス第三帝国は軍事国家であり独裁国家であると同時に、厳格な超監視国家である事に…
闇に紛れて情報を探り、市民を、敵国を、政府高官を、陰から監視する、影の軍隊が存在している事に…
ホテル地下室
『だけど幸いなのは、この書類はまだこの国の首脳に見せてもいないし、見られてもいないと言う事だよ…ならやる事はただ一つ…』
『急いでこの書類は処分しましょう』
「なるほど、面白い事を聞いたな…」
ホテルの地下室には、無線機に繋がるヘッドホンから情報を聞き、録音している、国家保安本部の第4局、ドイツ国民や、占領地域の国民からは、ゲシュタポと呼ばれ、恐れられているSSの秘密警察機関の職員達と親衛隊の情報部であるSDの職員、そしてその職員達を指揮する、オスカーSS大佐の姿があった。
ホテル・アドロン・ケンピンスキーのような名門高級ホテルには、他国の高官や、政府の高官や国防軍の将軍達が宿泊する事も多々ある。
その為、幾つかの部屋には盗聴器が仕掛けられており、今回異世界から来た三人が急遽、宿泊する事となった部屋にも、当然ながら多くの盗聴器が仕掛けられ、彼女たちの会話の一言一句は録音され、記録されていた。
「知らなかったとは言え、我が国へ高圧的な文章と要求を突きつけようとしていた…これは、この先彼の国との交渉を進める上で、脅しによる譲歩などを引き出す事が出来るかもしれないな…」
「では、今すぐハイドリヒ長官にお知らせいたしますか?」
「そうしてくれ…さて諸君、作業をつづけたまえ、一言一句、どんな事でも記録するのだぞ」
こうして、リィズ達ヴィザンツィア騎士団国の使者である三人の会話は、すべてオスカーSS大佐の指揮する、ゲシュタポに筒抜けであった。
現在
そう言う事で、ハイドリヒSS上級大将は、三人が処分した必ず戦争に発展する高圧的な欲求書の存在を知っており、少しのタチの悪いイタズラ心と、後少し何か情報を引き出すための揺さぶりとして、三人にそう言ったのだ。
「まぁ、我々には帝国と言う建国以来倒さねばならない敵が居ますので、無駄に敵を増やすような事は致しませんよ」
「そうですか…」
そしてその揺さぶりに対して、リィズはそう言い、それを聞いたハイドリヒSS上級大将は、少し笑いながらそう静かに呟いた。
すると
「…殿下、先程から気になっていたのですが、その帝国とは一体何なのですか?」
彼女の口からたびたび出てくる帝国と言う単語が気になっていたゲーリング国家元帥は、その疑問を払拭する為に、リィズに徐に聞いた。
「帝国とは、門の向こう側に広がる世界…我々の国であるヴィザンツィア騎士団国もある、ファルマート大陸に君臨する、巨大な国家です」
「なるほど、つまり貴国が存在する世界…ファルマート大陸における、最大の列強…そう言うわけですか」
話を聞き納得したゲーリング国家元帥はそう言ったが、それを聞いたリィズや他の三人は、少し不機嫌な様子で、話を続けた。
「確かに、領土こそ大きいですが、あの国は日々衰退の道を辿っています」
「大国の地位に満足して、胡座をかいているツケが、日々回って来ていると言ってよく、日に日にその政策や統治が衰退の道を歩んでいると言って良いでしょう。」
「えぇ、特に亜人と言う種族に対する政策などは、呆れるしかありません」
「亜人…?」
亜人、聞きなれない言葉にヒムラーの興味を誘ったのか、少し前のめりになり、そう聞いた。
「エルフや獣人、ゴブリンなどの、我々やこの国の人々とは違う、非人間種族たちの事です。我々ヴィザンツィア騎士団国歴代総長を務めて来た、コンスタンティヌス家は、元は帝国の皇室の分家でしたが、帝国の成立後、亜人達に対する扱いをめぐり、帝国の帝室とは対立し、そして今日に至っています」
「民族問題…なるほど、それが貴国とその帝国の禍根ですかな?」
話を聞き、ヒトラーは納得した様子でそう言った。
民族問題…それはナチスドイツにとっては、ナチズムによるイデオロギーの最も大きな部分を占めている概念であり、ユダヤ人問題やスラブ人など、民族による禍根や対立は、ナチスにとってはとても理解出来る事であった。
「えぇ、帝国は、亜人たちに対しては、参政権を与えず放置する、或いは奴隷化するなどの事をしています…」
「正直言って、嘆かわしい…」
リィズに続くように、ミラがそう述べ、そして次の瞬間こう言った。
「なぜ奴ら害獣どもを放置するのか理解に苦しみます!我々人種の未来を考えれば、奴ら亜人は皆殺しにすべきなのです!」
「国家の維持と、永遠の繁栄に必要なのは、純血性です。統一された血統による、純潔な民族による純潔的な国家と世界の創設こそ、永遠の繁栄に繋がる…我々ヴィザンツィア騎士団国は、そう確信しています。しかし堕落した帝国は、自らの欲望や利権ばかり目にゆき、今ある問題、そして未来に残してしまうであろう問題を見ようとせず、民族問題に関しては、生ぬるい政策を続けています」
ミラとアンネリーゼの二人は、ホテルや先ほどの温和的な態度からは、豹変したような様子で、亜人廃絶論を唱え始めた。
人間至上主義
人種こそが優秀な民族であると言う考えは、帝国やそのほかの国にも根強く残っている。
だが、ヴィザンツィア騎士団国は、他国と比べて輪をかけて過激な人間至上主義である、純血主義と呼ばれる、人間こそ神によって選ばれた人種であり、人間だけで世界は創られるべきであると考える思想に、建国以来取り憑かれていた。
そして、その純血主義は、初代帝国の皇帝や元老院ですら、ドン引きする程の過激な思想であり、それ故に初代帝国皇帝と、初代ヴィザンツィア騎士団総長である初代コンスタンティス総長は対立し、そしてコンスタンティス家を中心とした、過激派は当時辺境であった、西方の半島、今のヴィザンツィア騎士団国本国領へと、追放されたと言うのが、ヴィザンツィア騎士団国の建国の歴史である。
その為、ヴィザンツィア騎士団国は同胞愛や同族意識が強く、国家としての団結は強く、又人間を奴隷として売買する事は死刑、亡命奴隷は受け入れ、忠誠心と能力によっては要職に取り立てるなど、人種に対しては温情的である反面、亜人廃絶主義、反帝国の感情は強く、5年前にアルグナ王国との戦争の際には、王国軍が連れて来た亜人100人を、穴に突き落とした後、中央騎士軍麾下の魔導兵たちにより、火炎魔法で焼き殺す、そのまま生き埋めにするなど、大規模な虐殺も行っていた。
それゆえに帝国と周辺諸国、特にグラス半島と呼ばれる、聖地アルヌスがある半島に国土を持つ、エルベ藩王国やトゥレイマン公国などの国からは、"西方の狂犬"、或いは"狂った双頭の鷲"と呼ばれるなど、ファルマート大陸の中では、危険国家と指定されている国である。
「二人とも…熱くなるのは分かるけど…」
「「あっ…」」
数百年間、ヴィザンツィア騎士団国の長い歴史の中で受け継がれて来た、亜人と帝国に対する憎悪による思想を、力説したミラとアンネリーゼの二人に、少し困っている様子で、リィズが制止した。
正直リィズも、騎士団国総長家の人間である為、騎士団国が受け継いできた、亜人廃絶主義と反帝国主義は支持しているが、一方で自分達の国の主張が、まともな国にとっては異端かつ、過激的な主張である事も理解していた為である。
まともな国や人なら、複数の民族を皆殺しにしようとしている国など、関わりたくないと思うだろう…
しかし
「…貴国の理念は、正しい」
ナチスドイツは、まともな国では無く、そしてミラとアンネリーゼの二人にそう言ったヒトラーも、根本的な所では、まともでは無かった。
「民族の混血、それは国家の永遠の繁栄の最たる障害だ。民族の混血と、雑多な民族が蔓延るカオスは、必ず国家を、民族を、そして偉大な民族の誇りを、全てを崩壊させる!!」
そして、ヒトラーの狂気的とも見て取れる演説の前に、三人はただ何も言えず、そして引き込まれていた。
「民族の純潔…そう!純潔だ!国家や民族にとって、永遠の繁栄に繋がるその偉大な存在を守り、そしてその為に最善を尽くそうとしている、貴国には、敬意を払いたい。
我々も、我が国も、我が民族もかつて、ユダヤと言う、劣等なる民族によって、国を裏から支配され、そして搾取されて来た!だが、私やここにいる私の聡明なる同胞達は、その悪魔の民族を打ち破り、我がドイツを再び強国にする事に成功した…一部の、僧侶の戯言のような事を吐く偽善者どもは、民族の永遠の繁栄ではなく、自らの利益を得る、ユダヤ的精神から、貴国の行為を悪だと断じるかもしれんが、しかし我々ドイツは、ゲルマンの民は、貴国と貴殿ら国を守る偉大な守護者達の行為を、高く評価し、そして!それは貴国の未来の民、そして貴殿らの世界の人種達も、いずれは、君達の決断を、鋼鉄のような決意と、揺るぎない正義に感謝を述べるだろう!!」
(すごい…)
(話を聞いているだけで…胸が熱くなり…高揚してくる…)
ヒトラーの演説、かつて敗戦と不況で苦しんでいた多くのドイツ国民の心を掴んだ、真性の演説、その演説を前に、三人も当時のドイツ国民達のように、その心を奪われていた。
「リィズ殿下、そしてFräuleinミラ、Fräuleinアンネリーゼ、君達の国の理念は我々と共通しており、そして正義であり、必ずなさねばならない使命である!
故に私は…ドイツ第三帝国総統である、アドルフ・ヒトラーは、その名において、貴国とは、同盟、そして相互安全保障条約を結びたい。そして、諸君らが行う、最後の聖戦の時には、我々ドイツ第三帝国も、微力ながらその勝利に力を貸す事を約束する!!」
「光栄です、ヒトラー総統」
そして、ヒトラーの言葉に感銘を受けた様子のリィズはそう言い、そしてヒトラーとリィズ、第三帝国の総統と、騎士団国の姫君は握手を交わした。
かつて、オーストリアから亡命した経営学者である、ピーター・ドラッカーは、ドイツとソ連が戦うより、理念的にも社会的にも、共通している政権であるドイツとソ連が同盟を結ぶ方が、悪夢として実現する可能性があると。
そして今日この日、ドイツとヴィザンツィア騎士団国
二つの、選民思想を根幹とする悪夢の国同士が、同盟を結ぶ事となった。
因みに、コメント欄ではすでに1人だけ言い当てていた方がいらっしゃいましたが、ヴィザンツィア騎士団国は、ヴィザンツ帝国だけで無く、TNOのデストピア国家、ワクワクヒムラーランドこと、ブルグント騎士団国をモチーフにしており、さらには帝国に対する復讐心を持った国家という側面では、オムスクをモデルにしています。
そんなヤバい国家と同盟を結んだドイツ…
ファルマート大陸の明日はどっちだ