鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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第1章 壊れた世界
第1話 翼を失った鴉


 

 夜の砂浜に、1人の男性が倒れている。髪は黒い短髪で、顔は仔犬のような雰囲気を感じさせる。そして黒いパイロットスーツを着ている。それは、明らかに民間人が身につけるものでは無かった。

 

 男性はゆっくりとふらつきながら起き上がる。

 バランスの取れた体型をしているように見えるが、その筋肉は戦闘に特化したものである。

 

「あれ・・・ここは?」

 

 男性は顔を上げ、辺りを見渡す。そのうなじには隠された接続端子がある。

 

「・・・え、あれ?僕は・・・誰?え・・・あ、あ・・・ああ・・・」

 

 男性は記憶を失っていたが、体に染み付いている謎のあらゆる感覚が混ざり合い、男性の顔は恐怖に歪んで体を震わせる。

 すると、腰にあるドックタグに手が触れる。男性はドックタグにある名前を見てみる。

 

 

 

 そこには『(かける)・ニールセン』と記されていた。

 

 

 

「これは・・・僕の、名前?」

 

 すると突然頭痛がし、何かの映像が浮かぶ。

 翔は何かに乗っており、うなじに何かを繋いでいる。そして乗っている何かを操縦している。そして身体にはその感覚が染み付いている。

 

 翔はそれらの感覚に耐え切れず、嘔吐する。

 立ち上がって振り替えると、海からは朝日が昇り始めた。すると身体に誰かが抱き締めてくれた感覚が浮かぶ。

 

 翔は己の感覚に耐えながら、朝日に背を向けて歩き出す。

 自身の記憶と、それに伴う感覚が何なのか確かめるために。

 翔は歩いているうち、フェンスに囲まれた場所を見つける。そこに入ろうとしたが、フェンスの上には有刺鉄線があった。

 

 翔は近くに歪んだ鉄製の扉があることに気づき、観察してみる。どうやら、どかすことができれば通れそうだ。そのため翔は歪んだ扉と枠の間に手を入れ、力一杯引いてみる。

 すると軋む音を立てながら鉄扉は枠から外れ、地面に横たわる。

 

 翔は空いた枠を通ってフェンスの内側に入っていく。鉄扉をどかしたその腕力は、明らかに常人のものではなかった。

 少し歩くと、ボロボロになった小屋を見つける。そこに入り、翔は体を縮こませて横になって少しだけ眠る。

 

 翔は言い様の無い恐怖と不安に押し潰されそうになりながらも、仮眠の後に立ち上がる。そして小屋から出て歩き始める。

 

 この先に何が待っているか、何も解らない。自分がどんな存在かも解らない。

 

 しかし、翔は1つだけ思い出した単語がある。それは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        『ARMORED・CORE』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翔・ニールセンが目覚める9日前──

 

 夕日が照らす、廃墟と化した汚染された街を駆ける人影があった。水溜まりを踏み、水溜まりに映った空が歪む。走っているのは銀髪のお下げをした1人の少女であり、手にはタンカラーのRF(ライフル)を持っていた。

 

 息を切らせて走る少女の後ろを、紫のバイザーをつけて両手にSMG(サブマシンガン)を持った2人の女性が追いかける。少女は走り続け、仲間に通信を入れる。

 

「援護まだですか!?」

 

 すぐに味方からの応答があり、すぐ近くに来ているという。

 すると、少し広い場所に出たところで物陰から現れたSG(ショットガン)を持った少女がSMGを持った女性に奇襲を仕掛け、瞬く間に2人を撃破する。

 

「こっちよ!」

 

 SGを持ったブロンドヘアの女性は銀髪の少女を連れて走る。そして他の仲間の元へ辿り着くと、そこは銃弾が飛び交っていた。広場では両陣営は互いに遮蔽物の陰に隠れながら、隙を見ては発砲していた。

 

 

 

 銀髪の少女のいる陣営は服装が統一されておらず、私服と言える服装の者も多い。対して相手側の陣営は服装が統一されているが、動きは単調なものが多かった。

 

 負傷した統一されていない陣営の1人は、腕に包帯を巻いている。流れる血は赤いものの、傷口から見えるのは骨肉ではなく機械の部品である。

 彼女達の瞳は限り無く人間に近いものの、全て機械であった。

 

 少しすると、統一されている陣営の後方から黄色のカラーリングをした、四足歩行の戦車程の大きさの兵器が3機現れた。

 

「『マンティコア』···!」

 

 銀髪の少女はそう呟いた。

 マンティコアの出現により、統一されていない陣営は劣勢となる。マンティコアの硬い装甲を貫けるのは銀髪の少女の持つRFのみである。

 

 しかし止むことの無い弾幕に、銀髪の少女は射撃のタイミングを掴めないでいる。そしてその仲間はそれを理解しているため、歯軋りをしている。

 

 

 

 

 

 すると、突然上空から大量の弾丸が降り注ぐ。その弾丸は両陣営に被害を与え、次の瞬間には6人の女性が空から降ってくる。

 6人の女性は着地し、ゆっくりと立ち上がると両陣営を見回す。

 

「ねぇねぇ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど良いかな?」

 

 両手にSGを持った女性が突然、首をかしげながら訊ねてきた。

 統一されていない陣営が6人の女性に攻撃を開始する。しかし6人の女性は攻撃を全て回避しつつ、反撃していく。

 その力は、まさに圧倒的だった。

 

 

 

 攻撃の正確さや機動力だけでなく、武装の性能も圧倒的だった。

 本来、1発の威力は小さいはずの散弾は一撃でマンティコアの装甲を貫き、別の女性は背中に小型の戦車砲のようなものを装備している。

 

 背部に戦車砲のようなものを装備した女性は、両腕に装備しているLMGを連射し、統一されている勢力を薙ぎ払う。重装備のため鈍重に見えるが、動きは素早いものだった。

 

 小柄で、両手にSMGを持った少女の瞳は紫色に光り、彼女に銃口を向けた統一されている者達は、自らの頭部に銃口を突き付け、自害していく。

 

 腰にリボルバーを下げている女性は、背中からククリナイフを取り出し、次々に統一されている勢力をアクロバティックな動きで斬り刻んでいく。

 

 両刃の刀を両手に逆手に持った女性は至近距離まで接近し、統一されている勢力を斬り払っていく。その戦闘距離に、統一されている勢力は対応できずに倒れていく。

 

 背中にレールガンのようなものを背負った女性は、空中から両手に持った銃を連射し、撃ち下ろしていく。集中砲火をしても、彼女は前後左右に急激に加速する動きで翻弄していく。

 

 

 

 統一されている陣営は一方的に蹂躙され、全滅されるのに1分もかからなかった。そしてそれを見た統一されていない陣営は絶句しており、中には震えている者さえいた。

 

「さぁて···聞きたいこと、答えてくれるかな?」

 

返り血が頬についた女性は、肩にSGを乗せながら笑顔で聞いてきた。

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 これより新しい作品が始まりますので、どうぞよろしくお願いします。
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