そこでジェノは何をしていたのか・・・
ある貨物船が、日本の港に到着した。
貨物船から、オレンジ色のリュックを背負ったジェノが飛び降り、着地して曇り空から溢れた日光を浴びる。
「よ~し、とうちゃ~く!」
その後、係員に入国許可証を見せたジェノはバスに乗り込んだ。
「景色も随分良くなったね~」
バスの車窓から見える景色は、過去に日本へ来た時より復興が進んでいる事もあり、活気が溢れていた。
ジェノは無許可でこっそり日本に来ていた。
その目的は、有澤重工へ行って空間の歪みからのデータを入手する事である。
既に有澤重工へは連絡済みであるが、翔に許可を貰った事にしていた。
更に、複数で来る予定だったが他のメンバーが来れなくなったとも連絡している。
しかし、有澤重工からの迎えを待たないのは"その方が面白いから"という理由だったりする。
バスを降りたジェノは駅まで歩き出す。
駅までは少し歩く事になるが、周囲の景色を楽しみながら歩いていく。
復興した町並み。
そこにいる人や人形達の営み。
揺れる木々や鳥の
本来起こり得た未来で、翔が地上で見たかった光景。
こういった場所が、来る度に復興が進んでいる光景を見る翔を想像すると、ジェノはニヤけが止まらなかった。
その後電車を乗り継ぎ、有澤重工本社へと到着したジェノをサンシャインが手を振りながら出迎え、ジェノも手を振り返した。
「ジェノさん、久しぶり!」
「サンちゃ~ん、久しぶり~!」
社長である武龍は用事があるため対応できなかったようで、今回はサンシャインが対応する事になっていた。
ジェノは早速、サンシャインの案内で空間の歪みへの案内してもらい、空間の歪みを覆う特殊ガラスの前に立った。
そしてデータを取っている制御盤へ向かうと、研究員が顔を上げた。
「どうしたんですか?」
ジェノは興味深そうに制御盤を眺める。
「データを取るのって時間かかるの?」
制御盤を操作する研究員は苦笑いして答えた。
「データを取ること自体には、さほど時間は掛かりません。ただ、タイミングを合わせないとデータが取れないのと、解析には時間が掛かったりしますがね」
制御盤には白いつまみと、画面に映るリングがセットになっているものがあり、そこでデータ取得の操作を行うようになっていた。
取得できそうなものが検出されると、リングの一部が一瞬赤く光る。その光が消える前につまみを合わせる事で、データが取得できる。
しかし、1日にこの作業を行える回数は限られており、1つもデータが取れない事はよくあることだった。
すると、ジェノは手をワキワキさせ始める。
それを見たサンシャインは若干警戒する。
「あの、その手つき・・・何かしようとしてない?」
ジェノはいたずらっぽく笑みを浮かべ、制御盤に近づいた。
「いやいや、ちょっとお手伝いをね!」
ジェノは制御盤のつまみを回し、赤く光った位置に合わせた。
「データ、取れちゃった・・・」
研究員が目を丸くしていると、ジェノは再びつまみを回してデータを取る事に成功する。
「まだまだガチャ回すよ~!目指せSSR!」
ジェノは連続でつまみを回していき、次々とデータを取得していく。
それを見た研究員達は沸き立った。
「うおおおおお!行け!行けぇぇぇ!」
「回せぇぇぇぇぇっ!」
「頼む!来い!SSR!」
沸き立つ場を見たサンシャインは困惑しつつ、データが取れるならと静観する事にした。
そして、集まったデータは合計10個となった。
「えええええ!?もう引けないのぉ!?」
ジェノはもっとデータを取りたい様子だったが、諦めてトボトボとその場から離れていった。
その後、昼食は有澤重工の食堂ではなく、鴉の家で食べる事にしたジェノ。
「さぁて、何を食べようかな」
ジェノはチーズケーキとコーヒーを頼むため、ウェイトレスを呼んだのだが、そこにいた顔を見て一瞬固まった。
「なんだ?私の顔に何か付いているのか?」
「い、いやぁ、知り合いと顔が似ていたもので・・・」
「そうか・・・で、注文はなんだ?」
注文を終え、ウェイトレスが去っていくのを見届けたジェノは少しだけ空を見た。
(あの人絶対『K』だよね?Kだよねぇ!?顔も声も口調もKじゃん!いや~まさか未来で『死神部隊』だった人が、この喫茶店にいるだなんてね・・・)
本来起こり得た未来にいた人物とそっくりな者と出会い、ジェノは内心驚いていた。
しかし、注文したチーズケーキとコーヒーを持ってきたウェイトレスに再び驚かされる事になる。
「お待たせしました、チーズケーキとコーヒーです」
「あ、はい・・・ありがとう、ございます」
ジェノは目を丸くしながら受け取り、去っていく店員を見届けた。
(まさか、今度は『キャロりん』かぁ・・・なんかこの喫茶店、もっと他にもいそうな気がしてきた)
その後、鴉の家を出たジェノは振り返って看板を見てみる。
昔ながらの、木でできた横長の看板。
その左右には、若干リアルな鴉の夫婦が笑顔で立っている。
年月が経って新しくされたのだろう、劣化は少なかった。
「お兄ちゃん、昔ここで・・・どんな事してたんだろ?」
帰りの貨物船に向かう途中、ジェノは違和感のある集団を目撃した。
マスクをしてはいるが明らかに日本人ではなく、人目を避けて移動し、バラバラな服装だが胸元の右側辺りに膨らみがある。
その人数、4人。
ジェノは気配を消して忍び寄り、路地裏の中まで追跡する。
距離を保ち、時折レーダーを確認する。
「よし、ここら辺で良いだろう」
路地裏の少し開けた場所で、4人は立ち止まった。
「目標は情報の攪乱、及び住民に溶け込んで"龍"の関係者に取り入ること、そして"月"と"鉄"の施設に"花火"を咲かせることだ」
4人の1人がそう言った。
しかしその言葉は日本語ではなく、ドイツ語だった。
4人の内1人は女性で、周囲を警戒していた。
「この花火の量で、どれだけやれますかね?」
「鉄はともかく、月の方は何人かはやれるだろう。だが、鉄の方は警戒しないとな」
「龍の方に取り入るといっても、我々ではドイツ語訛りが強いでしょう」
「そこはなんとか誤魔化そう・・・まあ、誤魔化さずとも向こうは気にしないかもしれんがな」
4人の内の1人にジェノは接近し、仲間の背後にジェノがいるのに気づいた女性は懐へ手を伸ばした。
「ねぇねぇ、何話してるの?気になるな~!でも、観光客はまだ日本に立ち入りできなかったよね?」
別の男性がジェノに向かって走り、取り押さえようとしたが、ジェノの腕はビクともしなかった。
その行動に、ジェノはゆっくりと首を傾げた。
「あれぇ~?なんで私を押さえようとしてるのかな~?」
すると、先程ジェノに背後を取られていた男性が、ジェノの鼻と口を手で押さえてきたが、ジェノの目は笑っていた。
ジェノは空いた手で男性の首を掴み、そのまま持ち上げた。
男性の気道が塞がり、ジェノの顔から手を離してジェノの手を引き剥がそうとする。
「酷いな~、何もしてないのに窒息させようとするなんて~」
女性が懐から拳銃を取り出し、ジェノに向けるが、ジェノはすぐに首を掴んだ男性を投げ飛ばし、女性へぶつけた。
「や~っぱり、不法入国者だね!」
ジェノは狂気を孕んだ笑みを浮かべ、4人に飛び掛かった。
20分後──
ジェノはアイスを食べながらベンチに座っており、4人が警察に連行されていくのを眺めていた。
しかしそろそろ船に乗ろうかと思っていた矢先、ジェノの前に1人の戦術人形が現れた。
「お前か、あの4人を捕まえたのは・・・私は『ロア』、お前の話は聞いている」
毛先が赤い黒い短髪に、特殊部隊と同じ黒い戦闘服を着た戦術人形は、ジェノの隣に座ると、足を組んで煙草を吸い始めた。
「うぇ~、臭いよ~」
「互いに戦術人形、煙草を吸ったところで機能に問題は無い」
ロアは煙を吐くと、ジェノの方を向いた。
「お前には感謝している。後の禍根となるやもれん芽を、こうして摘んでくれたからな・・・最近多いんだ、ああいう連中が。主にロクサットの連中が多いが、たまに純粋なテロリストも混じってる」
ロアは煙草の吸い殻をケースに入れ、立ち上がった。
「さて、お前もそろそろ時間だろう?早く行け」
「う~ん、アイス食べ終わってかr──」
ロアはジェノのアイスにがぶりと食い付き、残りのアイスをほとんど食べてしまった。
「あ~っ!私のアイスがぁぁぁ!」
「さっさと行かないからだ」
ジェノはSGを構えようとするが、出航まで5分を知らせるアラームが鳴った。
ジェノはアイスの残りを口に放り込み、怒りに歯軋りしながらも、すぐに船の方に向かって駆けていった。
「食べ物の恨み、覚えたからね~!」
ジェノは悔しさを胸に帰路についたが、帰還した先で待っていたのは、目が笑っていないクラフターだった。
「よう、遅かったじゃないか」
読んでくださり、ありがとうございます!
諸事情により全く書けない時期があり、遅くなってすいませんでした・・・
今回はジェノが日本へ言ってる間の話でしたが、どうだったでしょうか?
感想や高評価、お待ちしています!
●ロア
毛先が赤い黒い短髪で、身長155cm。
特殊部隊と同じ黒い戦闘服を着ており、日本警察所属の戦術人形。
主な武装はSG。
常にテンションはやや低めで煙草をよく吸っており、かつて汚職にまみれた警察署を独断で制圧した程、汚職を嫌っている。
本来は犯罪者対応ではなく、特殊任務を与えられている立場にあるが、人手不足により犯罪者対応もしている。