鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 夢が来る、嵐が来る。
 立ち向かえ、どんな敵だろうと。




第12話 嵐

 翔は赤い海の中に立っていた。海の中であるにも関わらず、呼吸ができるだけでなく動きに水の抵抗は無かった。上を見上げると水面があり、そこからは暖かい光が差し込んでいた。

 

「えっと、ここは・・・?」

 

 翔は辺りを見渡すと、鉄血製の銃達が海底の砂に刺さっていた。なんとなくそこへ歩いていくと、何か囁くような声が聞こえる。最も近くにあった鉄血製HGにしゃがんで触れると、ハッキリと声が聞こえてくる。

 

「ああ、君か・・・」

 

 翔は眉を潜める。夢の中とはいえ、あまりにもハッキリしているため、とても夢の中とは思えない程だったからだ。

 

「君はとても優しい・・・私を、新たな使い方で使ってくれている」

 

 鉄血製HGの声は穏やかだが、少しだけ眠たそうな声だった。

 

「どうか、私の物語を聞いてくれるかい?」

 

 翔はそっと頷き、鉄血製HGの物語を聞いた。物語を聞くことに、不思議と何一つ迷いは無かった。

 設計され、最初の一丁が作られた時の事、ノーマルの正式装備として採用されて数々の場面で活躍したこと。

 

 そして、今ではロシアにて良くない方向に使われてしまっていること・・・

 

「ありがとう、全てを聞いてくれて・・・」

 

 全てを話終えた鉄血製HGにヒビが入っていき、静かに崩れて消えていく。まるで、眠るかのように。

 翔は顔を上げると、他にも様々な兵器がありその中にはブルー・フェザーもあった。そして翔は兵器一つ一つと話し、物語を聞いていく。

 

 赤い海の底にあった兵器達はどうやら鉄血とBOC、アクアビットと有澤、そしてキサラギのものだけだったようで、ハイエンドモデルなどはいなかった。

 

「もしかして、"兵器"ではなくなったからここにいないのかな?」

 

 翔はそう呟き、ふと水面を見上げると体が浮かんでいき、水面から出たところで目が覚めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

依頼主:ロイラ・ノット・スタイン

 

目標:BOC本拠地の制圧

 

作戦開始時刻:17:30

 

 佐渡島にあるBOC本拠地へと攻勢をかけ、BOCとの戦いに決着をつけるわ。この作戦が成功すれば、この国の人々の危険が大きく減ることになる。だから必ず成功させなければならない。

 

 直前に向かった有澤製駆逐艦4隻と有澤の部隊はたった1人のハイエンドモデルによって、壊滅したそうよ。ハイエンドモデルの名は『テンペスタ』。ティタンから聞いた話だと、BOCの最高戦力だそうよ。

 

 テンペストとの戦闘には、有澤から追加の駆逐艦2隻、アクアビットからノーマルによる部隊、キサラギからもノーマルによる部隊が出るわ。

 そしてこちらは、BOCのハイエンドモデルを倒したあなたに賭けることにしたわ。

 

 代わりに、鉄血はあなた達が戦ってる間にハイエンドモデルとノーマルの部隊を佐渡島に上陸させる予定よ。出撃するハイエンドモデルはデストロイヤー、シーカー、そしてエージェントよ。

 

 日本の未来が掛かった作戦、武運を祈るわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 有澤製の駆逐艦の内部にあるカタパルトに、翔はフル装備で立っていた。白と黒のカラーリングをした外骨格と装甲。そして背部と(すね)の外側にはブースターが付けられており、空中戦を可能としている。

 

 そして両手には鉄血製RFを装備しており、マガジンを通常のものからロングマガジンに変更している。

 

 実は鉄血がテンペストとの戦闘に翔以外の者を出せなかったのには、空中戦ができるハイエンドモデルがいなかったからである。しかしロイラは翔が不思議とできる気がしたため、翔が出撃することとなったのである。

 

 キサラギから送られてきたノーマル『アメンボⅡ』は両足がブースターによるホバーボートのようになっており、全身は紺色のカラーリングである。

 武装はRFであり、出撃の時を待っている。

 

 雷電やアクアビットマンは別方向から上陸する予定であるが、空には雷雲が立ち込め、嵐が舞っている。

 

《テンペスタを確認、射出します!》

 

 有澤のオペレーターがアナウンスで告げると、射出のカウントダウンが始まり、翔は姿勢を整える。カウントが0になり、翔は勢いよく射出される。

 翔の周囲にヘルカイトが集まってきてV陣形を組み、翔はその後ろに陣取る。

 

 そして前方に人影が見えてくる。すると雷の光でその姿がハッキリと見える。

 

 

 

 

 

 黒い長髪に黒いレインコート、その下には青い軍服と青いブーツ。肌は病的なまでに白く、見開かれた目は金色であり、青い手袋をつけて歓迎するように両腕を広げている。

 

「諸君が次の相手か・・・歓迎しよう、盛大にな!」

 

 BOC最高戦力、テンペスタ──

 

 

 

推奨BGM『Death Count』(ACVDより)

 

 

 

 まずはヘルカイト達が一斉にSMGを連射するが、暴風により弾が逸れていってしまう。そればかりか、暴風によって飛ばされてきた駆逐艦の残骸がヘルカイト達に命中し、次々と撃破されてしまう。

 翔が攻撃しても、テンペスタは軽々と回避する。

 

 そして、30秒も経たない内にヘルカイト達は全滅してしまう。海上から攻撃していたアメンボⅡもどこかの建物の残骸が命中し、押し潰されてしまう。

 

「人間、お前は楽しませてくれるのだろうな?」

 

 見開かれ、瞬きをしていないテンペスタの目が翔に向く。翔は鉄血製RFを交互に発砲するが、テンペスタは回避し続けていき、翔は一方的に攻撃されていく。

 それを見ていた有澤のオペレーターは拳を机に叩きつける。

 

「これでは・・・なぶり殺しではないかっ!」

 

 テンペスタは常に空中に浮かんでいるが、ブレの無い動きで攻撃を回避している。そればかりか、暴風・・・否、嵐がテンペスタの思うままに動いているようである。

 

 翔は叫び、ブースターを最大出力で吹かしてテンペスタに向かっていき、飛ばされてきた駆逐艦の残骸を回避して鉄血製RFの引き金を引く。

 放たれたレーザーはテンペスタの右肩を掠める。

 

 しかしテンペストは表情を変えずに動き続け、駆逐艦の残骸は翔に向かって飛んでいく。

 

 様子を観察していたキサラギの指揮官は思考を巡らせる。

 

「状況や動きを見るに、テンペスタはおそらく風を利用している。しかもとんでもない出力だから嵐すら操っているんだ・・・だが、それが解っても対策が・・・」

 

 テンペスタは翔の装甲へとだけ攻撃を行い、ジワジワと削っていく。しかし、何度も向かってくる翔にテンペスタは興味を持った。

 すると、翔は飛ばされてきた瓦礫をRFで破壊してテンペスタに接近し、胸を蹴り飛ばす。

 

「やるではないか」

 

 テンペスタは蹴り飛ばされながら残骸を上から翔に命中させ、翔は海中へ没する。それを見たロイラ達は唖然とする。

 テンペスタは空中で止まり、蹴られた胸を払う。

 

「全く、中々に痛かったぞ。奴は本当に人間か?・・・だが、少しは面白かったぞ。まあ、奴には水底が似合いだがな」

 

 再び雷によりテンペスタは照らされ、頬は少しだけ笑みを浮かべていた。

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 BOC本拠地での戦闘が始まりましたが、翔は無事なのでしょうか?
 感想や高評価、お待ちしています。

●ヘルカイト
 水色のカラーリングの装甲とヘッドギアを装備しており、ヘッドギアには赤と黒のボーダーが塗られている、アクアビット製ノーマル。

 武装は両腕のSMGのみである。

 脚部そのものが大型のブースターになっており、空中戦を得意としている。空中を飛ぶことにより地形に左右されにくく、特に開けた地形では真価を発揮する。

●雷電
 黒い長髪で身長168cm、肉体年齢は19歳。分厚い黒い甲冑と和服を身に付けている、有澤製ハイエンドモデル。

 武装は両腕の単装砲と背部の折り畳み式の大型砲である。

 有澤重工の最高戦力であり、機動力は高くないもののその火力は一級品であり、装甲の厚さも相まって正面からの戦闘能力は極めて高い。

 義を重んじる性格をしており、有澤重工の子息からは懐かれている。

●アクアビットマン
 水色の短髪で身長155cm、肉体年齢は16歳。水色と黒の装甲付きボディースーツを着ている、アクアビット製ハイエンドモデル。

 武装は右手のSMG、左腕のナイフである。

 アクアビットの二大最高戦力の1人であり、高い機動力を活かした戦闘を得意としている。
 明るく真面目な性格で、自身をヒーローとして名乗り、ヒーローとはなんたるかを探求している。
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