鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 新たな出会い、新たな地。
 それは新たな戦争の始まりでもある。





第2章 戦術人形
第15話 指揮官


 有澤製の軽巡洋艦がロシアのとある港に向かっている。空は生憎の雨であるが、港が見えてくる。しかし港に着く頃には雨は止み、雲の切れ目からは光が射していた。

 

 翔達が埠頭に降りると既に数人の作業員がおり、いくつかのコンテナが置かれていた。また、コンテナを運ぶためのガントリークレーンもあり、貨物船が行き来していた事が判る。

 

 

 

 翔は先に案内役と合流するため、先に港の内部へと歩を進める。レーダーを確認すると、背後に黄色い点が近づいてくる。反応は人ではない『自律反応』と表示されている。

 

「あなたが、翔・ニールセンさん・・・ですか?」

 

 翔は振り向いて声の主と顔を合わせる。

 

 静かな雰囲気をしている目の前の女性は背丈は翔より少し低く、銀髪のお下げをしている。目は紫色で、白いシャツと黒いネクタイを身に付けており、その上に焦げ茶色のフード付きジャケットを羽織っている。

 そして灰色のリュックを背負い、タンカラーのRFを持っている。

 

 また、黒いミニスカートと茶色いスニーカー、そして紫のラインの入った黒い靴下を履いている。それと、よく見るとリュックにヘッドセットを下げているのも見える。

 

 すると、2人を雲の切れ目から射し込む光が照らし出す。近くの水溜まりに2人の姿が綺麗に反射し、雲の切れ目の数はゆっくりと増えていく。

 

「うん、僕が翔・ニールセンだよ。君は?」

 

 女性は自身が持つRFと同じ名前を口にする。

 

「ボクはグリフィンから来ました、『M200』です。よろしくお願いします」

 

 挨拶の印として、2人は握手をする。

 

 雨が止んだ空はには、虹ができていた──

 

 

 

 

 

 そして同時刻、グリフィンの管轄している『S09地区』の拠点に1人の新人指揮官が着任した。指揮官の制服であるワインレッドのコートとベレー帽を被った青年は、執務室にて副官と戦術人形達に挨拶をしていた。

 

 銀治は敬語があまり慣れなかったが、副官や戦術人形達はしっかり聞いてくれたため、なんとか話すことができた。

 

「本日付けで着任しました、『鴉間(からすま) 銀治(ぎんじ)』です。よろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 テンペスタ以外は軍用車に乗り、IOPへ案内される。その軍用車は4人乗りだったため、テンペスタは風を使って並走している。

 

 敵意が無く、本社のある日本仕様のエクスキューショナー、ロシアでは確認されていないハイエンドモデルのヨルムンガンド、風を操るBOCのハイエンドモデルのテンペスタ。

 彼女らを見たM200は驚愕していた。

 

 流石にエクスキューショナーに関しては、ロシアで猛威を振るう存在の1つであるため、港にいた作業員も警戒していた。しかし翔への態度から危険ではないと思い始めてもいた。

 

 しばらく間、雨上がりの悪路を進むとIOPの本社に着く。やはりエクスキューショナーは警戒されているため、エクスキューショナーとヨルムンガンドはロビーで待つこととなる。

 

「オレらも行ってみたいが、まあ仕方ないか」

 

 

 

 社長室に入ると、白い短髪と髭を生やした老人がいた。

 

「417、よく戻ってきた。そして、君が翔・ニールセンかね?」

 

「はい!HK417、ただいま帰還しました!」

 

 軽い挨拶を終え、ソファーに座ると本題に入る。

 

「早速本題だが、今この国では鉄血のロシア支部にいる全戦術人形が人類に反旗を翻し、人類を殲滅する勢いで攻勢をかけている。しかしこの国の正規軍はELIDとの戦わねばならない。そのため、PMCであるG&K、通称グリフィンに対鉄血を委託している」

 

 小さなモニターに、2体のグリフィンが描かれ、2つの翼が合わさったようなエンブレムが表示される。それがグリフィンのエンブレムである。

 

「しかし君達、鉄血本社が無事である事が確認された今、君達にも鉄血工造ロシア支部への対処を頼みたいということだ」

 

 翔は頷く。

 

「翔君、君はロイラから言われた通りに調査と対処を進めて欲しい。417はグリフィンの本部へと向かい、クルーガーの指示の元で経験を積んでくれ」

 

 

 

 

 

 翔達は417とM200と別れ、港から少し離れた廃墟となった小さな飛行場に向かう。そこは飛行場といっても、発着陸できるのはヘリくらいであり、建物の規模も小さかった。

 しかし翔達がしばらく拠点として使うには十分だった。

 

 夜になり、建物の中でキャンプセットを設置してお湯を沸かす。そして暖かいコーヒーを飲みつつ、飯ごうを使って米を炊く。炊けたご飯に塩をかけて食べつつ、明日の方針を話し合う。

 そして話し合っている最中、エクスキューショナーが何かを思い出した。

 

「そういや、IOP行った後に渡せって言われてたのがあったな」

 

 エクスキューショナーは荷物の中から1枚の紙を取り出し、翔に手渡す。そこにはロイラからの辞令が書かれていた。

 

 

 

【翔・ニールセン、あなたを鉄血工造の特別調査部隊『フォーミュラ』の指揮官へと任命します】

 

 

 

「···え?」

 

 翔は目を丸くしており、それを見たヨルムンガンドはほくそえんでいる。

 

「私達戦術人形ってのは、指揮官がいて初めて真価を発揮できる。そして、フォーミュラ所属の唯一の人間は翔しかいない。だから翔を指揮官にしたってわけだ」

 

 しかし翔はあたふたしている。

 

「で、でも僕は指揮なんてしたことないし···」

 

 そんな翔の顔にテンペスタは風を吹き付けた。

 

「何てことはない。君は決断すれば良いだけだ」

 

 テンペスタの言葉に、エクスキューショナーは同意する。

 

「そうそう、翔は決めれば良いだけだ。そのための選択肢はこっちでやるし、翔が戦いに出るならこっちが合わせれば良い。ただそれだけだ」

 

 火の暖かい光が4人を照らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨OP曲『Apex in Cycle』(ACMOAより)

 

 

 

 翌日、4人は鉄血が占拠している補給所の真ん中にテンペスタの風によって降り立つ。すぐに鉄血のノーマル達が銃口を向けてくるが、翔達は互いの背を守るように構える。

 

「行くよ皆···ミッション開始!」

 

 翔は右手の鉄血製RFを構え、左腕のパイルバンカーをいつでも撃ち込めるように引くように構える。

 

 エクスキューショナーは居合の構えでいつでも太刀を抜けるようにしている。

 

 ヨルムンガンドはようやく入手できた、鉈型の『蛇腹剣』を肩に担いで不敵な笑みを浮かべている。

 

 テンペスタは自身と翔達を風で包むだけでなく、両手に風を集めて少しだけ宙を浮いている。

 

 そして、戦闘が開始された。

 

 

 

 銀治はグリフィンからの初任務として、鉄血の動向を探るための作戦を決行する。作戦エリアはかつて滑走路として使われる予定だった場所であり、今では草木が生い茂っている。

 4人のIOP製戦術人形を送り込み、ドローンから状況を把握する。

 

「総員、作戦開始!」

 

 銀治の指揮下にある戦術人形はHG2人、AR、SMGの編成であり、すぐに鉄血のノーマル部隊を確認する。そして合図と共に攻撃を開始する。

 

 

 

 ジェノは両腕にMG、腰にシールド、背部に2つの単装砲を装備しているハイエンドモデルと共に廃墟となっている港町を訪れ、海沿いを歩いていた。

 しかし倉庫の上から反応がしたため、上を見上げる。

 

 そこには2人の戦術人形がいた。

 

「貴様らか、死神部隊は」

 

「秩序を乱す者め、排除してくれる」

 

 ジェノは2人に思い当たる節は無いため、首を傾げる。

 

「あれ~、私君達に何かしたっけ?それに、君達はだぁれ?」

 

 すると、右に立つ者から名乗り出る。

 

「我が名は『ムーン』、コーカサス社のハイエンドモデルである!」

 

 次に、左に立つ者が名乗り出る。

 

「我が名は『サン』、コーカサス社のハイエンドモデルである!」

 

 ジェノは見た時から、2人から感じれるものがこれまでと違うと悟っており、獰猛な笑みを浮かべる。

 

「ねぇ、『フォートレス』!この2人、これまでのより強いよ!」

 

 フォートレスと呼ばれた、ジェノと共に行動していたハイエンドモデルも武器を構える。

 

「そのようですね」

 

 

 

 

 

 翔が鉄血製RFの引き金を引き・・・

 銀治がモニターを見上げ・・・

 ジェノが狂ったような笑い声を上げ・・・

 

 

 

 それぞれの新しい戦いが・・・新しい戦争が始まった──

 

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 今回から第2章、開幕です!
 感想や高評価、お待ちしています。

●ハーヴェル・ウィトキン
 白い短髪と髭を生やしている、IOPのCEO。

 柔和な笑顔を浮かべており、杖をついている。しかし屈強な軍人に銃を向けられても動じない胆力もある。

 多方面へのパイプを持っているが、ロイラと面識があるだけでなく、ある人物を通じた特別な繋がりもある。

●M200
 銀髪のおさげをしている、IOP製の戦術人形。種別はRF。

 内向的な性格で、多趣味だが広く浅くである。しかし香水の調合は得意であり、ギターは得意なだけでなく深く好んでいる。
 また、面と向かって話したりするのが苦手であり、自分は頭が悪いと思っているため、褒められると照れてしまう。

 しかし、実際のところは戦況を冷静に分析できるだけでなく、長距離からの極めて正確な狙撃を、全て計算した上で連続で成功させることもできる。

●鴉間 銀治
 黒いオールバックの髪型で身長170cm、20歳で1月9日生まれ。

 柔軟な性格だが、幼少期をゴミ捨て場で過ごした事から敬語で話すのが苦手である。

 ゴミを組み合わせる技術を見たIOPの技術者に連れられ、IOPの施設を見学していた際、多数のELIDに襲撃された。その際に施設にいた戦術人形を咄嗟に指揮し、ELID達を殲滅していた。
 それを見たクルーガーにスカウトされ、グリフィンに入社した。
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