その答えはまだ先になるのだろうか。
補給所を制圧した2日後、翔達はロイラから調査目標となっている鉄血工造ロシア支部へと向かおうとしたが、近づくにつれて暴走した鉄血の戦力が増していき、1度仮拠点である飛行場へと戻ってきた。
主な調査目標は3つ。
1つは鉄血のロシア支部及びその一帯の鉄血製戦術人形が暴走したのかについて。
もう1つはロイラの友人であり、ロシア支部で研究をしていた『リコリス』という男性の安否確認。
そして最後は、リコリスの研究していた『エリザ』と呼ばれる新型のAIの調査である。
しかし調査をするにあたって、人間である翔と他社のハイエンドモデルであるテンペスタは接近できず、エクスキューショナーとヨルムンガンドはなぜか鉄血の戦力に攻撃されてしまっていた。
「ロシアで製造されてなかったヨルムンガンドが原因かと思ったが、なんでオレまで攻撃されるんだか・・・」
机に突っ伏したエクスキューショナーに翔がコーヒーを渡す。
「ホント、なんでだろう?」
翔も不思議に思っており、ロイラに報告しても原因は不明のままだった。更に、調査のためにテンペスタが広範囲を攻撃することはできないため、より難易度は増していた。
そうこうしていると、ロイラから通信が入る。
《こんばんは、翔君はいるかしら?》
翔が通信に出ると、どうやら翔のコードネームが正式に決まったそうだ。
《本当は出港前に決まれば良かったのだけれどね・・・で、あなたのコードネームは『
"パルヴァライザー"・・・その言葉を聞いた翔の心臓が跳ね、頭の中でフラッシュバックがおきる。
腰まで届く青い髪の女性が振り向き、翔に笑顔を向けると共に迎え入れるように両腕を広げる。
その女性が誰なのか、またしても翔には解らなかった。
ただ、その女性が翔にとって大切な人であることは理解していた。
《それと・・・あなた達は調査の一環として、グリフィンやIOPからの頼みもやってあげてちょうだい。色々広げておくのは良いことよ》
4日後──
銀治は他の指揮官達より高い戦績を上げている事が評価され、鉄血のハイエンドモデル『スケアクロウ』の捕縛を命じられた。
場所は山に面した飛行場のある小さな町であり、近場には遊園地がある。
ノーマルを相手にした作戦はいくつも成功させているものの、ハイエンドモデルとの戦闘は初めてであり、銀治も作戦参加の戦術人形達も緊張している。
銀治が作戦の確認をしていると、オレンジ色のサイドテールの髪をしており、副官である『カリーナ』がコーヒーを持ってきた。
「指揮官様、そろそろ休まないと体に悪いですよ。重要な時に何かあったらどうするんです?」
明るい口調で言いつつ、コーヒーを銀治のデスクの上に置く。
「悪いな・・・」
コーヒーを飲み干し、深呼吸をした銀治の目は鋭くなっていた。翌日には作戦を開始するため、銀治は仮眠を取ることにした。
一方、銀治の指揮下にある戦術人形達は訓練に一層励んでいた。
射撃、移動、模擬、様々な訓練を続けていく。その中でも、特に『M1895』、『ナガン』の愛称で呼ばれているHG(リボルバー)の戦術人形は気合いが入っていた。
銀治が配属された時、最初にいた戦術人形であると共に製造されて最初に配属された戦術人形でもある。
(お互い、初めての連続じゃったからのう・・・この作戦、必ず成功させてみせる!)
模擬戦によってずれた白いウシャンカ(帽子)を戻し、金のロングヘアをなびかせ、白いコートをマントのように翻しながら再び模擬戦へと望む。
依頼主:ベレゾヴィッチ・クルーガー
目標:暴走鉄血部隊の撃破
作戦開始時刻:23:00
報酬:5000ドル
初めてになる、ベレゾヴィッチ・クルーガーだ。ロイラから話は聞いている。優秀な部隊のようだな。
作戦内容は単純な奇襲作戦、夜間の内にケリをつけてもらいたい。
明日、こちらの新人の指揮官の部隊がハイエンドモデルとの戦闘を行う予定だ。しかしその場所に合流すると思われる部隊が確認され、早急に撃破する必要が出てきた。
これを放置すれば、ハイエンドモデルの撃破は極めて難しくなる。
また、今回の目標となる敵はロシア正規軍のノーマルをコピーして鉄血の制御プログラムを入れたものだ。装甲こそあるが機動性は高くなく、正規軍のものより性能は低い。
しかし、暴走している状態とはいえ君達鉄血の同胞であり、それもハイエンドモデルの撃破に協力する作戦だ。気が進まないのなら受けなくて構わん。
良い返事を期待している。
夜の森の中を黄色いカラーリングをした鉄血の装甲型ノーマル『イージス』を前衛とし、部隊の中核には黄色いカラーリングの4足歩行の装甲型自律兵器『マンティコア』がおり、後衛には自律兵器『ニーマム』がおり、進軍を続けている。
今回は奇襲のため、テンペスタは飛行場に居残りとなっている。翔、エクスキューショナー、ヨルムンガンドはそれぞれ別の木の上で奇襲ポイントで待機している。
翔達はこの依頼について心を決め、受注している。
《あれがロシア支部の・・・》
ヨルムンガンドは半分感心し、半分呆れている。敵の戦力を鹵獲したりコピーしたりして使うのは、戦争や兵器開発ではあることだが、正規軍のものより性能が下がっているからである。
そして、ロシア支部の部隊が奇襲ポイントに到達すると、3人は一斉に木から飛び降り、刃を突き刺す。
翔はイージス、エクスキューショナーはマンティコア、ヨルムンガンドはニーマムに奇襲を仕掛け、成功する。
翔は鉄血製RFを別のイージスに向けて引き金を引くが、イージスの持つ盾に防がれる。しかしパイルバンカーを使って盾ごとイージスを貫く。
エクスキューショナーは中核を失った周囲のイージスやニーマムに攻撃し、撃破していく。
ヨルムンガンドは蛇腹剣でニーマムの装甲を砕いていくが、砲撃型のニーマムはレーザー砲のチャージが終わるまで撃てず、チャージの間に撃破されていく。
ハイエンドモデルを2人も入れた作戦により、数分で作戦は終了する。これにより、明日の作戦領域に合流する部隊はいなくなり、作戦遂行が非常に楽になった。
また、翔にとってイージスの装甲や盾はティタンの装甲と比べればかなり柔らかく、驚異では無かった。
3人は馴染みの自転車に乗り、帰路に着く。その光景はシュールなものだが、車などの移動手段が送られるのはまだなので我慢している。
次第に朝日が昇っていく。
銀治の部隊とスケアクロウ、生き残るのはどちらなのだろうか?
しかし戦闘になるとは露知らず、黒いツインテールの髪をしたスケアクロウは朝日を見上げた。
読んでくださり、ありがとうございます!
翔のコードネームが決まり、スケアクロウ戦の難易度が上がることはなかったですね。
ちなみに、この小説のドルは1ドルにつき100円としています(細かいのはやめておきました)。
感想や高評価、お待ちしています。
●蛇腹剣
鞭と剣の混成武器であり、剣形態と鞭形態を使い分けて戦闘を行うことができる。
ヨルムンガンドの使っているものは四角い鉈型であるが、刀身の先にも刃がついている。また、比較的重い故に重量を乗せた一撃を与えることが可能。
●ヨルムンガンドのスキル
『ヴェノム・ウェーブ』
鞭形態の蛇腹剣を広範囲に打ち付け、前方縦1列に2倍のダメージを5回当てた後、蛇腹剣を振り下ろして正面の3ヤードの敵に5倍のダメージを与える。
また、このダメージは敵のダミーに等しくダメージを与える。
『ヴェノム・ドロップ』
マップの2マスの範囲内にいる、選択した敵ユニットの命中と回避を35%低下させる。また、この効果は2ターン続く。
『学園の抑止力』
スキルボタンをタップするとモード変更可能。
・鉈
デフォルトで設定されており、敵1体に接近して1倍のダメージを与える(防御陣形の時は接近せず待機している)。そして5回攻撃する度に一時的に鞭形態へと移行し、正面2ヤードの敵に3倍のダメージを与える。
・鞭
鞭形態に移行し、正面の縦3ヤード、横2ヤードの範囲内の敵に射速が15%低下した状態で1倍のダメージを与える。
『月夜のエンドルフィン』
発動すると5秒間、味方全体の回避が20%上昇する。