そして見届けろ、勝者と敗者を。
「総員、作戦開始!」
6:00、銀治の戦術人形達はスケアクロウがいる町に向かい、交戦を始める。
今はまだノーマルしかおらず、数も決して多くはないが部隊の連携はよく取れていた。
隊長を務めるナガンは銀治からの指示を的確に遂行しつつ、小柄な体を活かして指示をしやすい場所へ移動する。
副隊長を務めるのは、銀の長髪に青と緑のジャケットを着ているAR型戦術人形『XM8』。部隊の参謀も務める彼女は、ドローンで見ている銀治が及ばない範囲をカバーし、作戦を修正していく。
先端が赤みがかっている茶色のツインテールに、薄茶色の学生服を着ているRF型戦術人形『M14』は部隊の狙撃手として前線を支えている。
先端が赤みがかっている銀のツインテールに、白いシャツの上に赤いジャケットを羽織っている、『ラム』のあだ名で呼ばれているMG型戦術人形『LWMMG』は、部隊の火力担当として弾幕を張っている。
銀のセミロングの髪に黒と赤の服を着たSG型戦術人形『SPAS-12(以下スパス)』は部隊の前線を担い、接近してきた敵を撃破している。
そして彼女らの活躍により、暴走鉄血の部隊は数を減らしていく。そして遂にスケアクロウが姿を現す。
「なるほど、ある程度はやるようですね」
推奨BGM『Made in Heaven』
スケアクロウは黒いツインテールに、黒いガスマスクと燕尾服を身に付け、手には指揮棒を握っている。
スケアクロウの周囲には複数のビットが飛んでおり、スケアクロウ自身も宙を浮いている。
「初めまして、そして死んでください」
スケアクロウを発見したナガン達はすぐに攻撃を開始するが、スケアクロウのふわふわとした動きに翻弄され、複数のビットによる多方面からの攻撃により、回避を優先せざるを得なくなる。
M14は後方から狙撃しようとするが、彼女を捕捉したビットにより右腕を撃ち抜かれてしまう。M14はすぐに逃げ、ラムは弾幕によりM14を追っていた3機のビットを破壊する。
スパスは複数のビットに狙われ、防戦一方となってしまう。スケアクロウは単体であるものの、ビットにより多方面かつ多数の射撃を行うことができ、彼女らは翻弄されてしまう。
(何よこれ・・・これが、ハイエンドモデル!)
ナガンはビットよりスケアクロウ本体を優先したいが、ビットにより阻まれる。
「小癪なっ!」
その様子を遠くから翔達は望遠鏡で見守っていた。
「翔、よく見ておけ。あれがスケアクロウとこの地区の指揮官の部隊の戦いだ」
思うところはあれど、互いの信念で戦っているが故に決して邪魔をせず、見届ける。それが翔達が決めたことである。
スケアクロウのビットはドレイクのドリルロケットより数は多く、射撃型であるためテンペスタも真剣な表情で見ている。しかし遠方から暴走鉄血のノーマルによる増援が向かっていることに気づく。
「ここはアイツらの戦場だ。邪魔はさせない」
そう言って立ち上がったヨルムンガンドに、翔達は頷いて立ち上がる。
「無闇に音を出して気づかれたくはないからな・・・一瞬でカタをつけるぞ」
ラムがビットを薙ぎ払いつつ、弾幕をスケアクロウにも向けるがスケアクロウは計算していた様子で回避する。
「このっ!」
すると、スケアクロウの右側面に回り込んでいたXM8は銃身に装備していたグレランを撃ち、スケアクロウは回避が遅れて壁に叩きつけられる。
そこに、どこかから放たれた弾丸がスケアクロウの左腕を撃ち抜く。
見れば、M14がRFを腰だめに構えていた。スケアクロウはビットでM14に攻撃し、回避しきれなかったM14のRFと左肩を撃ち抜く。更なる追撃をしようとしたが、ナガンによりビットを撃墜される。
「今の内じゃ!」
XM8が横に走りながら射撃し、スパスは自身の持つシールドをパージしてスケアクロウの背後から接近していく。そこにラムがマガジン内の僅かな残弾を使って援護する。
《ナガン、ビットを狙って注意を逸らせ!》
ナガンは指示通りに動こうとするが、スケアクロウは自身の周りにビットを集め、一斉射する。
「計算通り、無駄ですわ」
一斉射によりラムとXM8は体を撃ち抜かれ、倒れる。M14はギリギリで回避できたが、ナガンは右腕を、スパスは左腕と左脇腹を掠めてしまった。
しかしXM8は倒れる寸前にグレランを撃っており、それがスケアクロウの足元に着弾する。
スケアクロウは両腕とビットで体を守ったが、防御を緩めた瞬間に爆煙の中からスパスが現れ、至近距離から散弾を撃ち込まれる。
1発目は右腹部に、2発目は左腕を吹き飛ばし、3発目は左胸に命中し、スケアクロウは倒れる。
「私の・・・ミス・・・!」
スケアクロウは動くことができず、ビットはグレランから身を守るのために破損している。そこにスパスとナガンが銃口を向ける。顔を上げたスケアクロウの顔からはガスマスクが外れており、素顔が露になっている。
「・・・殺、しなさい」
しかし殺しはせず、銀治がドローンから話しかける。
《君を殺しはしない、そもそも目的は捕縛だからな》
更に、銀治の上官である『ヘリアントス』、通称『ヘリアン』からも投降を呼び掛けられる。
《貴様が捕縛した戦術人形は既に救出され、その戦術人形の話した内容は偽の情報である。そして、貴様は今すぐにでも殺せる状況にある・・・大人しく投降しろ》
しかし、スケアクロウはくつくつと喉を鳴らして笑う。
「IOPの戦術人形のプログラムは把握してあります・・・IOPの戦術人形は嘘をつく際、真実の情報の順番を並べかえることで嘘をつくという事も」
それを聞いたヘリアンは目を見開く。
《なぜそれを!?》
「そして・・・私達鉄血が探している人形の場所は、解析して送信してあります」
するとスケアクロウはドローンのカメラを向く。
「聞こえているのでしょう?グリフィンの指揮官・・・ようこそ、"フロントライン"へ」
次の瞬間、スケアクロウは自爆する。近くにいたスパスとナガンは爆発を受けて吹き飛ぶ。
《ナガン!スパス!》
指令室に銀治の叫び声が響いた。
そして、その様子を翔達は見ていた。翔は拳を握り締め、ヨルムンガンドは天を仰ぎ、テンペスタは無表情で眺めていた。しかしエクスキューショナーはその光景を1番前で目に焼き付けるように見ていた。
「スケアクロウ・・・見届けたぞ」
エクスキューショナーは翔達を振り向き、スケアクロウが送信したデータを確認する。スケアクロウはロシア支部のエクスキューショナーに情報を送信しており、こちらのエクスキューショナーは"裏口"から情報を受け取っていた。
「ロシア支部の鉄血は、『M4A1』とかいう戦術人形を追ってるらしいな・・・行くぞ」
読んでくださり、ありがとうございます!
銀治の部隊とハイエンドモデルの初戦闘でしたが、どうだったでしょうか?
感想や高評価、お待ちしています。
●カリーナ
オレンジのサイドテールの髪に、白いシャツの上に薄茶色のジャケットを羽織り、頭にサングラスを引っかけている、グリフィンの後方幕僚であり、銀治の副官でもある。
明るい性格だが、お金に関しては貪欲で守銭奴とも言われることもある。
また、彼女の事を『カリン』と呼ぶ者もいる。
彼女はかつては孤児だったが、それを見かねたクルーガーが当時未成年だった彼女を、保護目的で規定を破って入社させている。
●M1895
金髪のロングヘアで、白いウチャンカと白い服を身に付け、白いコートをマントのようにつけている、IOPの戦術人形で種別はHG。
ナガンの愛称で呼ばれており、明るいが老人のような口調で喋っている。
銀治がグリフィンに入社し、配属された基地にいた最初の戦術人形であり、銀治の指揮下の戦術人形の中では2番目に経験が豊富である。
●XM8
銀の長髪に青と緑のジャケットを着ている、IOPの戦術人形で種別はAR。
言いたいことは好きに言い、またいたずら好きな性格をしている。
チェスは大の得意であり、グリフィン内では彼女にチェスで勝てる者はいない程である。
また、ナガンの部隊では副隊長を務めており、銀治の指揮下では現在最も経験が豊富な戦術人形である。
経験豊富な理由は、かつては別の地区に配属されていたが、そこが鉄血に攻め落とされてしまったからである。