しかし、過ちを繰り返せばチャンスは無に帰すだろう。
世界は崩壊した。
"とある誰か"が、救ってくれたにも関わらず。
2018年、最初に世界が滅びかけた時はとあるAIが世界を滅ぼそうとした。そのAIは人々から多くを学んだが、次第に悪意を向けられるようになり、滅ぼそうとしたのだ。
しかし、"とある誰か"によりそのAIは破壊され、世界は救われた。
そのAIに関わっていた者達は責任の押し付け合いにより、開発者のみが罰せられる結果となった。そして人々はAIに対する恐怖を抱き、AIの開発はほとんど停止してしまった。
そう、人類はその罪から逃げてしまったのだ。
しかし、AIの開発がほとんど停止してしまった代わりに、軍事開発は進み、様々な兵器が誕生していった。
それから時は流れ、2030年──
中国、上海沖にある島の北蘭島の遺跡に地元中学生5人が探検目的で侵入し、数年前から危険視されていた『
彼らを助けようと、軍人が派遣されたものの大規模な爆発を引き起こしてしまい、コーラップスは世界中へ拡散し、人類の生活圏は大幅に失われてしまう事となった。
そして2040年、第三次世界大戦が勃発してしまう。世界中で核が放たれ、世界の汚染は更に深刻化してしまい、ELIDはそこから更に数を増やしてしまう。
その様を見た1人の女性は涙を流す。
「あの人が・・・あの人が守った世界が・・・壊れてく・・・」
世界大戦は2045年に終結するも、人類は多大な出血を流してしまった。
爆心地であった中国と、その隣にある朝鮮半島は壊滅。日本はコーラップスの被害は少なかったものの、核と感染を隠して渡ってきた中国人の発症により、西日本は壊滅してしまい、東日本はギリギリ持ったものの、被害は大きかった。
ロシアは国土の3分の2を失うものの、残りの被害は少なかった。アメリカはほぼ壊滅状態となり、通信は途絶している。
その後、人間には対処が難しい場所や敵への対処のためにAI技術が大きく進み、『自律人形』や『戦術人形』などといったものが開発されていった。
現在2061年──
汚染され、戦いの跡が残る廃墟と化した街を翔は見下ろしていた。
「誰か、いるかな・・・?」
翔は狭い階段を下りて道路に出る。そして街の中へ入っていくが、とても静かだった。
「何、これ・・・戦争でもあったのかな?」
自分が何なのかも解らないまま、あてもなく道なりに歩いていくが、視界の右上の円形のものが気になっている。
「この丸いの、何だろう?」
すると、円形のものの上側に1つの黄色い点が表示されると同時に、小さく『生体反応』とも表示される。前方に進むと共に、黄色い点は円形の中心に近づいていく。おそらくレーダーか何かの類いだと思い、黄色い点の方向に歩いていく。
そして、黄色い点が何を示しているのかを目にする。
それはゆっくりと、足を引きずりながら歩いている人だった。しかし髪は抜け落ちており、服もボロボロになっていた。
「あのー、すいません!」
呼び掛けてみると、目の前の人は振り返った。顔は石のように固まり、目は虚ろである。皮膚の所々からは緑色の結晶のようなものが突き出ている。
そして唸り声を上げて手を伸ばして翔に向かって歩いてきた。
すると、視界右上の円形にある黄色い点が白い点に代わり、今度は小さく『敵性反応』と表示される。
翔はまだ知る由もないが、あれがELIDである。
翔はその場から急いで離れる。しかし進むとあちこちから白い点が表示されていき、そこにはELIDがいるため隠れる場所を探そうとする。しかし、途中で大量のELIDに発見されてしまう。
翔は怖くなり、めちゃくちゃな走り方でその場を駆け抜ける。
しかし翔自身は気づいていないが、その走るスピードは常人を凌駕する速さだった。
少しして円形を確認すると、白い点は無かった。翔は安堵して座り込む。
「何なんだよ、あれ・・・」
しかし翔は不思議と疲れておらず、生存者を探して歩き始める。
翔が目覚めて2日後、翔は空腹と喉の乾きに耐えながら歩いていた。
しばらくすると、白い点が複数集まっている場所があり、その中心には黄色い点が2つ表示され、どちらも生体反応があった。
ある程度近づいてみると、2階建ての店の2階に男の子と女の子が立て籠っていた。そして1階にあるバリケードを複数のELIDが叩いており、バリケードが破壊されてELIDが店の中に雪崩れ込んだ。
翔は急いで近くの家の屋根に登り、店の屋上に飛ぶ。跳躍力も常人のものとは思えないものであり、翔は屋上の出っ張りを掴んでよじ登り、店の中に入る。
2人を見つけると、翔は両手を上げる。
「えっと···た、助けに来たよ!」
2人はキョトンとしているが、翔は2人を両手に抱えて屋上から飛ぶ。2人の重さの関係で入る時に登った家には届かなかったため、慌てて翔は壁を蹴る。
そして地面に着地する時に転んでしまうが、2人を傷つけないように翔は身体を丸める。
「大丈夫?」
2人は頷くが、女の子が翔の背後を指差す。見ればELID達が向かってきている。
「2人共、走れる?」
翔が訊ねると、男の子は首を横に振る。男の子の足には包帯がしてあり、添え木がしてある。翔はすぐに走り出し、噴水広場へ入る。
しかし四方八方からELIDが迫ってきており、翔は2人を降ろすと落ちていたバールを構える。
その構え方は戦闘はおろか、喧嘩すらしたことの無い様子である。
「う、うおおおおお!」
翔は最も近い所にいたELIDの顔面をバールで殴りつける。するとその一撃でELIDの頭蓋が破壊され、ELIDは倒れる。そして翔は2人を守りながらELIDを攻撃していく。
しばらくしてもELIDの数は増え続け、翔が守っている2人は最早諦めている。しかしそれでも翔は2人を守ろうとELIDと戦い続けている。すると・・・
ヘリの音が聞こえてくる。するとヘリから1人の女性が飛び降り、右手に持った太刀で着地と共にELIDを串刺しにする。
「良く耐えたな、後は任せろ」
女性は黒い長髪をなびかせながら振り返った。
「あ、あなたは・・・?」
翔が問うと、女性は太刀を構えてELIDの群れに突撃した。
「オレは『鉄血工造』のエリート、『エクスキューショナー』だ!」
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●崩壊液
北蘭島の遺跡を含むいくつかの遺跡で発見された緑色の物質。
素粒子のような挙動をしているが、最初はクリスタルの中から液体で発見された。
物質の内部に浸透すると、膨大なエネルギーを発しつつ分子構造を断ち切ってしまう。
しかしコンクリートのような固い物質には浸透することは稀で、逆に生物であれば浸透しやすく、生物をELIDに変異させてしまう性質も持つ。
●ELID
コーラップスによる被曝者の成れの果て。
高濃度の被曝であれば数分の内に死亡するものの、低濃度の被曝を受けた場合、肉体が変異を起こす。
変異後はゾンビのように動きが緩慢になり、理性を失くして他の生物に対する極めて高い攻撃性が現れる。
●翔・ニールセン
髪は黒い短髪で、身長160cm。
記憶喪失のため、情報が圧倒的に不足している。
身体能力は明らかに常人を凌駕しているが、本人はその事に気づいていない。