鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 重要人物と出会うとは、何かの巡り合わせだ。
 しかし時に、何かを犠牲にしなければならない。




第19話 2人目

 翔達が拠点としている飛行場へ帰還すると、レーダーに自律反応を確認する。場所は2階で数は1つだが、警戒しつつ中に入る。2階へ行くと、階段に細い紐が仕掛けられていたためそれをゆっくりと避けて進む。

 

 2階に置いてある横長のソファーに、1人の戦術人形が寝ていた。

 赤いメッシュの入ったベージュ色のロングヘアと2本の角のような黒いヘッドギアに、黒いフード付きコートを着ている。抱えている銃はARで、両手はM4とは違うかたちの機械型となっている。

 

 机の上を見ると、エクスキューショナーが取っておいたポテチの袋が開けられており、中身が食べられた形跡がある。

 

「お、おいまさかこいつ・・・」

 

 すると戦術人形の目が開き、声を発したエクスキューショナーに向けて素早く銃を構える。

 

「鉄血!?」

 

 戦術人形は躊躇無く引き金を引き、エクスキューショナーはすぐさま回避する。そのまま戦術人形が撃ち続けようとしたところで、翔が割って入る。

 

「ちょっと待ってよ!誤解、誤解だよ!」

 

 しかし戦術人形は銃口を向け、引き金に指を掛けたままである。

 

「人間さんどいて!そいつ殺せない!」

 

「話を聞いてよ!」

 

 エクスキューショナーは太刀から手を離し、手を上げている。ヨルムンガンドとテンペスタも手を上げている。

 

「・・・変なことしたら、すぐに撃つからね」

 

 

 

 翔は戦術人形に本社の事などを話し、ちょうど社長からの通信も来たため、なんとか納得してもらえた。

 

「な~んだ、本社の方はちゃんとしてるんだ・・・誤解しててごめんなさい」

 

 エクスキューショナーはポテチを食べられたことにご立腹だったが、とりあえずは無かった事にした。

 

「良いよ、知らなかったんだし。それで、君は名前は?僕は翔・ニールセン」

 

「私は『SOPMODⅡ』(以下SOP)」

 

 その後、少しSOPの話を聞いてみたがM4の姉妹であり、ロシア支部の鉄血部隊と交戦し、M4を逃がすために囮となり、今はM4達と合流するために動いていたそうである。

 

《なるほどね、なら安心して。日本の有澤重工の作った軍用車が届いたから、それを使ってS09地区のグリフィン基地まで案内してもらうと良いわ。運転は・・・翔とテンペスタに任せるわ》

 

 M4のいる場所へと行けるとなってSOPは大喜びしており、和やかな雰囲気に包まれた・・・エクスキューショナーを除いて。

 それもそのはずである。鉄血の物資が回復しきっていない時に、最後に残ったポテチだったからである。

 

「オレの・・・ポテチ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 森の中の道をを1台の軍用車が走行している。乗っているのは翔、テンペスタ、SOPの3人である。SOPは外の景色を見つつ周囲に目を光らせ、翔は運転をしている。

 また、テンペスタも周囲を警戒しており、空は曇っている。

 

 しばらくすると、道に1人の女性が立っていた。緑色のセミロングの髪をしており、目を白い布で隠している。胸と肩、膝に装甲を着けており、青いホットパンツを履いている。しかしそれ以外の布は身に付けてはいなかった。

 

 そしてその女性の右手には1本の槍が握られており、その先端が緑色に光る。翔は即座にハンドルを切り、その"射線"から大きく距離を取る。

 次の瞬間には、先程まで翔達の乗った軍用車がいた所に緑色のレーザーが撃ち込まれた。

 

「流石に避けますかぁ~」

 

 一旦軍用車を停め、3人は降りようとするがテンペスタが翔とSOPを制する。

 

「私が出る、2人は先に行け・・・安心しろ、すぐに追い付く」

 

 翔は頷き、軍用車を発進させる。しかしSOPは戻らせようとする。

 

「待ってよ!置いてくの!?」

 

「大丈夫、テンペスタはこの車に追いつけるし、それに・・・」

 

 その先を言おうとした瞬間、レーダーに自律反応を確認すると同時に軍用車が何かに横から激突されて転がる。回転が止まったところで車体から出ると、1人の女性が立っており、女性からは自律反応が確認できた。

 

 長い金髪を左右に纏めており、天秤の装飾をまるで頭が天秤そのものであるかのように着けている。そして黒縁の眼鏡をかけ、白い学生服と『審判』と書かれた腕章を着けており、白いスカートを履いている。

 

「少々位置がずれましたが、概ね予定通りです」

 

 女性は旗の付いたハルバードを地面に突き立て、風により旗がはためく。そこにはカードに納められた白いコーカサスのエンブレムが掲げられていた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「なんだよお前!」

 

 SOPは唸り声を上げているが、女性は冷たく見下ろしている。

 

 

 

推奨BGM『Line of Fire』

 

 

 

「私はコーカサス社ハイエンドモデル『テンパランス』」

 

 槍を持った女性は名乗り──

 

(わたくし)はコーカサス社ハイエンドモデル『ジャッジメント』です」

 

 ハルバードを持った女性も名乗る──

 

「君達を、排除しにきたんですよ~」

「あなた方を、処刑しにきました」

 

 

 

 

 ジャッジメントは翔に向かって飛び掛かり、ハルバードを振り下ろす。翔は横に転がって回避し、鉄血製RFを取ろうとする。しかしジャッジメントに鉄血製RFは踏み潰され、翔がジャッジメントを見上げると、ジャッジメントはハルバードを振り下ろそうとしていた。

 

 しかし、SOPによる攻撃でジャッジメントを回避させる。

 

「こんのぉ、許さないぞぉ!」

 

 SOPが銃を撃ちながら突撃するが、突撃地面に叩きつけられる。すぐに立ち上がろうとするが、立ち上がることができない。

 まるで、何か重い物で全身を押さえつけられているようである。

 

「あなたの処刑は後です。今は・・・」

 

 翔が背後からジャッジメントにパイルバンカーを撃ち込もうとしていたが、ジャッジメントは素早く回し蹴りをすることで反撃した。

 

「あなたの処刑が最優先です」

 

 翔は立ち上がり、パイルバンカーを構える。しかし翔はコーカサス社に対し、全く心当たりが無い。

 

「僕達が、何をしたんだよ!?」

 

 ジャッジメントはその問いを鼻で笑う。

 

「存在ですよ。翔・ニールセン、あなたが現れてからBOCは急落の道を歩みました。あなたさえいなければ、この先の未来にとって障害となる4社が生き残ることも無かった・・・そのため、ここで消えていただきます」

 

 ジャッジメントは翔に歩み寄り、ハルバードを振りかぶる。

 

 

 

 その頃、テンペスタは強風を巻き起こし、テンパランスを木に叩きつけていた。テンペスタの起こしたかまいたちにより、テンパランスの素肌は所々切られていた。

 

「そろそろ終わりにするか」

 

 テンペスタがかまいたちの塊を放とうとしたその時、テンペスタの背後から何者かが現れ、テンペスタは空中へ退避する。

 

「何者だ?」

 

 赤いベリーショートの髪に青い大型の機械腕と機械の足を持ち、西洋の鎧を纏った高身長の女性が立っていた。

 

「私はコーカサス社ハイエンドモデル『ストレンジ』だ!覚悟しな!」

 

 ハイエンドモデルが2体・・・それを相手にしてテンペスタはほくそ笑み、先程より強い風を巻き起こす。

 

「フッ、流石にBOCの最高戦力を相手に単機で戦わせるわけではないか・・・さて、"時間稼ぎ"はあとどれくらいで済むかな?"我が主"」

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 今回はSOPの登場とコーカサス社のハイエンドモデルとの交戦でしたが、どうだったでしょうか?
 感想や高評価、お待ちしています。

●M4A1
 緑のメッシュの入った黒に近い茶髪のロングヘアに、牙の描かれた白いスカーフと灰色のハイレグ型の服、そしてベージュのコートを腰に巻いており、更に右腕は機械型となっている、『16Lab』製の戦術人形で、種別はAR。

 凛として落ち着いた性格をしているが、実戦経験の少なさと感受性の強さ故に自己懐疑的になりやすい。

 IOPの開発部の1つである16Lab製で、IOPの中では最高級のスペックを持っている。
 また、16Lab製の戦術人形で組まれた『AR(アンチレイン)小隊』の隊長でもある。

 何かの理由で鉄血から狙われているが、詳細は不明。

●ポテチ
 かつて日本で大量に生産されていたが、第三次世界大戦の直前ににタイミング悪く生産会社が倒産しかけ、鉄血工造が引き継いだ最高級とも呼ばれたポテチ。

 正式名称は『フレンドリーポテトチップス』。
 袋には、フレンドリーファイアをする2人のポテトが描かれている。

 しかし第三次世界大戦の後、生産が大幅に縮小されてしまい、更にBOCの攻撃によって、月1袋生産という極めて品薄になってしまった。

 エクスキューショナーはなんとか入手できたものの、今回の一件でSOPに食べられてしまった。
 つまり、最後のポテチはSOPのための犠牲となったのだ。
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