しかし油断はするな。気を引き締めろ。
コーカサス社は騒然としていた。
翔とテンペスタを倒すために向かわせたハイエンドモデル3人が全滅し、翔とテンペスタは生存しているからである。
コーカサス社と並ぶ2つの企業の上層部もこれは予想外ようで、すぐさま会議が行われた。そして、バックアップデータにより予備の素体で目覚めた3人は怒り心頭だった。
「私が負けるなど・・・人間とノーマル同然の人形ごときに!」
ジャッジメントは怒りによって自身の周りを"重力"によって押し潰していた。テンパランスはふて寝しており、ストレンジは壁を殴り付けていた。
しかしそこに別のハイエンドモデルがやって来る。
「落ち着きなさい、あなた達らしくもない・・・」
そのハイエンドモデルは黄金と白の色のローブを纏っていた。
「『ホープ』・・・」
ホープと呼ばれたハイエンドモデルはジャッジメントの肩に優しく手を置き、3人を見渡しながら語りかける。
「あなた達は強い。しかし今回はIOPの戦術人形という不確定要素があり、人数が増えた分、敵の行動範囲と頭脳が大きくなったのです。けれど、それはあなた達が悪いわけではない・・・次に活かしましょう」
ジャッジメントは目を閉じて深呼吸を繰り返してクールダウンし、ホープと共に部屋を後にした。
テンペスタは修理のために一度日本へ帰還し、新しい軍用車が送られてきた。更に、グリフィンから翔の元に転属することになった戦術人形が来ることとなった。
グリフィンから転属が決まったのは、翔達がこれまで裏で動いていたことでロイラとクルーガーが話し合い、明確な同盟の証しとして翔の部隊は鉄血とグリフィンの混成部隊が組まれることとなったからである。
そして、送られてきた戦術人形は2人。1人はグリフィン所属の戦術人形のM200であり、過去に翔をIOPへ案内した戦術人形でもある。
「お久しぶりです。これからお世話になります、M200です。ボクの知識がお役に立てれば嬉しいです・・・あっ、いいえ。だと良いなぁって・・・」
もう1人は青いメッシュの入った長い黒髪を後ろで束ねており、白い軍用の制服に白い軍用のコートを羽織っている。そしてロフストランド杖をついている。
「あなたがここの指揮官ですか?私は『ジェリコ』と言います。これからよろしくお願いします・・・ただ、本当にまともな鉄血かどうか、確かめさせてもらいますよ」
2人の戦術人形が加わり、テンペスタが戻るまでに行う任務を確認することとなった。
ドイツ南部、とある汚染エリアの深部にて──
「おっ!これは良い素材だ」
紫色のロングヘアに赤いカウボーイハットを被り、黒いカウガールの服装をしている女性が、変異が進んで大型化したELIDの体組織をククリナイフで削り取り、瓶の中へ入れている。
「クラフターお姉様、誰かが近づいてきますわ・・・人数は複数」
黒いお嬢様ドリルの髪に、黒いボディースーツの上に黒いセーラー服を着ており、両手には両刃の刀を逆手に持っている。
「判ってるさ、『スライサー』」
カウガールハットを被っているクラフターと両刃の刀を持つスライサーは近づいてきた者のいる方向を見る。そこには白いカラーリングのノーマルモデルの戦術人形が複数と、限りなく白に近い銀のロングヘアの女性と同じく白に近い銀のポニーテールの女性がいた。
「あなた達、ここで何をしてるのかしら?」
ロングヘアの女性は質問してきた。そこに若干強めの風が吹き、ロングヘアの女性が着ている白衣がはためく。
「大型化したELIDの体組織の採取さ。私はELIDの事についてよく調べたいから、ここで採取してたが・・・なんか悪いか?」
ノーマルモデルの戦術人形は銃を向け、その顔はバイザーに覆われて見えない。
「ここは立ち入り禁止区域よ」
「そりゃ悪かった、すぐに帰る・・・だが1つ聞かせてくれ。これは興味本位なんだが、アンタ何モンだ?人でなければ機械でもない、だが両方の性質が感じられ・・・っ!?」
クラフターの顔に大型の刃が迫り、クラフターは一瞬だけブースターを吹かして回避する。その刃はロングヘアの女性から出てきた白い尻尾だった。
スライサーの元にはポニーテールの女性が剣を構えて一気に迫るが、スライサーは刀で受け流しつつポニーテールの女性の肩を踏み台にして建物の上に登った。
「おいおい、随分なこった・・・こっちは戦うつもりは無いんだがなぁ。まあいいさ、帰るぞ」
するとクラフターの体が変形し、戦闘機のような形態となって空を飛び、スライサーは旋回してきたところに飛び乗って掴まり、そのまま飛び去っていく。
ロングヘアの女性とポニーテールの女性は呆気に取られていた。
「何者かしらね・・・とりあえず、"お父様"に報告よ」
依頼主:──
目標:鉄血工造ロシア支部・第2基地
作戦開始時刻:14:00
報酬:──
ロシア支部での本格的な拠点になる場所を確保するため、ここを襲撃して奪還しようと思う。ここなら工場もあるし、拠点として十分な広さと施設がある事が確認されているのもある。
ハイエンドモデルがいるかどうかは判らないけど、いる可能性もあることを視野にいれておこう。
正面からはエクスキューショナー、裏口からはヨルムンガンド。M200は狙撃でエクスキューショナーの援護。僕とジェリコは側面から基地内に侵入して指令室を目指す。
そしたら、僕が本社から受け取った新しい制御コードを打ち込んで正常な状態に戻す。
行こう、皆。
作戦開始時刻となり、エクスキューショナーとヨルムンガンドがほぼ同時に攻撃を仕掛ける。多数のノーマルモデルが襲いかかる。
「オラオラァ!ロシア支部の鉄血はこんなもんかぁ!?」
エクスキューショナーは太刀でノーマルを銃ごと斬り、蹴りやHGも駆使してノーマル達を殲滅していく。
「自社の同胞を手にかけるのは好まないが、仕方ないな」
ヨルムンガンドは鞭形態の蛇腹剣で複数のノーマルをまとめて撃破し、ノーマルから奪ったHGを絡め手として使っていく。
「このぐらいの敵、なんてことありません」
M200は正確な狙いでノーマル達を狙撃していく。現在は無風であり、より狙撃がしやくすなっている。
「では指揮官、行きましょう」
ジェリコに促され、翔は高い跳躍力で塀の上に登る。そしてジェリコを引き上げて内部に侵入する。翔は鉄血製ARを持ってきているが、できるだけ戦闘を避けるために慎重に進んでいく。
1階はノーマル達をやり過ごながら進み、倉庫や屋内試験場などを経由して進む。2階に進むと最短ルートは防衛線が張られていたため、無理せずに迂回して進む。
指令室へ辿り着くとヴェスピドとリッパーが1人ずついたため、ジェリコと共にほぼ同時に射撃して撃破する。
そして指令室にある鉄血の制御コードを打ち込み、この基地にいる鉄血の戦力の動きが止まり、再起動すると敵対すること無く損傷の確認や掃除、瓦礫の撤去を始める。
「無事、作戦成功ですね」
「うん、皆ありがとう」
鉄血の基地を奪還し、飛行場にある荷物を運び出すために翔とM200は一旦飛行場に戻る事にした。エクスキューショナーは基地のノーマル達の指揮を取り、ヨルムンガンドはジェリコと共にグリフィン部隊の救援に向かった。
飛行場に着き、荷物をまとめていると突然銃撃されて窓が次々と割れていく。翔は壁の裏に隠れ、M200は柱の陰に隠れる。
「まさか・・・敵襲!?」
外には見たことの無いノーマル達がおり、おそらくローエンドモデルであろう戦術人形もいた。
翔は鉄血製HGをホルスターから抜き、M200とアイコンタクトをする。
読んでくださり、ありがとうございます!
翔の元に2人の戦術人形が配属になりましたね。それに、汚染地域で新たに出てきたのは誰でしょうかね?
感想や高評価、お待ちしています!
●ジャッジメント
長い金髪を左右に纏めており、身長170cm。
纏めた髪にまるで頭部が天秤そのものであるかのようは装飾をしており、黒縁の眼鏡をかけている。そして白い学生服と白いスカートを身に付け、『審判』と書かれた腕章を着けているコーカサス社のハイエンドモデル。
武装はハルバードであり、実際の戦場で使われたものを改造して使用している。
真面目で冷酷な性格で、審判を下して処刑を行っている。
重力を操るデバイスが頭部に内臓されており、それによって攻撃や拘束を行う。
しかし扱える重力と範囲には上限がある。
●ストレンジ
髪は赤いベリーショートで身長182cm。
青い大型の機械型の四肢を持ち、西洋の鎧を着ているコーカサス社のハイエンドモデル。
豪快な性格をしているが、周囲に目を配って行動している。
戦闘は大型の四肢を使った格闘と掌から発射する圧縮された空気を使用し、体の黄色く発光するデバイスにより味方のエネルギーを増幅させ、レーザー系の火力を上げることが可能。
また、装甲はレーザーなどのエネルギー系の攻撃を反射する性質を持つ。