鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 こんな時勢だ、何が起きても不思議ではない。
 憧れの赤とそれになれない白、それが変わる日は来るのだろうか?




第23話 雨の前日

 エクスキューショナーが急いで飛行場に戻ると、飛行機は瓦礫の山となっており、M200は体に包帯を巻いて倒れた柱に座っていた。翔は体に包帯を巻きながらも、瓦礫の中から取り出せた荷物を整理していた。

 

「2人とも無事か・・・って、なんだこれ!?」

 

 エクスキューショナーに気づいた翔はばつが悪そうに謝った。

 

「ごめん、奇襲されてこんなことに・・・」

 

 エクスキューショナーは無事なら良かったとし、瓦礫の中にある荷物を取り出すため、連れてきたヴェスピドと共に瓦礫の撤去を始める。

 

 M200は傷の具合から、瓦礫の撤去ができなかった。その代わりに荷物の点検をしていた。しかし、M200は変化した翔の様子を思い返していた。

 

 瓦礫から飛び出てきた後の戦闘、その時の翔の動きはそれまでより明らかに正確で、M200の戦闘回数を上回る経験をしてきたように見えた。

 いや、M200だけでなくM200の見てきたどの戦術人形よりも正確なものだった。

 

 自身と翔を追い詰めたネルヴォを一方的に攻撃し、あの細い体の少ない部位を撃ち抜き、最後には苦しませずに1発で終わらせた。

 しかし、ネルヴォを撃破した後に謝った翔の顔は、どこか暗いものが感じられた。しかし・・・

 

(あの時の翔さん、カッコ良かったな・・・)

 

 太陽に照らされた翔の顔は、M200にはとても輝いて見えていた。

 

 

 

 その後、翔は自身の記憶を頼りに新しい装備の製作をロイラに頼んだ。ロイラは初めは記憶がある程度戻ったことを祝福していたが、装備の製作となると慎重な姿勢を見せた。

 新しく装備を作るとなると、開発期間や予算、資材の確保も考えねばならないからだ。

 

 しかし、翔が頼んできたものはこれまでのものを応用したものであり、開発期間と予算は問題無さそうだった。しかし資材に関しては不安要素があり、技術部と話し合った。

 

「なるほど、確かにこれなら開発期間はあまりかかりませんね。しかし、記憶がある程度戻ったとはいえ彼は何者なのでしょう?」

 

 翔が何者かは、皆が気になっている事だった。

 翔が言うには、自身は傭兵であり地下に作られた巨大な施設で起きた戦争に参戦していたそうだ。

 

 その施設内において傭兵とは特別な存在であり、同じ傭兵の父親に憧れて翔も傭兵となり、そしてその戦争は終わりを迎えた・・・が、どのように戦争が終わったのか?その後はどうなったのか?その他の詳しいことはまだ思い出せないようだった。

 

「資材に関しては、届くのにまだ時間が掛かるけれど・・・その間に設計はできそう?」

 

 技術部の面々は力強く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翔はM200とジェリコと共に、一度鉄血の本社へと帰還することになった。理由は装備の試運転のためであり、テンペスタが迎えに来ていた。

 

「やぁ、久しぶりだな・・・我が主。そして初めまして、新しい戦術人形」

 

 テンペスタは修理と共に新しい服装に変えており、レインコートは無くなっており、青い軍服から防水加工の施された青いロングコートと黒いブーツを身に付けている。

 

「なんだか、主って言われるの・・・慣れないな」

 

 翔はあまり慣れていないが、テンペスタにとって主と認めているため止めないでいる。

 そして有澤製の軽巡洋艦に乗り込み、日本へと向かう。

 

 

 

 日本に帰還し、早速翔の新装備の試運転となる。

 注文通り、赤と白のカラーリングをした外骨格で、右手にセミオートタイプのAR、左腕には格納式の小型チェーンソー、右背部には小型のミサイル、左背部には単装砲を装備している。

 

 演習場で翔は新装備を使ってヴェスピド5人を相手に試運転をするが、今の翔には相手にならなかった。しかし使ってみた感じは良好であり、翔は笑顔になっている。

 

 M200とジェリコは人間と鉄血の戦術人形達がかつてあったように暮らしているため、驚いていた。特に、まだ幼い陽と加奈がデストロイヤーと仲良く追いかけっこをしている様子は、鉄血が暴走しているロシアでは考えられない光景だった。

 

 

 

 その後、翔達3人はロイラに呼び出される。

 

「あなた達3人に、私と一緒に北海道に来てもらいたいの」

 

 聞けば、北海道のとある町で不穏な動きがあるものの人手が足りず、手伝ってほしいとのことだった。また、ロイラはリサと久々に会うためでもあった。

 

 しかしテンペスタは別件で用事があるため、翔達と共に行くことはできなかった。

 

「用事が終わったら、すぐにでも合流しよう」

 

 鉄血と共に日本を守る企業の1つ、アクアビット社にM200とジェリコは興味を示し、北海道へ行くことを承諾する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

依頼主:リサ・ヴォイス

 

目標:指定された地点の調査

 

作戦開始時刻:13:00

 

報酬:550000円

 

 ここ数日、目標地点の町で不穏な動きが確認されており、そこの調査をお願いします。

 

 本来であればこちらで解決すべき問題なのですが、BOCによる被害が回復しきっておらず、人手不足なのです。グラディウスを6人程増援に向かわせましたが、正確な調査はできません。

 そこで、あなた方に依頼をしたのです。

 

 また、目撃された人物はいずれも日本人ではないものと見られ、武装している可能性があるため、武装していた場合は問答無用で制圧してください。

 それでは、よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 北海道のとある町に着いた翔達は荷物を運び出し、仮の拠点とする小さなビルの2回で地図を見合わせる。

 

「怪しい動きが見られたという地点は、この3つ。3ヶ所とも空き家ですね」

 

 ジェリコが印を付けた3つの場所。そこでは日本人ではない何者かが出入りしているのを見かけた近隣住民がいたようで、通報が何度かあったようだ。

 

「けれど人数不足により詳しい調査はできず、付近に配備されているグラディウスの数を増やすに留まったそうですね」

 

 増援として配備されたグラディウスは6人程であり、この様子からも人数不足が伺えた。

 アクアビット社は各地に戦力を配備しているものの、BOCによる被害もあり、やはり調査まで手が回らないのが現状だった。

 

 

 

 

 

 3人は最も近い場所から調査することにし、最初の場所は人が住んでいない所が多い場所の一戸建ての家である。M200は別の建物から様子を伺い、翔とジェリコはいつでも突入できる状態にしている。

 

また、屋内での戦闘になると思われるため、翔は外骨格を装備せず

 

 翔の視界にあるレーダーに生体反応が2つあり、家の2階にいるようだった。そしてできるだけ正確な位置を確かめるためにM200に聞いてみる。

 

「・・・どう?」

 

《見る限り人はいないようですね》

 

 翔とジェリコは玄関からできるだけ音を立てずに入り、丸形のドアノブは回したままゆっくりと閉じ、ゆっくりとドアノブを戻す。そしてレーダーを見つつ、念のためにクリアリングをしつつ2階へ上がり、反応のある部屋の前へと進む。

 

 耳を澄ませると、部屋の中から話し声が聞こえてくる。

 

「これで俺達の使命が、また1つ果たされるのか・・・」

 

「ああ。ようやくだ」

 

 2人とも日本語ではなくロシア語を喋っており、何より"俺達の使命"、その言葉に違和感を感じた翔はジェリコとアイコンタクトを取る。どうやらジェリコも同様だったようで、タイミングを合わせて突入する。

 

「動くな!」

 

 ジェリコが警告し、突然銃を向けられて2人は固まっている。翔の声よりジェリコの声の方が覇気があるため、警告はジェリコがするように示し会わせている。

 

「ここで、何をしていましたか?」

 

 2人の男性は内片方は両手を上げているが、もう1人は机の下に手を入れている。

 

「その手を、上げなさい」

 

 机の下に手を入れていた男性は素早く手を引き、その手には黒いものが握られていた。翔にはそれが何か見えており、拳銃だったためその拳銃を撃ち抜く。

 

 

 

 2人を尋問して拘束した後、3人はもう1つの地点へと車を走らせる。

 

「まずい、このままじゃ・・・テロが起きる!」

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 体調不良により遅れましたが、なんとかできました。
 翔の記憶もある程度戻り、テンペスタも復活ですね(参戦はまだ後ですが)。
 感想や高評価、お待ちしています。

●ビショップ
 全身をタンカラーの重厚な装甲で覆っており、身長180cm。
 ROS製のローエンドモデルだが、感情を持たない。

 武装は大型のハンマーで、接近しての攻撃や破壊活動を得意としている。

 ハンマーを持ったものはAタイプであり、別バリエーションとして大型のグレランを装備したBタイプが存在する。

●レクス・オルド・ソフトウェア
 2012年に創業し、当初はウイルス対策のソフトやAIの開発を行っていた企業。しかし第三次世界大戦において突如軍需開発を行い、社内の絶対王政へと変化した。


【挿絵表示】


 元はドイツで創業されたが、その後にアメリカへ移転し更に現在はロシアへと北部へと移転している。

 社内では絶対王政としているが、ハイエンドモデルは一般社員より高い地位におり、『世界の管理と秩序』を掲げている。しかしそれは第三次世界大戦にて社内で粛清を繰り返した結果であり、当時を知る者は"血濡れの秩序"とも呼ばれる程である。

●赤と白の人型兵器
 翔の記憶の中にある謎の兵器。
 しかし翔には懐かしく、暖かさを感じる兵器である。

 だが、それら以外に情報は無い。
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