鴉と人形   作:ダイヤモンド傭兵

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 誰しも背負っているものがある。
 そして、時に守るもののために罪を背負うのだ。




第25話 背負ったもの

 アクアビットマンは破損した部位を手で必死に覆い隠そうとするが、覆い切れずに緑色の粒子が漏れ出てしまう。そして近くにあった花が枯れていく。

 

《やはりな・・・見ろ!この人形はこんな汚染物質を使っているぞ!やはり人形とそれを作り出す者は悪なのだ!》

 

 それを聞き、見ていた民間人は動揺するが・・・

 

「・・・でも、それでも!アクアビットマンは俺達を守ってくれたんだ!」

 

「そうよ!テロリストのアンタ達より、あの子の事を信じるわ!」

 

 トゥランプルのコクピットの中で、テロリストのリーダーは顔を真っ赤にして歯軋りしている。

 

 しかしアクアビットマンの動力部から漏れ出る緑色の粒子は止まらず、アクアビットマンの動きも次第に緩慢になっていく。するとその粒子を見た翔は急に頭痛が走る。

 

(あの粒子は・・・判らない、だけど知ってる・・・止めなきゃ!)

 

 翔はアクアビットマンの元に駆け寄り、傷口を塞ごうとする。しかし、翔の体から突然赤い粒子が放出され、それが枯れた花に触れると花は活力を取り戻す。

 そして、赤い粒子はアクアビットマンの動力部へと入っていく。

 

 なぜそれが起きたのかは不明である。しかし緑色の粒子は赤い粒子に触れると消滅し、動力部の発光部位は緑から赤に変わる。

 

「あ・・・」

 

 そして、赤い粒子が動力部に入り終わるとアクアビットマンは"存在しないはずの記憶"を思い出す。

 

 

 

 翔が巨大な人型兵器である自身に乗り込み、シミュレーターを起動させ、そして──

 

 

 

 アクアビットマンは立ち上がり、翔と並んでトゥランプルを睨み付ける。

 

「行こう」

 

 2人は再び機銃を連射し始めたトゥランプルに向かっていき、M200とジェリコもそれを援護する。

 M200の狙撃により最後の機銃は破壊され、背部にあるコクピットハッチを翔が斬りつけ、動こうとする残りの脚部にジェリコがHGを連射していく。

 

 更にテンペスタが傷ついた部位にRFの弾を撃ち出す事で、トゥランプルの脚部は全て破壊される。

 そして翔は損傷したハッチを抉じ開け、テロリストのリーダーを掴んで投げ飛ばす。

 

「ぐうっ!・・・貴様ら、よくもぉ!」

 

 テロリストのリーダーがアクアビットマンに殴りかかるが、逆に蹴り飛ばされてトゥランプルに叩きつけられる。

 

「よくも、よくも・・・仕事を、何もかも・・・」

 

 テロリストのリーダーの前にジェリコが立つ。

 

「あなた方の主張、全て間違っています。人形は、仕事を奪ったわけではありません。建設、軍隊、製造業など、様々な分野で人形は活躍していますが、人間の人材は今でも求められています」

 

 避難所の民間人達は静かに聞いている。

 

「そもそも人形は・・・人を助けるために作られ、それは次第に大切な隣人へと変わっていきました。例え魂の無い機械だとしても、手を取り、共存していく事を選んだため・・・今の発展があります」

 

 「黙れ黙れ黙れぇ!」

 

 テロリストのリーダーは叫ぶが、体の痛みによりまともに動けないでいる。

 

「人材はどこでも求められています・・・が、それは全うな人間の話です。例え罪を犯した人間であれ、償う意志があれば雇ってくれる所がほとんどです。しかし、過去にあなた方の記録を見た時、あなた方が雇われない理由が溢れるように出てきました」

 

 テロリストのリーダーは叫びすぎたためか、むせている。

 

「数々の犯罪行為を繰り返し、ギャンブルや薬物などの依存性を抱えていながら治そうとせず、自分達の行為を正当化するために人形を敵とし、人形に関わる人間すら敵としてきたのが、あなた方です」

 

 テロリストのリーダーの顔は真っ赤になっているが、駆けつけたグラディウス達によって手錠を掛けられ、連行されていく。

 避難所にいた民間人達は協力し、瓦礫の撤去や生存者の捜索を始める。

 

 翔達が制止しようとするが、「自分達もやらなきゃならないことがある」と言って続行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、アクアビット本社にてお礼の会食が行われたが、その途中で翔はアクアビットマンに呼び出され、バルコニーにやって来る。

 

「どうしたの?」

 

「翔君、改めてありがとう。"ボク"の記憶を戻してくれて」

 

 アクアビットマンはアクアビット本社で開発されたハイエンドモデルであるため、失った記憶など無いはずだった。そのため、翔は首をかしげている。

 

「まあ、確かにボクはアクアビットで作られたよ。けど、君の中にある赤い粒子のお陰で記憶が戻ったんだよ・・・ん?これってもしかして戻ったって言うより、別の言い方の方が良いかな?まあいっか」

 

 撫でるような風を受けながらアクアビットマンは翔に向けて微笑む。

 

「翔君はボクと出会うところまでは記憶は戻ってないようだけど、ありがとう・・・ボクをヒーローにしてくれて」

 

 翔は再び首をかしげる。

 

「アーマード・コア、『ネクスト』。社外では兵器としての評価ばかりされてたボクを、ヒーローにしてくれた。おまけに、汚染も無くしてくれた。だから君はボクにとっての最高のヒーローなんだよ!」

 

 アクアビットマンはニッコリと笑みを浮かべ、ポーズを決める。

 

 

 

 

 

 アクアビット本社にて会食が行われている頃、アクアビット社から情報を持ち出した元社員は海岸に来ていた。走ってきたため息を切らしており、顔を上げると腕が4本ある戦術人形がいた。

 

「ほ、本当に俺は大丈夫なんだろうな!?」

 

 戦術人形は無言で佇んでいた。その顔には目と鼻が無く、笑った口だけがある白い仮面を付けているため、どのような表情なのか判らない。

 しかし次の瞬間、4本腕の戦術人形の背後から別の戦術人形が現れた。

 

「ねぇオッサン、散々良い待遇にしてくれて家族の安全も保証してくれた会社を裏切って、アタシらに粒子とかの情報流して、挙げ句の果てに亡命まで頼んできてさ・・・恥ずかしくないの?」

 

 背中から白くて太い触手のようなものが4本生えた戦術人形は、そう聞きながら煽るような笑みを浮かべている。

 

「う、うるさい!恥だとか知ったことか!俺は・・・俺はもっと稼ぎたいんだ!もっと、もっと!」

 

 すると、途端に触手のようなものが生えた戦術人形は興味を無くした表情をし、触手は伸びていく。

 

「あのさぁ、アンタみたいな奴・・・本気で受け入れてもらえると思ってるわけ?都合が良すぎんのよアンタ」

 

 触手の先端が開き、中にはびっしりと生えた牙があった。そして戦術人形は触手で元社員を貪っていく。貪り終えると2人はすぐに船に乗ってその場から去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の朝早く、ロシアへと向かう駆逐艦の甲板に翔は立っており、そこにM200とジェリコがやって来る。テンペスタは船の手摺に腰かけている。

 

「指揮官・・・思い出した記憶の中に、家族の事はありましたか?」

 

 ジェリコが聞くと、海を見ていた翔は振り向く。するとタイミング良く朝日の光が翔達を照らし出す。

 

「うん、思い出したよ・・・僕の家族は・・・」

 

 

 

「母さんの名前は『ラナ・ニールセン』、父さんは『ハスラー』、そして姉さんの『パル』・・・といっても、僕は拾われた子だから血は繋がってないけどね」

 

 

 

 翔は家族の名を誇らしげに言い、一瞬だけ突風が吹いた。

 そして、翔は朝日が上る空を見上げた。

 

 




 読んでくださり、ありがとうございます!

 これにて第2章は終了となり、次回からは番外編を挟んで第3章が始まります。
 感想や高評価、お待ちしています。

●トゥランプル
 葡萄色のカラーリングをした4脚型の大型兵器であり、かつてコーカサス社が開発した旧式の兵器でもある。

 武装は両腕の機銃と背部の多連装型ミサイルである。

 蹂躙(トゥランプル)の名の通り敵地の蹂躙を目的としており、バリアを張ることも可能である。しかしバリアは高い耐久を持つものの、攻撃や衝撃により減衰していき、バリアが剥がれると再使用にはエネルギーを外部から充填する必要がある。

 ちなみに現在では改良型の開発に成功しており、旧式のトゥランプルのコーカサス社での使用は減少している。

●町の中でのジャミング
 町の中でグラディウス達が機能停止していたのは、失踪した元社員による情報提供により、アクアビット社のノーマルモデルに対してのジャミング装置を作ることができたからである。

 しかしハイエンドモデルは別系列での開発であり、他社とは違う開発のされ方をしているため、他社の人形や兵器には効果は無い。

●緑色の粒子
 アクアビット社の研究主任が発見した『コジマ粒子』と呼ばれるものであり、反応によって爆発と共に莫大なエネルギーを発生させる。

 しかし、コジマ粒子は外に漏れれば極めて重篤な汚染を引き起こすため、その存在は秘匿されていた。
 現在コジマ粒子は、アクアビットマンともう1人のアクアビット社最高戦力の動力部の一部に搭載されている。
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